ウィーンモーターシンポジウム2025(3)ゼロカーボンモビリティの実現に向けて
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要約
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公式ロゴ(第46回国際ウィーンモーターシンポジウム、主催:オーストリア自動車技術者協会(ÖVK)およびウィーン工科大学パワートレイン・自動車技術研究所(IFA)、ロゴ:Copyright © ÖVK/Klaus Ranger) |
オーストリア自動車技術者協会(ÖVK)が主催する国際ウィーンモーターシンポジウムは、今年で第46回を迎えた。例年通り、オーストリアのウィーンにあるホーフブルク宮殿で5月14日から16日まで開催され、25カ国以上から1,000人を大きく超える参加者が集まった。
合計80本の講演がモデレーター付きで3セッション並行開催され、そのうち68本は会場で、残りの12本はウェブプラットフォーム上での詳細なビデオ講演としてバーチャルで実施された。
この年次イベントでは、自動車OEMと部品サプライヤーの専門家、学術関係者が一堂に会し、将来の気候中立な駆動ソリューションについて意見交換を行っている。
講演のテーマは、最新の乗用車および商用車の駆動コンセプトから、非化石燃料の応用と評価、サステナビリティのコンセプト、最新のソフトウェア定義型車両まで多岐に及んだ。
全講演のアジェンダは公式ウェブサイトで確認できる(https://wiener-motorensymposium.at/en/programme/technical-programme)。また、過去のシンポジウムの会議資料も入手可能である(https://wiener-motorensymposium.at/en/conference-documents)。
初日の夕方および休憩時間には、参加者は併設の展示会に出展された50のブースを見学することができた。サプライヤー、サービスやソリューションのプロバイダー、研究機関、エンジニアリングコンサルタント会社などが、最新の製品、技術、コンセプトを紹介した。
また、会場の屋外エリアでは、参加者が展示車両の最新技術を間近で見て、試乗して体験する機会も設けられた。
伝統に則り、このイベントは今回もウィーン工科大学オーケストラのメンバー5人によるジョージ・フリードリヒ・ヘンデル作曲の「水上の音楽」のファンファーレで幕を開けた。
開会の短い挨拶で、オーストリア自動車技術者協会(ÖVK)理事長のBernhard Geringer教授・博士は、「ネットゼロモビリティ」を評価する際には、走行中の排出量だけでなく、原材料の採取から生産、廃棄に至る自動車の全サイクルを考慮しなければならないことを強調した。
「目標は『脱炭素化』というよりも、むしろ『脱化石化』と表現する方が適切だろう。この目標を達成するには、協調した取り組みと、気候中立なエネルギー源の物理的多様性および対応する駆動技術を最大限に活用することが必要だ」と彼は述べた。
また、乗用車・商用車産業だけでなく、持続可能なエネルギーの分野においても、長期的な開発・生産投資の計画が可能となるよう、信頼できる法的枠組みの整備が重要であると強調した。
Geringer教授によれば、現在のEUの事業用車両に対する車両からの温室効果ガスの排出量のみに基づく法規制は不十分であり、気候中立な燃料やレンジエクステンダーのようなエネルギー効率の高い駆動方式に欧州でチャンスを与えるためには、日本のようなシステム全体で見る視点が必要であるという。
本稿はイベントレポートの第3部で、技術講演の中から注目すべき発表を抜粋して紹介する。
第1部では、開会プレナリーセッションの基調講演を要約し、ボッシュ、HORSE Powertrain、メルセデス・ベンツ、MANの取締役がネットゼロ排出の実現に向けた方策について論じた内容を取り上げている。
第2部では閉会プレナリーセッションの概要を伝え、PHINIA、ZF、およびフォルクスワーゲンによる講演において、持続可能なモビリティ、代替燃料、技術に対する開かれた姿勢、欧州自動車産業の未来などのテーマで発表された内容を紹介している。
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