ASEAN(2):生産・販売台数ともコロナ禍前の水準に回復

タイは半導体不足の影響で販売伸び悩み、インドネシアとマレーシアは税減免で販売拡大

2023/08/17

要約

五菱の小型EV 宏光 MINI EV
五菱の小型EV 宏光 MINI EV(2023年5月にベトナムで生産開始)(出典:上汽GM五菱)

 ASEAN主要4カ国の2022年の生産台数は前年比23.7%増の415万台、2023年1-6月は前年同期比7.6%増の203万台。ようやくコロナ禍前の水準に戻った。半導体や部品供給状況の改善により生産は拡大したが、一部の国ではまだ供給問題が残っている。生産関連の動きでは、タイでCPグループと中国の福田汽車の合弁会社が2026年までにトラック組立工場を建設する計画。インドネシアでは現代自動車が2022年3月に新工場の稼働を開始したほか、ダイハツが2023年2月に新工場に着工した。ベトナムではKG Mobility(双竜より社名変更)、Skoda、現代自がベトナムの提携会社と組立工場を建設している。

 ASEANの主要な輸出国であるタイおよびインドネシアからの輸出台数は2022年に増加し、タイは前年比4.3%増の100万台、インドネシアは60.7%増の47万台となった。2023年1-6月の輸出は、タイは前年同期比17.6%増の53万台、インドネシアは25.1%増の25万台と好調を維持している。

 ASEAN主要6カ国の2022年の新車販売は前年比25.4%増の342万台、2023年1-6月は前年同期比1.9%増の169万台。ASEAN全体としてはコロナ禍前の水準を上回ったが、減税措置の打ち切りや金利の上昇、半導体不足等の影響が出ている国もある。タイは半導体不足による一部車種の納期遅延などで、販売はコロナ前の水準に戻っていない。インドネシアとマレーシアは税の減免措置等が効を奏し、販売が拡大している。フィリピンは経済成長が続いて販売が拡大しているが、インフレの加速と金利上昇が不安材料となっている。ベトナムは登録料引き下げ措置の終了や金利上昇などで消費者の購買意欲が低下し、販売が低迷している。

 販売台数に占める電動車の比率は急拡大している。タイでは2022年の電動車(EV、PHV、HVを含む)の販売比率が9.65%であったが、2023年1-6月には17.91%に拡大した。EVのみでも1.20%から6.95%へと拡大している。タイやインドネシアではEVの国内生産も進んでおり、今後EV市場の拡大が見込まれる。


 既掲載の「ASEAN(1)」では、ASEAN各国の電動化政策、EVの投入計画・生産計画、EV用バッテリーの生産計画について報告した。本編はその後編として、ASEAN市場の生産・輸出・販売状況を報告すると共にGlobalDataによる販売予測を掲載する。

 

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