ASEAN:EV車両・バッテリーの生産体制を構築するタイとインドネシア

ベトナムではVinFastが初のEV投入、シンガポールでは現代自がEV開発・生産拠点設置

2021/06/07

要約

  ASEAN市場では最近、各国とも電動化を積極的に進めている。タイとインドネシアはASEAN地域の電気自動車(EV)生産ハブを目指すとともに、EV用バッテリーの生産体制も整備している。タイ政府は2030年までに国内で生産される自動車の30%をEVにする目標「30/30政策」を掲げている。インドネシア政府は自国の豊富なニッケル鉱を利用して、採掘からリチウムイオン電池生産までEV用バッテリー産業を統合する。マレーシアは2021年7月に新たなEV政策を発表する計画。ベトナムは自国メーカーのVinFastが初のEVを発売。シンガポールでは現代自動車がEVの研究開発・生産拠点を設置する。

  ASEAN主要4カ国の2020年の生産台数は前年比33.1%減の265万台。新型コロナウイルス感染拡大の影響で内外需が低迷し、生産が3割減少した。2021年1-4月は前年同期比17.8%増の113万台。地域によって感染再拡大が起こり、半導体不足もあって、コロナ前の生産水準には戻っていない。生産関連の動きでは、タイでGMの工場を取得した長城汽車が、2021年6月に刷新した工場を稼働する。インドネシアでは現代自動車が第2工場を建設中。フィリピンでは、政府が実施する自動車産業育成プログラムのインセンティブ享受のための要件達成期間を、感染症の影響を考慮して3年間延長する。ベトナムでは現代自動車とHong Duc Automobileが新工場を建設する。

  ASEAN主要6カ国の2020年の新車販売は前年比28.6%減の241万台。新型コロナウイルス対策の経済活動制限で販売が落ち込んだ。2021年1-4月は前年同期比18.7%増の97万台。前年の大幅な落ち込みからは回復しつつあるが、2019年1-4月比は15.7%減で、コロナ前の水準には届いていない。販売促進の動きでは、インドネシアで2021年3月から自動車に対する奢侈品販売税を減免する。マレーシアでは、乗用車に対する売上税減免措置を2021年12月末まで延長する。ベトナムでは国産車の自動車登録料が2020年6-12月に50%引き下げられた。一方、フィリピン政府は2021年1月に輸入完成車に対するセーフガード暫定措置を発動。輸入車の値上げにつながり、自動車産業に対するマイナス影響が懸念される。

  ASEAN市場では配車サービスなどのモビリティサービスが急速に拡大する中、競争が激化している。東南アジアの配車大手Gojekとネット通販大手Tokopediaが合併し、台頭する他社に対抗する。シンガポールではカーシェアリングの大手Car Clubがコロナ禍の中で需要を拡大している。

Haval H6 Hybrid SUV VF e34
長城汽車のHaval H6 Hybrid SUV(2021年第2四半期にタイで発売)
(バンコク国際モーターショーに出展)
ベトナムの新興自動車メーカー VinFastの初のEV VF e34
(出所:VinFast)


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