人とくるまのテクノロジー展 2017:電動パワーステアリング(EPS)技術の進歩
自動運転に向けた協調制御とフェールオペレーションの開発動向
2017/06/02
- 要約
- Bosch:高度自動運転に向けたEPSシステムのフェールオぺレーショナル対応
- デンソー:フェールオペレーション対応の2系統EPS
- ジェイテクト:大型車へのEPS搭載を支援、ADAS対応ステアバイワイヤ
- ショーワ:ステアリング・サスペンション協調制御
- 日本精工:ボールねじ式ラックタイプEPS、モーター/ECU/トルクセンサーを冗長設計
- NTN:次世代ステアリング用メカニカルクラッチユニット(MCU)
- 自動運転支援システムの展示:EPSを含む協調制御
要約
人とくるまのテクノロジー展2017 会場全体の様子 |
2017年5月に開催された「人とくるまのテクノロジー展2017 横浜 (公益社団法人 自動車技術会主催)」では、大手サプライヤーが自動運転支援システムの総合展示を行っていた。車両を構成する様々なシステムを協調制御する内容が示されている。
自動運転システムの開発が加速する中、電動パワーステアリング(EPS)は不可欠な構成デバイスの1つとして、さらなる安全機能の向上が求められている。操舵力をアシストするだけだった従来のパワーステアリングから、ステアリングの操舵角度を制御する機能、さらには操舵の結果として車両挙動を制御する機能が付加されることになり、制御の精度、信頼性、失陥時の対応など、従来と違う機能も求められるようになっている。
車線逸脱防止支援システム(LDW/LKA)などの先進運転支援システム(ADAS)においては、ステアリングシステムと駆動システム、ブレーキシステム等との協調制御が重要となり、ステアリング操作を機械式制御から電子制御に置き換えるステアバイワイヤ(Steer-by-Wire)の導入も進んでいる。一方で、高度なADAS/自動運転が進むと、システムの電気的な断線、エラー、故障だけで制御やアシストが利かなくなるため、従来よりもシステム故障時の影響が大きくなる。EPSで危険回避時に電気的なエラーが起きると、甚大な被害が発生する恐れがある。
こうした制御システムの高性能・複雑化に伴う故障や誤作動に対応するため、フェールオペレーション(fail-safe operation)が導入され始めている。EPSは、ECUとモーターをステアリング機構に組み込んだ機電一体型の制御システムを搭載しているが、ECUやモーターをそれぞれ2系統に増やす冗長設計にすることで、1系統の電子回路に異常が発生した場合でも、もう1系統が作動して、走行を維持したり、車両を安全に停止させることができる。
今回の展示会では、Boschやデンソーがフェールオペレーション対応のEPSを展示して、2系統のECUとモーターを持つシステムの構造と、その安全機能について、パネルやデモ機で紹介していた。日本精工も、モーター、ECU、トルクセンサーを冗長設計したEPSを出展。NTNは日産Skylineのステアバイワイヤシステムに採用されている次世代ステアリング用のメカニカルクラッチユニット(MCU)のデモ機を置いていた。ジェイテクトはステアバイワイヤシステムのADAS対応ロードマップを提示して、冗長性強化と電源バックアップを掲げ、大型車へのEPS搭載を支援する補助電源システムを披露した。ショーワは自社製品であるパワーステアリングとサスペンションの協調制御を展示していた。
文中の略語:
- EPS: Electric Power Steering 電動パワーステアリング
- ADAS: Advanced Driver Assistance System 先進運転支援システム
- LDW: Lane Departure Warning 車線逸脱警報
- LKA: Lane Keeping Assist 車線維持支援
- ECU: Electronic Control Unit 電子制御ユニット
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