アイシン精機 (株) 2015年3月期の動向

ハイライト

業績

(単位:億円)
  2015年
3月期
2014年
3月期
増減率 (%) 要因
売上高 29,639 28,222 5.0 -国内外の生産台数の増加
-為替変動の影響
営業利益 1,657 1,711 (3.2) -研究開発費の増加
-生産基盤構築のための投資増に伴う減価償却費の増加
経常利益 1,880 1,894 (0.8)
純利益 773 900 (14.1)
アイシン精機グループ
売上高 10,848 10,378 4.5 -海外得意先自動車メーカーの生産台数の増加
-為替変動の影響
営業利益 478 592 (19.3) -減価償却費などの費用増加



アイシングループの事業再編

-マニュアルトランスミッション、制御ブレーキ、車体部品の3事業を再編する。

  • マニュアルトランスミッション事業: トヨタの開発・生産機能を、アイシンAIに集約
  • 制御ブレーキ事業: トヨタ、デンソー、アイシン精機の開発・生産機能を、アドヴィックスに集約
  • 車体部品事業: アイシン精機がシロキ工業を完全子会社化

-2014年11月、トヨタはディーゼルエンジン (DE)、マニュアルトランスミッション (MT) などの開発・生産事業を系列サプライヤーに集約・移管すると発表した。DEの開発、生産は豊田自動織機、MTはアイシンAIに集約する。2016年以降、順次、実施する。さらにデンソー、アイシン精機が中部地区で実施しているブレーキ部品の生産をアイシングループのアドヴィックスに集約する。アイシングループは2016年1月をめどに愛知県半田市に新工場を建設し、移管分の受け皿を整える。トヨタはパワートレイン事業の再編によって生まれる経営資源を環境、安全分野の技術開発に振り向け、競争力を高める。(2014年11月29日付日刊自動車新聞より)

国内生産体制の再編
-同社はグループの事業再編に合わせ、中部地区の工場の生産分担を再構築する方針。2016年にブレーキ部品を半田工場 (愛知県半田市) からアドヴィックスの半田新工場 (同) に移管、シロキ工業と経営統合することを打ち出している。これに伴い、中部地区の工場全体で最適化を推進する。生産再編は一部でスタートしており、2014年5月にエンジン冷却用ウォーターポンプを半田工場から西尾機関工場 (愛知県西尾市) に移管した。2016年のグループ再編を機に生産体制の見直しを加速し、2018年頃にかけて強固な生産基盤を再構築する。(2015年1月27日付日刊自動車新聞より)

-2015年2月、同社とアドヴィックスは、愛知県半田市に設置を予定している新工場の建設に着手したと発表した。2016年以降、アドヴィックスがデンソーとアイシン精機から制御ブレーキの生産移管を受けることに伴うもので、アイシン精機・半田工場の敷地内で建設を始めた。投資額は約110億円。アイシン精機が建設し、アドヴィックスに貸与する。2016年1月以降、横滑り防止装置、回生協調ブレーキ、ハイドロブースターなどを生産する。新工場の建屋面積は、工場スペースが3万7,600平方メートル、事務所スペースが6,750平方メートル。2016年時点の従業員数は約200人を見込んでいる。(2015年2月21日付日刊自動車新聞より)

シート骨格機構部品事業をトヨタ紡織に譲渡
-2014年12月、同社とトヨタ紡織シロキ工業は、3社間で重複する車体部品、シート部品事業の再編計画を発表した。2016年4月をめどにアイシン精機がシロキ工業を完全子会社化。アイシン精機はシステム、モジュール製品の開発、生産に集中し、車体分野のコンポーネント事業をシロキ工業に集約する。(2014年12月20日付日刊自動車新聞より)

-2015年5月、同社とトヨタ紡織、シロキ工業は、シート骨格機構部品の事業譲渡契約を締結したと発表した。正式な譲渡は11月を予定する。アイシン精機とシロキ工業が手がけるシート骨格を構成するリクライナーなどの部品事業がトヨタ紡織に移管される。トヨタ紡織の猿投工場 (愛知県豊田市) に新たな開発体制を構築。2015年中に生産分野の集約手法や事業取得費用なども決定する。

「商品本部制」の導入

-アイシングループの組織を5つの事業にくくり直し、これらを基本とする「商品本部制」を導入。商品本部は営業、開発、生産、調達の機能を持ち、事業運営を通じて利益に責任を持つとともに、当企業グループ各社との事業連携の役割を担う。また、会社、事業を超えて連携を推進する機能として「グループ経営本部」、エンドユーザー視点や長期視点でこれまでにない市場創造型商品・事業の創出を図る「イノベーションセンター」を新たに設置。

-2020年代半ばにもハイブリッド車 (HV) の燃費が45~50km/Lに達することを想定し、グループ全体で部品、システムの燃費改善に取り組む方針を明らかにした。内燃機関の機械損失低減、電動化、熱マネジメント、空力性能のアップ、軽量化の5つの柱で製品を改良。2020年度までにグループ製品をパッケージ採用した場合の燃費改善効果を現状に対して約2割、25年度までに約3割引き上げる。5つの開発課題に沿って改善シナリオを策定しており、グループ各社で目標を共有して既存製品の改良や新製品、新技術の導入に取り組む。2015年1月1日付で発足したパワートレーン、走行安全、車体などの商品本部が主導し、グループの全製品で性能向上と小型・軽量化に取り組む。従来、アイシングループは個々の企業ごとに部品単位でビジネスを推進してきた。今後はシステムでソリューションを提供するメガサプライヤー型の提案活動を強力に推進する。(2015年1月20日付および2015年2月16日付日刊自動車新聞より)

Vision 2020

-2012年に以下5つの課題を掲げたVision 2020を策定
1) グローバルな事業体制の確立
2) コア事業の競争力確立
 2010年から2015年までを活動期間とする「Zプロジェクト活動」を実施。ドアロック、ドアフレーム、アウトサイドハンドル、HVダンパー等20品目を対象とし、製品構造の変更による簡素化・小型化、低コスト材への置き換え、部品の共通化・種類削減、設備・型のシンプル・スリム化、システム商品・高額機能部品の内製化を図ることで、価格競争力を高め、世界各地域市場での受注拡大を図る。
3) 第2の柱となる新たな事業の創出
 国内自動車市場の長期的な縮小が見込まれる中で、自動車部品事業に次ぐ事業を育成する。中でも、今後の市場成長が期待されるエネルギー関連事業を重点分野に位置づけ、分散発電システムの普及拡大をすすめる。
4) 強固な収益体質の実現
5) グローバルでのCSRの展開

-同社は2020年度までに連結売上高を3兆3千億円 (13年度比16.9%増) に引き上げる長期目標を打ち出している。目標達成にはグループ各社による系列外受注の拡大が鍵と見られる。現在はトヨタ自動車以外の受注が約5割に達するアイシンAWを除き、グループ各社の系列外比率は2、3割で推移している。アイシンAWは、トヨタ自動車とともに2016年度後半に立ち上げる次世代自動変速機 (AT) を共同開発。さらにアイシン化工は同AT向けの湿式摩擦材をトヨタから一括受注するなど、各社がトヨタ向けの受注を順調に積み上げている。一方、アドヴィックスは独ダイムラーからディスクブレーキキャリパーを初受注 (2015年供給開始)。欧州メーカー各社を攻略するための突破口を開いた。また、アイシン精機本体も車体系部品を中心に独VWなどへの提案を積極化し、「安定推移が見込める大口のビジネスを獲得しようと受注活動に取り組んでいる。現在は詰めの段階にある」 (同社幹部) としている。(2014年9月3日付日刊自動車新聞より)

2016年3月期の見通し

(単位:億円)
  2016年3月期
(予想)
2015年3月期
(実績)
増減
(%)
売上高 32,500 29,639 9.7
営業利益 2,000 1,657 20.7
経常利益 2,150 1,880 14.4
純利益 1,000 773 29.4

地域別売上高見通し

(単位:億円)
2016年3月期
(予想)
2015年3月期
(実績)
増減
(%)
日本 17,990 17,983 0.0
北米 5,505 4,893 12.5
欧州 2,467 2,247 9.8
アジア他 6,536 4,515 44.8


-2016年3月期はオートマチックトランスミッション生産台数の増加、中国・豪亜地域のトヨタ生産台数増加および為替影響により、売上高、営業・経常・当期純利益ともに過去最高を見込む。

>>>次年度業績予想 (売上、営業利益等)

研究開発費

(単位:億円)
  2015年3月期 2014年3月期 2013年3月期
アイシン精機グループ 670 651 564
アイシンAWグループ 554 524 529
アドヴィックスグループ 190 195 193
アイシン高丘グループ 14 13 11
その他 62 58 51
合計 1,491 1,443 1,350


-グループ主要各社の2016年3月期の設備投資、研究開発費を過去最高水準に設定した。研究開発費は前年度より109億円増の1,600億円に拡大。中長期的に世界各国で燃費、排出ガス関連などの環境規制や、安全規制が強化されることを想定して上積みしている。(2015年5月8日付日刊自動車新聞より)

研究開発活動

-システム化、モジュール化からITS関連商品の開発など、最先端の自動車部品技術を基盤に、住環境と生体の科学的研究、燃料電池やレーザーをはじめとする先端技術研究などさまざまな分野へ開発の領域を広げている。最近の主な成果は、エアバルブモジュールや駐車支援システム。

製品開発

シースルーミラー
-2014年8月、車両後部を合成画像としてバックミラーに映す「シースルーミラー」を開発したと発表。バックガイドモニターを始めとする周辺監視システムの次世代品として開発した。バックミラーに搭載したカメラと、車両後部に設置した広角カメラの画像を合成。シートの2列目以降の死角を解消し、外部状況を明確に視認できるようにする。基礎技術の開発を完了しており、今後は車両に搭載した際の適合開発を進める。2015年度にも供給を開始する。 (2014年8月29日付日刊自動車新聞より)

電動小型モビリティー「ILY-A」
-2015年3月、同社と千葉工業大学は、自動ブレーキや故障の自己診断監視機能を搭載した電動小型モビリティー「ILY-A」(アイリーエー)を開発したと発表。生活の中で安心して利用できることを重視し、ロボット技術を応用した安全装備を搭載した。また、4つの形に変形できるようにし、ユーザーのニーズに合わせた近距離移動手段を提供する。5年以内の市場投入を目指す。(2015年3月18日付日刊自動車新聞より)

研究開発体制

<日本>
-2015年度までに開発子会社アイシンエンジニアリング (AIE、愛知県刈谷市) の従業員約1200人の再配置を実施する。アイシン精機、アイシンAW (愛知県安城市) 、アドヴィックス (愛知県刈谷市) などに出向、転籍させる。大半が技術者となるAIEの従業員をグループ中核会社の開発現場に組み入れ、開発の効率化を図る。既にAIEの従業員を対象に説明会を実施し、一部社員の異動を始めている。再配置を完了した後のAIEの整理方法は今後、詳細を詰めるとしている。(2014年9月17日付日刊自動車新聞より)

-2014年8月、組み込みソフトウェアの研究・設計・開発などを行っているヴィッツの株式10.7%を取得したと発表。今回の株式取得により、自動車の電気電子システムの機能安全設計とソフトウェアのセキュリティ対策の強化を図る。(2014年8月29日付プレスリリースより)

電子システムの開発センター
-自動車の電子システム開発体制の強化に向けて、北九州市と東京都内にそれぞれ開発拠点を設置すると発表した。東京には電子システム開発部東京ICセンターを開設し、半導体設計とデバイス開発に取り組む。(2014年8月6日付プレスリリースより)

-2015年3月、北九州市に電子システムの開発センターを開設したと発表。画像認識や空間認識、車両制御などの安心・安全分野の要素技術開発を行う。車の電動化、システム制御の高度化が加速していることに対応し、開発体制を増強する。2020年度末に100人体制にする。北九州学術研究都市(北九州市若松区)の技術開発交流センター4階に「電子技術統括部 九州開発センター」を開設した。当初は4人体制でスタートし、順次、人員を増強する。新センターでは車の安心・安全に寄与する画像認識、空間認識、車両制御といった要素技術の開発に取り組み、アイシングループが持つ様々な機能部品を統合したシステムの商品開発につなげる。(2015年3月23日付日刊自動車新聞より)

設備投資額

(単位:百万円)
  2015年3月期 2014年3月期 2013年3月期
アイシン精機グループ 107,262 81,673 76,944
アイシン高丘グループ 21,190 25,377 32,711
アイシンAWグループ 78,820 74,854 66,632
アドヴィックスグループ 25,800 13,180 11,412
その他 15,552 10,413 7,741
消去 (809) (763) (409)
合計 247,816 204,736 195,032


-2015年3月期には、車両のモデルチェンジに対応した新商品・改良商品への投資、生産性向上に向けた投資に加え、重点地域での事業基盤整備など、将来に向けた投資を行った。

-2016年3月期の設備投資、研究開発費を過去最高水準に設定した。設備投資は前期に対して772億円増の3,250億円。トヨタ自動車が推進する設計改革「トヨタ・ニュー・グローバル・アーキテクチャー (TNGA)」の対象モデル向けの部品が増加するため、グループ各社で体制整備が必要となることから増やす。(2015年5月8日付日刊自動車新聞より)

海外投資

<中国>
-2015年1月、「愛信 (天津) 車身零部件有限公司 [Aisin Tianjin Auto Body Parts Co., Ltd.] 」は、5期に分けて進めていた生産設備建設プロジェクトが完成したと発表した。現在の主な生産部品および年産能力は次の通り: ドアロック 1.1百万個、ウィンドレギュレーター 1.08百万個、ドアヒンジ 1.5百万個、フードヒンジ 1.5百万個、シート 0.29百万個、ドアフレーム 1.86百万個、モール 1.75百万個、ドアハンドル 0.78百万個、サンルーフおよびサンルーフガラス 0.38百万ユニット。(2015年1月6日付けプレスリリースより)

<インドネシア>
-2014年4月、同社とアドヴィックスはインドネシアの事業体制を拡充すると発表した。アイシングループで取得したカラワン県の用地に、両社がそれぞれ新工場を建設する。投資額は2社合計で75億円。グループ全体で経営資源を有効活用しながら、グローバル事業を拡充する。アイシン精機は2015年1月をめどに車体部品とエンジン部品の生産を開始する。アドヴィックスは2014年12月をめどにブレーキブースター、ドラムブレーキなどの生産を開始。両社ともトヨタ自動車とダイハツ工業に部品を納入する。(2014年4月23日付日刊自動車新聞より)

<ブラジル>
-2014年4月、同社とアイシンAIアドヴィックスの3社は、ブラジルの生産体制を拡充すると発表した。同社がサンパウロ州イトゥ市に持つ生産拠点にアイシンAIとアドヴィックスが入居し、自社製品の生産ラインを設置する。アイシンAIは2014年8月をめどにマニュアルトランスミッション、アドヴィックスは2015年10月をめどにブレーキ部品の生産を開始する。アイシン精機は現地に新建屋を建設、2016年2月からエンジン部品の生産を開始する。設備投資額は3社合計で41億円。(2014年4月23日付日刊自動車新聞より)

設備の新設計画

(2015年3月31日現在)
  投資予定額
(百万円)
主な設備投資の内容
アイシン精機グループ 118,200 ボディ関連製造設備、エンジン関連製造設備等
アイシン高丘グループ 22,200 鋳造設備等
アイシンAWグループ 136,000 ドライブトレイン関連製造設備等
アドヴィックスグループ 28,600 ブレーキおよびシャシー関連製造設備等
その他 22,800 ドライブトレイン関連製造設備等
消去 (2,800) -
合計 325,000 -