(株) ケーヒン 2014年3月期の動向

ハイライト

業績

(単位:百万円)

2014年
3月期
2013年
3月期
増減率
(%)
要因
売上高 349,374 294,943 18.5 1)
-二輪車、汎用製品 91,644 80,610 13.7 -
-四輪車製品 257,730 214,320 20.3 -
営業利益 19,663 10,014 96.4 -
経常利益 19,640 11,013 78.3 -
当期純利益 12,258 2,656 361.5 -

要因
1)
<日本>
-2014年3月期の売上高は、99,467百万円で、前年比7.3%の増収。四輪車製品は、現地生産の進展により販売の減少はあるものの、空調用熱交換器領域での海外向け製品の販売増加や新機種効果に加え、為替の影響により増収。

<米州>
-2014年3月期の売上高は、前年比28.6%増の117,739百万円。北米での四輪車製品の販売が増加したことや、為替の影響による。

<アジア>
-2014年3月期の売上高は、前年比8.0%増の78,110百万円。マレーシアやインドネシアでの四輪車製品の販売が増加した。

<中国>
-2014年3月期の売上高は、前年比52.2%増の48,792百万円。新機種効果による四輪車製品の販売が増加したことや、為替の影響による。

<欧州>
-2014年3月期の売上高は、前年比16.0%減の5,264百万円。四輪車製品の販売が減少したことによる。

協業

-2013年6月、同社とサンデン、自動車用空調システムでの協業に向け基本合意したと発表。HVAC (エアコンの室内ユニット) や空調用熱交換器の分野でのメガサプライヤーを目指し、両社の開発力や販売力を持ち寄る。空調システムの共同開発、生産販売体制の補完などを目的に2014年4月に共同出資会社の設立を目指す。自動車用空調機器での両社の世界市場シェアはサンデンが4%、ケーヒンが3%だが、協業による競争力強化により、両社合わせて10%の獲得を目指す。

グローバル生産体制

-2013年10月、廉価な部品を供給するグローバルな生産体制を構築し、新型 「Fit」 の部品から適用を始めた、と発表。カーエアコン用ユニットをはじめとした10品目余りの製品を「物流優先型」「集中生産型」「労働集約型」の3つに区分し、それぞれの製品特性に合わせ、最も低コストな場所で生産する。旧型 「Fit」 の部品は、ほとんどを日本で生産していた。新型ではタイ、中国、米国の生産拠点をフルに活用。約半分の品目を日本以外で生産することにより、大幅なコストダウンを実現した。

生産再編

<欧州>
-2014年2月、英国の生産子会社「ケーヒン・ヨーロッパ」 (KUK、グラスゴー) での電子制御部品の生産を2014年9月に終了すると発表。生産品目の大幅な減少が見込まれるため、生産活動を維持することが困難になった。従業員との協議に基づき、生産活動の終了に向けた手続きを進める。同社はホンダの新型 「Fit」 向けの新製品立ち上げを機に、各種製品の世界最適生産体制を構築。ECUは四輪用を日本と米国とタイ、二輪用を日本とタイ (一部インドネシア) で生産する体制とし、競争力の向上を図っている。

<インドネシア>
-2013年11月、アジア12カ所目の生産拠点としてインドネシアのCikampekに建設した新工場が本格稼働を開始したと発表。インドネシア子会社P.T. Keihin Indonesiaの第2工場として、小型二輪車用の電子燃料噴射システム (FI) システム用インジェクターの量産を行っている。2013年12月から四輪車用のスプールバルブとインテークマニホールドを生産する予定。さらに、Bekasiにある第1工場では来春から四輪車用ECUの生産も開始する計画。

<メキシコ>
-2013年8月、メキシコ・サンルイスポトシ州に建設中だったメキシコ工場が稼働したと発表。当初の予定より2カ月前倒しし、7月にスロットルボディ部品やスプールバルブの生産を開始、8月から北米向けの納入を始めた。北米6番目の製造子会社として、2012年2月に「ケーヒン・デ・メキシコ」を設立し、生産開始に向けた準備を進めてきた。労働コストの優位性を生かし、今後はインテークマニホールドをメキシコ国内向けに生産するほか、スロットルボディやスプールバルブを北米のほか南米など世界各地に供給していく。

2014年3月期の主な受注

OEM 販売地域 モデル 製品
ホンダ

- Accord Hybrid -ハイブリッド車用電子制御製品
-燃料供給製品
-空調製品
- Fit -燃料供給製品 (グローバル調達品)
-電子制御製品 (グローバル調達品)
インド City -燃料供給製品 (グローバル調達品)
-電子制御製品 (グローバル調達品)
インドネシア Mobilio -燃料供給製品 (グローバル調達品)
-電子制御製品 (グローバル調達品)
日本 Fit -ガソリン直噴エンジン対応のインジェクター
-ハイブリッド車用電子制御製品
日本 Vezel -ガソリン直噴エンジン対応のインジェクター
-ハイブリッド車用電子制御製品
-空調ユニット (蓄冷エバポレーター内蔵)
スバル 日本 XV Hybrid -変速機用コントロールバルブ

受賞

-2014年1月、ホンダの取引先優良感謝賞の表彰において「開発賞」、「環境賞」、「原価賞」を受賞したと発表。3賞同時受賞はケーヒンとして初めてとなる。

2015年3月期の見通し

(単位:百万円)
  2015年3月期
(予想)
2014年3月期
(実績)
増減
(%)
売上高 325,000 -
営業利益 21,000 -
経常利益 20,500 -
当期純利益 13,500 -
* 同社が2015年3月期より国際会計基準 (IFRS) を任意適用することを決定したため、IFRSに基づき予想値を算出している。そのため、日本基準を適用していた2013年3月期の実績値およびそれに対する増減率は記載していない。

-日本基準での増減率は、売上高で前年比4.3%増、営業利益同5.3%増、経常利益同0.3%増、当期純利益同12.7%減を予想。

>>>次年度業績予想 (売上、営業利益等)

第12次中期経営計画 (2015年3月期 - 2017年3月期)

2017年3月期の売上台数目標
-二輪車・汎用製品では、2014年3月期比25%増。
-四輪車製品では、2014年3月期比20%増

2017年3月期の生産目標
-二輪車製品では、キャブレターおよびインジェクターの世界シェア47% (2014年3月期) を、50%に拡大。
-四輪車製品では、直噴エンジン対応インジェクターの生産本数を、2014年3月期の32倍の640万本にアップ
-四輪車製品では、ハイブリッド車用パワーコントロールユニットの生産台数を、2014年3月期の6.5倍の13万台にアップ

開発動向

研究開発費

(単位:百万円)
  2014年3月期 2013年3月期 2012年3月期
全社 18,250 18,676 16,547
売上に占める割合 (%) 5.2 6.3 6.4
-2015年3月期の研究開発費は、19,200百万円を予定。

研究開発拠点

栃木開発センター
(栃木県塩谷郡高根沢町)
-システム開発を合言葉に、ソフトウェアの開発・検査から実車レベルでの研究・解析をトータルに実施。
-システム開発の主要拠点。システム化、集積化による領域拡大と電子制御ユニット (ECU) を主体とした先端技術を開発。
角田開発センター
(宮城県角田市)
-システムを支えるコア製品の開発を担い、同時に生産技術と連動し、品質向上を基盤とする性能、機能、耐久、経済性を追求。
-各種データ解析を行う解析棟、振動実験、耐温測定などを行う耐久棟、システム構成部品として二・四輪の実車レベルでの評価が行えるシャシー棟で構成。

-2014年3月期の技術センター設立
センター名 機能
テクニカルセンター タイ / 中国 -グローバル調達の推進による高品質で廉価な製品の開発。
サポートセンター インド / 中国 -顧客の開発サポートの充実を図る。

研究開発活動

四輪事業
-環境先進対応エンジンの燃料供給系および吸気系製品の開発 (商品化)
-ガソリン直噴インジェクターの開発 (商品化)
-トランスミッション油圧制御系製品の開発 (商品化)
-代替燃料供給系製品とシステムの開発 (商品化)
-高性能、小型カーエアコンシステムの開発 (商品化)
-エンジンおよびトランスミッション電子制御ユニットの開発 (商品化)
-ハイブリッド車用モーター/バッテリー制御ユニットの開発 (商品化)
-リチウムイオンバッテリー用セル電圧センサーユニットの新開発 (商品化)

製品開発

蓄冷エバポレーター
-2014年1月、夏場などに自動車が信号などでアイドリングストップした際のエンジンが停止した状態でも車室内の温度上昇を抑える「蓄冷エバポレーター」を搭載した空調ユニットを開発したと発表。製品のバリエーションシリーズを日本で量産し、ホンダへの納入を開始した。今後、タイ、中国、マレーシアでも量産する予定。今回開発した新型空調ユニットは、同社と子会社であるケーヒン・サーマル・テクノロジーが開発初期段階から共同で開発・製品化したもの。蓄冷エバポレーターは、エアコン作動時に蓄冷材の入った蓄冷タンクを冷却、アイドリングストップでエンジンが停止し、エアコンが停止した状態でも冷風を車室内に送ることができるため、車内の温度上昇を抑えることが可能となる。

直噴ガソリン用インジェクター
-2013年10月、直噴ガソリン用インジェクターの新製品を開発し、8月から生産を始めたと発表。ホンダの新型 「Fit」 の1.5リットル直噴ガソリンエンジン搭載車に採用された。宮城県角田市の宮城第一製作所で生産する。燃料圧力損失の少ないシート構造と噴孔配置の適正化により、世界トップクラスの微粒化と優れた噴霧性能を実現した。コアとニードルを別体にしたバルブ構造と高効率磁気回路の採用により、世界トップクラスの応答性と高圧噴射を実現。開弁時間を0.6ミリ秒と同社従来製品に比べ13%短縮したほか、燃料噴射圧力は35メガパスカル以上とし、従来品に比べ80%以上高めた。噴孔へのカーボンの付着を防ぐ構造とし耐久性も高めた。

設備投資

設備投資額

(単位:百万円)
  2014年3月期 2013年3月期 2012年3月期
全社 21,179 24,365 13,013
-投資対象別:生産投資 13,754百万円、研究開発投資 362百万円、その他投資 (無形固定資産含む) 7,062百万円
-生産投資地域別:日本 2,727百万円、米州 4,963百万円、アジア 4,294百万円、中国 1,768百万円

海外投資

<北米>
-2014年2月、直噴エンジン用インジェクター (燃料噴射装置) を北米で生産すると発表。4千万ドル (約40億円) を投資し、米国とメキシコの工場にラインを新設、2015年から生産を始める。燃費性能への要求や環境ニーズに高まりを受け、直噴エンジンの搭載車が北米でも増加する見通しであるため、現地で供給体制を整える。北米での生産開始により、直噴インジェクターの生産能力は16年中に日本と北米を合わせ年間約650万本に拡大する。

<インド>
-2013年11月、ガスインジェクターの世界市場シェアを、2020年に13年の10%から30%に引き上げる、と発表。天然ガス車などガス燃料車の世界市場は、燃料の多様化や環境対応の推進により、グローバルに拡大していく見通し。同社はこれまで、日本を中心にガスインジェクターを生産してきたが、主要な納入先があるインドに年間生産能力が100万本のラインを設置し、13年8月から本格的な生産を開始した。インドでの生産により、製品のコスト競争力を高めて販売先を拡大。将来的には生産能力を現状の2倍の年間200万本にまで高めることで、20年の世界シェア目標を達成する。同社はガスインジェクターをホンダのほか、スズキのインド子会社であるマルチスズキ、ダイムラーに納めている。GMからの受注も決まり、納入先が拡大していく見通しだ。ECUも自社開発してシステム製品として提案し、顧客拡大のための戦略商品と位置付けていく。

設備の新設計画

(2014年3月31日現在)
セグメントの名称 投資予定額金額 (百万円)
日本 7,187
米州 7,713
アジア 3,062
中国 2,378
欧州 1
合計 20,344