Plastic Omnium S.A. 2016年12月期の動向

業績

(単位:百万ユーロ)
2016年
12月期
2015年
12月期
増減率 (%) 要因
全社
売上高 5,857.3 5,009.9 16.9 1)
純利益 318.3 262.8 21.1 -
自動車部品部門
売上高 5,488.3 4,624.1 18.7 2)

要因
1) 全社
-2016年12月期の全社連結売上高は、前年比16.9%増加の5,857.3百万ユーロ。売上増は為替の好影響により125百万ユーロ増、又Faurecia外装部門の買収により413百万ユーロが寄与した。すべての地域で売上が伸張。

2) 自動車部門
-2016年12月期の自動車部品部門の連結売上高は、前年比18.7%増加の5,488.3百万ユーロ。売上増はメキシコ、英国、中国での生産能力の増加によるもの。特に欧州でSCRシステム、北米ではSUV販売の好調による影響が大きい。アジアでは過去数年にわたる設備投資の効果があらわれた。

同社は3つの合弁事業を保有している。

  • HBPO:HellaMahle-Behrと同等比率で出資している合弁会社。フロントエンドモジュールの主要メーカーで、21の組立工場を所有している。2016年12月期の売上高は670百万ユーロ。
  • Yanfeng Plastic Omnium Automotive Exterior Systems (YFPO):同社が49.95%出資している合弁会社で、中国トップの自動車外装部品メーカー。中国に17の工場があり、約3,400名が開発センターに勤務。2016年12月期の売上高は372百万ユーロ。
  • BPO:同社が50%を保有するトルコの合弁会社。車体外装部品を生産。2016年12月期の売上高は36百万ユーロ。

Faurecia外装部門の買収

-同社は、Faureciaの自動車外装部門の買収に関して、売買契約を締結したと発表した。従業員代表との協議は完了している。今後、欧州委員会や関連する競争当局への届出を行う。Faureciaの外装部門は、主にバンパーやフロントエンドモジュールを扱っており、ドイツ、フランス、スペイン、スロバキア、北米および南米に22の生産拠点を保有。Plastic Omniumがバンパーを生産していないドイツでの売上高は約20億ユーロで、全体の半分を占めているという。事業価値は665百万ユーロとして取引が行われる。買収手続きは2016年下期に完了する見込み。(2016年4月19日付プレスリリースより)

-欧州委員会は、同社によるFaureciaの自動車外装部門の買収を承認した。同社がフランスにおける全てのバンパー事業と、スペインの1拠点、ドイツのフロントエンドモジュール事業を売却することが条件となる。2016年7月29日付で全ての売却手続きが完了する予定。(2016年7月11日付プレスリリースより)

-同社は、Faureciaの自動車外装部門買収に関する欧州委員会の決定に基づき、合計200百万ユーロに相当する7拠点(フランス4、スペイン1、ドイツ2)買収の正式オファーをFlex-N-Gateより受諾した。この取引は、関係各国の従業員代表との交渉を経て、欧州委員会および関連する競争当局による承認を得たのち、2017年中に完了する見通し。(2016年12月23日付プレスリリースより)

事業売却

-ドイツに本拠を置くMutaresグループから、大型トラック部門の買収オファーを受けたことを発表。同部門は大型トラックの車体と構造部品の設計・製造を行っており、フランスの5拠点、中国の2拠点、ドイツとメキシコのそれぞれ1拠点を保有。グループ全体の売上高の約2%(190百万ユーロ、2015年)を占める。同社は今後はライトビークルの車体ならびにその構造部品、モジュールに軸足を置くことになる。今回の取引は2017年に終了する見通し。(2016年11月18日付プレスリリースより)

受注

-同社は2016年に主に下記のプロジェクトを受注。

  • 中国NextEVより電気自動車用バンパー、フェンダー、テールゲート
  • Lucid Motorsより電気自動車用バンパー、テールゲート、ボデーパネル
  • 4自動車メーカーより8つのプラグインハイブリッド車用燃料システム
  • Mercedes-BenzよりMercedes Sクラス用バンパー
  • AudiよりAudi A6用バンパー
  • Porscheより可動性スポイラー     

-2016年12月期で、160のプログラム立上げがあった。 

新規プログラム数

地域 2016年12月期 2015年12月期
欧州 57 52
北米・南米 28 17
アジア 75 63
合計 160 132

受賞

-同社は、トヨタより「Global Contribution Award」を受賞したと発表した。さらに、「Superior Value Improvement Award」も受賞した。同社がトヨタから受賞するのは、2015年に「Superior Quality Performance Award」を受賞して以来2年連続となる。(2016年2月29日付プレスリリースより)

見通し

-2016年~2020年の成長・革新戦略によると、連結売上高は2015年の50億ユーロから2020年には80億ユーロの増加を見込んでいる。

  • 確定している受注ベースで、バンパー市場のシェアは2016年の15%から2020年には19%に拡大、燃料システム市場のシェアは2016年の21%から2020年には25%に拡大するとしている。
  • 製品開発では樹脂、合成材料および炭素繊維車体部品、PHV用燃料タンク、SCRエミッションコントロールシステムを用いた軽量化ソリューションを開発しており、これら製品の売上が2016年の7億ユーロから2020年には14億ユーロに増加することを予測している。
  • 投資面では将来の需要にそなえ、2016年~2020年に25億ユーロの投資を行う。毎年収益の6%を研究開発に割り当て、車体外装部品設計に注力するとともに推進エネルギーシステムの統合メーカーを目指す。Faurecia Auto Exteriorの買収によって工場の物流改善、北米市場での事業拡大、非戦略事業の処分を図り、自動車産業における技術的変化への対応を優位に進めていく。(2016年12月13日付プレスリリースより)

研究開発費

(単位:百万ユーロ)
2016年12月期 2015年12月期 2014年12月期
合計 339.1 295.4 256.8

研究開発体制

-2016年12月末時点、世界の23カ所のR&Dセンターで2,000名超の技術者が研究開発に従事。

研究開発拠点

-同社は、新エネルギーに注力する先進研究センター、Δ-Deltatechの建設を開始した。投資額は50百万ユーロで、200名のエンジニアを雇い、2019年に開所する予定。(2016年9月29日付プレスリリースより)

-世界の23カ所のR&Dセンターは下記。

  • ヨーロッパ/アフリカ:12
  • アジア:7
  • 北米:2
  • 南米:2

技術提携

-2016年イスラエルのElbit Systemsと、燃料電池とスーパーキャパシターの共同開発で研究センターPOCellTechを立ち上げることで合意した。総投資額は16百万ユーロで、同社は20%を保有する。

-燃料電池の研究開発のためFrench Alternative EnergiesやAtomic Energy Commission(CEA), 米国のマサチュウセッツ工科大学(MIT), Israel Institute of Technology(Technion)や the Technical University of Denmark(DTU)などの様々な研究所・大学と共同研究している。

研究開発活動

-自動車部品部門ではCO2およびNOxの排出削減や、より軽量で、空力性能の高い製品の開発に注力。

製品開発

プラグインハイブリッド車用樹脂製燃料タンク 
新しいINWIN技術を用いたこのタンクは、従来のPHEVで主に使用されている金属製のものに比べて40%の軽量化を実現。また、長時間の電気走行で発生する燃料蒸気による圧力に耐えることができる設計となっている。この製品の開発にあたっては、163の特許技術が用いられた。同社は2016年12月より、韓国で現代自動車のPHEV向けに納入を開始する予定。この他に2018年までに、アジアと欧州の自動車メーカー3社の7モデル向けに納入する計画。(2016年6月13日付プレスリリースより)

ライトエアバンパーコンセプト
-空気抵抗と二酸化炭素排出の低減、設計自由度の向上、電気とメカトロの統合システムを考慮した設計。下段スポイラーとエアグリルを調整するアクティブ空力システムと、パッシブサイドグリルが組み込まれている。また、バンパーの張り出しや重量を10%軽減させる新しいフロントエンドアーキテクチャーや、低密度の材料を採用している。

複合テ-ルゲートテクノロジー
-2種類の複合テールゲートを開発中。ハイプレミアムは優れた機械的性能を引き出すす再生カーボンファイバーで強化された合成フレームで形成されている。その低密度は従来のメタルテールゲートに比べ6キログラムの重量軽減をもたらしている。ハイゲートアクセスはAセグメント及びBセグメント向けの仕様。

DINOxコンパクトSCRシステム
-電子制御ユニットと単一モジュールにつながる全てのセンサーを組み込んだDINOxコンパクトSCRシステムを開発している。費用対効果を最大限にする単一のシステム(アドブル(AdBlue)噴射、加熱、センシング機能)を最適化する。DINOxコンパクトはブロー成形およびインジェクション成形どちらで作られた燃料タンクでも互換性ある。

プロトタイプハイドロジンストーレッジシステム
-2016年パリ自動車ショーで3分間で燃料補給可能な大型車両の高圧水素貯蔵の試作品を展示した。

     

特許

-2016年に141件の特許を取得、合計約3,900件以上の特許を取得している。

設備投資額

(単位:百万ユーロ)
2016年12月期 2015年12月期 2014年12月期
自動車部門 203.5 242.6 191.3
環境部門 13.5 14.0 13.2
その他 3.7 12.7 49.3
合計 220.7 269.3 253.7


<メキシコ>
-北米における生産基盤の拡大、顧客の多様化への対応、新製品開発のため、650百万ドルを投資する計画を発表。
メキシコでは2工場を建設中。Leon工場ではGMやDaimler向けの燃料システムを2017年半ばに開始、一方San Luis Potosi工場は2017年半ばにGMに外装部品、又Daimler向けに部品を供給する予定。これらの工場稼働で、マーケットシェアの拡大を図る。(同社は2019年までにバンパーのシェア10%、燃料システムのシェア37%という達成目標を掲げている)(2016年1月プレスリリース)

<英国>
-2016年6月、英国Warringtonに2015年前半に着工した自動外装工場の建設が完了した。この工場はJaguar Land Rover向けの外装車体部品を生産している。同社は2016年12月31日現在、この工場に合計80.8百万ユーロを投資した。

-新工場の建設予定:

場所 量産開始時期 生産品目 納入先
メキシコ San Luis Potosi 2017 バンパー GM, Mercedes-Benz
中国 Chongqing  2017 燃料システム Hyundai
インド Hansalpur 2017 燃料システム Maruti Suzuki
北米 Tennessee, Smyrna 2018 燃料システム 日本OEM
北米 South Carolina, Greer 2018 バンパー BMW