インドネシアでは、2010年の新車販売台数が、過去最高だった2008年の60.8万台を上回る74.2万台となった。市場拡大に対応し、トヨタ、ダイハツ、日産、スズキ、日野、いすゞ、VW等の完成車メーカーが生産能力増強を計画。日系部品メーカーも、国内市場向けの生産拠点およびASEAN市場やインドへの輸出拠点として、インドネシアでの動きを加速させている。
新拠点構築では、小糸製作所が前照灯、ジェイテクトが電動パワーステアリング、タカタがシートベルト、東海理化がスイッチ類やキーセット、ユニプレスが車体骨格部品の工場を新設する。
生産能力拡充では、曙ブレーキ工業がディスクブレーキや摩擦材、大豊工業がエンジン用軸受、中央発條がコイルばねとスタビライザ、ブリヂストンがラジアルタイヤ、リケンがブレーキドラム等鋳造部品の生産増強を図る。
インドネシア:日系自動車部品メーカーの生産拠点の構築・増強
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(2011年 6月中旬までの約 1年間の動向。配列は企業名 50音順) |
愛三工業:トヨタがインドに投入した Etios 向け燃料ポンプモジュール部品を増産
愛三工業は、2010年末までに、West Java州の PT. Aisan Nasmoco Industri に 1億 5,000万円を投じて加工設備を増設し、四輪車向け燃料ポンプモジュール部品の生産能力を増強した。同部品は、インド・Kanchipuram市の愛三工業の工場で組み立て、トヨタがインドに投入した新型小型車 Etios 向けに納品する。 |
曙ブレーキ工業:メッキ加工や四輪車部品の新工場建設、既存工場も設備増設
曙ブレーキ工業は、Jakarta市でディスクブレーキや摩擦材を生産している PT. Akebono Brake Astra Indonesia の隣接地約 1万 2,000㎡ を、2010年10月に購入。外注していたメッキ加工や四輪車部品の新工場を建設し、2013年に稼働する計画。投資額は約 3億円。 |
既存工場にも約 10億円を投資して、生産ラインのレイアウト変更や設備の増設を実施する。ダイハツ等の四輪車、いすゞ等の商用車、ヤマハ発動機等の二輪車メーカーが計画している、生産拡大に対応する。曙ブレーキは、インドネシアでの売上高を、2009年度の108億円から、2012年度には 20%増の 130億円に増やす見込み。 |
伊藤忠丸紅鉄鋼:車体の軽量化・高剛性化を両立する鋼材加工設備を導入
伊藤忠丸紅鉄鋼は、現地の事業会社 PT. United Steel Center Indonesia が Jakarta市近郊に持つ工場に、Tailor Welded Blanking (TWB) の加工設備を導入する。同設備は、板厚・材質の異なる鋼板を溶接した鋼材を、切断して成型する。必要部分のみを厚くして強度を確保できるため、車体の軽量化と高剛性化の両立が可能。2012年 1月に稼働予定で、月産能力は 5万枚。(同社によると) 同設備はインドネシアでは初。 |
梅田工業:既存工場を増築し、電装部品の生産能力を1.5倍に増強
梅田工業は、電装部品を生産する PT. Umeda Kogyo Indonesia (Jakarta市) を増築し、プレス加工機やマシニングセンターを約10台新規導入した。2011年 2月から従来機と合わせて 60台規模で本格稼働し、生産能力を約 1.5倍に増強した。総投資額は 5億円。インドネシア工場の売上高を、2010年度 15億円から、2011年度は20億円とする見込み。 |
小糸製作所:新会社を設立し、前照灯を年40万台分生産
小糸製作所は、2010年 6月に PT. Indonesia Koito (West Java州)(小糸製作所が 90% 出資) を設立し、2011年 4月に新工場を稼働させた。投資額は約 30億円。2012年には、四輪車用前照灯を40万台分、二輪車用前照灯/標識灯を各120万台分生産し、インドネシアでの受注拡大に対応する。ASEAN地域での生産拠点はタイに次ぐ 2番目。 |
三光合成:新工場でインパネやドア周り部品を増産
三光合成は、日系自動車メーカーへの供給力を高めるため、子会社の PT. Sanko Gosei Technologies Indonesia を通して West Java州に新工場を建設する。延べ床面積は4,000平方メートルで、2012年 2月の稼働を目指す。新工場では計器板 (インパネ) やドア周り等を生産する。投資額は、タイでの新製造棟建設と合わせ、約 23億円。 |
サンライズ工業:エアコン用ホース口金具の生産工場を建設
サンライズ工業は、タイとインドネシアにエアコン用ホース口金具の生産工場を新設し、日系自動車メーカーへの供給能力を増強する。投資額は合計 25億円で、マレーシア子会社の Sunchirin Industries (Malaysia)(87年設立のニチリンとの合弁会社) が建設する。インドネシアでは、West Java州の 5万㎡ の用地に建設し、2012年夏に完成予定。工場の建屋面積は 9,000㎡。年間売上高 30億円を目指す。 |
GSユアサ:関連会社を持分法適用会社とし、鉛蓄電池の輸出戦略拠点へ
GSユアサは、2010年10月、インドネシアで鉛蓄電池の製造販売を手掛ける関連会社 PT. Trimitra Baterai Prakasa (TBP) の出資比率を 25% から 50% に引き上げ、持分法適用会社とした。TBP社の増資約 4.3億円を引き受け、出資比率を高めた。同社を輸出戦略拠点と位置づけ、インドネシアだけでなく、欧州、ベトナム、マレーシア、豪州等への販売を強化する。2013年度の販売目標は 610万個 (2010年度は 420万個)。 |
ジェイテクト:新生産拠点で年35万台の電動パワーステアリングを生産
ジェイテクトの子会社 PT. JTEKT INDONESIA は、West Java州に四輪車用電動パワーステアリング (年産 35万台) と二輪車用スタータクラッチ (同 460万個) を生産する新工場を建設する。敷地面積は10万㎡。2011年10月より、生産開始する予定。同社は軸受とスタータクラッチを販売しているが、生産拠点を持つのは初めて。投資額は約 30億円。2013年の売上高は約 60億円の見込み。今後、軸受の生産も検討する。 |
大豊工業:2015年度までにエンジン用軸受の月産能力を 2.5倍の 250万個へ
大豊工業は、2015年度までに、日米欧、中国、インドネシアの各拠点に合計約 40億円を投じ、エンジン用軸受の月産能力を約 4割増の 4,000万個とする計画。インドネシアでは、トヨタ車の販売が好調であることを受け、West Java州の子会社の PT. Taiho Nusantara の月産能力を 2.5倍の 250万個に引き上げる。 |
タカタ:2012年初から新会社でシートベルト、エアバッグ等を生産
タカタは、2010年10月、Jakarta市に PT. Takata Automotive Safety Systems Indonesia を設立。工場を新設して、2012年 1月からシートベルト、エアバッグ、ステアリングホイ-ルを生産し、トヨタ等のインドネシアで生産する自動車メーカー向けに供給する。敷地面積は約 6万㎡。インドネシアでは初の生産拠点。投資額は約 2,000万ドル。 |
タチエス:インドネシアでシート生産を検討
タチエスは、インドネシアへの生産進出を検討する (2011年2月報道)。同国は、完成車メーカーの工場が集積しているため、複数メーカー向けのシートを一つの工場で生産することを視野に入れ、完成車メーカーには部品の共通化も提案する。設備投資や固定費を抑え、効率重視の生産体制を目指す。進出形態等の詳細は未定。 |
中央発條:新工場を建設し、コイルばねとスタビライザを増産
中央発條は、インドネシアでの自動車生産台数増加に対応するため、子会社の PT. Chuhatsu Indonesia の新工場をWest Java州に建設する。2011年後半から、コイルばねとスタビライザを生産する計画。新工場の敷地面積は 3万㎡、建屋面積は 7,000㎡。投資額は約 9億円。 |
東海理化:新会社を設立して、スイッチ類やキーセットの生産開始
東海理化は、2011年 5月、West Java州に PT. Tokai Rika Indonesia を設立した (出資比率は東海理化 90%、豊田通商の現地法人 10%)。豊田通商の現地拠点に約 1,000㎡ を賃借し、同年10月からスイッチ類やキーセット等のセキュリティ製品を製造する。トヨタやダイハツのインドネシアにおける生産拡大に対応する。2012年に売上高約 9億円を見込む。東海理化にとって、インドネシアでは初、ASEAN地域では 5番目の拠点。 |
豊田自動織機:新会社でエアコン用コンプレッサーを年 160万台生産
豊田自動織機は、デンソー、豊田通商等と合弁で、カーエアコン用コンプレッサーを生産する PT. TD Automotive Compressor Indonesia (West Java州) を、2011年 1月に設立した(豊田自動織機が 50.1%出資)。デンソーが現地法人のコンプレッサー事業を分離した後、新会社が設備や従業員を引き継いで、2011年 6月より生産を継承する。初年度の年産能力は 100万台。2015年度までに約 20億円を投じて、同 160万台に増強し、ASEAN市場の拡大に対応する。トヨタ Etios 用コンプレッサーも生産し、インド向けに供給する計画。 |
豊田鉄工:プレス機を導入して、プレス部品の年産能力を 50-60%増の 40万台分へ
豊田鉄工は、West Java州の PT. Nusa Toyotetsu に約 8億円を投資し、加圧能力 1,600トンのトランスファープレス機を 1台増設する (1,200トンの既存機と合わせて 2台体制とする)。2011年秋には、プレス部品 (センターピラー、ロアアーム、ブレーキペダル等) の年産能力を、50-60%増の約 40万台分に拡充し、トヨタやダイハツの生産拡大に対応する。2013年度のインドネシアでの売上高見込みは 130億円 (2010年度の約 30%増)。 |
南部化成:2013年までに射出成形機を増設し、樹脂部品を増産
南部化成は、2011年 3月から2013年までに子会社の PT. Nanbu Plastics Indonesia (West Java州) で樹脂部品を増産し、日系メーカーからの受注増に対応する。2011年に第 1工場に型締め力 850トンの射出成形機 1台、同 650トンを 2台導入し、2013年までに第 2工場に中・小型の射出成形機を 40-60台導入する。インドネシアでの2013年売上高は 47億円の見込み (2010年比 4.7倍)。今後 3年間の投資額は、中国への増産投資と合わせて年間 5-10億円を計画。 |
ニチリン:2012年 6月から現地企業と合弁でホース類の生産を開始
ニチリンは、2011年 6月に現地企業 PT. Mitrametal Perkasa (ミトラ社) と合弁契約を締結した。ミトラ社はニチリンの子会社 PT. Nichirin Indonesia (West Java州) の増資を引受け、同年 9月以降は両社の合弁事業 (ニチリンが 51%) として運営する。同子会社は、2012年 6月からホース類等配管部品を生産する計画。 |
(注) ニチリンは、従来、インドネシアではミトラ社に技術援助してきたが、顧客ニーズに的確かつ迅速に対応するため、合弁生産を開始する。事業計画のスケジュール上、2011年 4月に、まず、全額出資で PT. Nichirin Indonesia を設立していた。
日本精工:車載モーター向け軸受の部材加工能力を増強
日本精工は、2011-2013年度の 3年間に、中国や東南アジア諸国等の新興国市場に最大 600億円 (08-10年度比 70%増) を投資し、現地生産・販売体制を整備する。インドネシアでは Jakarta市の PT. NSK Bearings Manufacturing Indonesia で、車載モーター等の需要拡大に応じ、軸受組み立て前の部材加工能力を高める。 |
日本ピストンリング:日本から設備を移管し、鋳鉄ピストンリングを月産 90万台から 120万台へ
日本ピストンリングは、East Java州の子会社 PT. NPR Manufacturing Indonesia で、鋳鉄ピストンリングの月産能力を 90万本から 120万本に拡大する (2010年 6月報道)。日本国内の生産子会社、日ピス岩手の一関工場の既存設備をインドネシアに移管。移管費用は数千万円で、投資を抑えながら増産体制を整備する。 |
ハイレックス:コントロールケーブルの月産能力を 3割増の 380万本へ
ハイレックス・コーポレーションは、コントロールケーブルの生産子会社 PT. HI-LEX Indonesia に約 2億 4,000万円を投資して、West Java州に第 2工場を新設し、2011年 6月に稼働開始した。新工場には第1工場から二輪用ケーブルの後工程を移管。第1工場では、二輪用前工程と四輪用ケーブルを手掛ける。2010年 8月時点の月産能力は、二輪用 195万本、四輪用 95万本だが、2013年には両工場で二輪用 255万本、四輪用 125万本とする計画。インドネシアおよび ASEAN諸国で生産拡大する日系自動車メーカーに供給する。 |
日立粉末冶金:新会社で2012年から粉末冶金製品を生産
日立粉末冶金は、2010年11月に全額出資で West Java州に PT. Hitachi Powdered Metals Indonesia を設立した。新工場を建設し、2012年 4月からバルブガイド、スプロケット等のエンジン部品、軸受、補機部品等の粉末冶金製品を生産する。従来、インドネシア市場には、タイとシンガポールの拠点から供給していた。2015年度には、インドネシアでの四輪・二輪車用粉末冶金製品のシェア 40%以上を目指す。 |
ブリヂストン:ラジアルタイヤの日産能力を1割増の2万9,400本へ
ブリヂストンは、子会社の PT. Bridgestone Tyre Indonesia に約 43億円投資し、West Java州の工場の生産能力を 、2012年 6月までに約 1割増強する。同工場は、2010年末までに乗用車用・小型トラック用ラジアルタイヤの日産能力を約 8,400本増強し、2万 6,400本に引き上げた。今回、さらに 3,000本を上積みし、2万 9,400本とする。同工場は、インドネシアのほか、北米や欧州にも供給しており、世界的な需要増に対応する。 |
プレス工業:2012年から初の生産拠点で建機キャビンを生産、将来は自動車部品も製造
プレス工業は、2011年10月、伊藤忠丸紅鉄工と合弁で、West Java州に PT. PK Manufacturing Indonesia を設立する (プレス工業が 65% 出資)。2012年 9月から、まず建設機械用キャビンを年 3万台分生産し、インドネシアおよび周辺地域での需要増に対応する。将来は商用車用部品も生産する考え。総投資額は約 16億円。プレス工業がインドネシアに拠点を持つのは初めて。 |
古河電工:アルミ合金のワイヤーハーネスをインドネシアとベトナムで量産
古河電工は、2011年度中にもアルミ合金のワイヤーハーネスをアジアの拠点で量産する。インドネシアにある古河電工、豊田通商、現地企業の合弁会社 Tembaga Mulia Semanan でアルミ合金から中間材を作り、ベトナムの拠点で電線に加工する。月産能力は 6トン。主に日本で販売する。アルミ製のワイヤーハーネスは銅製より約 4割軽く、車体軽量化を急ぐ自動車メーカーからの需要が見込まれる。 |
三ツ星ベルト:2011年初めから伝動ベルトを 3割増産
三ツ星ベルトは、ASEAN地域における四輪・二輪車の生産拡大に対応し、2011年初頭からインドネシアとタイの計 3工場の能力を 3割程度増強した。総投資額は約 8億円。インドネシアでは、West Java州の PT. Seiwa Indonesia と Jakarta 近郊 Tangerang市の PT. Mitsuboshi Belting Indonesia に新設備を導入し、タイミングベルトや補器類用 Vベルト等を増産した。 |
安永:工場を増築し、コネクティングロッドの月産能力は 6万本増の 56万本
安永は、West Java州にある子会社 PT. Yasunaga Indonesia の工場を増築し、エンジン部品のコネクティングロッドの生産ラインを 1本追加した (合計 9本)。投資額は約 2億円。2011年 4月から追加ラインを稼働し、月産能力を 50万本から 56万本に拡大。能力増強により、売上高は月間 4億円分増加する見通し。取引先のトヨタ、三菱、ダイハツ、UDトラックス等の生産拡大に対応する。 |
ユニバンス:マニュアルトランスミッション部品の生産工場で、2棟増設
ユニバンスは、West Java州でマニュアルトランスミッション部品等を生産する PT. Univance Indonesia の工場を、2010年末までに拡張した。工場棟を 2棟増設し、建物面積をほぼ 2倍の 8,400㎡とした。需要拡大が見込まれるASEAN地域での拡販と、新興国への生産シフトによるコスト競争力向上を図る。 |
ユニプレス:新会社で日産向けに車体骨格部品を年 5万台分生産
ユニプレスは、2011年 7月、West Java州に全額出資で PT. Unipres Indonesia を設立する。28億円を投じて新工場を建設し、2012年 6月から車体骨格部品を年 5万台規模 (車両ベース) で生産する。インドネシアで生産拡大する日産や他の自動車メーカーに供給する計画。2014年度のインドネシアでの売上高目標は 25億円。ユニプレスがインドネシアに生産拠点を置くのは初めて。 |
リケン:ブレーキドラム等の鋳造部品の月産能力を 7割増の 5,000トンへ
リケンは、合弁会社の PT. Pakarti Riken Indonesia (東ジャワ州) に約 37億円を投資して、生産能力を増強する。2013年までにブレーキドラム等の鋳造部品の月産能力を、約 7割増の5,000トン規模とする。インドネシアおよび周辺国で生産拡大する日系完成車メーカーに対応。特に低価格車向け部品の取引拡大を目指す。 |
資料:各社広報資料, 各紙報道