第1回クルマの軽量化技術展(EV展と同時開催)取材報告(1)

アルミニウム、マグネシウムなど、軽量素材に関する出展概要

2011/02/08

要 約

 自動車メーカー各社は、省燃費の有力な手段として、車両の軽量化に取り組んでいる。

 2011年1月19~21日に開催された第1回クルマの軽量化技術展(第2回EV・HEV駆動システム展と同時開催)には、アルミニウム、マグネシウムなど軽量素材の活用、樹脂特に発泡樹脂の活用、また軽量化または軽量素材の活用を可能にする新しい工法などが出展された。

 本レポートは、取材報告(1)として軽量素材を中心した出展内容の概要を報告する。樹脂の活用を中心とした軽量化技術の出展については、取材報告(2)として別途報告する。



アルミニウムと関連技術の出展

 埼玉プレス鍛造とアミヤは、それぞれアルミニウム部品とEVコンセプトボディーを出展した。テクノアソシエは、鉄とアルミの合金ALFeを出展した。

 森村商事は、米国Alcoa社の販売代理店として、アルミニウム素材を供給している(同時にマグネシウムやチタンも扱っている)。

 テクノアソシエとコロナ工業横浜事業部は、アルミニウムなどの金属と樹脂を、接着剤などを用いずに一体成形する技術として、テクノアソシエは「NMT」、コロナ工業は「アルプラス」を紹介した。

アミヤの、アルミニウム製オリジナルEVコンセプトボディー(実車の1/2のサイズ)
アミヤの、アルミニウム製オリジナルEVコンセプトボディー(実車の1/2のサイズ)

 

金属と樹脂の一体成形技術「NMT」を使用して試作したECUボックス(テクノアソシエの出展)
金属と樹脂の一体成形技術「NMT」を使用して試作したECUボックス(テクノアソシエの出展)

アルミニウムと関連技術

メーカー 製品/技術 概要
埼玉
プレス鍛造
アルミ熱間
鍛造部品
 埼玉プレス鍛造は、アルミ精密熱間鍛造メーカー。自動車用ではアルミニウム製サスペンション(日産GT-R、トヨタLexus LFA/LS460)など、ヤマハのレース用二輪車部品、その他航空機用部品などを出展した。
アミヤ アルミ叩き
成型加工
 鉄、アルミ、ステンレスなどの、試作から小ロットの量産までに対応した、熟練した匠による「ものづくり」を提案。最も熟練技術が必要な匠の「叩き成型加工」技術でアルミニウム製EVを試作し、その映像と 1/2のサイズのコンセプトボディーを出展した。
 同社は、自動車用各種アルミニウム部品の試作を請負い、また日産車やダイハツ車の中小ロット部品などを生産している。
森村商事 アルミニウム素材  森村商事は、米国のAlcoa社の販売代理店として、航空・宇宙機器用素材を中心にアルミニウム素材を供給している。
 同社は自動車関連では、ジヤトコ、NSK、Valeo、TRW、東京濾器、などの日本工場にアルミニウム素材を納入しているとのこと。
 また、中国でのアルミニウム取引先である、Guangdong Wencan Die Casting Co., Ltd(広東省仏山市)と、Hong Bang (Nan Tong) Die Casting Co., Ltd.(江蘇省南通市)をパネルで紹介し、製品を展示した。
鉄とアルミの合金「アルフェ」
テクノアソシエ アルフェ"ALFe"  鉄とアルミニウム(7.5~8.5%)の新しい合金アルフェ"ALFe"を出展した。結合が難しいFeとAlを、レアメタルを使わずに結合させる特許を持つ。鉄と比べ約10%軽く、鍛造・圧造・プレスが可能。鉄と同じ剛性を持ち、振動を吸収する。900℃までの耐熱性があり、硫黄を含む雰囲気でも酸化に強いことから、車の排出ガスに触れる部品にも向くとされる。
金属と樹脂の一体化成形技術
テクノアソシエ NMT
(Nano Molding
Technology)
 大成プラス(株)が開発した、金属にプラスチックを分子サイズで結合させる技術。NMTは、Nano Molding Technologyの略。ソニーのデータ・プロジェクタに採用された実績があり、軽量化が進む自動車やデジタル家電への展開を計画している。
 金属の表面にT(大成の頭文字)処理を行うことにより、20~50nmの凹部が金属表面の全面を覆う。この凹部に射出成形した樹脂がはまり込み固化し、くさびのような働きをして接着性を増す効果(アンカー効果と呼ぶ)で強固な接合が可能になる。ハンマーで叩いても接合部分が剥離しない結合の強さを実演していた。
 接合が可能なのは、T処理をした金属(アルミニウム、マグネシウム、チタニウム、ステンレス、銅、鉄)と、熱可塑性樹脂 PPS(ポリフェニレンサルファイド)、PBT(ポリブチレンテレフタレート)、PA・PA66(ナイロン)、PPA(ポリフタルアミド)の組み合わせ。
コロナ工業
横浜事業部
アルプラス
"ALPLAS"
 コロナ工業(株)横浜事業部は、アルミと樹脂を、強固に接合させるアルミ表面処理技術を開発した。接着剤、ツメ、ネジやかしめ(留め金)を用いず軽量化が図られる。伊藤忠プラスチックスとの共同出展。
 コロナ工業独自の表面処理"アルプラス"を行い、アルミ表面に約40~100nmの多数のポーラス(pores、微細な孔)を形成する。溶けた樹脂をポーラスに射出すると、樹脂はポーラス内部に食い込み、アンカー効果によりアルミと樹脂を強固に接合する。
アルミニウム合金ねじ
丸ヱム製作所 アルミニウム
合金ねじ
 丸ヱム製作所は、ステンレス製ねじ製品、ナット、割りピンなどのメーカー。アルミニウム構造物にはアルミニウム合金ねじが最適との考え方から、同社の鍛造プロセスと熱処理プロセスにより、軽量(鉄の1/3)で、鉄に劣らない強度と耐力を有し、熱・電気の伝導率が高いアルミニウム合金ねじを開発した。

 



マグネシウムと関連技術

 マグネシウムは、軽い(比重が1.8、アルミニウムは2.7、鉄は7.9)、比強度(重量あたりの強度)が大きい、加工性がよい、振動吸収性がよいなどの優れた特性がある。アルミニウムにも共通するが、プラスチックに比べリサイクルしやすいという利点がある。耐熱性や腐食性に問題があるとされていたが、それらの問題を改善する合金が開発され、欧米ではエンジンのバルブカバーやReflector housingなど自動車部品への採用が進んでいる。マグネシウム原材料は、中国がほぼ独占的に供給している。

 NNH、フジ精工、三輝ブラストは、各種のマグネシウム製品を紹介した(日本の自動車メーカーの採用は、現時点ではまだ限定的)。

 森村商事は、ドイツのMagontec社および英国のMagnesium Elektron社の日本総代理店で、自動車業界をメインのターゲットに、マグネシウム素材と加工販売を拡大する計画。提携する両社が、欧州自動車メーカーに納入している製品を展示した。

マグネシウム製の、ステアリングに配置するエアバッグケース
マグネシウム製の、ステアリングに配置するエアバッグケース
(NNHが出展、ホンダ車と日産車に納入実績がある)

 

マグネシウム製の、Mercedes-Benz Smart fortwo用ステアリングメンバー
マグネシウム製の、Daimler社 Smart fortwo用ステアリングメンバー
(全体はインストルメントパネルに収まり、左側の突起部分が
ステアリングを支える。重量は2.35kg、フジ精工が出展)

 

マグネシウム製の、二輪車用外装カバー部品(三輝ブラストの出展)
マグネシウム製の、二輪車用外装カバー部品(三輝ブラストの出展)

 

ドイツMagontec社製の、Porsche Panamera用V8エンジンのマグネシウム製バルブカバー・タイミングチェーンケース・オイルハウジング
ドイツMagontec社製の、Porsche Panamera用V8エンジンのマグネシウム製
バルブカバー・タイミングチェーンケース・オイルハウジング
(森村商事の出展、なおシリンダーブロックとシリンダーヘッドはアルミニウム製)

 

ドイツMagontec社製の、BMW 5 Series/7 Series、Mercedes-Benz SLKなどが搭載するReflector Housing
ドイツMagontec社製の、BMW 5 Series/7 Series、Mercedes-Benz SLKなどが
搭載するReflector Housing(森村商事の出展)

マグネシウムと関連技術

メーカー 製品/技術 概要
(株)NNH
(有)英信工業
マグネシウム合金  NNHは、マグネシウムダイカストの材料開発、金型設計・製作、試作鋳造、量産鋳造などを行っている。マグネシウムは、比重がアルミニウムの2/3で、重量あたりの強度が大きいというメリットがある。耐熱性、腐食性に課題があるとされていたが、問題を解決する合金が開発され、欧米では自動車にも採用が進んでいる。
 日本自動車メーカー向け部品では、日産車とホンダ車のステアリングに組み込むエアバッグケースに使用された実績がある。またドアフレームの試作品を製作しテスト中。
 (有)英信工業はアルミ材を中心とする鋳造品の二次加工メーカー。平成12年にマグネシウムダイカスト加工を開始した。
フジ精工
(フジ総業)
マグネシウム
合金製品
 フジ精工(販売会社はフジ総業)はマグネシウム合金の専門メーカー。車関連では、Daimler社のSmartのステアリングメンバー(取引先である中国山西省のダイカストメーカーの製品)を展示した。
 販売部門のフジ総業は、中国山西省に連絡事務所を持ち、中国のマグネシウム大手各社から購入している。韓国のPOSCO社からも原材料を仕入れているが、POSCOは韓国江原道に精錬工場を建設し、2011年中に精錬を開始すると発表している。市場価格が低下する可能性があるとのことであった。
三輝ブラスト マグネシウム
ダイカスト製品
 マグネシウム成形品精密加工メーカー。中国の深セン市に工場を持つ。自動車部品では、ハンドルキーロック部品、二輪車の外装カバー部品を出展した。
 ハンドルキーロック部品は、寸法が90mm×70mm×80mmで重量が186g(アルミで製作すると277g)。二輪車の外装カバー部品は、寸法が370mm×170mm×50mmで重量が660g。
森村商事 マグネシウム合金
(Magontec社)
 森村商事は、ドイツMagontec社の日本総代理店として、国内の自動車業界をメインターゲットに、マグネシウム素材を提供するとともに、加工販売を進める計画。Magontec社は、ドイツに1工場、中国に2工場を操業している。
 本展示会で、Magontec社が生産するDaimler、BMW、Porscheなどが搭載するマグネシウム製部品を展示した。
 また、表面の輝きを重視する、亜鉛を多く含む合金"HyMag 2"を開発し、自動車の各種レバーなど目立つ部分に使われている。鍍金ものりやすく、アルミニウム、亜鉛、または樹脂製部品の代替を目指す。
(Magnesium
Elektron社)
 森村商事は、英国の特殊マグネシウム合金メーカーのMagnesium Elektron社の日本総代理店として、日本国内の独占販売権も有している。
 Magnesium Elektron社によると、欧州車では、Daimler、BMW、Ford、VWなどの自動車メーカーが、トランスミッションケース、インストルメントパネル、エンジンのバルブカバーなどにマグネシウム合金を採用している。またGMのフルサイズバンSavanaとExpressは、それぞれマグネシウム合金を26kg使用している。
マグネシウム関連技術
丸ヱム製作所 マグネシウム
合金ねじ
 丸ヱム製作所は、マグネシウム構造物にはマグネシウム合金が最適との考え方から、マグネシウム合金"AZ31"製の連続鍛造化に成功し発売した。さらにこの合金ねじの加工技術の高度化を目指して応用開発した、強度と耐熱特性に優れる"AZX912"製ねじの試作に成功した。
木ノ本伸線 マグネシウム合金
溶接用ワイヤー
 木ノ本伸線は、軽量かつ燃えにくいマグネシウム合金用溶接材料をワイヤーと棒材のかたちで開発し、今回ワイヤーを出展した(マグネシウム合金の切屑は、引火すると高温で燃える危険性がある)。
 酸化しやすいマグネシウムワイヤーに独自の表面処理を施すことで、大気中でも長期間にわたって管理することが可能になった。市場の動向を確認しながら、このワイヤーを量産する計画。(丸ヱム製作所と共同出展)

 



チタニウム、シリコン合金、CFRPなど、その他の軽量素材

 森村商事は、軽さや耐熱性に優れるチタニウム事業についても紹介した(チタニウムはレアアースの一種)。

 (株)イスマンジェイは、アルミニウム並みの軽さで耐磨耗に優れるシリコン合金を出展した。

 小高精密は、炭素繊維複合樹脂(CFRP)を使用した製品例を出展した。炭素繊維複合樹脂の車分野での採用は、現在レースカーやトヨタLexus LFAなど限定されているが、今後車体まわりなどに拡大すると見込んでいる。

BMWのExhaust ValveなどAKRAPOVIC社製チタニウム合金製品
BMWのExhaust ValveなどAKRAPOVIC社製チタニウム合金製品
(AKRAPOVICは2009年に、チタニウムのリサイクル工場を稼働させた )

その他の軽量素材

メーカー 製品/技術 概要
森村商事 チタニウム合金  チタニウム合金は、軽さ、耐久性、耐熱性などに優れる。森村商事は、米国TIMET社(Titanium Metals Corporation)、フランスのVALTIMET社と提携しチタニウム素材を供給している。
 スロベニアのAKRAPOVIC社とも提携した。AKRAPOVICは四輪車やスポーツカー用Exhaustシステムのメーカーで、2000年以来チタニウム合金の開発に取組み、Porsche、BMW、VW、Daimler、Renaultなどに納入している。2010年に米国カリフォルニア州に支社を開設した。
株式会社
イスマンジェイ
(住金物産)
シリコン合金  (株)イスマンジェイは、シリコンと窒素を主成分とし、制御型燃焼合成技術を用いてシリコン合金を500nm微粉末として合成した。それを水と混合しコンパウンド化、押し出し成形し焼結して完成する。アルミニウム並の軽さ、耐摩耗に優れ、非導電、非磁性体、転動部位への潤滑剤不要(焼きつかない)、など優れた特性を有する。
 主原料は、砂漠などに無尽蔵に存在する珪石と大気中の窒素で、資源の有効利用でもあり、鉄に代わる汎用性工業材料を目指すとしている。
 デンマークの風車向けの、大径(約50mm)ベアリングボールを開発・生産することが決定した。車向けにも用途開発を進める計画。住金物産がイスマンジェイに資本参加するとともに、独占販売契約を締結した。
小高精密
(菱光産業)
炭素繊維
複合樹脂
 小高精密は、炭素繊維複合樹脂(CFRP)を使用した、ロボットや内視鏡の部品など様々な製品を出展した。CFRPは、軽量(アルミの1/2、鉄の1/5)、引張強度が高張力鋼の2.5倍、超ジュラルミンの6倍などの特性がある。
 三菱Lancerの輸出用ディーゼル車に使用されているエアポンプのベーン(羽根)への納入実績がある。車用途のCFRPは、現在はレースカーやトヨタLexus LFAなどにほぼ限定されているが、今後ブレーキブースター(倍力装置)のベーンや車体まわりなどへの採用拡大を見込むとしている。
 販売を担当する菱光産業は、三菱マテリアルグループの中核商社。

 



新しい工法による軽量化

 深井製作所は、ハニカム配列エンボス成形し、剛性を高めた金属板を出展した。

 ヤマシナは、ドイツEJOT社と提携するタッピンねじ(めねじ加工のされていない下穴に、自らねじ立てをしながら締結するねじ)を出展した。しっかりした結合が維持され、小型化、軽量化に貢献するとしている。

 大同興業は、ねじ穴とブッシュを同時に形成する、The Wagner Companies製のFlowdrillシステムを紹介した。

深井製作所の、ハニカム配列エンボスを使用するディスクブレーキ泥除けの提案
深井製作所の、ハニカム配列エンボスを使用するディスクブレーキ泥除けの提案
(右上スチール製は1個0.53kg、2.12kg/台、左側スチールエンボスは1.56kg/台、右下アルミエンボスは0.72kg/台)

新しい工法による軽量化

メーカー 製品/技術 概要
深井製作所 ハニカム配列
エンボス構造
 深井製作所の、ハニカム(蜂の巣)配列エンボス(凹凸構造)による軽量化の提案。1辺が約8mm、高さ2mmの正六角形を配列する。既存の円形や波形エンボスに比べ、正六角形エンボス(国内初採用)は剛性が高いとしている。(注)エンボスは、板金や紙などに文字や絵柄を浮き彫りにする加工を指す。
 アルミ板の場合、通常板厚は3乗で剛性に影響する(板厚を70%にすると、剛性は0.7×0.7×0.7=34%に低下する)。しかし、深井製作所のエンボス形状を施すと、30%薄い材料でも、元の材料とほぼ同等の剛性を維持できるので、30%の軽量化が可能。

 スズキの新型Swift 4WD車の、樹脂燃料タンク用遮熱(耐火)板に採用された。Subaru Legacy/Exiga用樹脂燃料タンク遮熱板についても同様の提案を行っている(現行品も深井製作所が納入)。

ディスクブレーキの泥除けも提案している。

ヤマシナ タッピンねじ  ヤマシナは、ドイツの最先端ねじメーカーであるEJOT社の技術を導入し、熱可塑性樹脂用(商品名はDELTA PT)およびアルミニウムやマグネシウムなど軽合金用(ALtracs)のタッピンねじを生産・販売している。タッピンねじは、めねじ加工のされていない、且つ、ねじの直径よりも小さい下穴にねじ込むことで、相手部材に自らねじ立てをしながら締結するねじの総称。
 振動や温度変化に強く、長時間使用してもしっかりした締結が維持され、小型化、軽量化が図れる。また結合力が強いことから、車全体で使用するねじの数を大幅に削減することによる軽量化の可能性も大きいとのこと。穴あけ、タップ加工などの工程レスにより、コストも削減できる。
大同興業 Flowdrill  Flowdrillは、タングステンカーバイトの工具により、ねじ穴を開けるシステム。Flowdrillの温度は1200~1400度(Fahrenheit)に急上昇し、数秒で穴を開けると同時に、加工材料からブッシュ(開けた穴の上部を保護する部分)を形成するので、かしめナットやナットの溶接作業は不要になる。
 たいていの順応性のある材料、軟鋼・ステンレス・アルミ・銅・しんちゅう・特殊合金などでFlowdrillが可能。The Wagner Companiesの技術を導入した。
                     <自動車産業ポータル、マークラインズ>