【ものづくり】おおた工業フェア2020:東京都大田区の自動車部品開発支援
削り出しブレーキ、カセット金型ダイカスト、高精度材料試験片、リアランプめっき、アルミピストンすずめっき
2020/02/14
要約
第24回おおた工業フェア(会期:2020年2月6日(木)~2月7日(金)、会場:大田区産業プラザPio)は、大田区産業振興協会の主催で、今年はものづくり関連企業111 社が出展し、ものづくりネットワークを活かした展示商談会がおこなわれた。ものづくりのまち大田区は、高度な加工技術を有する中小企業が集積する。切削加工、樹脂成形、機械要素、表面処理、などの展示が行われた。自動車産業でも開発や試作で協業できる企業の展示を取材した。
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第24回おおた工業フェア 入場口風景 | 第24回おおた工業フェア 会場風景 |
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試作支援:削り出しブレーキ、廉価カセット金型ダイカスト、高精度材料試験片
自動車部品開発は1次試作、2次試作、量産試作、量産のステップを踏む。設計者の立場では1次試作でも量産にできるだけ近似した材質にしたいと願っている。そうすることで性能試験だけでなく、強度や摩耗を確認することもできる。一方、多額の費用がかかる試作はできるだけコストを抑えたい管理側からの要求もあるため、スピード試作とコストダウンを兼ね備えたメーカーが必要になっている。
(出展会社概要)
会社名 | 展示品 | 備考 |
---|---|---|
新妻精機㈱ (東京都大田区) |
試作削り出し・ 大型バイク用ディスクブレーキ |
マシニングセンター100台 NC旋盤32台 他 |
㈱志村精機製作所 (東京都大田区) |
試作削り出し・ アルミケース |
マシニングセンター42台、他 |
太陽パーツ㈱ (本社:大阪府堺市 東京営業所:大田区) |
アルミダイカスト部品 | 廉価カセット金型 |
㈱昭和製作所 (東京都大田区) |
高精度材料試験片 | 標準品:引張り試験用 ねじり試験用 特注品:試験品切り出し |
試作削り出し・大型バイク用ディスクブレーキ(新妻精機)
新妻精機は1965年創業の東京都大田区の試作メーカー。生産拠点はグループ会社を含めて、国内8拠点で、大田区に6拠点、山形県鶴岡市、長野県佐久市に展開する。1975年から事業領域を試作専門としている。得意としているのは試作の削り出し加工。試作専業メーカーは零細企業が多いが、新妻精機は万能加工機のマシニングセンターを100台保有するなど設備力がある。また、プログラム能力も高く3日で加工データを仕上げ、短納期対応を可能としている。
展示品は大型バイク用のディスクブレーキの削り出し試作。角部のR形状も忠実に再現され、量産と見間違うほどの見事な出来栄え。大型バイクは趣味の領域でブレーキへの要求は数値評価よりもフィーリングが優先され、テストドライバーにいかに気に入られるかで採用が決まる。展示品は、量産と変わらない材質と強度、寸法で製造されており、試作の段階でブレーキフィーリングの性能の見極めまで行える。
試作:大型バイク用ディスクブレーキ | 展示パネル:会社案内 |
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レース仕様 高剛性モノコック4ポットオポーズド型 材質:アルミ合金 工法:削り出し 量産時は高圧鋳造で製造されるが、初期の試作では同等材質の削り出し試作をしている。 |
・試作専業 ・最先端5軸マシニングセンター100台 ・短納期対応 |
試作削り出し・アルミケース(志村精機製作所)
志村精機製作所は1967年創業の東京都大田区の機械加工メーカー。生産拠点は国内3拠点で、大田区、品川区、千葉県茂原市に展開する。試作やロット生産、少量量産にも対応する。万能加工機のマシニングセンターを42台保有し、各種素材を取り扱い、1㎜の微細加工から大物加工まで対応できる。
展示品はアルミケースの削り出し試作。量産時はダイカスト鋳造されるが、試作では同等材質から削り出し試作を行っている。突き出した薄肉のパイプなど難しいマシニング加工も高精度に忠実に削り出しされている。
試作:アルミケース | 展示パネル:製品例 |
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材質:アルミ合金 工法:削り出し |
各種素材を取り扱い、1㎜の微細加工から大物加工まで対応できる。 |
廉価カセット金型・ダイカスト(太陽パーツ)
太陽パーツは1980年創業の大阪府堺市の商社機能とメーカー機能を併せもつ企業。あらゆる工法のパーツを受注する。東京都大田区に営業所を持ち、生産拠点は4拠点。国内は堺市内に2工場、海外は中国に2工場、上海市、大連市に展開する。業界も自動車のみならず、機械系全般に対応している。
展示品はカセット金型を使用したアルミダイカストの試作部品。太陽パーツの「ダイカストカセットシステム」はべース部とキャビティ部を分離し、金型をカセット化している。ベース部を共通化してキャビティ部のみ製作し、高価なダイカスト金型のコストを半額以下にできる。カセット金型はプラスチックの射出成形金型では一般的だが、アルミダイカスト用では難しく、太陽パーツが構造特許を取得している。また、簡易型ではないので、金型寿命や製品精度は通常のダイカストと同等で、量産にも対応できる。
展示品:カセット金型による試作ダイカスト | 展示パネル:廉価カセット金型 |
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左:削り出し工法 右:カセット金型による試作ダイカスト 数の多い試作では安価なカセット金型工法によりコスト低減になる。 |
・金型代は従来方式の半額 ・金型寿命、製品精度は従来方式と同等 (量産でも使用できる) ・鋳造ロット 50個からOK |
高精度材料試験片(昭和製作所)
昭和製作所は1952年創業の東京都大田区の材料試験片メーカー。材料試験片のJIS規格寸法品は引張り試験やねじり試験、疲労耐久試験などに使用する。材質は鉄鋼・非鉄金属だけでなくセラミック・プラスチックも含む全工業材料を対象に製造できる。適正な試験結果を得るためには、図面に表せない加工ノウハウが必要という。
自動車産業では、開発部門からは実験品解析、品質保証部門からは市場不具合解析などで特注品の注文がある。製品の指定部位を切り取るテストピースの作成依頼が多い。多大な実験工数を費やした試験品や、市場でまれに発生した不具合品などは貴重品であり、加工で失敗できない。また硬さや成分の情報も十分でないこともあり、どんな刃物で切り出すかは職人の「手の感覚」や「未知の材料を削るノウハウ」が必要という。
展示品:材料試験片 | 展示パネル:材料試験片 |
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上段左:引っ張り試験片 下段中:衝撃試験片 |
適正な試験結果を得るためには図面以外の工夫が必要とされる。 |
表面処理:リアランプ射出成形&めっき一貫生産、アルミピストンすずめっき
東京都大田区の京浜島中央めっき工業団地と東糀谷めっきセンターは1975年開業のめっき工業団地。排水クローズドシステムを採用しており環境面での心配がない。表面処理関連工場が20社集積しており、電気めっき、化学めっき、化成処理、アルミアルマイト、カチオン電着塗装など、すべての表面処理に対応できる。その中から自動車部品で実績のある2社を取材した。
(出展会社概要)
会社名 | 展示品 | 備考 |
---|---|---|
平和工業㈱ (東京都大田区) |
量産:リアランプ組立 | プラスチックめっき製品一貫生産 |
量産:金めっきエンブレム | プラスチックめっき製品一貫生産 | |
深田パーカライジング㈱ (東京都大田区) |
難めっきサンプル アルミ材へのすずめっき |
エンジンアルミピストン用途など |
リアランプ・射出成形&めっき一貫生産(平和工業)
平和工業は1946年創業の東京都大田区のめっきの老舗で、1966年からプラスチック加飾めっきに参入し、1983年から射出成形めっき一貫生産体制を整えている。生産拠点は5工場で、金型、射出成形、めっき、バフと機能別の工場を大田区内の京浜島に展開している。得意とするのは装飾めっきがあるプラスチック部品。自動車部品の取り扱いも多い。
展示品は高級車のリアランプの量産品。ティア1ランプメーカーを経由して国内最高級車に搭載されている。このことから高品質であること、一貫生産によって少量生産にも対応していることが解かる。
もうひとつの展示品は金めっきのオプションエンブレム。少量品にも対応しているのが見て取れる。装飾クロムめっきを施す樹脂はABS樹脂が多い。樹脂は通電しないので、化学めっきで導電性をもたせてから電気めっきをかける手順を踏む。①脱脂、②エッジング、③無電解化学ニッケルめっき、④電気めっき、の工程となる。ABS樹脂は強酸によるエッジングがよく効き、ブタジエンが溶けた表面には凹凸が激しく、そこへ化学めっきを施していくことでアンカー効果が生まれ、剥がれにくく綺麗な仕上がりのめっきとなる。
量産品:リアランプ(高級車) | 量産品:エンブレム(オプション品) |
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左:ベース 中:リフレクター・クロムめっき 右:カバー |
材質:ABS樹脂 めっき:金めっき |
アルミピストンすずめっき(深田パーカライジング)
深田パーカライジングは1934年創業の東京都大田区のめっき工場。生産拠点は国内1拠点で、大田区の東糀谷めっきセンター内にある。自動車で多用される亜鉛めっきでは長年の実績がある。3価亜鉛めっきのほか、銀めっき、すずめっきなどの加工を行う。得意とするのはアルミ素材など難めっき素材へのめっき。そのほか、いろいろな特注にも対応する。例えば、電気めっきが載らないパイプ内面へのめっきも、特別に通電治具を作って対応する。
展示品はアルミ合金素材へのすずめっき。自動車ではエンジンのアルミピストンで実績がある。ピストン用途では初期なじみ性を高めるため、柔らかいすずめっき処理の要求がある。この場合、難しいのは素材がアルミ合金であることだという。アルミ合金はすぐに厚い酸化皮膜を構成し、また、酸にもアルカリにも溶ける両性金属のため脱脂が難しいなどと言われ、一般的にはめっきでなく陽極酸化皮膜(アルマイトなど)の処理となる。
アルミ合金素材にめっきを載せるには、通常の強酸による脱脂ではアルミが溶けるため弱いアルカリ脱脂を採用するが、表面に銅やケイ素が残る。そのため、銅の除去のための溶剤処理、さらにケイ素除去のための溶剤処理を行うなど、2次3次の前処理に手間がかかる。深田パーカライジングでどのような処理を行っているかは不明だが展示品はきれいに仕上がっている。アルミ合金へのめっきでは、いかにして酸化被膜を取り除くかと、表面の銅やケイ素の除去が重要な品質管理ポイントになっている。
展示品:難素材めっき | 展示パネル:高機能すず・銀めっき |
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素材:アルミ合金(難めっき素材) めっき:無光沢すずめっき |
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キーワード
ものづくり、樹脂成形、鋳造、ダイカスト、表面処理、めっき、コストダウン、ディスクブレーキ、リアランプ、エンブレム、ピストン
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