【ものづくり】新価値創造展2019:自動車産業向け新技術、高難度加工部品

空中映像、静電アクチュエータ、非破壊両面探傷機、モーターカーボンめっき、象嵌細工調内装パネルなど

2019/12/06

要約

  新価値創造展2019(会期:2019年11月27日(水)~29日(金)、会場:東京ビックサイト・東京都台東区有明)は、独立行政法人中小企業基盤整備機構の主催、中小企業庁の後援で開催された。日本全国の優れた製品・技術・サービスを持つ中小企業378社が参加し、アイデアと技術を求める企業等とのビジネスマッチングを目指す展示会。出展会社は異業種との連携にも前向きなメーカーが多く出展している。その中から今後自動車で活用できる新技術や、すでに自動車部品で実績のあるメーカーの展示を取材した。

2019新価値創造展入場口 2019新価値創造展会場風景
2019新価値創造展 入場口 2019新価値創造展 会場風景


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自動車産業向け新技術:空中ディスプレイ、高効率積層型静電アクチュエータ、パルスうず電流式非破壊両面探傷機

  有望な先端技術に関しては、公的研究機関や国立大学でもベンチャー企業を設立して製品化を目指している。今回の展示会ではこのような企業の展示もあり、すでに自動車産業で試作を行っている新技術などを紹介する。

 

(出展会社概要)

会社名 展示品 新技術
㈱パリティ・イノベーションズ
(京都府相楽郡精華町)
情報通信研究機構(NICT)ベンチャー
試作:
空中ディスプレイ
空中スイッチ
空中映像用光学素子「パリティミラー」
ストローブ㈱
(横浜市緑区)
東京工業大学ベンチャー
試作:静電アクチュエータエンジン 高効率
積層型静電アクチュエータ
サガワ産業㈱
(滋賀県栗東市)
立命館大と共同開発
量産:非破壊両面探傷機 新方式
パルスうず電流式

 

空中映像用光学素子「パリティミラー」(パリティ・イノベーションズ)

  パリティ・イノベーションズは公的研究機関である情報通信研究機構(NICT)発のベンチャー企業。2010年に京都府相楽郡精華町で創業。SF映画のような「空中映像」が手軽にできる光学素子「パリティミラー」の開発と特許取得・ライセンス事業を手掛けている。

  この装置に対象物を置くだけで手の届く距離に「空中映像」が造影される。「空中映像」は現実の物体のような存在感や臨場感がある。また、空中の定位置に造影されるため、センサーと組み合わせることで、実際のスイッチとしても使用できる。

  自動車用途では、大型化の適用開発が行なわれており、近い将来、国内外の自動車メーカーから発売される予定だという。

  自動車部品の新製品の場合、①性能、②コスト、③重量、④搭載性、⑤整備性において、従来品と比べて総合評価される。展示品は、現在量産されているヘッドアップディスプレイに比べて画像が鮮明であり、軽くコンパクトで搭載性が非常に優れている。また開発費を償却した後はコストも安価になると考えられる。

展示パネル:会社案内 展示パネル:「パリティミラー」の原理
会社案内 「パリティミラー®」の原理
㈱パリティ・イノベーションズは「空中映像」という次世代映像技術の研究開発と社会への普及を目的に設立された。 最新のナノテクノジーで作成した0.1~0.5㎜サイズの多数の立体鏡からなり、光線を細かく分割し、それらを幾何光学的に結像する。

 

試作:空中ディスプレイ 試作:空中スイッチ
空中ディスプレイ 空中スイッチ
専用ケースは鏡なので、対象物を入れるだけで、空中映像が浮かび上がる。
サイズ:横約100㎜
センサーを組み合わせることで実際のスイッチとして機能する。
物理的な接触がなく、空中映像に触れて操作できるため、衛生的なスイッチを実現できる。

 

静電アクチュエータエンジン(ストローブ)

  ストローブは東京工業大学発のベンチャー企業。2002年創業で新日本石油の出資を受け設立された。横浜市緑区の東京工業大学内のベンチャープラザで、積層型静電アクチュエータなどのナノテク分野の研究開発を行っている。

 積層型静電アクチュエータの作動は回転運動でなく往復運動。往復運動で使用するのが効率がよいが、回転運動も出力できる。展示品は積層型アクチュエータを3個使った3気筒エンジン。微細な静電アクチュエータを集積化することで大きなクランクストロークと大出力を確保し、クランク軸から回転運動を出力している。駆動には電圧300Vと高圧が必要なため昇圧回路が必要となるが、エンジンやモーターに比べて効率が良く、消費電流は微弱であり、非作動時は電流が流れずエネルギー消費がないため、省エネルギーになるという。

試作:静電アクチュエーターエンジン 展示パネル:静電アクチュエータ
静電アクチュエーターエンジン 静電アクチュエータ
サイズは約5x5x20㎜。
積層型静電アクチュエータを3個を使用する3気筒エンジンに仕上げている。
積層数を増やすことで、発生力を保ちつつ、ストロークを増やすことができる。

 

  積層型静電アクチュエータの構造は、導体の両面を絶縁体で被覆した2本の長いリボン状の電極の折り紙細工で構成されている。このリボンには電極になる厚い部分とヒンジになる薄い部分を持たせ、折り紙のように交互に折り込むことでアクチュエータを構成する。作動は、2本のリボンの間に電圧をかけると、奇数層と偶数層の電極がそれぞれ正と負に帯電し、隣接する電極同士が静電力により引き合う。これによりアクチュエータは積層方向に収縮する。アクチュエータ全体のストロークは各層のストロークの和になり、比較的大きなストロークを発生することができる。

展示パネル:積層型静電アクチュエータの構造 展示パネル:積層型静電アクチュエータの特徴
構造と特徴 ここが凄い
構造モデル、製作方法、集積化 高出力、省エネ、軽量

 

パルスうず電流式・非破壊両面探傷機(サガワ産業)

量産:非破壊・両面探傷機「PECT-SP1」
PECT-SP1
上板とその下にある2枚の板の隙間を検知するデモンストレーション

  サガワ産業は1967年創業の滋賀県栗東市の大型板金加工メーカーだが、パルス渦電流式両面探傷機「PECT-SP1」を立命館大学との共同開発で実用化した。

  「PECT-SP1」はポータブルな非破壊検査機で、ステンレスやアルミなど非磁性材料の場合、超音波式では測定不可能な裏側や内部欠陥、重ね板の下板の欠陥も上板側から検出できる。

  金属材料の表面に交流磁場を発生させるコイルを置いた場合、金属材料表面に渦電流(Eddy Current)が流れることは良く知られている。この渦電流は材料の電磁気的な性質(透磁率、抵抗率)や表面の状況(きずの有無)によって変化する。このコイルの交流抵抗を測定することによって、渦電流の状況を知り、傷の有無を判定している。

 

展示パネル:両面探傷機「PECT-SP1」特徴 展示パネル:非破壊探傷装置の性能とコスト比較
「PECT-SP1」特徴 性能とコスト比較
非磁性材料の内部、裏側の欠陥も計測できる

 

非破壊探傷装置の性能とコスト比較
パルス渦電流 パルス渦電流 交流渦電流 超音波 放射線
対象素材 非磁性金属 強磁性金属 導電体 制限なし 制限なし
表面欠陥
内部欠陥
裏面欠陥
重ね構造
コスト


高難度自動車部品:モーターカーボン整流子めっき、象嵌細工調内装パネル、グリル樹脂めっき、摩擦圧接シャフト

  高難度の加工を行っている自動車部品の展示があり取材した。

 

(出展会社概要)

会社名 展示品 技術
三共㈱
(群馬県伊勢崎市)
量産:燃料ポンプモーター
カーボン整流子めっき
カーボン素材へのめっき技術
ナガシマ工芸㈱
(埼玉県春日部市)
量産:象嵌細工調内装パネル
特許工法「レーザーゾーガン」
日本古来の象嵌細工加工を水圧転写で再現
㈱協和
(群馬県高崎市)
量産:フロントグリル
量産:インナードア
大型射出成形技術&樹脂素材への加飾めっき技術
ジャパン・ミヤキ
(静岡県浜松市)
量産:異種金属接合スプラインシャフト
量産:ミッション部品
摩擦圧接技術&高精度センタレス研削技術

 

燃料ポンプモーターのカーボンめっき(三共)

  1950年創業の群馬県伊勢崎市のめっきメーカー。自動車部品を中心にめっき加工を行っている。めっきの種類は、錫、銀、ニッケル、亜鉛。協力会社も含め、塗装(カチオン電着、粉体塗装、溶剤塗装)も扱っている。

  展示品は自動車用燃料ポンプモーターのカーボン整流子。カーボン素材へめっきは難易度が高く、実用化には3年かかったという。自動車の生産量に対応するため、全自動機によるカーボン素材へのめっき装置を導入し、生産性向上にも取り組んでいる。

  燃料ポンプ用モーターは模型サイズの小型直流モーター。整流子とブラシが使用され、燃料内に水没させて使用される。従来、整流子材には銅が使用されていたが、近年はバイオ燃料や粗悪ガソリン使用時の整流子腐食対策として整流子のカーボン化が進んでいるという。

量産:燃料ポンプモーターカーボン整流子 展示パネル:全自動機によるカーボン素材へのめっき
燃料ポンプモーターカーボン整流子 全自動機によるカーボン素材へのめっき
カーボン素材へのめっきは難易度が高く実用化には3年を要している。
下地はニッケルNi電気めっきで、表層めっきはすずSu電気めっきになっている
自動車の生産量に対応するため、全自動機を導入し、生産性向上に取り組んでいる。

 

象嵌細工調内装パネル(ナガシマ工芸)

  1972年創業の埼玉県春日部市の水圧転写メーカー。3次元曲面転写の工芸部品を得意としている。

  水圧転写加工とは、特殊なフィルムに印刷されたリアルな柄や模様を転写する技術。安価に高級素材の雰囲気を再現することができる。

  展示品は日本古来の象嵌細工調の内装スイッチパネル。バックライト仕様で透明素材に水圧転写加工を施し、その後レーザー加工している。伝統工芸の象嵌細工の技法を水圧転写で再現する技法「レーザーゾーガン」はナガシマ工芸の独自技術であり、世界5カ国で特許を取得している。2020年量産モデルの自動車に採用される。

量産:象嵌細工調内装パネル 量産:車載イメージ
象嵌細工調内装パネル 車載イメージ
2020年量産モデルで採用

展示パネル:レーザーゾーガン 展示パネル:会社案内
レーザーゾーガン® 会社案内
「レーザーゾーガン」は日本古来の象嵌細工加工を水圧転写で再現する技術 「レーザーゾーガン」の製造方法では世界5カ国で特許を取得している

 

フロントグリル一貫生産(協和)

  1949年創業、群馬県高崎市の加飾樹脂部品メーカー。生産拠点は6拠点(日本2、海外4)で、日本は高崎市に2拠点、海外は1979年にシンガポールに進出して以降、中国広東省東莞市、マレーシア、タイの順に展開し、自動車ビジネスが70%を占める。得意とするのは樹脂成形品で、金型製作~樹脂射出成形~加飾クロームめっきまでの一貫生産ができる。このほか、アルミダイカストや機械加工でも自動車部品の実績がある。

  展示品は加飾クロームめっきによる樹脂製のフロントグリル。日本の樹脂加工ビジネスの多くは中国に移転したが、大物部品の射出成形に対応できることで国内ビジネスを確保している。

  もうひとつの展示はインナードアハンドルの樹脂めっきの色見本。クロームめっきやベロアめっき(無光沢艶消しニッケルめっき)で、光沢、無光沢、チタン色、黒色などに対応できる。

量産:フロントグリル 展示品:インナードアハンドルの樹脂めっき色見本
フロントグリル インナードアハンドル
金型製作~射出成形~加飾クロームめっきまで一貫生産 (右から)光沢ベロアめっき(黒)、ベロアめっき(チタン色)、光沢ベロアめっき、ベロアめっき、ホワイトサファイアめっき、クロームめっき

量産:アルミダイカスト製品 展示パネル:成形からめっき塗装まで一貫生産
アルミダイカスト各種 会社案内

 

摩擦圧接・異種金属接合シャフト(ジャパン・ミヤキ)

  1933年創業の静岡県浜松市のシャフトメーカー。従来はプリンターローラービジネスが主力だったが、現在は自動車部品ビジネスが70%を占める。生産拠点は浜松市に3拠点で、海外工場はない。プリンターには数十本のローラーシャフトが使用されるが、海外生産が進んでいる。そのため、2010年に住金物産(現:日鉄物産)と合弁でタイに進出したが、2011年の大水害に遭って撤退した。その後、国内ビジネスに戻り、シャフト加工技術を生かして自動車部品ビジネスへと商品構成を変えている。

  展示品は摩擦圧接による異種金属接合の自動車用スプラインシャフト。摩擦圧接はプリンターローラーシャフトでよく使う技術で、ジャパン・ミヤキでは豊富な実績とノウハウがある。パイプと丸棒を接合させることで、部材を中空化させることができ、軽量化が可能となる。また異なる材質との接合も可能で設計の自由度が広がる。

  もう1つの展示品は生産性の高いセンタレス研削シャフト。長年の経験から円筒研削並にミクロン単位の円筒度の研磨ができる。センタレス研削機は通過研削機と停止研削機がある。外径に突起のないストレートシャフトは通過研削機で対応し、段付きシャフトなどは停止研削機で対応する。

量産:摩擦圧接スプラインシャフト 量産:センタレス研削ミッション部品
摩擦圧接スプラインシャフト センタレス研削ミッション部品
ステンレスSUSとクロモリSCMを接合
<圧接可能材質>
 同材質:鉄、AL、SUS
 異材質:鉄-SUS、鉄-AL、SUS-AL、SUS-銅
<圧接能力>
 外径:φ8 ~φ92
 パイプ:肉厚2mm ~ 5mm
 丸棒:φ8 ~φ21
 全長:~1000㎜
<センタレス研削の停止研削>
段付きシャフトなどの加工物はブレードと調整砥石で自由支持し、回転する研削砥石で研削する。加工物の長さは砥石の幅で調節する。

加工サイズ:外径φ5~φ80、長さ~400mm

展示パネル:摩擦圧接 展示パネル:ワンストップ対応
摩擦圧接 会社案内
溶接欠陥対策に有効
ブローホールなし、割れなし、アンダーカットなし、オーバーラップなし
中量ロット(50~2,000p/月)
摩擦圧接、特殊研削(アルミ/ステンレス)


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キーワード
ものづくり、ディスプレイ、スイッチ、アクチュエーター、フロントグリル、インサイドドアハンドル、シャフト、射出成形、ダイカスト、空中映像、光学素子、非破壊検査、めっき、水圧転写、摩擦圧接、接合、研削

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