【ものづくり】第46回東京モーターショー2019:軽量化部品、高性能部品

サスペンション、ホイール、ナックル、カムシャフト、シート、ブレーキシール、トルコン、ジョイントなど

2019/10/30

要約

 第46回東京モーターショー2019(会期:2019年10月24日(水)~11月4日(月)、会場:東京ビックサイト)は日本自動車工業会主催で、日本車を中心に、乗用車、商用車、二輪車、部品の最新技術を一堂に集めたエンドユーザー向け展示会として開催されている。今年は特に、モーターショー自体が従来の展示内容から大きく変わって、高校生以下入場無料や、自動車以外の未来の乗り物を体験できるなど、エンドユーザーを多く集める取組みとなった。部品メーカーも専門性の高い展示よりは、知名度アップや将来技術への取組みコンセプトなどの展示が多かった。

 本稿では、軽量化や高性能化に対応する部品を取材した内容を報告する。電動化関連部品については多数の出展があり、別レポートで報告する。

第46回東京モーターショー2019
入場口
第46回東京モーターショー2019
部品展示エリア


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軽量化技術:サスペンション、ホイール、ナックル、カムシャフト、シートフレーム

 電動化やハイブリッド化の影響により、重い電池を搭載するため、あらゆる部品に軽量化が求められている。ある程度の軽量化はコストダウンに直結するが、材料変更などを伴う軽量化はコストアップに繋がることが多い。コストアップになる軽量化は誰でも出来るが、軽量化とコストダウンを両立させるのが設計者の腕の見せどころになっている。

 

(出展会社概要)

会社名 展示品 特徴
㈱ヨロズ
(神奈川県横浜市)
量産:軽量フロントサスペンション
量産:軽量リアサスペンション
テーラード溶接による軽量化とコストダウンの両立
量産:ハイブリッド溶接カットサンプル 新工法:アークレーザー同時溶接
トピー工業㈱
(東京都品川区)
量産:軽量スチールホイール
不等厚成形カットモデル
「しごき+拡管成形」
既存生産ラインにインライン
日立金属㈱
(東京都港区)
量産:軽量ナックル
600MPa級高靭性ダクタイル鋳鉄
薄肉半中空断面構造
▲17%軽量化
材質 FCD370 →NMS600CM
㈱リケン
(東京都千代田区)
量産:新形状軽量ナックル ▲10%軽量化+コストダウン
材質 FCD450 変更せず
試作:鋳鋼材中空カムシャフト ▲35%の軽量化+高性能化
日本発条㈱
(横浜市金沢区)
試作:オールアルミリアシートフレーム ▲35%軽量化
試作:ベルトインシートフレーム
自動運転車対応回転座席
▲30%軽量化

 

テーラード溶接サスペンション、アークレーザー同時溶接(ヨロズ)

ヨロズは1948年創業の横浜市のティア1のサスペンションメーカー。元々は日産系だが現在は独立系で、生産拠点は国内4拠点(栃木県小山市、大分県中津市、愛知県名古屋市、山形県鶴岡市)、海外14拠点(米州7、中国2、アジア5)に展開する。得意先は日系自動車メーカー全社のほか、ルノー、GM、フォード、ダイムラー、フォルクスワーゲンなど海外メーカーへの納入も多い。低コストでフレキシブルな生産性を実現するため、プレス・溶接組立・塗装の各工程に無人化設備を導入。無人化設備はすべて社内で開発・製作しているのが強み。

 展示品は日産アルティマの軽量サスペンション、平滑部にも溶接がある。強度上余裕のある部位の板厚を落とし、板厚の異なる鋼材の溶接を確実に行い、軽量化とコストダウンを両立している。

量産:アルティマ・フロントサスペンション 量産:アルティマ・リアサスペンション
テーラード溶接による軽量化とコストダウンの両立 テーラード溶接による軽量化とコストダウンの両立

 

 もうひとつの展示品はハイブリッド溶接のカットサンプル。アーク溶接とレーザー溶接を同時に行う。レーザー溶接は溶接材を使用せず、自身の材料が溶けて融合する溶接法だが、隙間があると溶接できない欠点がある。アーク溶接は溶接材を載せる溶接法で多少の隙間があっても溶接できる利点がある。ハイブリッド溶接は、両工法の利点を生かし欠点を補うために開発された新溶接法といえる。すでに量産実績があり、今後受注するサスペンションで適用を増やしてゆくという。

展示品:新工法ハイブリッド溶接 展示パネル:ハイブリッド溶接
アーク溶接とレーザー溶接を同時に行う
両工法の利点を生かし欠点を補う新溶接法
<特長>
1. ひずみが小さい
2. 高硬度高強度
3. 1.6㎜以下の薄板に有効

 

軽量スチールホイール(トピー工業)

展示パネル:乗用車用スチールホイール・不等厚成形(カットモデル)
新開発の「ディスク不等厚成形技術」
新開発の成形方法により、従来のプレス成形工程内でのディスク不等厚の実現に成功

トピー工業は1921年創業の東京都品川区に本社を置くホイールメーカー。日本製鉄の持ち株比率は20.8%。スチールホイールで国内首位だったが、2018年に旭テックを買収し、アルミホイールでも大手になっている。ホイールの生産拠点は国内2拠点(愛知県豊川市、神奈川県綾瀬市)、海外12拠点(米州2、欧州1、中国4、アジア4、南アフリカ)に展開している。日系、欧米系自動車メーカー向けに、年間実績でスチールホイール2,500万本(5カ国9拠点)、アルミホイール560万本(3カ国、3拠点)を生産している。

 展示品は新開発の「ディスク不等厚成形技術」で製造された軽量スチールホイール。従来は、スチールホイールの場合、鋼板をプレスする都合上、その厚みは高応力部に合わせざるを得なかった。今回、新開発の「しごき+拡管成形」工法を既存生産ラインに加え、応力の低い部分の板厚を下げることで、軽量化を達成している。

量産:乗用車用スチールホイール 不等厚成形カットモデル 拡大:ディスク不等厚成形技術
左)新開発:ディスク不等厚成形品
右)従来品:通常の等厚ディスク成形
「しごき+拡管成形」で赤丸部分の板厚が下げられ、軽量化されている。

 

軽量ナックル(日立金属)

展示品:オメガナックル
5.5kg→4.5kg ▲1kg 17%軽量化
材料:高靭性ダクタイル鋳鉄NMS600CM(引張り強度600MPa級)
形状:薄肉半中空断面構造 CAE解析品
展示パネル:サスペンション用高靭性ダクタイル鋳鉄(FCD370以上の衝撃特性)

日立金属は1910年創業の戸畑鋳物を前身として、1956年に日立製作所から分離独立した東京都港区に本社を置く金属メーカー。自動車鋳物を多く手掛け、鋳造から機械加工までの一貫生産を行っている。自動車鋳物の生産拠点は国内3拠点(福岡県京都郡苅田町、栃木県真岡市、埼玉県熊谷市)、海外4拠点(米国2、韓国、インド)に展開している。

 自動車の足回り部品では靭性があり鋳放しで使用できて加工性がよいダクタイル鋳鉄FCD370~450が多用されているが、軽量化の流れで強度アップ材の採用が検討されている。軽量化に際しても現状の耐衝撃強度を落とさないという設計課題をクリアし、コスト面でもコストアップとなってしまう熱処理を不要とする技術や加工速度を落とさない快削性が求められている。

 展示品は軽量化自動車用ナックル「オメガナックル」。材料と形状を見直し従来品の5.5kgを4.5kgへマイナス1kg、17%の軽量化を実現している。使用する高靭性ダクタイル鋳鉄NMS600CMは高強度の600MPa級だが、高靭性の370MPa級のFCD370以上の衝撃強度がある。硬度も機械加工できるHB223~262に抑えられているため、加工性も確保しているという。

 

<機械的性質比較表>

NMS600CM FCD370
引張強さ 600MPa 370MPa
耐力 390MPa 230MPa
伸び 6%以上 17%以上
硬度 HB223~262 HB180以下

 

軽量ナックル(リケン)

リケンは1926年創業の東京都千代田区に本社を置く自動車部品メーカー。現在の理化学研究所が発明品のピストンリングを製造する会社として創立された。ピストンリングでは国内最大手。工場は国内2拠点(新潟県柏崎市、埼玉県熊谷市)、海外5カ国8拠点(中国・台湾4、タイ、インドネシア、インド、メキシコ)に展開している。

 展示品は新形状軽量ナックル。450MPa級のFCD450の同一材質ながらCAE解析を行い、形状の工夫だけで軽量化とコストダウンを両立している。またリケンではオリジナルの高強度高延性材RCD550も開発済みで、更なる軽量化も可能とのこと。

 もうひとつの展示品は軽量な鋳鋼材中空カムシャフトの試作品。高強度な鋳鋼材を使用し、これまで困難だった鋳鋼材の中空化に成功したという。鋳鋼は炭素含有量が少く凝固開始温度も高くなるため、湯が冷えないように短時間で注入を行う必要がある。また凝固時の収縮量も大きく、湯流れも悪いため型法案にもノウハウがある。一般に鋳鋼は鋳鉄より製造が難しく鋳巣などの欠陥がでやすく、日本では鋳鋼を取り扱う鋳物メーカーは少ない。

量産:新形状軽量ナックル 試作:鋳鋼材中空カムシャフト
左)現行品 右)開発品(新形状)
材質はともにFCD450で▲10%の軽量化とコストダウンを達成
展示パネル:鋳造品の軽量化設計
▲35%の軽量化と高性能化を両立
シェル鋳型の中子技術によってこれまで困難だった鋳鋼の中空化に成功
展示パネル:鋳鋼材中空カムシャフト

 

シートフレーム(日本発条)

日本発条は1939年創業の横浜市金沢区に本社を置く独立系の自動車部品メーカー。懸架ばね、自動車用シートなど、ばねに関係する部品を取り扱っている。略称のNHKは日本放送協会とだぶり、取り下げ要求があったが日本発条が先とのことで現在もNHKを使用している。生産拠点は国内5県12拠点(神奈川県、滋賀県、群馬県、長野県、愛知県)、海外27拠点(アジア18、米州7、欧州2)に展開している。

 展示品はオールアルミ軽量リアシートフレーム。アルミの押し出し材を多用し、難しいアルミアーク溶接とアルミスポット溶接で構成し、従来品に比べて35%の軽量化を達成している。

 もう1つの展示は軽量ベルトインシートフレーム。自動運転時には回転座席になり、シートベルトは車体からではなく、シートに固定されるようになる。超ハイテン材を使用し、30%の軽量化を達成している。

試作:オールアルミ軽量リアシートフレーム 試作: 軽量ベルトインシートフレーム
▲35%の軽量化、ナット以外ブラケットなどすべてアルミ製
押出材を多用し、難しいアルミのアーク溶接、スポット溶接で構成している。
展示パネル:オールアルミ軽量リアシートフレーム
超ハイテン材による▲30%の軽量化
自動運転時には回転座席になり、シートベルトは車体からではなく、シートに固定されるようになる。
展示パネル:軽量ベルトインシートフレーム


高性能部品:高性能ブレーキシール、3気筒用トルコン、衝撃吸収ジョイント

 従来品だが、高性能化を図った差別化製品を取材した。

 

(出展会社概要)

会社名 展示品 特徴
日信工業㈱
(長野県東御市)
量産:高性能ブレーキシール
(カーボンナノチューブ配合)
耐熱性、耐圧性、耐摩耗性向上
二輪車高剛性アルミモノコックキャリパに搭載。
レースで安定した操作フィーリングを保つ。
㈱エクセディ
(大阪府寝屋川市)
量産:少気筒エンジン用トルクコンバーター ダイナミックダンパー付き
協和工業㈱
(愛知県大府市)
<乗用車ステアリングジョイント>
試作:振動吸収ラバーブッシュジョイント
試作:振動吸収ラバーカップリングジョイント
冷間鍛造
㈱松井製作所
(東京都中央区)
量産:商用車用プロペラシャフトジョイント ベアリングも内製、熱間鍛造~組み立てまでの一貫生産(内製率100%)

 

高性能ブレーキシール(日信工業)

日信工業は1953年創業の長野県東御市に本社を置くブレーキ会社。ホンダの持ち株比率34.8%。生産拠点は国内2拠点(長野県東御市、新潟県直江津市)、海外10カ国(米国、ブラジル、メキシコ、中国、インドネシア、タイ、ベトナム、インド、フィリピン、 スペイン)に展開している。

 二輪車のブレーキでは長年のレースでの実績から、エンドユーザーに対しても「NISSIN」のブランドを確立している。得意先も多く、国内9社(ホンダ、トヨタ、SUBARU、三菱、マツダ、いすゞ、スズキ、ヤマハ、川崎重工業)と海外メーカー(ハーレーダビッドソン、BMW、トライアンフ、長安汽車、ルノー、プジョー他)へ納入している。

 展示品は高性能ブレーキシール。カーボンナノチューブ配合し、耐熱性、耐圧性、耐摩耗性を向上させている。搭載キャリパは二輪車レース用の高剛性アルミモノコックキャリパ。レースではブレーキディスクは650℃まで上がり、耐熱性は重要な特性になる。レース中、レバーフィーリングは低温でも高温でも常に変化のないストロークであることが要求される。ブレーキシールは通常のシール機能のほか、ピストン戻し機能、摩耗追従アジャスト機能の3つの機能を併せもつ。特にレバーストロークのあそびはこのブレーキシールで決まる。安定したレバーフィーリングを追求するため、日信工業では高性能ブレーキシールを開発したという。すでにブレーキシールは二輪車および四輪車に量産展開している。

量産:高性能ブレーキシール 展示パネル:日信工業のブレーキ部品
高い耐熱性、耐圧性、耐摩耗性を有する。
カーボンナノチューブを配合したブレーキシールを開発。二輪車レース用高剛性アルミモノコックキャリパに搭載。

 

少気筒用トルコン(エクセディ)

エクセディは1950年創業の自動車用クラッチメーカー。国内9拠点(三重県、埼玉県、広島県、福島県、奈良県、北海道、京都2、岡山)、海外17点(米州3、欧州1、中国4、アジア9)に展開する。

 展示品は少気筒エンジン用トルクコンバーター。新開発の超広角低剛性ダイナミックダンパー付きでロックアップクラッチ時の振動を低減する。欧州でも日本でもエンジン車の省エネ競争はターボ搭載によるダウンサイジングで少気筒エンジン化が進んでいる。少気筒エンジン車でも、従来の多気筒エンジン車並みの静粛性が求められるため、ロックアップ時の振動を抑制することが技術課題になっているという。
 注)ロックアップクラッチ:トルクコンバーター自体には10%程度の滑りがあるため、最近のトルクコンバーターは省エネの目的で駆動系を直結するロックアップクラッチ付きになっている。

量産:少気筒エンジン用トルクコンバーター 超広角低剛性ダンパー
ダイナミックダンパー付き
展示パネル:少気筒エンジン用トルクコンバーター

 

乗用車用・冷間鍛造ステアリングジョイント(協和工業)

量産:冷間鍛造ステアリングジョイント
展示パネル:冷間鍛造ステアリングジョイント

 協和工業は1953年創業の愛知県大府市に本社を置く自動車用ステアリングジョイントメーカー。生産拠点は国内2拠点(愛知県大府市、滋賀県長浜市)、海外2拠点(2010年タイ国プラチンブリ県、2011年中国江蘇省昆山市)に展開している。

 1977年に日本で初めて冷間鍛造製法によるステアリングジョイントを開発した。以後自動車用ステアリングジョイント一筋に、冷間鍛造の素材作りから機械加工、組み立てまで一貫生産している。

 展示品は振動吸収ラバーブッシュジョイントと振動吸収ラバーカップリングジョイント。常用機能として突き上げショックや回転ショックを吸収する。ステアリング系のガタはドライバーが気づきやすく、市場でもクレームとなることが多い。いずれの提案も市場ニーズをとらえた提案商品(試作品)となっている。ゴムは経時変化するのでフェールセーフなど十分な安全設計が必要になる。

試作:振動吸収ラバーブッシュジョイント
試作:振動吸収ラバーカップリングジョイント
主に突き上げ方向の振動を吸収する 主に回転方向の振動を吸収する

 

乗用車~商用車用・熱間鍛造プロペラシャフトジョイント(松井製作所)

 松井製作所は1960年創業の東京都中央区に本社を置くプロペラシャフトおよびプロペラシャフトジョイントメーカー。国内4拠点(茨城県猿島郡五霞町、東京都大田区、千葉県野田市、栃木県下都賀郡野木町)、海外1拠点は2000年からオランダに展開している。

 展示品はプロペラシャフトのジョイント部に使用される十字ジャーナル。熱間鍛造の素材作りから機械加工、組み立てまで一貫生産している。松井製作所はプロペラシャフトASSYまで製造するが、ゴム以外はすべてを内製している。十字ジャーナルの4カ所に装着されるニードルベアリングも内製している。販売もユニークで、十字ジャーナルとニードルベアリングは競合先のプロペラシャフトASSYメーカーにも販売され、国内市場シェアは非常に高いという。また、熱間鍛造ラインには余裕があり、自動車部品の熱間鍛造素材のみの受注も行っている。

展示品:ジャーナルとニードルベアリング 量産:熱間鍛造自動車部品
展示パネル:松井製作所 鍛造品 熱間鍛造ラインには余裕があり、素材のみの受注も行っている


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キーワード
ものづくり、モーターショー、軽量化、プレス、鍛造、鋳造、サスペンション、ホイール、ナックル、カムシャフト、シートフレーム、ブレーキシール、トルクコンバーター、ステアリングジョイント、ベアリング、ヨロズ、トピー工業、日立金属、リケン、日本発条、日信工業、エクセディ、協和工業、松井製作所

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