【ものづくり】ケミカルマテリアル Japan 2019:自動車用途の先端化学材料

バイオ素材、ガラス代替樹脂、高硬度熱曲げ用PCシート、HUD固定用接着剤、プラスチックめっき 等

2019/10/03

要約

自動車関連製品群
昭和電工の自動車関連プラスチック製品群(取材者撮影)

  化学工業日報社が主催するケミカルマテリアルJapan 2019は、第2回「先端化学材料・素材総合展」、第5回「化学物質管理ミーティング」、第4回「産業安全フォーラム」を構成する体制で、2019年9月18、19日の2日間、パシフィコ横浜ホールC・Dで開催された。

  本稿では、「先端化学材料・素材総合展」で主に自動車用途として注目された展示内容を紹介する。


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バイオ素材:バイオPC製フロントグリル、バイオマスTPU

三菱ケミカル:バイオPC製フロントグリル

  植物由来のバイオPC(Polycarbonate、ポリカーボネート)「DURABIO」製のマツダのフロントグリルを展示。この材料は傷つきにくく、耐衝撃性、耐光性に優れている。また、優れた発色性があるので、成形後の塗装工程を省くことができ、意匠性にも富むため自動車の内外装材に採用されている。

  このほか、アクリミラーの展示もあった。透明アクリル樹脂シートにアルミ(金属)を真空蒸着加工した製品で、フルミラーとハーフミラーをあわせ、光を反射させることで多重効果を演出することができる。特長は、①軽量性、②落としても割れにくい、③加工しやすい、など。
  熱可塑性エラストマーを使用したエアバッグカバー、炭素繊維複合材を使用した乗用車バックカバーなども展示されていた。

バイオPC製フロントグリル アクリミラーを使用したリアランプ
バイオPC製フロントグリル アクリミラーを使用したリアランプ

(取材者撮影、以下同様)

 

大日精化工業:バイオマスTPU

エーテル系部分バイオマスTPU用途
エーテル系部分バイオマスTPU
用途:雑貨やコンベアベルト等、一般のTPUと同じ用途に使用可能
展示パネル:エーテル系部分バイオマスTPU

  バイオマス由来のエーテル系原料を使用したカーボンニュートラルな熱可塑性ポリウレタンエラストマー(TPU)である。従来のTPUと同等の加工性を保持し、耐加水分解性、耐菌性、耐摩耗性に優れる。溶剤系、水系、パウダー系等の形態の製品がある

 



透明性プラスチック:透明性GF強化ポリカーボネート、ガラス代替樹脂、熱/光硬化型透明樹脂材料

出光興産:透明性GF強化ポリカーボネート

  一般には、PCにGFを強化すると両者の屈折率が異なるため、不透明になる。PCと屈折率がほぼ同等なGFでPCを強化すると、PCとGF界面の光の散乱が無くなり、高透明性材料が開発された。その特長は以下の通り。

  • GF:30%では比重はガラスの57%と軽量
  • ガラスと比較し比強度は3倍以上
  • GF-PCの熱伝導率はガラスの25%で高断熱性


  ガラス長繊維で強化されたSPS(シンジオタクチックポリスチレン)は、従来のGF強化SPSでは到達できない高耐熱性(荷重たわみ温度、クリープ)、高衝撃性(シャルピー衝撃)を兼ね備えた低密度の射出成形用複合材料である。

  このほか、シロキサン共重合PC、高透明LED照明向け高耐久・高透明PC、軟質ポリプロピレン等も展示されていた。

透明性GF強化ポリカーボネート 低密度・高耐熱・高衝撃性強化SPS
透明性GF強化ポリカーボネート 低密度・高耐熱・高衝撃性強化SPS

 

東亞合成:ガラス代替樹脂

アロニックスシート
ガラス代替樹脂「アロニックスシート」
展示パネル:ガラス代替樹脂「アロニックスシート」

  ガラス代替樹脂「アロニックスシート」の特長は以下のとおり。

  • 高い透明性
  • 高耐熱性:PC、PMMAと比較して高温でも形状を維持
  • 低位相性:ガラス並みの低位相性
  • 傷つき難い:ハードコート無しで高耐擦傷性(PMMA:H、アロニックス:4H)

  無溶剤型アクリル樹脂、光硬化型樹脂、UV硬化型樹脂も展示していた。

日鉄ケミカル&マテリアル:熱/光硬化型透明樹脂材料「エスドリマー Lシリーズ」

熱/光硬化型透明樹脂材料用途
熱/光硬化型透明樹脂材料用途:車載レンズやリフロー耐熱レンズ等

  屈折率1.50~1.60の範囲をカバーする透明性樹脂材料。耐熱性と表面硬度に優れ、各種光学部材に適しており、以下の特長がある。

  • 熱あるいは光で硬化が可能
  • 高耐熱:はんだリフロー耐熱に対応
  • 高硬度:部材表面の傷つき防止
  • 高透明:全光線透過率90%以上
  • ガラス等の基材に接着性良


  このほか、機能性ハードコート材料「シルプラス」(無機・有機ハイブリッド共重合体)、高速通信向け接着シート「ESPANEX NB」等を展示していた。

日油:透明アクリル樹脂用耐擦傷製改良剤「ノフアロイKA200」

ノフアロイRKA200
透明アクリル樹脂用耐擦傷製改良剤「ノフアロイKA200」

  透明アクリル樹脂用耐擦傷製改良剤「ノフアロイKA200」の耐擦傷性改良発現機構は以下の通りである。

  • ノフアロイKA200をPMMA(Polymethyl methacrylate、ポリメタクリル酸メチル樹脂)に添加し、成形した時、表面近傍に分散し、耐擦傷性改良機能を発現
  • 微分散するため透明性を維持
  • 複雑形状へも適用可能


  また、熱可塑性樹脂および皮革用の異音発生防止剤「モディパー」も注目される展示であった。



機能性樹脂:高硬度熱曲げ用PCシート、PP系質感向上材、高摺動コンパウンド、アクリルゴム微粒子分散エポキシ樹脂

三菱ガス化学:高硬度熱曲げ用PCシート

  PC(Polycarbonate、ポリカーボネート)の特長である耐衝撃性と透明性を有する熱曲げ用PCシートを展示。従来のハードコートPCシートに比べ、熱曲げ加工成形性を向上させた。曲面形状デザインを有するディスプレイの全面板や、耐薬品性、耐摩耗性を必要とする用途に応用展開中である。

  このほか、超高屈折率樹脂のルミプラス、光学用特殊PCユピターゼEPなども展示していた。

高硬度熱曲げ用ポリカーボネートシート 展示パネル
高硬度熱曲げ用ポリカーボネートシート 展示パネル:高硬度熱曲げ用ポリカーボネートシート

 

住友化学:PP系質感向上材

PP系質感向上材
PP系質感向上材

  低光沢かつ顔料の発色性に優れたポリプロピレン(PP)を展示。高質感のある材着シボ成形品を無塗装で成形することが可能である。また、高い耐衝撃強度を兼ね備えているため、様々な部品への適用可能性を有している。

信越化学グループ:高摺動コンパウンド

高摺動コンパウンド用途例
高摺動コンパウンド用途例:自動車部品、その他

  高摺動コンパウンドとして、PVCコンパウンド・ポリオレフィン・TPU(熱可塑性ポリウレタンエラストマー)が紹介されていた。特長は以下の通り。

  • 摺動性・摩耗性・汚染性等に優れる。
  • 非ブリードタイプなので、印刷などの二次加工性を阻害することなく、摺動効果も半永久的に持続する。

  注)PVC(Polyvinyl chloride、ポリ塩化ビニル)
  TPU(Thermoplastic Polyurethane、熱可塑性ポリウレタンー)

 

日本触媒:アクリルゴム微粒子分散エポキシ樹脂

アクリルゴム微粒子分散エポキシ樹脂用途例
アクリルゴム微粒子分散エポキシ樹脂
用途例:CFRP用のマトリックス樹脂等
展示パネル:アクリルゴム微粒子分散エポキシ樹脂

  アクリルゴムを均一に分散し、エポキシ樹脂の脆性を改善した。この材料の特長は以下のとおり。

  • 高耐熱性で、強靭性である。
  • 内部応力緩和効果が大きい。
  • 接着力が大きい。
  • 耐久性に優れる。
  • 耐クラック性に優れる。

  なお、CFRP用エポキシ樹脂の靭性改良剤には、現在ではPES(Polyethersulfone、ポリエーテルサルフォン)が使用されている。この材料の今後の動向に注目したい。

  このほか、新規反応性相溶化剤などの展示があった。

 

東ソー:超高靭性PPS

超高靭性PPS
超高靭性PPS

  電動化部品にPPS(Poly Phenylene Sulfide、ポリフェニレンスルファイド)が大量に採用されている。一般的に脆いPPSにおいて電動化部品への採用を促進する材料であり、以下に示す特長がある。

  • 高ウェルド強度:設計自由度が向上し、部品デザインの単純化
  • 優れた耐ヒートショック性:インサート成形部品の薄肉化、大型化へ有利
  • 低ガス量:成形品外観良好、ボイド低減
  • 低ヤニ量:金型メンテナンス頻度の低減により生産性向上


  このほか、金属接合用PPSも展示されていた。

 



樹脂添加剤:永久帯電防止添加剤、PP用高機能フィラー

三洋化成工業:永久帯電防止添加剤 ペレスタット/ぺレクトロン

  プラスチックの導電性を高め、静電気を速やかに逃がし、静電気による電子回路の破壊、ほこりの付着などを防止する。高分子系の永久帯電防止添加剤で、特長は以下の通り。

  • プラスチックの表面固有抵抗値を108Ωから1012Ωまでコントロール可能。
  • 帯電防止効果は成形直後から半永久的に維持し、布拭きや水洗してもほとんど変化しない。

永久帯電防止添加剤を添加した成形品用途例 展示パネル
永久帯電防止添加剤を添加した成形品用途例:自動車内外装部品向け等 展示パネル:永久帯電防止添加剤 ペレスタット/ぺレクトロン

 

宇部興産:PP用高機能フィラー「モスハイジ」

PP用高機能フィラー・モスハイジ
PP用高機能フィラー「モスハイジ」
用途:自動車部品など
対象材料:PP、PE、ABS樹脂、ゴム

  モスハイジは、塩基性硫酸マグネシウム無機繊維である。従来のフィラーに比べ、本材料を使用することにより剛性が付与され、フィラー量の低減と薄肉化によって軽量化も可能になる。

  熱伝導性MgO(Magnesium Oxide、酸化マグネシウム)、ポリカーボネートジオールなども展示していた。



接着技術:接着性ETFE、HUD固定用接着剤、自動車ガラス周り用接着剤

AGC:PA12/接着性ETFE製燃料チューブ

  接着性ETFE(エチレン/テトラフルオロエチレン共重合体)とPA12を積層した自動車用燃料チューブを展示。ETFEはPA12の燃料透過性不足を補うために使用された。接着性ETFE使用により成形工程の簡略化とコストダウンを果たした。接着性ETFEはエチレン成分に接着性を有する成分を付加している。

  その他では、透明性フッ素樹脂フィルム等の展示があった。

PA12/接着性ETFE製燃料チューブ 展示パネル
PA12/接着性ETFE製燃料チューブ 展示パネル:接着性フッ素樹脂

 

アイカ工業:HUD固定用接着剤

  ヘッドアップディスプレイ (HUD) 固定用接着剤を展示。反応性ホットメルトであり、以下のような特長がある。

  • 高粘着性を持ち、初期接着力に優れる。
  • 低粘度タイプのため、スプレー塗布や微細塗布が可能。
  • オープンタイムが長く、作業性に優れる。

  その他では、自動車内装用ハードコートフィルムなどが展示されていた。

HUDと固定用接着剤 展示パネル
HUDと固定用接着剤 展示パネル:HUD部品固定用反応性ホットメルト

 

コニシ:2液型高性能接着剤

自動車用2液型高性能接着剤
自動車用2液型高性能接着剤

  2液型高性能タイプで、自動車のガラス周り用に使用する速硬化接着剤を出展。特長は以下の通り。

  • 耐久性・耐振動性、耐衝撃性に優れる。
  • RoHS指定10物質を使用していない。
  • 接点障害を発生させる低分子の環状シロキサンを含まない。



表面処理:プラスチックめっき、ポリウレタン系コーティングフィルム

奥野製薬工業:プラスチックめっき

  奥野製薬工業はプラスチックめっきのパイオニアである。代表的な加工材はABS、ABS/PCであるが、CFRP、LCPフィルムなども実用化している。プラスチックめっきで重要な特性は、プラスチックとめっきの密着性、装飾性、耐食性、色調、耐熱性等であり、それらの要求に合わせためっき処理用薬品やプロセスを提供している。

  注)ABS(Acrylonitrile butadiene styrene、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン)
  PC(Polycarbonate、ポリカーボネート)
  CFRP(Carbon Fiber Reinforced Plastics、炭素繊維強化プラスチック)
  LCP(Liquid Crystal Polymer、液晶ポリマー)

プラスチックめっき 展示パネル
プラスチックめっき 展示パネル:プラスチックめっき

 

JNC:ポリウレタン系コーティングフィルム

ポリウレタン系コーティングフィルム
ポリウレタン系コーティングフィルム

  自動車の外装材に使用できる粘着性のポリウレタン系透明性コーティングフィルムを出展。特長は以下の通り。

  • 撥水性
  • 自己修復性
  • 保護機能
  • 防汚機能

 



ユニークな樹脂製品:自動車用プラスチック製品群、3Dプリンター造形物、切削用プラスチックなど

昭和電工:自動車関連製品群

自動車関連製品群
昭和電工の自動車関連製品群

  同社の自動車関連製品群をまとめた展示を行っていた。搭載された部材は、テールランプ用LED、LiB関連資材、アルミニウム関連部材、非エポキシ樹脂系インバーター用耐熱封止材、熱硬化性樹脂のBMC使用ECU封止材など。

  また、透明導電フィルム、放熱フィラー等も展示していた。

  注)LiB:Lithium ion Battery リチウムイオン二次電池
  BMC:Bulk Molding Compound 不飽和ポリエステル樹脂系材料
  ECU:Electronic Control Unit 電子制御ユニット

JSR:Carbon社の3Dプリンターの造形物

Carbon社の3Dプリンター造形物
Carbon社の3Dプリンター造形物

  JSRは米国Carbon社へ出資し、筑波研究所に設置済のCarbon社の3Dプリンターを活用して日本での事業展開を推進中である。複雑な網目状の靴底などの成形品の製作が可能である。従来の3Dプリンターでは生産できない形状なので興味深い。

  また、独自のポリマー技術を活かして開発した特殊エラストマー系の3Dプリンター用材料も展示していた。

タキロンポリマー:切削用ハイグレードプラスチック

切削用ハイグレードプラスチック
切削用ハイグレードプラスチック

  最近ではプロトタイプや小ロット製品の作成ツールとして3Dプリンターが注目されているが、従来は各種プラスチックの素材を切削して作成されていた。タキロンポリマーはこのような場合に素材を供給する代表的なメーカーである。切削品は3Dプリンターによる成形品と比べ、強度が高い。


  本稿で紹介した以外にも多くの興味深い展示があり、その一部を以下に紹介する。

  • 三井化学ファイン:低摩耗・良成型性・導電シート、新型ブロックポリマー
  • 日産化学工業:高機能エポキシ樹脂
  • アドバンスト・ソフトマテリアルズ:セルムスーパーポリマーの紹介と樹脂改質事例
  • 大阪ガスケミカル:フルオレン系樹脂系製品群、フルオレンセルロースファイバー 等
  • エア・ウォーターグループ:超高耐熱・低CTE・低誘電特性樹脂など
  • ADEKA:水系ウレタン樹脂、自動車構造接着剤システム、レーザー溶着システム
  • 堺化学工業:鱗片上状亜鉛粉末、変性マレイミド樹脂(SC有機化学)
  • 本州化学:5G向け低誘電PI用エステル型酸二水物等の機能性中間体 など
  • 東レ:機能性繊維
  • 東洋炭素:C/Cコンポジット
  • 太陽日酸:負極向け長尺CNT
  • JFEケミカル:新型リチウムイオン電池(全樹脂電池)
  • 日本フィルター:エンプラ系ハウジング


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キーワード
ものづくり、軽量化、樹脂成形、プラスチック、フロントグリル、リアランプ、ウィンドガラス、燃料チューブ

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