人とくるまのテクノロジー展2019:トヨタと日産の展示

トヨタは一連のCASE関連技術、日産はプロパイロット2.0、62kWhリチウムイオン電池など出展

2019/06/05

要約

  本レポートは、2019年5月にパシフィコ横浜で開催された自動車技術展「人とくるまのテクノロジー展 2019」における、トヨタと日産の出展について報告する。

TOYOTA CONCEPT-愛i
トヨタブースの中央に展示された「TOYOTA CONCEPT-愛i」

  トヨタは、自動運転やEV化を進めるとともに、「クルマが、どんな未来になっても愛のつくプロダクトであり続ける」ことを目指している。ブースの中央には、こうしたトヨタのコンセプトを端的に現す「TOYOTA CONCEPT-愛i」が展示されていた。

  CONCEPT-愛iを取り囲むように、トヨタが幅広く進めている電動化、コネクティッド、自動運転や安全など多くのCASE関連技術を部品やパネルで展示した。

  日産は、プロパイロット2.0、新型軽自動車デイズ、「VCターボ」エンジン及び容量62kWhの新開発リチウムイオン電池を出展した。日産は、今後「NISSAN INTELLIGENT MOBILITY」を軸に着実な成長を目指すとしており、その新商品、新技術の一端を紹介した。

関連レポート:

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トヨタ:一連のCASE関連技術を出展

TOYOTA CONCEPT-愛i

時とともにドライバーを深く理解し「愛車」になっていく

TOYOTA CONCEPT-愛i

  トヨタのブースは、中央に「TOYOTA CONCEPT-愛i」を展示し、それを取り囲むように部品展示またはパネルにより、トヨタが「モビリティカンパニー」にフルモデルチェンジしていくための電動化、知能化、情報化に関する先端技術を紹介した。

  CONCEPT-愛iは、AIを搭載し、時とともにドライバーをより深く理解し常にドライバーを支え、ともに成長することで特別な存在となり、「愛車」になっていくコンセプトを現し、英文では、"more than a machine, a partner"と表現している。

 

覚醒度推定:自動運転の成立に必須

  ドライバーの眠気を検知する「覚醒度推定」を、実演入りで紹介した。SAE基準レベル2での「特定条件下での自動運転機能」やレベル3の条件付き自動運転の成立には、必須だとしている。IR(赤外線)カメラで目や口の特徴を検出、距離センサーデータで顔の向きや動作の特徴を検出して、ディープラーニングを用いた顔表情と動作の複合推定により、ドライバーに自覚のない段階での覚醒度低下の兆候も検知することができる。2020年頃に実用化する計画。

 

電動化関連技術:非接触充電、全固体Liイオン電池など

  電動化はCASEの重要な一環であり、またトヨタは「Toyota Environmental Challenge 2050」で、2050年に新車のCO2を2010年比90%削減、車のライフサイクル全体のCO2をゼロに近づけるなどの目標を掲げている。今回の展示会では、非接触充電、全固体Liイオン電池などの開発状況を展示した。

非接触充電 全固体Liイオン電池 シリコンPCUとSiC PCU試作品
非接触充電(イメージ)、インフラ側の一次コイルより磁界を発生させ、車載の二次コイルで電流に変換する 全固体Liイオン電池(充電イメージ)、図の上部分は液系電池、下部分が全固体電池 シリコンPCU(量産品)とSiC PCU試作品

電動化関連技術の紹介

非接触充電   EV/PHEVユーザーにヒアリングしたところ、ケーブルによる充電操作について「不便・煩わしい」などの不満の声が多い。その解決策として、非接触充電を、「磁界共鳴方式」により開発中(上左図参照方)。将来は、「非接触充電 + 自動駐車」を組み合わせることを検討している。
全固体Liイオン電池   全固体Liイオン電池は、現在の電解液・セパレータを固体電解質に置換えた電池。固体電解質内および正負極/固体電解質界面のLiイオンの移動速度が向上し、電池の小型化・高容量電池の搭載が可能になる。製造方法の確立など課題は多いが、2020年代前半の実用化を目指す(上中図参照方)。
SiCパワー半導体   SiC(シリコンカーバイト)パワー半導体は、シリコンパワー半導体より損失が少なく、高周波駆動が可能。燃費の最大10%向上と、PCU(Power control unit)体積1/5の小型化を目指している(上右図参照方)。
モーター用新型磁石
「省ネオジム耐熱磁石」
  トヨタは、レアアースであるネオジムの使用量を削減したうえで、高温環境でも使用可能な性能を確保した、世界初の新型磁石「省ネオジム耐熱磁石」を開発した。ネオジムの一部を、レアアースの中でも安価で豊富なランタン(La)とセリウム(Ce)に置き換えることでネオジム使用量を最大50%削減した。
  電動パワーステアリングなどのモーターでは2020年代前半での実用化を、さらに要求性能が高い電動車の駆動用モーターでは、今後10年内での実用化を目指している。
水素社会実現に向けて、FCV普及   トヨタは、FCV普及に向けた取り組みを進めている。MIRAIは、2020年以降世界で年間3万台以上の販売を目指す。FCバスは、2020年東京オリンピックに向け100台以上納入予定。FCトラックは、米国において、2019年秋に貨物輸送を開始予定。国内では2019年4月、FC小型トラックを2台導入した。
  トヨタは2015年1月に、燃料電池車(FCV)の特許1970件、水素タンクの特許290件など合計約5,680件のFCV関連の特許(審査継続中を含む)の実施権を無償で提供すると発表した。FCVの仲間をつくり、普及を進める。

資料:トヨタ

自動運転・安全技術:高速道路での自動運転Highway Teammateを2020年にも実用化

  トヨタは、自動運転技術を活用し、交通死傷者ゼロを追求する。

  自動運転では、高速道路での自動運転「Highway Teammate」を2020年にも実用化、さらに一般道での自動運転「Urban Teammate」を開発する。

  安全技術については、まずLexus LSなどに先進技術を搭載し、普及技術によりToyota Safety Senseに組み込んで多くのクルマに展開していく方針。

自動運転・先進安全技術

Mobility Teammate Concept   トヨタは、人とクルマが同じ目的で、ある時は見守り、ある時は助け合う、気持ちが通った仲間のような関係を築き、クルマを操る楽しさと自動運転を両立させる「Mobility Teammate Concept」を掲げている。
Highway Teammate/Urban Teammate   高速道路の入り口ランプウェイから出口ランプウェイまでの自動走行を可能とする「Highway Teammate」を開発中で、2020年にも実用化する計画。その後、高速道路での完全自動運転や一般道での自動運転を行う「Urban Teammate」、さらにあらゆる道路での完全自動運転を目指し開発を進めている。
先進安全技術   先進技術により、システムが対応できる交通死亡事故形態の範囲を拡大し、開発した先進技術を普及技術で多くのクルマに展開して、事故ゼロ社会を目指している。
  既に新型Lexus LSなどで、アクティブ操舵回避支援PCS、大型ヘッドアップディスプレイ(歩行者注意喚起表示)、フロントクロストラフィックアラート、パーキングサポートブレーキ(対後方歩行者)、ドライバー異常時停車支援システムなどを実現した。
安全技術の普及展開   普及技術であるToyota Safety Senseは、交通死亡事故の主な原因である「追突」「歩行者関連」「路外逸脱」などをカバーしている。2015年3月~2019年1月の間に、グローバルで累計1,000万台以上出荷し、搭載車種の追突事故件数は、非搭載車に比べ7割以上低減している。

資料:トヨタ

DCM標準化によるコネクティッドサービス

  トヨタは、2018年6月、車両の制御ネットワーク(CAN)に接続する車載通信機(DCM:Data Communication Module)を全グレードに標準搭載する初代コネクティッドカー、新型クラウンと新型カローラ スポーツ(ハッチバック)を発売した。これらの車両には、トヨタが構築したコネクティッドカー向けの情報インフラである「モビリティサービス・プラットフォーム(MSPF)」から、様々なコネクティッドサービスが提供される。今後国内で発売されるほぼ全ての乗用車にDCMを搭載し、MSPFに収集される車両データを活用した安心サービスを提供する。クルマ、メーカー、販売店を1本の流れでつなぎ、顧客に究極の安心を届ける。

  本展示会では、eケア、コネクティッドメンテナンスパックなどの安全・安心装備、オペレーターサービスなどの快適・便利なサービスを紹介した。

  また、人工知能を活用したタクシーの「配車支援システム」を紹介した。

DCMによるコネクティッドサービス

安全・安心   eケアの走行アドバイスでは、24時間365日専用オペレーターがお客様の車を見守り、車のヘルスチェックレポートではクルマの使用状況や走り方を分析し最適なメンテナンスを提案、さらにコネクティッドメンテナンスチェック(法的点検に加えて、走行距離に応じた入庫・整備を提案)などでお客様のクルマを見守る。
  ヘルプネット(エアバッグ連動タイプ)、安全運転をすると保険料がお得になるトヨタ専用保険、ハイブリッドナビ(トヨタスマートセンターの最新地図とビッグデータで検索した最適ルートをナビに配信、緊急の場合は車載ナビを利用する)などを提供。
快適・便利   機能を強化したオペレーターサービス、AI音声エージェントや、LINEマイカーアカウント(LINEにマイカーを「友だち」として設定すると、目的地の天候などをLINEを通して教えてくれる等)などを提供。

資料:トヨタ

人工知能を活用したタクシーの「配車支援システム」

  タクシー運行情報と、人口動態や気象予測などの情報を掛け合わせ、タクシー需要を予測し配信する「配車支援システム」を開発。モビリティサービス・プラットフォーム(MSPF)を活用し、ビッグデータを解析して、人工知能でタクシー需要を予測する。2018年2~4月に実証実験を行い、本システムを利用したタクシードライバーの平均売上が11%増加した。2020年1月以降に、東京地区のタクシー約4,000台に順次導入予定。

資料:トヨタ

 



日産:プロパイロット2.0、新型軽自動車デイズなどを出展

  日産は2018年度決算発表(2019年5月)と同時に、「New Nissan Transformation」を発表。EV/e-POWERやプロパイロット/プロパイロット2.0など、Nissan Intelligent Mobilityを軸に着実な成長を目指すとしている。今回の展示会では、こうした今後の成長を支える新技術・新商品を紹介した。

  具体的には、「プロパイロット2.0」、新型軽自動車「日産デイズ」、世界初の量産型可変圧縮比ターボエンジン「VCターボ」、新開発の62kWhバッテリーを出展した。

プロパイロット2.0:同一車線ハンズオフを実現

  高速道路における単一車線での運転支援技術(初代)プロパイロットは、先進の画像処理技術を搭載した単眼カメラを搭載し、2016年にセレナに初搭載、さらにエクストレイル、リーフ、2019年にはデイズに採用した。グローバルで累計35万台が搭載している。

  新たに、同一車線内ハンズオフが可能なナビ連動ルート走行を実現した「プロパイロット2.0」を開発し、2019年秋にスカイラインから搭載する予定。追い越しや車線変更を行うが、このときはドライバーが手をステアリングホイールに置いておくことが必要。元の車線に戻れば、再度ハンズオフが可能になる。

  7個のカメラ、5個のレーダー、12個のソナーなどセンサーを大幅拡充し、3D地図を搭載する。日本の高速道路を網羅する3D地図は2019年3月に完成したばかりで、プロパイロット2.0が初の採用となる。

  3D地図は、ダイナミックマップ基盤(株)が作成した、各自動車メーカーが共有して使用する基盤データをベースに、ゼンリンが独自に収集・整備した情報を加えた地図データを使用する(日産とゼンリンはダイナミックマップ基盤社に出資している)。またLiDARは搭載しないが、カメラの映像を利用して3Dマップを最新の状況に更新していくという。

  ドライバーの視線は常に前方を注視していることが必要で、ドライバーモニターカメラが常時確認する。プロパイロット2.0も運転の主体はドライバーであり、プロパイロットと同じSAE基準レベル2の位置づけ。条件付きではあるが運転をシステムに委ねるレベル3の開発は、発想が全く異なってくるとのことであった。

  日産は、プロパイロット/プロパイロット2.0を20車種に搭載、20の市場に投入して、2022年に100万台規模で販売する計画。

ハンズオフが可能 7個のカメラ、5個のレーダー12個のソナーなど 道路上の正確な位置を把握
高速道路同一車線走行時にはハンズオフが可能(視線は常に前方を注視していることが求められる) 7個のカメラ、5個のレーダー、12個のソナーなどを搭載する センサーと高精度3D地図により、車両の周囲360度の情報と道路上の正確な位置を把握する。

資料:日産

新型軽自動車デイズ:プラットフォームとパワートレインを新開発

  プラットフォーム、エンジン、CVTを新開発して商品力を強化した新型軽自動車デイズを、2019年3月に発売した。軽自動車をファーストカーとして選択するユーザーが増え、長距離走行のニーズも高まっているという調査結果から、プロパイロットも設定した。

<新開発プラットフォーム>

  高度な衝撃吸収構造と新型パワートレインの小型化により、フロントオーバーハングを大幅に短縮。旧型デイズから65mm延長されたホイールベース(2495mm)を活用し、広いキャビン空間を実現した。

<新型軽自動車専用エンジン>

  軽自動車専用エンジンとしてBR06エンジンを新開発。ロングストローク化するとともに、デュアルインジェクターやガス流動化強化により混合気の燃焼安定性を向上させ、大幅なトルクアップを実現。サブバッテリーをリチウムイオン電池に変更した新S-HYBRIDを組み合わせることで、低燃費を実現した。

<新型軽自動車専用エクストロニックCVT>

  国内軽自動車専用設計とすることで小型・軽量化を実現し(約4.2kg、約6%軽量化)、また軽トップレベルの変速比幅(6.0)により燃費を向上させた。

  従来は、海外にも広く展開する「軽・小型FF車用CVT」を搭載していた。

日産デイズ BR06エンジンとエクストロニックCVT
プラットフォームを含め、一から新開発した新型軽自動車「日産デイズ」 それぞれ新開発した、BR06エンジンとエクストロニックCVT

VCターボエンジン:常に理想的な圧縮比を実現しながら走行

VCターボエンジンのカットモデル
「VCターボ」エンジンのカットモデル

  「VCターボ」エンジンは、熱効率を決めるパラメーターである圧縮比を連続的に可変させることで、高い環境性能と圧倒的な動力性能を同時に達成した、世界初の量産可変圧縮比エンジン。

  ガソリンエンジンでは、負荷の状況に応じて、理想的な圧縮比は変わるが、従来のエンジンは、ピストンとクランクシャフトが直接コンロッドでつながる構造のため、圧縮比を変えることはできない。VCターボエンジンでは、コンロッドに替えてマルチリンク機構でクランクシャフトを回転させる構造とし、リンクの端点をアクチュエーターで可動にすることにより、ピストンとクランクシャフト間の距離を変化させ、圧縮比を8.1から14.1の間で無段階に自在に変更できるようにした。ドライバーのアクセル操作に対応して、常に最適な圧縮比に変化させる。

  米国仕様のInfiniti QX50とNissan Altimaが搭載している。

 【動画】「VCターボ」エンジンのメカニズム

 

新型「日産リーフe+」に搭載する新開発の62kWh電池

  日産は、エネルギー密度が増したバッテリー(容量62kWh)とよりパワフルなパワートレインを搭載する「日産リーフe+」を開発し、日本で2019年1月に発売した。順次米国と欧州市場に投入する。

  新開発の62kWhバッテリーでは、セルの結合に新しい生産技術を開発し、室内空間やデザインを変えることなく、1.5倍のセルを搭載する。40kWhバッテリーは8セルでモジュールを構成、モジュールどうしはハーネスで接続している。62kWhのバッテリーでは、セルとハーネスをレーザーで接合するモジュール構造を開発。モジュールどうしの接続スペースを大幅に削減するとともに、モジュールの高さを自在に設定できるようになった。12セル、21セルおよび27セルのモジュールをパックし、搭載セル数を従来の192セルから288セルへ1.5倍にした。バッテリー容量を40kWhから62kWhへ、航続距離(国内WLTCモード)を322kmから458kmへ拡大した。

Li-ion Battery Pack モジュール
容量62kWhのLi-ion Battery Pack リーフ発売当時の24kWhバッテリーの4セルのモジュール(写真左)と、62kWh用バッテリーの27セルのモジュール(写真右)


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キーワード
トヨタ、日産、Concept-愛i、覚醒度推定、非接触充電、全固体リチウムイオン電池、SiCパワー半導体、Highway Teammate、プロパイロット2.0、新型軽自動車デイズ、VCターボエンジン、62kWhリチウムイオン電池

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