【ものづくり】自動車の軽量化を促進するプラスチック部品・材料

内燃機関、電動車のパワートレイン、ドアトリムなどの採用事例

2018/11/02

要約

  自動車業界における重要なテーマの1つに軽量化があげられる。自動車の軽量化を促進している材料の1つがプラスチックであることは間違いない。本稿では、近年ますます重要性が高まっている自動車用プラスチックの技術動向について紹介する。最初に自動車に使用される各種プラスチックの特性や採用動向などを一覧表にまとめ、続いて最近の材料開発や加工技術の動向を紹介する。

  プラスチックを使用した自動車部品は、非常に多くの車両部位に使用されているが、本稿では代表的なパワートレイン部品および内装部品のプラスチック用途例について、様々な展示会で撮影した画像を用いて解説する。ICE(内燃機関)ならびにEV、HV、FCVなど電動車のパワートレインに採用されているプラスチック部品・材料、ドアトリムの素材や各種内装部品に採用されているプラスチック材料などを紹介する。

プラスチック材料はバッテリーの軽量化にも貢献 複雑な形状のインテークマニホールド 耐衝撃性、デザイン性も求められるドアトリム

 

  本稿は安田ポリマーリサーチ研究所の安田武夫所長の協力により、同氏がシーエムシー・リサーチ「自動車用プラスチック部品の開発・採用の最新動向 2018」で紹介した資料をもとに、最近注目されているプラスチック関連技術の動向も加えて報告する。また次回レポートでは接合・接着などプラスチック加工技術の動向を取り上げる。

 

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自動車用プラスチックの特性と最近の動向

  自動車用プラスチックを使用量の多い順にあげると、PP(ポリプロピレン)、PA(ポリアミド)、ABS樹脂、PUR(ポリウレタン)、PBT/PET(ポリブチレンテレフタレート/ポリエチレンテレフタレート)、POM(ポリアセタール)、PC(ポリカーボネート)、PE(ポリエチレン)、PVC(ポリ塩化ビニル)、PPS(ポリフェニレンスルフィド)、m-PPE(変性ポリフェニレンエーテル)などとなっている。

  表1では、特に重要と思われる自動車用プラスチックについて、各素材の特性を記号で示す。表2では、自動車用プラスチックの最近の動向について、使用部位を例示して紹介する。これらの一覧表は、各種プラスチックを自動車用途として検討する場合に材料選定の判断基準として参考になると思われる。

 

表1:自動車用プラスチックの特性(概要)

自動車用プラスチックの特性

出所:シーエムシー・リサーチ「自動車用プラスチック部品の開発・採用の最新動向 2018」ほか各種資料より作成

 

表2:主な自動車用プラスチックの最近の動向

材料名 主要プラスチックの動向
ポリプロピレン (PP) ①使用量が最も多いプラスチック (全プラスチックの約半分)。大型部品 (バンパー、インストルメントパネル)を中心に採用されている。
②PP-LFT (長繊維強化PP)はモジュール化部品への採用が増加、一部CF (炭素繊維)強化品も使用。
ポリエチレン (PE) HDPEの燃料タンクへの採用が増加。(バリア層はEVOHが主力)
ABS樹脂 外観、二次加工性の特長から、高級車種の内装部品で需要が伸長。
ポリアミド (PA、ナイロン) ①PA6、PA66が、パワートレイン系部品・モジュール化部品を中心に採用されている。
②PA11、PA12の需要が燃料チューブ等で伸長。(フッ素樹脂との積層品が中心)
③耐熱性PAは、摺動部品、冷却系部品、燃料系部品への採用が増加。
ポリアセタール (POM) ①耐エコガソリン性が良好のため、燃料系部品への採用増加が期待される。
②車内空間を清浄化するため、低VOC (低揮発性有機化合物)グレードが標準的に採用されている。
ポリブチレンテレフタレート (PBT) ①ECUのケース、センサ-等に電気的性質・耐薬品性に優れるPBTの採用が増加。
②ワイヤーハーネスコネクタの部品点数が急増し、PBT需要が伸長。
ポリカーボネート (PC) グレージングへの本格的な採用が注目される。耐候性、表面の耐擦傷性改良等が検討事項。
ポリフェニレンスルフィド (PPS) 電動化関連部品 (PCU、インバータ等の筐体)に大量に採用され、需要が急伸。
その他 ①変性PPEはリチウムイオン電池(LiB)関連部品、強化PETは電装品等、PF、PU、PMMA等も各種部品に使用。
②CFR(T)Pは高機能性を活かし、高級車を中心に各種部品への採用が徐々に進捗。
③バイオプラスチック、熱可塑性エラストマーはその特長を活かし、用途開発が進んでいる。

出所:シーエムシー・リサーチ「自動車用プラスチック部品の開発・採用の最新動向 2018」ほか各種資料より作成
注:
HDPE: High Density Polyethylene 高密度ポリエチレン
EVOH: Ethylene-vinylalcohol copolymer エチレン-ビニルアルコール共重合体樹脂
PET: Polyethylene terephthalate ポリエチレンテレフタレート
PF: Phenol Formaldehyde Resin フェノール樹脂
PU: Polyurethane ポリウレタン
PMMA: Polymethyl methacrylate ポリメチルメタアクリレート
CFR(T)P: Carbon fiber reinforced (thermo) plastics 炭素繊維強化(熱可塑性)樹脂



自動車用プラスチックの技術開発動向

  自動車用途として注目されているプラスチックの技術開発は、材料開発、成形加工技術の開発、その他、と大きく3つに分類される。

 

材料開発

  材料開発は、新規高分子の開発と、既存の材料の組み合わせによるものに分類される。前者は、新しい化学構造の高分子の開発、または同じ化学構造でも性質を変えた高分子の開発に分類される。後者は、高分子同士の組み合わせによる材料開発(ポリマーアロイ/ポリマーブレンド)、および高分子を主に無機材料(各種強化繊維、金属、金属酸化物など)と組み合わせる材料開発(複合材料:コンポジット)に分類される。

  自動車分野に材料を供給する樹脂メーカーは、ユーザーからの要望に応じて高分子を選定し、上記の開発方法を用いて種々の新規グレードを開発している。表3は自動車用プラスチックの新規グレードを示している。

 

表3:主要自動車用プラスチックの新規グレード

材料 機能・用途など
各種材料共通の新規グレード 導電性、高熱伝導性、炭素繊維強化、長繊維強化、ナノコンポジット、バイオマス系 等
PP固有の新規グレード 高結晶性、高耐衝撃性(PP/PA11)、無塗装高外観、 PP接着性樹脂、 高流動性 等
PMMA固有の新規グレード 超耐熱性、高硬度、外装用無塗装、高漆黒調、高流動性、ゼロ複屈折 等
ABS樹脂固有の新規グレード きしみ音対策、無塗装加飾、塗装性、車輌内装用耐熱、持続型制電性 等
PC固有の新規グレード 高硬度 、高透明性、耐薬品性、バイオ系、熱線吸収性、表面硬度改良、自動車レンズ用 等
PA固有の新規グレード 無電解めっき対応、高熱伝導性、金属接着性、耐熱老化性向上、高摺動性PA、高剛性・良外観・易成形性強化、ダクト用ブロー成形用途、射出発泡 等
POM固有の新規グレード 低VOC、メタリック外観、高性能・導電性、高性能GF強化、耐クリープ・高剛性、柔軟性 等
PBT固有の新規グレード 耐加水分解性向上、長期特性改良、超高流動、レーザー溶着用、良外観・低そり、ダイレクト蒸着用、高靱性 等
変性PPE固有の新規グレード リチウムイオン電池用、電線被覆用柔軟性、高誘電 等
PPS固有の新規グレード 低燃料膨潤性、低ガス・耐ヒートショック、金属密着性、高伝熱、ブロー成形用、柔軟性 等

出所:シーエムシー・リサーチ「自動車用プラスチック部品の開発・採用の最新動向 2018」ほか各種資料より作成

 

成形加工技術の開発

  自動車で使用されるプラスチックの大半は熱可塑性樹脂であり、自動車分野で最も使用されている成形法は射出成形法である。熱可塑性樹脂の成形加工技術として最近注目されているのは、ヒート&クール成形(成形品の表面改質やウエルドレス成形が可能)、フィルムインサート成形(加飾フィルムをインサート成形し成形品の性能を向上)、ハイブリッド成形(CFRTPを使用し、高強度・高剛性材料を提供)等である。

  このほか、ダクト関連に使用されるサクションブロー成形も注目されている。また、シートプレス成形では、PPなどのシートをプレス成形することで大面積の成形が可能。射出成形で行うと超大型成形機が必要であるが、比較的小型のプレス成形機で大型部品が成形可能となり、省エネにも貢献する優れた成形法である。

 

その他の関連技術

  CAE、各種二次加工、Rapid Prototyping、リサイクル関連技術は、自動車用途としてプラスチックを使用する際に重要な技術と言える。

  中でも最近特に注目されているのは、接着・接合および加飾であろう。接着・接合は自動車の軽量化に向けたキーテクノロジーとして、加飾は内装部品の装飾手段として注目されている。接着・接合については次回レポートで別途紹介する。

 

表4:最近の注目すべきプラスチック関連技術

1. 材料開発
1-1.新規ポリマーの開発
① ポリオレフィン系  ② ポリスチレン系  ③ ポリアミド系 ④ ポリエステル系 ⑤ ポリイミド系 ⑥ バイオマス原料系 ⑦ 特殊透明性ポリマー ⑧その他
1-2.ポリマーアロイ、ポリマーブレンド
① ナノアロイ
1-3.複合材料 (ハイブリッド材料)
① ガラス長繊維強化熱可塑性樹脂 ② 複合強化熱可塑性樹脂 ③ ナノコンポジット ④ 成形性改良CFR(T)P ⑤ 高熱伝導複合材料  ⑥ 導電性複合材料 ⑦ 積層体・UDテープ ⑧その他
2. 成形加工技術 (熱可塑性樹脂)
2-1.射出成形
① ガスアシスト成形 ② アウトサート成形 ③ 低圧成形 ④ DSI法 (Die Slide Injection molding)、DRI法 (Die Rotating Injection molding) ⑤ MID法 (Molded Interconnect Device) ⑥ 複数成形法の組合 (射出圧縮成形法等) ⑦ 多色・多材質成形 ⑧ ヒート&クール成形 ⑨ ホットメルトモールディング ⑩ コンパウンド同時成形 ⑪ フィルムインサート成形 ⑫ ハイブリッド成形  ⑬ 加飾成形 ⑭ その他
2-2.ブロー成形法
① 二重壁ブロー成形法 ② 多次元ブロー成形法 ③ サクションブロー成形 ④ その他
3. その他の技術
① CAE (Computer Aided Engineering) ② 二次加工 (切断・切削、接着・接合、溶着、塗装、印刷、メタライジング、アニーリング処理) ③ Rapid Prototyping (3Dプリンティング、簡易金型成形、切削加工など) ④リサイクルなどの環境対応技術

出所:シーエムシー・リサーチ「自動車用プラスチック部品の開発・採用の最新動向 2018」ほか各種資料より作成



ICE(内燃機関)向けのプラスチック部品

シリンダーヘッドカバー
シリンダーヘッドカバー (デュポン)
インテークマニホールド
インテークマニホールド (マーレ)
GF強化PA66製のシリンダーヘッドカバー。この部品を樹脂化する際のメリットに騒音抑制が挙げられた。ここで使用されたグレードは更に騒音を下げるものという。音を吸収する第三成分を添加することにより達成した。添加剤にゴム的なものが使用されたと考えられるが、単なるゴムの添加では製品の要求特性の高剛性等を損なう可能性もあり、物性バランスの最適化のための材料設計が工夫されたと思われる。 インテークマニホールドは、内燃機関の燃焼室に空気を導入するための多岐管。PA6またはPA66のGF強化グレードを使用。PAの耐熱性、機械的特性、耐薬品性を活用している。複雑な形状だが、射出成形が用いられる。射出成形時に溶着するDSI法、DRI法、射出成形後にレーザー溶着する方法が採用されている。この部品はアルミニウムからの代替で、軽量化や低騒音化等に大きく貢献している。

ラジエーター
ラジエーター
インタークーラー
インタークーラー(ベーア)
ラジエーターは熱交換器の一種で、代表的な冷却系部品である。上下にあるラジエータータンクは、耐不凍液性等からPA66やPA610が使用され、ファン周辺はコストパフォーマンスの優れたPPが使用されている。また、ラジエーターファンは、PPまたはPAのGF強化グレードが使用されている。強度、剛性、耐久性などを活用した用途である。 インタークーラーは過給機付き内燃機関用の補機で、過給機による圧縮で温度が上がった空気を冷却する熱交換器。燃費効率と出力を向上させる。空冷式が多いが、近年は吸気系の容量を減らすため水冷式が採用されることもある。左右のタンクには、GF強化PA46が使用されている。耐熱性、機械的強度、耐疲労性等を活用したもの。PA6T、PA9T、PA66等も使用される。

キャニスター
キャニスター (愛三工業)
エンジンマウントブラケット
エンジンマウントブラケット (デュポン)
キャニスターは、燃料タンク内で発生するガソリン蒸気を活性炭で一時的に吸着し、大気中に放散されるのを防止する部品である。吸着したガソリン蒸気はエンジンで焼却する。この製品はキャニスターに蓄熱材を採用することにより、HVでも対米ゼロエバポ規制をクリアしている。耐ガソリン性、耐熱性等の要求でPA66が使用されていると推定される。 エンジンを車両に搭載する際の連結部分の部品の支持具。アルミダイカスト部品の樹脂化で、約30%軽量化した。また樹脂化により熱伝導が低減、防振ゴム部品の熱劣化を抑制した。使用したPAの特性は、高い静荷重とエンジントルク応力に耐える強度、耐クリープ変形、疲労特性、NVH吸収性能、周辺部品への熱伝導低減。

オイルパン
オイルパン (BASF)
ディーゼルエンジン用ベンチレーター
ディーゼルエンジン用ベンチレーター
オイル循環系部品で、PAの耐薬品性が活かされている。最近は大型エンジンのオイルパンにもPAが使用されるようになった。鋼鉄、アルミなどの金属製と比較して非常に複雑な部品形状にできる自由度の高さに加え、オイルフィル用マウント(磁気による金属粉の除去部品)が一体化できることから、重量とコストの削減が可能。 ベンチレーターは、閉鎖された空間と外部との換気を促す装置の総称。この部品はディーゼルエンジンの排出ガス規制に対応している。クランクケース内圧調整機能とオイルミスト分離機能を一体化した。材料はPA6製と推定される。耐熱性、耐薬品性、機械的強度を活用し、軽量化も達成している。

エンジン冷却モジュール
エンジン冷却モジュール (東レ)
吸気モジュール
吸気モジュール (ケーヒン)
ラジエーター、インタークーラー等とは別形態の新方式の冷却系部品で、PPSの耐熱性、機械的強度、耐薬品性などを活用した用途である。 インテークマニホールド、インジェクター、スロットルボディをモジュール化したもので、PPA(PA6T)が使用されている。耐熱性、耐薬品性、機械的性質などが優れている。

サーマルマネジメントモジュール
サーマルマネジメントモジュール (シェフラー)
ブロー成形によるPPS製のダクト
ブロー成形によるPPS製のダクト (東レ)
シリンダーヘッド、シリンダーブロック、エンジンおよびトランスミッションオイル等、室内の温度調整に使用される。冷却回路内で接続されたシステムで、要求に応じて構成部品の温度制御を行う。位置センサーで制御される電気機械式ロータリースライドバルブ装置を使用し、冷媒の流量を精密に制御する。ハウジングはPPSで、耐熱性、耐薬品性(耐LLC性)等を活かしている。 エンジンの小型化、過給機の設置などエンジン周辺の温度は上昇傾向にある。この部品は従来、PAのGF強化品が使用されていたが、より耐熱性の高いPPSのGF強化品を採用。低コストでブロー成形に必要な溶融粘度、溶融張力を有したグレードを開発して得られたダクトである。

ターボチャージャー用エアバイパス弁
ターボチャージャー用エアバイパス弁 (不二越)
モーターコントロールバルブ
モーターコントロールバルブ (日本サーモスタット)
ターボエンジンのドライバビリティを向上する薄型のターボチャージャー過給圧制御バルブである。内側からPEEK、PPS、PA66と耐熱性・耐食性の高い順で構成される。3種の材料を成形するという複雑で高度な成形技術が必要である。特性は、① 小型/軽量化技術により搭載性が向上、②樹脂モールディングによる高い耐食性。 外部環境の状況に応じて、エンジンの水温、各配管への水分配量を最適制御することにより、暖機速度の向上、機械損失の低減、燃焼効率の向上を図る。ハウジングには耐熱水性、耐熱性等に優れたPPSまたはPPAが使用されている。


  上記以外のICE(内燃機関)向けプラスチック部品を以下に列記する。

  • インタークーラーエンドキャップ (PA)
  • サーモスタットハウジング (PPS、PA6T、PA9T)
  • チェーンレバーガイド (PA)
  • ウォータージャケットスペーサー (PA6T)
  • ターボチャージャーインペラ (PEEK)
  • エンジンオイルポンプ・ロータ (PEEK)
  • エンジンクーリングモジュール (PF)
  • カムシャフトプ―リー (PF)
  • ウォータージャケット (PA6T)
  • 電動オイルポンプ (PA)
  • EGRバルブ (PBT)
  • スロットルボディ (PA)
  • ターボアクチュエータ (PPS)
  • 流路切替制御弁 (エンジン冷却水) (PPS)  など


EV・HV・FCVなど電動車パワートレイン向けのプラスチック部品・素材

LiB関連材料
LiB関連材料 (旭化成)
電気二重層キャパシター
電気二重層キャパシター (TPR)
電動車の動力源であるリチウムイオン電池(LiB)のフレーム、バスバー、スペーサーにはm-PPE(変性ポリフェニレンエーテル)が使用されている。耐アルカリ性に優れ、非ハロゲン系難燃剤を使用したUL 94V-0の難燃性、優れた薄肉流動性に加え、低比重のため製品の軽量化に貢献する。 電気二重層キャパシターは二次電池に比べて容量は小さいが、大出力という特長を活用して、発進時や登坂時の電源に適している。この製品は板状のカートリッジタイプで、ハウジングは耐熱性、電気特性等に優れたPPが使用されている。

HV用燃料タンク
HV用燃料タンク (八千代工業)
インバーター
インバーター
HDPEとEVOHを組み合わせたタンク。バルブ取り付け時にタンク内面から溶着することで穴あけを減らし、燃料蒸散を低減する機能部品内蔵技術を開発、採用した。HVなど静粛性の高い車種ではガソリンの揺れによる音が不快音として車内に響く。その音を低減する構造物をインサートブロー成形することにより静音化を図っている。 インバーターは電池に蓄えられた直流電力を交流電力に変換し、変換する際に車速やシステム制御に必要な周波数をつくりだすことで、モーター回転数、駆動トルクや電力を制御し、車両の加減速を行う部品である。ハウジングは、電気特性、耐熱性、機械的強度等のバランスが優れたPBT(あるいはPPS)と推定される。

フィルムコンデンサー
フィルムコンデンサー (指月電機製作所)
HV用電源ボックス
HV用電源ボックス
EV向けインバーターの機能を補助するフィルムコンデンサー。ハウジングにPPSを使用。PPSの優れた電気特性、耐熱性、耐薬品性などを活用した用途である。 PBTの優れた電気特性、成形性、耐熱性、寸法特性、低吸湿性などが活かされた用途である。

EV用電源コネクタ
EV用電源コネクタ (矢崎総業)
IPMハウジング
IPMハウジング (日立化成)
EV用電源用途の耐高電圧、耐高電流としてはPBTで十分使用可能。黒い部分はPBTが使用されているが、白い部分は、落下時の衝撃に耐える必要があるため、PC/PBTアロイが使用されている。PBTの優れた電気特性、寸法特性などが活かされた用途である。 IPM (Intelligent Power Module)は、各種の電力用半導体に駆動回路や自己保護機能を組み込んだモジュール。EV・HVなどで電力制御用などに使用されている。ハウジングは各種半導体からの発熱に耐えるPPSを採用。優れた電気特性、機械的強度、寸法安定性、成形性等を活用している。

PTCヒーター
PTCヒーター (ボルグワーナー)
HV制御システム
HV制御システム (デンソー)
周辺温度を自己判断して放熱量制御を行う電熱線ヒーターの一種。EVではメインのカーヒーターとして採用されている。熱源となるエンジンが存在しないEVにヒーターを搭載するため、動力源となる電力を直接消耗する欠点もある。ハウジング等の絶縁材料にPBTなどのエンプラ系プラスチックが使用されている。 HV用ECU、電池監視ユニット、システムメインリレーなどで構成された制御システム。ハウジングなどにPBT、PPSなどが使用され、電気的特性、機械的強度、耐熱性、寸法安定性等を活用している。

FCV用水素タンク
FCV用水素タンク (トヨタ)
FCスタック
FCスタック (トヨタ)
水素燃料電池車(FCV)用の水素タンク。アルミ製の内殻の上にCFRPを巻き付け、軽量化を図っている。もちろんCFRPの高強度・高剛性などを活用した用途である。なお、このタンクのライナーには、PA系材料が使用されている。 FCスタックは水素と空気中の酸素の化学反応を利用した発電装置である。フレームには熱可塑性CFRPが採用されている。トヨタと東レの共同開発によるCFRPで、大量生産に適した短時間でのプレス成形が可能。量産車の構造部品への採用は世界初とされる。

FCVのエアバルブモジュール
FCVのエアバルブモジュール (アイシングループ)
FCV用水素ディテクター
FCV用水素ディテクター (エフアイエス)
調圧、分流、封止のエア制御機能をモジュール化した部品で、発電時は供給されるエアを分流、調圧し、発電停止時はエアを遮断封止する。部位によりPPS、PA66およびゴムが使い分けられている。 トヨタのFCV「MIRAI」に採用された水素検知器で、2カ所に搭載されている。水素ガス漏れが発生した場合、直ちに検知、警告する。国土交通省はFCVの基準として、水素ガス漏れ検知器の装備を定めている。ハウジングは強化PBT/PCである。


  上記以外の電動車パワートレイン向けプラスチック製品を以下に列記する。

  • モーターコントローラー (PC)
  • 水素インジェクター (PA)
  • 水素燃料充填ノズル (PA)
  • HV用ECU (PBT)
  • HV用インバーターのバスバー (PBT)
  • オルタネーター (PPS)
  • HV用モーターステーター (PPS)
  • HV用配線モジュール (PP)
  • HV用IPU (Intelligent Power Unit) (PPS)
  • インバーター冷却用電動ウォーターポンプ (PPS)
  • HV用端子台 (SPS)  など


ドアトリムのプラスチック素材

  ドアトリムは自動車のインテリア空間を構成する重要な部品で、表皮材、クッション層、芯材の三層構造になっている。側面衝突に対する乗員安全性の確保に加え、軽量化など環境への配慮や、加飾などによるデザイン性の向上が求められる。

PP製ドアトリム
PP製ドアトリム (河西工業)
ナノコンポジット使用ドアトリム
ナノコンポジット使用ドアトリム (河西工業)
成形性、軽量性などに優れたPPの特性を活用している。一部金属光沢を示す部位は表面装飾技術を施して付加価値を高めている。 PPのナノコンポジットを使用して射出成形したドアトリム。世界で最も量産されている自動車向けナノコンポジットPPである。

高耐衝撃プラスチック製ドアトリム
高耐衝撃プラスチック製ドアトリム (トヨタ紡織)
CNF/PP製ドアトリム
CNF/PP製ドアトリム (トヨタ紡織)
高耐衝撃プラスチックを使用。PA11とPPがナノレベルで分散制御され、「サラミ構造」を形成した世界トップクラスの耐衝撃性を有するプラスチックである。PPへの耐衝撃プラスチックの添加はドライブレンドで対応可能。PPに耐衝撃プラスチックを添加することで、剛性を維持したまま衝撃強度を向上することができる。 植物由来の補強材として注目されるセルロースナノファイバー(CNF)を使用している。環境省のNCV (Nano Cellulose Vehicle)プロジェクトで検討中の素材。自動車内装部品向け材料としてドアトリム技術材への適用を検証している。要求特性としては剛性と耐衝撃性の両立である。PP/CNF材での基材剛性と成形性の適合が開発のポイント。

PP製ドアトリム
PP製ドアトリム (積水化学工業)
高機能フィラー配合ドアトリム
高機能フィラー配合ドアトリム (宇部興産)
高倍率発泡技術応用製品。独自原料を配合した技術で、倍率発泡による軽量化(平板で50%、内装トリムで25~35%の重量削減)、従来の非発泡品と同等の外観、強度と剛性の確保、といった特性を備えている。 この部品に使用した材料は、宇部興産の関連会社が開発した高機能フィラーの硫酸マグネシウムを使用している。PPにタルク/硫酸マグネシウムを補強しているが、フィラーの含有量が少なくて済むため、部品として軽量化を達成している。


内装向けプラスチック部品・素材

インストルメントパネルコア
インストルメントパネルコア (セラニーズジャパン)
オートヒーターコンローラー
オートヒーターコンローラー (ユーシン)
インパネのコアを構成しているため、高剛性・高強度、耐衝撃性、耐熱性、寸法精度、寸法安定性、軽量性に優れた長繊維強化PP(PP-LFT)を使用している。 エアコンからの温度・風量調整、内外気の切り替え、吹出口の切り替えなどを操作するスイッチ。ABS樹脂のバランスの取れた各種物性(機械的強度、電気特性、耐熱性、寸法安定性、装飾性、外観等)を活用している。

スピーカーグリル
スピーカーグリル (セラニーズ)
DURABIO製表示パネル
DURABIO製表示パネル (三菱ケミカル)
乗客が触れるとキズ等が付き外観不良になるため、耐摩擦摩耗性の優れたPOMを使用している。 DURABIOは三菱ケミカルが開発した植物由来のイソソルバイドを主原料としたバイオポリカーボネート。従来のPCと比較して、高い透明性、優れた光学特性等が特長。PCに匹敵する耐衝撃性を示す。

電子ミラー
電子ミラー (日本精機)
バックドアインナープレート
バックドアインナープレート (三菱ケミカル)
ミラーモードとカメラモニターモードの切り替えが可能な電子ミラー。PC/ABS系材料が使用されたと思われる。 金属代替用途のため、高剛性・高強度で軽量性に優れたLFT-PPを用いている。この材料による自動車用の準構造部材及びその他部品への適用を図っている。


  その他のプラスチック製内装部品を以下に列記する。

  • オーバーヘッドコンソール (PP)
  • グローブボックス (PP)
  • シートパン (PP-LFT)
  • エアコンベンチレータ (ABS樹脂)
  • 薄型レジスタ (PC/ABS樹脂)
  • メーターパネル (PC)
  • エアダクトコントロールビーム (POM)
  • ベンチレーター (m-PPE)
  • ヘッドライナーモジュール (PP)
  • ステアリングスイッチ(ABS樹脂)
  • レバーコンビネーションスイッチ (PA、POM、ABS樹脂)
  • コンソールボックス (PP-LFT)  など

 


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キーワード
軽量化、電動化、樹脂、プラスチック、CFRP、炭素繊維、複合材、コンポジット、金属代替、高剛性、耐熱性、高強度、熱可塑性、熱硬化性、熱伝導、成形、射出成形、内装部品、ハウジング、インテークマニホールド、ドアトリム

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