ブラジル:景気底打ちで、自動車市場は緩やかに回復

2017年の販売は前年比4%増の213万台の見込み

2017/09/01

要約

 ブラジルでは2年間の景気後退を経て、2017年1-3月期の実質GDP成長率が9四半期ぶりにプラスになるなど、景気底打ちが見えてきた。テメル大統領への収賄疑惑など政治的な不安要因は残るが、景気は緩やかに回復に向かっている。自動車市場にも回復の兆しが見え、新車販売台数は4年連続減少していたが、2017年1-7月は前年同期比3.4%増。2017年通年の新車販売見通しは前年比4.0%増の213万台(ブラジル自動車工業会(ANFAVEA)の2017年7月時点での予測)。

 生産調整や従業員のリストラが続いていた生産拠点でも、2017年に入ってからは生産台数が回復し、各メーカーの投資意欲も戻ってきている。2017年通年の生産台数見通しは前年比21.5%増の261万台、うち輸出は35.6%増の71万台の見込み(ANFAVEAの2017年7月時点での予測)。

 2017年1-7月のライトビークル市場シェアの上位3社は引き続きGM、FCA、VWであるが、FCAとVWは販売ピーク時の2012年に比較すると大幅にシェアを減らし、現代自、トヨタ、ホンダ等がシェアを拡大している。乗用車モデル別ランキングでは、GMのChevrolet Onix、現代自のHB20、FordのKa等、いずれもサブコンパクト車が上位。販売が急拡大している小型SUVでは、ホンダのHR-V、FCAのJeep Renegade、現代自のCretaが1位~3位を占めた。

 ブラジル政府は2017年4月に、2018年に導入する新自動車政策Rota 2030を発表。15年間にわたる長期ビジョンと明確なルールを設定し、安心して投資ができる環境の整備と国内産業の競争力強化を目指す。

 生産拠点での拡充では、JLRが2016年6月に南米初の新工場(年産能力2.4万台)を稼働、トヨタは同年5月に中南米初のエンジン工場(年産能力10.8万基)を開所した。また、VWは小型車向けMQBプラットフォーム対応ラインを導入するために26億レアルを投資、GMも新型車生産等のために3工場に45億レアルを投資する計画。Renaultは7.5億レアルを投じてエンジン生産施設を拡充する。

 

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2017年1-7月の販売は3.4%増の120万台

 ブラジルの自動車販売は2012年から4年連続減少し、2016年は前年比20.2%減の205万台となった。2014年以降は国内の景気後退の影響で、販売が大幅に減少した。2017年に入ると経済回復の影響で販売が上向きになり、2017年1-7月は前年同期比3.4%増の120万台となっている。

 2016年の販売台数のうち、国産車は前年比17.4%減の178万台、輸入車は34.8%減の27万台。販売台数に占める輸入車比率は2011年の23.6%から年々減少し、2017年1-7月には11.0%に低下。2011年に導入された輸入車の税率引き上げや2013年から実施された自動車政策INOVAR-AUTO等の国内生産振興策が影響したとされる。

 2016年の生産台数は前年比11.2%減の216万台、うち輸出は24.8%増の52万台。国内需要低迷により生産台数は減少したが、2015年半ば以降のレアル安やアルゼンチン向けの輸出の回復により、輸出は増加している。2017年1-7月の生産は22.4%増の149万台、うち輸出は55.3%増の44万台となった。



ブラジルの自動車生産・輸出・販売台数

(台)

2012年 2013年 2014年 2015年 2016年 2017年
(見通し)
2016年
1-7月
2017年
1-7月
生産 3,402,508 3,712,380 3,146,118 2,429,463 2,157,379 2,620,000 1,215,477 1,488,041
輸出 445,219 568,299 334,501 416,955 520,286 705,000 283,054 439,586
輸出/生産 13.1% 15.3% 10.6% 17.2% 24.1% 26.9% 23.3% 29.5%
販売 3,802,071 3,767,370 3,498,012 2,568,976 2,050,317 2,130,000 1,164,944 1,204,260
(内) 国産車 3,014,008 3,060,523 2,880,990 2,154,643 1,780,239 - 1,002,243 1,072,214
(内) 輸入車 788,063 706,847 617,022 414,333 270,078 - 162,701 132,046
輸入車/販売 20.7% 18.8% 17.6% 16.1% 13.2% - 14.0% 11.0%
資料:ブラジル自動車工業会 (ANFAVEA)
(注) 1. 販売台数は登録台数。
2. 2017年見通しはANFAVEAが2017年7月に発表した見通し。生産台数の1月時点での見通しは241万台(11.9%増)だったが、7月には262万台(21.5%増)に上方修正した。輸出の見通しは1月時点では55.8万台(7.2%増)としていたが、7月には70.5万台(35.6%増)に上方修正した。
3. 販売台数については、2017年1月時点で213万台(4.0%増)とした見通しを、7月にも据え置いた。


ライトビークル市場:GMがシェアトップ、FCAとVWはシェアを減らすも上位維持

 ブラジルにおける2017年1-7月のライトビークル販売(乗用車と小型商用車)は、前年同期比3.9%増の117万台。市場シェアトップはGMで17.9%、第2位はFCAの17.7%、第3位はVWの12.4%。販売台数がピークだった2012年と比較すると、FCAとVWのシェアが大幅に減少する一方、GMはシェアを維持し、現代自やトヨタ、ホンダが新興国向けの小型車やブラジルの消費者の嗜好に合わせたスポーツタイプのモデルを積極的に投入して、シェアを拡大している。



サブコンパクト車が主力、SUV販売も拡大

 2017年1-7月の乗用車モデル別ランキングを見ると、上位3モデルはGMのChevrolet Onix、現代自のHB20、FordのKa。次いでRenault のSandero、VWのGolが続く。いずれもサブコンパクト車のハッチバックかセダンで、ブラジル市場を支えているのはこれらサブコンパクト車である。



乗用車モデル別ランキング(2017年1-7月)  

(資料:Fenabrave、写真:各OEM提供)

第1位 GM Chevrolet Onix 第2位 Hyundai HB20 第3位 Ford Ka
98,473台 77,733台 66,589台



 また、現在ブラジルではSUVの販売が急拡大しており、2017年1-7月にはライトビークル販売の18.0%に達した。市街地でもオフロードでも走行でき、若い世代を中心に人気を集めている。特に人気が高いサブコンパクトSUVのモデル別ランキングは、第1位がホンダのHR-V、第2位がFCAのJeep Renegade、第3位が現代自のCreta。このセグメントには、Ford EcoSport、Renault Duster、日産Kicksなど多数のモデルが競合している。



サブコンパクトSUVモデル別ランキング(2017年1-7月)

第1位 Honda HR-V 第2位 Jeep Renegade 第3位 Hyundai Creta
26,730台 20,971台 20,492台


ブラジル政府:新自動車政策Rota 2030を発表、周辺国との自動車協定を改定

 ブラジル政府は2017年4月、2018年1月に導入する新自動車政策 Rota 2030を発表した。同国の従来の自動車政策は、課税率が急に変更されるなど、海外メーカーが安心して投資ができないという批判があった。Rota 2030は15年という長期にわたるビジョンと明確なルールを提供し、投資環境を整えるとともに、国内産業の競争力を向上させることを目指している。

 一方、ブラジル政府は2015-2017年にアルゼンチン、コロンビア、ウルグアイの各政府と自動車協定の延長・改定に合意した。アルゼンチンとは貿易比率を定めたFlex協定、コロンビアとは無関税輸出枠を定めるクオータ制を継続し、徐々に無関税輸出を拡大する。ウルグアイとは自動車関連品目の関税をすべて撤廃している。



ブラジル政府:新自動車政策 Rota 2030 を発表(2017年4月18日)

概要 2018年から15年間の自動車産業の長期ビジョン(自動車の開発サイクル3回分)。2017年12月末で終了する現行の自動車政策 INOVAR-AUTO は国内市場に目を向けていたが、Rota 2030はグローバル市場への積極的なアプローチを目指す。長期ビジョンと明確で予測可能なルールを設定し、安心して投資を行える環境を整えるとともに、国内産業の競争力を向上させる。
戦略分野 戦略策定のため、下記の6つの分野でハイレベルなワーキンググループを設置し、協議を行う。
1)中小企業の参入を目的とするサプライチェーンの再構築
2)コネクティビティや先進製造手法の研究開発
3)排出ガスおよびバイオ燃料規制に対応した新しいパワートレイン技術
4)ライフサイクルを通じた安全性の確保
5)戦略的自動車システムや高級車での少量生産
6)競争力を高めるためのコスト構造
(注)1. 詳細は2017年9月以降に発表予定。
2. 日本とEUは世界貿易機関(WTO)に対し、INOVAR-AUTOと減免税措置がWTO協定に違反するとして提訴。国産車に対しては通常43%の工業品税を最大13%にまで減税する措置等を問題にしていた。WTOは2016年に違反を認めており、新自動車政策の発表が待たれていた。



周辺国との自動車協定

アルゼンチン ブラジル政府とアルゼンチン政府は2016年6月、二国間自動車協定の4年間の延長に合意した。新協定の有効期間は2016年7月1日~2020年6月30日。
今回の協定では、2015年に導入した「Flex協定」を維持する。同協定は両国の自動車貿易不均衡を是正するため、貿易比率を定めるもので、比率は従来と同じ「1.50」とする。アルゼンチンからの輸入額が100万ドルであれば、ブラジルはアルゼンチンに対して無課税で150万ドルの輸出が可能となる。
両国の自動車貿易がバランス良く進展した場合、両国の合意で2019年7月1日から貿易比率を「1.70」に、さらに2020年7月1日から自由貿易が可能になるとしている。
コロンビア ブラジル政府は2015年10月、コロンビア政府と8年間有効の新自動車協定を締結した。新協定では相互の無関税輸出枠を定めるクオータ制を採用。2016年に発効し、1年目は1万2,000台、2年目は2万5,000台、3年目は5万台のライトビークル(乗用車/小型商用車)の関税を免除する計画。
同協定では免税対象車の最低国内調達率を定め、ブラジルからの輸出では初年度の1万2,000台のうち9,000台が50%、3,000台が35%、コロンビアからの輸出では9,000台が35%、3,000台が50%の国内調達部品を使用する必要がある。
2017年7月、コロンビアはメルコスールとの経済補完協定(ACE)に署名。2015年10月に署名した覚書の内容を承認した。コロンビア製自動車のブラジルでの輸入関税率は、最恵国待遇(MFN)の45%、すなわち2017年8月時点で15.75%とする。ただし、年間5万台は相互に関税を免除する。
ウルグアイ ブラジル政府は2015年12月、ウルグアイ政府との新自動車協定に調印。2016年1月1日に発効した。両国はこれまで一定の無関税輸出枠を定めるクオータ制を採用していたが、新協定ではすべての自動車関連品目に対して関税を撤廃する。最低地域調達率はブラジル側が55%、ウルグアイ側が50%とする。二国間の貿易不均衡の場合の免責条項を設定し、協定の一時停止を要求できる。


生産拠点の拡充:JLRの新工場、トヨタの新エンジン工場が稼働

 生産拠点の拡充では、JLRが2016年6月に南米初の新工場(年産能力2.4万台)を稼働し、Range Rover EvoqueとLand Rover Discovery Sportの生産を開始。トヨタは同年5月に中南米初のエンジン工場を開所し、Etios用のエンジンを生産。さらに6億レアルを投じて年産能力を10.8万基から17.4万基に引き上げ、2019年後半からはCorolla用エンジンも生産する。GMは新型車生産等のために3工場に45億レアルを投資、VWは小型車向けMQBプラットフォーム対応ラインを導入するために26億レアルを投資する計画。Renaultは7.5億レアルを投じてエンジン生産施設を拡充する。

ブラジルの自動車工場マップ(クリックすると拠点マップが開きます)


GM, FCA, VWの動向

GM:3工場に45億レアル投資、地域体制を再編、Onix Activを発売

3工場に45億レアルを投資 2017年8月、ブラジルの3工場に計45億レアルを投資する計画を発表。これは2014-2020年に同国に投資する計画の130億レアルの一部である。Gravatai工場に14億レアル、Sao Caetano do Sul工場に12億ドル、エンジンとシリンダーヘッドを生産するJoinville工場に19億レアルを投資する。新型車、新技術、革新的生産コンセプトの開発を通して、GMの事業を強化する。また、新しいサプライヤーの開拓や雇用の創出も目指す。
南米地域体制の再編 2017年1月、南米地域体制の再編を発表。3部門を新設し、GM Mercosurはブラジルとアルゼンチン、GM Andinaはコロンビア、エクアドル、ベネズエラ、GM Centralはボリビア、チリ、ペルー、ウルグアイの事業を統合する。新設された3部門は引き続きGM South Americaが管轄する。GMは地域体制を簡略化することにより、事業の効率化とスピードアップを図る。
Chevrolet Onix Activを発売 2016年8月にChevrolet Onix Activを発売した。同モデルで、拡大しつつあるアドベンチャースタイルのコンパクトハッチバックセグメントに参入する。大口径タイヤとサスペンションの調整で最低地上高が30mm高くなり、悪路にも対応できる。1.4Lエンジンを搭載し、6速ATまたは6速MTと組み合わせる。



FCA:Fiat Argo、新型Jeep Compassを発売、Betimエンジン工場を刷新

Fiat Argoを発売 2017年5月、小型ハッチバックの新型Fiat Argoを発売した。Punto、Bravoの後継モデル。コンパクトな外観だが、車内は広く、先進的な安全装備を搭載する。1.0L/1.3LのFireflyエンジンまたは1.8L E.torQエンジンを搭載し、5速MTまたは6速ATを組み合わせる。Betim工場で生産する。
新型Jeep Compassを発売 2016年9月、ペルナンブコ州Goiana工場でコンパクトSUVの新型Jeep Compassを発表した。新型Compassは、まずブラジルで生産と販売を開始し、その後、中国とメキシコで生産を開始。最終的には世界約100カ国以上で販売する計画。ブラジル仕様車には、2.0L Flex燃料エンジンと2.0Lターボディーゼルエンジンを設定し、それぞれ6速ATと9速ATを組み合わせる。
Betimエンジン工場を刷新 2016年9月、ミナスジェライ州Betim工場に10億レアルを投じてエンジン工場を刷新した。新開発のFireflyエンジンを生産するため。新型Fireflyエンジンはブラジル人チームも参加したグローバルプロジェクトで開発され、将来は欧州にも輸出する計画。最初の製品は1.0L 3気筒/1.3L 4気筒 Flex燃料エンジンで、2017年型Fiat Unoに搭載する。



VW:小型車向け製造ライン整備に26億レアル投資、メキシコへエンジン輸出

新型PoloとVirtusの生産に26億レアルを投資 2017年8月、Sao Paulo市のSao Bernardo do CampoにあるAnchieta工場に26億レアルを投資し、生産設備を更新すると発表。小型車向けのMQBプラットフォームに対応した製造ラインを新たに導入し、小型ハッチバックの新型Poloと同モデルのセダン版Virtusを生産する。新型Poloは2017年第4四半期、Virtusは2018年第1四半期に発売する予定。今回の投資は、2016年11月に発表した、ブラジル国内工場刷新のため2020年までに70億レアルを投資する計画の一部。
メキシコへのエンジン輸出契約 2017年5月、サンパウロ州Sao Carlosエンジン工場を、メキシコで生産されるJetta、Golf、Golf Variant用EA211 1.4L TSIエンジンの供給拠点とすると発表した。2017年後半から2020年までにメキシコ・Puebla工場に25万基のエンジンを輸出する計画。VWは加工ライン刷新のために5,000万レアルを投資した。これは、欧州で生産されるPoloとup!向けの1.0L エンジンブロック生産のため、2015年に発表された4億6,000万レアルの投資に追加されるものである。


他の欧米メーカー(Renault, Ford, BMW, Daimler, JLR)の動向

Renault:エンジン生産施設の拡充、SUVのCaptur, Kwid, Koleosを販売へ

エンジン生産施設の拡充 2017年8月、ブラジルに7.5億レアルを投資し、エンジン生産施設の拡充を図ると発表した。Curitiba工場内に3.5億レアルを投じて新工場(Curitiba Aluminum Injection)を建設し、Curitiba Motoresに4億レアルを投じてエンジンブロックとアルミ製シリンダーヘッドを機械加工する新ラインを設置する。
SUVラインアップを拡大 2016年8月、CEOのCarlos Ghosn氏は、ブラジル市場向けSUVのラインアップを拡大すると発表。販売中のコンパクトSUV Dusterに加え、2017年初頭からBセグメントのCaptur、同年5月からAセグメントのKwidを販売。今後、上級コンパクトのKoleosを導入する計画。CapturとKwidはCuritiba工場で生産し、Koleosは輸入販売する。



Ford:改良型EcoSportとKa Trailを発売

改良型EcoSportを発売 2017年8月、改良型EcoSportを世界で初めてブラジルで発売した。改良型EcoSportは世界140カ国で発売する予定。初公開されたフレックス燃料対応のTiVCT 3気筒エンジンまたは2.0L Duratecエンジンを搭載し、6速ATを組み合わせる。2003年にブラジルで生産を開始したEcoSportは小型SUVセグメントを開拓したモデルである。
Ka Trailを発売 2017年3月、都会型アドベンチャースタイルの小型車Ka Trailを発売した。最低地上高をKaよりも高くしたKa Trailは、SUVよりも安価で、都会でも、また多少の悪路でも走れるとしている。1.5Lエンジンに加え、このクラスでは唯一1.0Lエンジンも設定する。競合車はChevrolet Onix Activ、現代自HB20X、トヨタEtios Cross、Renault Sandero Stepwayなど。



BMW:Araquari工場で生産するX1を米国へ輸出

X1を米国に輸出 サンタカタリーナ州Araquari工場で生産するBMW X1を、2016年7月から米国向けに輸出している。米国でのX1の販売が好調なため、ドイツ・Regensburg工場の生産を補完する。Araquari工場では約300名の臨時雇用を創出。2017年4月までに1万台を輸出する計画だったが、同年2月に2,000台を追加した。追加受注を受け、Araquari工場では同年12月まで166名の臨時雇用を延長する。



Daimler:Iracemapolis工場でC-Classに続きGLAの生産を開始

GLAの生産開始 2016年9月にサンパウロ州のIracemapolis工場で、コンパクトSUVのMercedes-Benz GLAの生産を開始。同工場は、6億レアルを投資して建設され、2016年3月に稼働開始。まず、高級セダンのC-Class、続いてSUVのGLAの生産を開始した。第1ステージの年産能力は2万台。従来のMercedes-Benz工場より自動化を抑え、現地の需要に対応できるよう柔軟性を持たせている。



JLR:ブラジル新工場でEvoqueとDiscovery Sportの生産を開始

Itatiaia新工場が稼働 2016年6月、リオデジャネイロ州Itatiaia新工場の稼働を開始した。投資額は7億5,000万レアルで、当初の年産能力は2.4万台。英国の自動車メーカーが南米で工場を設置するのは初。新工場ではRange Rover EvoqueとLand Rover Discovery Sportを生産し、6月から販売する。


日本メーカー(トヨタ、ホンダ、日産)の動向

トヨタ:Corolla、Etiosを中南米諸国へ輸出、中南米初のエンジン工場を稼働

Corollaをチリとコロンビアへ輸出 2017年7月、同年9月から、ブラジルで生産するCorollaをチリとコロンビアへ輸出すると発表した。現在両国では、米国製Corollaを販売している。トヨタはブラジル工場からの輸出を、2017年には前年比6.4%増加させるとしている。
Etiosをコスタリカとホンジュラスへ輸出 2017年5月、Sorocaba工場で生産する小型車のEtiosをコスタリカとホンジュラスへ輸出すると発表した。輸出するのはセダンタイプで、1.5Lガソリンエンジンを搭載。コスタリカへはMT搭載車、ホンジュラスへはAT搭載車を輸出する。ブラジルで生産するEtiosは、既にアルゼンチン、パラグアイ、ペルー、ウルグアイにも輸出している。
中南米初のエンジン工場を稼働 2016年5月、サンパウロ州Porto Feliz市に、トヨタにとって中南米地域で初となるエンジン工場を開所した。投資額は約5.8億レアル。排気量1.3Lと1.5Lのフレックス燃料対応エンジンを生産し、Etiosに搭載する。年産能力は10.8万基。同エンジン工場は、同州で車両を生産するSorocaba工場とIndaiatuba工場の中間に位置する。
2016年11月、同エンジン工場を増強して、Corolla用エンジンを生産すると発表した。6億レアルを投資して年産能力を10.8万基から17.4万基へ引き上げ、2019年後半から生産する。



ホンダ:小型SUVのWR-Vを発売、ブラジルで開発

WR-Vを発売 2017年3月、小型SUVのWR-Vを発売した。サンパウロ州のSumare工場で生産する5番目のモデル。WR-Vは、地域の消費者ニーズの調査に基づき、ブラジルの研究開発チームが開発。ブラジルの技術のみで開発した初めての車両である。



日産:ブラジルでKicksの販売・生産を開始、MarchとVersaを中南米諸国へ輸出

Kicksの販売・生産を開始 2016年8月にブラジルで新型コンパクトSUV Kicks の販売を開始。1.6L HR16DEガソリンエンジンを搭載し、CVTと組み合わせる。当初はメキシコ製車両を輸入していたが、2017年4月からブラジル・Resende工場で生産開始。7.5億レアルを投資し、設備導入や従業員研修を実施。2017年中に他の中南米諸国への輸出も開始する計画。
中南米諸国への輸出計画 2016年からResende工場で生産するMarchとVersaの中南米諸国への輸出を開始した。まず3月にはパラグアイへ、7-8月にはボリビア、チリ、ペルー、ウルグアイ、アルゼンチンへ輸出を開始。


中国メーカー(江准汽車、奇瑞汽車)の動向

江准汽車(JAC Motors):ブラジル仕様SUVのT40を発売

T40を発売 2017年8月、SUVのT40を発売すると発表。江准汽車のイタリアデザインセンターで、ブラジル人の嗜好に合わせてデザインした。同モデルは2015年夏に、JAC S2の名称で中国で生産・販売を開始。ブラジル仕様車は1.5L 16V JetFlex VVTエンジンを搭載し、MTと組み合わせる。



奇瑞汽車(Chery):Tiggo 2と新型QQの生産を開始

Tiggo 2 をラインオフ 2017年5月、ブラジル工場でコンパクトSUV Tiggo 2のラインオフ式を開催した。ブラジルに続き、世界各国の市場に投入する計画だが、2017年にはペルー、チリ、イラン、ロシアで販売を開始した。
新型QQの生産開始 2016年10月、ブラジル製サブコンパクト車の新型QQの販売を開始したと発表した。サンパウロ州のJacarei工場で生産される2車種目のモデル。新型QQは、約1年前に中国からの輸入車の販売を開始した。


LMC Automotive販売予測:ブラジルのライトビークル販売は2020年に238万台へ

LMC Automotive 2017年第2四半期)

 最近明らかとなった、テメル大統領が直接関わる収賄事件に鑑み、LMC Automotiveは販売の短期予測を下方修正し、2017年の販売台数を前年比2.4%増の203万台とした。また、長期予測も修正し、販売の停滞は従来の予測よりも長く続き、7年後でも300万台に達しないと予測している。

 ブラジルの長期的な成長は、計画中の構造改革のスピードに大きく依存している。円滑に実施されれば、構造改革によって経済が成長し、ミドルクラスが徐々に拡大し、その結果、新車販売が増加する。構造改革の成否は不確実だが、LMC Automotiveの予測によると、2018-2020年に自動車市場は年平均5.5%拡大し、2020年の販売は238万台に増加する見込み。



ブラジルのブランド別ライトビークル販売予測

(台)

SALES GROUP GLOBAL MAKE 2014 2015 2016 2017 2018 2019 2020
Total  3,328,769 2,477,234 1,986,543 2,034,657 2,114,264 2,204,136 2,384,836
Fiat Chrysler Automobiles Fiat 694,556 437,725 304,326 276,113 294,856 305,351 328,404
Jeep 3,311 41,783 59,064 83,297 85,387 87,698 94,378
Ram 285 81 459 458 449 458 490
Chrysler 302 129 54 56 77 79 81
Alfa Romeo 0 0 0 11 34 44 64
Dodge 7,041 3,424 1,372 341 320 320 58
Maserati 30 16 13 77 32 32 38
Fiat Chrysler Automobiles sub-total 705,525 483,158 365,288 360,353 381,155 393,982 423,513
General Motors Group Chevrolet 578,796 387,985 345,864 345,487 353,013 366,637 415,085
Cadillac 61 13 16 33 36 36 36
Opel 2 0 0 0 0 0 0
General Motors Group sub-total 578,859 387,998 345,880 345,520 353,049 366,673 415,121
Renault-Nissan Group Dacia 169,534 126,085 113,303 109,538 115,668 120,509 130,631
Nissan 72,354 61,215 60,908 87,361 80,886 84,302 92,415
Renault 67,598 55,459 36,720 52,071 66,473 69,604 76,516
Mitsubishi 59,276 41,043 24,863 19,555 16,203 17,064 19,559
Renault-Nissan Group sub-total 368,762 283,802 235,794 268,525 279,230 291,479 319,121
Volkswagen Group Volkswagen 576,834 360,412 228,466 247,906 258,779 258,950 283,627
Audi 12,440 16,612 11,545 8,804 9,159 9,690 11,143
Porsche 820 736 956 981 938 1,017 1,220
Bentley 12 4 1 8 9 12 13
Lamborghini 12 7 10 6 1 1 2
Volkswagen Group sub-total 590,118 377,771 240,978 257,705 268,886 269,670 296,005
Hyundai Group Hyundai 236,591 204,667 197,520 203,133 201,846 199,684 209,331
Kia 23,792 15,930 10,761 8,344 13,964 15,670 18,459
Hyundai Group sub-total 260,383 220,597 208,281 211,477 215,810 215,354 227,790
Ford Group Ford 308,649 255,126 181,356 179,070 182,000 189,636 204,716
Troller 1,483 2,019 1,453 1,306 1,408 1,534 2,075
Ford Group sub-total 310,132 257,145 182,809 180,376 183,408 191,170 206,791
Toyota Group Toyota 195,387 175,755 180,358 176,458 182,903 211,587 201,343
Lexus 324 723 474 512 755 866 1,035
Toyota Group sub-total 195,711 176,478 180,832 176,970 183,658 212,453 202,378
Honda Group Honda 137,904 153,391 122,544 134,816 140,175 146,021 158,289
PSA Group Citroen 53,477 30,856 24,395 21,783 28,012 30,314 34,153
Peugeot 40,527 26,678 25,736 24,413 26,724 27,242 31,606
DS 883 427 136 48 204 250 298
PSA Group sub-total 94,887 57,961 50,267 46,244 54,940 57,806 66,057
Daimler Group Mercedes-Benz 15,502 19,844 13,068 16,643 16,363 18,223 20,664
Smart 371 614 20 148 237 259 324
Daimler Group sub-total 15,873 20,458 13,088 16,791 16,600 18,482 20,988
BMW Group BMW 15,054 15,828 12,123 7,831 8,162 9,081 10,220
MINI 2,486 1,960 1,524 1,231 1,282 1,402 1,361
Rolls-Royce 20 5 1 11 12 14 17
BMW Group sub-total 17,560 17,793 13,648 9,073 9,456 10,497 11,598
Tata Group Land Rover 9,390 8,798 6,640 6,267 6,716 7,118 8,500
Jaguar 400 513 790 1,300 1,045 1,106 1,244
Tata Group sub-total 9,790 9,311 7,430 7,567 7,761 8,224 9,744
Suzuki Group Suzuki 6,044 5,258 3,448 3,897 3,956 4,664 6,152
Mazda Motors Mazda 0 0 0 0 2,209 2,801 4,030
Geely Group Volvo 3,128 3,814 3,454 3,126 2,966 3,085 3,579
Geely 180 651 374 92 57 59 64
Geely Group sub-total 3,308 4,465 3,828 3,218 3,023 3,144 3,643
Fiat Industrial Iveco 3,936 2,546 1,880 2,396 2,325 2,379 2,949
Jianghuai Automotive JAC 8,416 4,954 2,758 3,747 2,019 2,246 2,763
Chery Group Chery 9,506 5,318 2,144 1,509 1,595 1,725 2,015
Karry 949 297 88 34 149 165 208
Riich 41 1 2 0 0 0 0
Chery Group sub-total 10,496 5,616 2,234 1,543 1,744 1,890 2,223
Subaru Corporation Subaru 1,126 1,719 1,435 1,436 1,366 1,644 1,836
BAIC Group Foton 216 443 407 98 308 313 383
Brilliance Auto Brilliance 854 344 125 75 111 134 175
Jinbei 520 208 63 14 24 34 37
Brilliance Auto sub-total 1,374 552 188 89 135 168 212
Changan Automobile Group Changan 142 116 6 4 11 13 24
Hafei 833 170 14 38 105 114 7
Changan Automobile Group sub-total 975 286 20 42 116 127 31
Agrale SA Agrale 38 23 15 14 15 19 21
Effa Motors Hafei 174 81 14 35 15 13 17
Changhe 31 1 3 0 0 0 0
Effa 170 76 12 2 0 0 0
Effa Motors sub-total 375 158 29 37 15 13 17
Tesla Motors Tesla 0 0 0 7 13 13 15
Dongfeng Motor Dongfeng 51 25 0 0 0 0 0
Mahindra Group Ssangyong 903 201 13 13 0 0 0
Mahindra 601 96 11 1 0 0 0
Mahindra Group sub-total 1,504 297 24 14 0 0 0
Other Chinese Manufacturers Lifan 5,355 5,006 3,411 2,449 2,440 2,366 2,474
Zotye 0 0 0 17 38 48 59
Other Chinese Manufacturers sub-total 5,355 5,006 3,411 2,466 2,478 2,414 2,533
Other Volare 0 0 0 201 370 437 557
Ferrari 42 21 25 33 43 51 70
Aston Martin 9 2 2 2 1 2 6
Other sub-total 51 23 27 236 414 490 633
Source: LMC Automotive "Global Automotive Sales Forecast (Quarter 2, 2017)”
(注) 1.データは、小型車(乗用車+車両総重量 6t以下の小型商用車)の数値。
2.本表の無断転載を禁じます。転載には LMC Automotive 社の許諾が必要になります。
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キーワード
ブラジル、南米、GM、FCA、VW、Rota 2030、INOVAR-AUTO、自動車協定

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