TU-Automotive Detroit 2017: 自動運転車が変える社会

自動運転車が及ぼすテクノロジー、社会、ユーザー体験への影響

2017/07/21

要約

 TU-Automotive Detroit 2017は、6月7日から8日にかけて米国ミシガン州Noviで開催された。コンファレンスへの来場者は3,000人を超え、約150人のプレゼンターと130件以上の出展参加があった。自動運転テクノロジーは依然として主要なテーマであったが、ビジネス戦略、市街地のモビリティ、ユーザーエクスペリエンスなど他のトピックも大きく取り上げられた。全体を通しての重要なテーマとなったのはコネクティビティであり、多くのセッションでコネクテッドカーの重要性が言及された。

TU-Automotive Detroit 2017 exhibition floor
TU-Automotive Detroit 2017展示フロア

 このレポートは、TU-Automotive Detroitで行われたディスカッションセッションに焦点を当てた三編のレポートのうちの3番目のものであり、ここでは自動運転テクノロジー、モビリティ、および車内でのユーザーエクスペリエンスを扱ったプレゼンテーションを中心に報告する。これまでビジネスモデルと戦略を主題にしたレポート、並びにコネクティビティをめぐる課題やテクノロジーを扱ったレポートの二編をリリースしている。

TU-Automotive Detroit 2017関連レポート:
エコシステム変革期の事業戦略と事業機会
コネクティビティの展望と課題ならびにテクノロジー



自動運転テクノロジーの展望

データ主導型の他産業での経験に学ぶ

Session: Collaborating in the Race to Automation
会社名 講演者 部門・役職
Intel Doug Davis Senior Vice President & General Manager,
Automated Driving Group

 Doug Davis氏は、プレゼンテーションの中で一貫して自動運転技術が他の車両安全技術より急速に開発され、実用化されていくことの重要性を強調した。自動車の安全技術革新は、これまで当初の開発からそれが義務化されるまでに長い時間を要してきた。例えばエアバッグは1951年に特許取得されたが、1998年まで米国で搭載が義務付けられていなかった。1950年代に発明されたABSも義務付けられたのは2013年になってからだが、3点式シートベルトは1959年に開発され1968年には義務化されている。Davis氏は、死亡事故のおよそ93%が人的ミスによるものとのNHTSA報告の数字を挙げ、自動運転車が持っている大きな潜在的なメリットがその普及を推進するとした。自動運転は事故を減らすだけでなく、その経済的便益も大きい。Morgan Stanleyの調査によれば自動運転車は、米国経済にとって1兆3千億ドルのコスト削減効果をもたらす可能性があるという。

Speakers of "Fireside Chat with Ford Smart Mobility"
session
自動運転車の経済的・社会的効果
(出所:Morgan Stanley)

 IHSの予測では、世界の総車両生産台数は2016年の9,400万台から、2030年には1億500万~1億2,500万台に増える。しかし、自動車に必要なコンピュータの能力は現在の0.5-10TFLOP(1秒あたりの浮動小数点演算数)から2030年までに少なくとも10倍の50-100TFLOPまで増加すると見込まれている。さらに、車に必要なピクセル数とストレージ容量は1,000倍に増加する一方で、使われるECUの数は減少すると予測される。Davis氏は、現在利用可能なデータの殆どが人間によって作り出されているが、将来はこれが主に機械によって作り出されるものになると言う。

Speakers of "Fireside Chat with Porsche Digital"
session
未来の車はコンピュータ利用へシフトする
(出所: Intel)

  Davis氏は、自動車業界におけるデータ利用の変遷を考察するにあたって、同様の変化を過去に経験した他の業界の例を挙げた。PC業界では、最初のパーソナル・コンピュータが1975年に発売された後、1980年までに100以上の互換性のないブランドが市場に登場したが、1981年にはIBMが既製ハードウェアを標準搭載した最初のPCを発売し、1984年には200万台のPCが販売されるまでになった。サーバー産業も同様の変遷を遂げた。1990年代初めにメインフレームからマイコンに移行し、1990年代半ばまでには標準化を通じてエンタープライズ・サーバールームに移り、さらにクラウドサービス・プロバイダーによるものとなった。これらの例は、ベーシックなレベルでの標準化と他企業と協調することの重要性を示している。ひとたび標準化されると、普及が促進され速やかにオペレーションの規模が決まってくる。

 

自動運転車が州に及ぼす影響

Session: Autonomy: The State Perspective
会社名 講演者 部門・役職
Michigan Department of Transportation (MDoT) Kirk Steudle Director
Nevada Department of Motor Vehicles April Sanborn DMV Services Manager III – Driver Programs
Wall Street Journal 司会John Stoll Chief Reporter

 「自動運転:州の視点」と題されたパネルセッションでは、まず両パネリストが自動運転車に係る最近のそれぞれの州の活動概要を説明した。Kirk Steudle氏は、ミシガン州でテスト走行をさらに一歩進めた自動運転車の公道走行を可能にする法律が2016年12月に施行されたことを説明した。また、ミシガン州は将来のモビリティを協議する評議会を設置する法律も制定している。評議会は自動運転およびドライバーレス車などの分野で政策提言を行っている。April Sanborn 氏は、自動運転車のテスト走行の規模拡大、また四肢麻痺患者のための極めて限定的な自動運転車免許証の発行といったネバダ州での法制度について説明した。

Speakers of "Fireside Chat with Porsche Digital"
session
“Autonomy: The State Perspective”セッションのパネリスト、左から右に: April Sanborn, Nevada Department of Motor Vehicles; Kirk Steudle, Michigan Department of Transportation; 司会の  John Stoll, Wall Street Journal

 州の役割について議論する中で両パネリストは、州が果たすべき役割を持っていること、そして「州は自動車そのものには関与しない」ことで意見が一致した。自動運転車の設計、開発に係る規制や義務を管轄するのはNHTSAであり、州政府は実際の運用や保険を主に扱う。自動運転のテストも、より曖昧ではあるが、現在も州政府の規制下にある。両パネリストは、州の規制は自動運転技術の分野で連邦の規制に先例を示すものと述べた。管理はしながらも、各州は自動運転車の規制作りにおいて積極的に取り組んできた。ネバダ州とミシガン州は共に自動運転テクノロジーに関して企業とオープンな協議を進めており、規制をある程度柔軟に適用することもある。一例としてSanborn氏は、低速走行の自動運転車を開発している企業が10,000マイルのテスト要件を満たすのが難しいというケースを挙げた。ネバダ州政府はこの要件を迂回すべくその会社と協議をしている。

 パネルセッションでは、自動運転車がもたらすであろう変化に州がどのように対応しているかについての考察にも及んだ。例えば州の歳入の変化を見たとき、車両登録による収入は減少する可能性があるとSanborn氏は指摘する。Steudle氏は、運転免許の取得者が減るかもしれないと言う。その場合、州は新たな収入源が必要となる。トラック輸送などの分野での雇用喪失も起こりうる問題のひとつである。両パネリストはそろって、自動運転車を馬車と馬に取って代わった廉価な自動車になぞらえ、ビジネスは消費者からの需要に応じて変わっていかなければならないと述べた。Steudle氏は自動運転車によって交通法規とインフラがどのように変わるかについても言及し、法規面の例として車間距離と制限速度の規制緩和がありうるとした。インフラについてSteudle氏は、その基準に着手するのはまだ早いとしながらも、可能性のある実施案件ついての議論は始まっていると述べた。

 

自動運転テクノロジーを受け入れやすいものにする

Session: Consumer Acceptance of Automation
会社名 講演者 部門・役職
National Safety Council Alex Epstein Senior Director, Digital Strategy & Content
三菱電機 Gareth Williams Director, Advanced Development
J.D. Power Kristen Kolodge Executive Director, Driver Interaction and HMI
Tourmaline Labs Lukas Kuhn CTO
AAA 司会 Greg Brannon Director, Automotive Engineering

 「消費者は自動化をどう受けとめるか」をテーマとしたパネルセッションでは、自動運転テクノロジーや先進運転支援システム(ADAS)の普及が進むなかで消費者が抱く問題について議論がなされた。ひとつの問題は、さまざまなADASの機能と呼称に食い違いがあることと全体的に標準化ができていないことである。Kristen Kolodge氏は多様な呼称、略称、機能を持つ現在のADASテクノロジー全体を「アルファベットのスープ」と表現し、パネリスト達も適度の標準化が消費者にとって有益であるとの考えで一致した。Alex Epstein氏が例として挙げたのは、緊急ブレーキシステムのケースで、ある会社のシステムは歩行者感知の機能を含んでいるが、他社のものは含んでいなかった。彼は、ベストプラクティスと共通のテーマを軸にしたキャンペーンをブランド中立的に、企業横断的に展開し、消費者に受け入れられる標準化の形を作るという考えを提案した。また一方でEpstein氏は、個別の自動運転技術の性能を誇張するなど過剰な期待を持たせることにも注意が必要と言う。Lukas Kuhn氏はまた違った観点から、これらの技術はiPhoneの様により直観的で自然に扱えるものであるべきで、目で見て理解できるような価値を提供すべきと指摘した。

Speakers of "Fireside Chat with Porsche Digital"
session
 “Consumer Acceptance of Automation”セッションのパネリスト、左から右に: Alex Epstein, National Safety Council; Gareth Williams, 三菱電機; Kristen Kolodge, J.D. Power; Lukas Kuhn, Tourmaline Labs; 司会のGreg Brannon

 パネルで議論された別のテーマは、自動運転テクノロジーを使いこなすためにユーザーはどの程度の知識を持っていなければならないかという問題である。Gareth Williams氏は、ユーザーがシステムの機能を理解し使い慣れ、さらに自動システムを作動、または解除する方法も知っているという状態が理想であると述べた。例えば、歩行者を感知する緊急ブレーキシステムが作動した際にインストルメントパネルのディスプレイに関連情報が表示されれば、運転者が状況を理解し易くなる。Lukas Kuhn氏はそれに対して、多くのユーザーが現在の自動車のシステムを理解していないという点を挙げ、より重要なことはユーザーがADASテクノロジーとどう係るのかを理解することであると主張した。Kolodge氏は、ドライバーがどのような役割を持っていてシステムとどう相互に係っていくべきなのかを理解する必要があると述べた。

 パネルセッションの最後は、ドライバーがコントロールを失うことと心理的要因からADASや自動運転テクノロジーの利用をためらうということについての議論となった。Epstein氏は、自動車は歴史的に自由の象徴であることを売り物にしてきたことを指摘した。したがって、その特性の一部がドライバーのコントロールができないものになると、多くの人が自動車に対して持っていたイメージが壊れネガティブな感情を生む。彼はまた自動運転技術の今の開発段階を成人に成長する子供にたとえ、自動運転システムは一層の進歩と改善が必要であるとした。Kuhn氏は、現在の社会は世代交代の只中にあり、若い世代は車を運転しコントロールできるということに対する関心が薄れ、自動運転車を使うことへの抵抗感が少なくなっていると述べた。消費者の受け入れを促進するひとつの方法としてKolodge氏が提案したのは、時間をかけて自動運転の機能とテクノロジーの使用体験を重ね利用頻度を増やしていくというものであった。

 



自動運転の進歩を支えるテクノロジー

自動運転に求められる新たなレーダーテクノロジー

Session: Kiss SiGe goodbye: Making radar smaller and more precise
会社名 講演者 部門・役職
Texas Instruments Sudipto Bose Marketing Director

 「SiGeよさらば(Kiss SiGe goodbye):レーダーの小型化と高精度化」というプレゼンテーションでは、自動運転車に求められるセンシング機能に焦点を当て、その要求に応えるべく最近開発されたTexas Instrumentsのレーダーソリューションを紹介した。Sudipto Bose氏は、自動車の持つ自動運転やADASの機能がより高くなるに従い、必要となるセンシング能力もより高度なものになると言う。彼はセンサーに求められるセンシング能力の要件を次の3つにまとめた。

  1. 対象物までの距離、速度および角度を検出した上で、歩行者、自転車または自動車といったカテゴリーに分類する能力
  2. プラスチック、ガラスおよび他の物質を通過する能力を持つが、サイズは大きすぎない
  3. 雨、霧、ほこり、明るい光、暗闇などの不利な環境条件で確実に機能する能力

 現時点で、3つの条件をすべて満たす唯一のセンシング技術はレーダーしかない。


 レーダーは3つの条件すべてを満たすが、ほとんどのレーダーシステムは、より洗練された自動運転やADAS機能が必要とする精度レベルを持ち合わせていない。Bose氏は、その要件として5センチメートル未満の解像度精度、1度未満の角度精度、マルチモード動作およびオブジェクト判別などを含むリストを示した。Texas Instrumentsは、これらの要件を満たす新たなミリ波単一チップCMOS(Complementary Metal-Oxide Semiconductor)センサーシリーズを2017年5月に発表した。このCMOSセンサーは10.4mm×10.4mmのもので、4センチメートル未満の距離分解能と50マイクロメートル未満の距離精度を備える。標準的なセンサーと比較して、このミリ波センサーは消費電力と基板スペースが半分で済み、さらに多種の表面媒体を通過し様々な環境条件で正確に作動する。これらのセンサーの自動車への用途として、前方長距離レーダー、マルチモードレーダー、および短距離レーダーなどが考えられる。

Panelists of "Unlocking New Automotive Revenue Streams"
session
レーダー技術の現状と将来ニーズとのギャップ
(出所:Texas Instruments)

 

自動運転車におけるマッピング・テクノロジーの役割

Session: Mapping an Autonomous World
会社名 講演者 部門・役職
TomTom North America Paul Hohos Vice President Sales, Automotive

 Paul Hohos氏のプレゼンテーション「自動運転車の世界をマッピングする」は、将来の自動運転車におけるマッピングの役割と具体的なマッピング技術の開発に焦点を当てる。高精度の地図システムによって自動運転車はセンサーの届かないエリアを見ることができる。また、ナビゲーション、位置確認の際の周辺地域の絞り込み、事象認識での情報の冗長性、そして経路プランニングなどの利便機能が得られる。しかし自動運転車が地図を効果的に使うためには、情報が古くなった地図を提供することがないように地図自体が定期的に更新されなければならない。TomTomの提供する地図の特徴は、モバイルマッピングや実地調査などの従来の方法と、一般の人による車載センサーやプローブ情報からのボランタリーな情報提供を組み合わせて作成される点である。TomTomのインテリジェントな地図作成プロセスで作り出されるデータの多くは、全世界5億5,000万台以上のGPSデバイスの実際のGPSトレースに基づいている。

 車の性能が向上し、より高度なテクノロジーが搭載されるようになると、地図により詳細な情報が求められる。Hohos氏は自動車向けに提供されている一連の地図レイヤーについて説明した。各レイヤーはそれぞれ異なる情報をセットとして保有している。ベースレイヤーには、道路ネットワークと方位に関する情報が含まれており、上部レイヤーには、住所、交通標識、諸施設(POI)、3D図、ADAS情報が含まれている。

Panelists of "Unlocking New Automotive Revenue Streams"
session
地図のレイヤー(層)とそこに含まれる情報
(出所:TomTom)

 Hohos氏は、TomTomの高度な地図テクノロジーを3件紹介した。HDマップは正確な道路の状況をリアルに標示し、車線の形状、車線のマーキング、センターライン、車線区分、路肩などの情報を提供する。HDマップはその他に制限速度、車線幅などの情報も提供できる。RoadDNAは、道路の正確な横方向、縦方向の3Dビューを最適な形で表示するツール。このデータをセンサーデータと組み合わせることで、車両の正確な位置を特定することができる。RoadDNAは、横方向に15センチメートル未満、縦方向に50センチメートル未満の相対精度を持つ。TomTomはさらに、交通標識の認識をサポートする人工知能(AI)を開発した。標識は調査車両のレーダーによって位置が記録され、データベースを介してAIが処理し、個々の標識の情報を判別し表示する。

Comparison of MQB platform
battery and MEB platform battery
HD Mapの概要とビジュアル化サンプル
(出所:TomTom)
Volkswagen I.D. Buzz
Concept
RoadDNAの概要とビジュアル化サンプル
出所:TomTom)

 

V2X とADAS 融合がもたらす利便性

Session: V2X and Autonomous Driving is a “two-way street”
会社名 講演者 部門・役職
u-blox Costas Meimetis Director, Product Strategy

 Costas Meimetis氏のプレゼンテーション「V2Xと自動運転は『双方向通行(two-way street)』」では、V2XとADASテクノロジーを融合させたいくつかの事例とその利点に焦点が当てられた。すでに事例として、車車間協調型クルーズコントロール、またはプラトーニング(隊列走行)と呼ばれるものがある。V2XとADASの両方を活用することで、車両は直前の車との距離だけでなく、一緒に隊列走行している他の車の速度もトラッキングすることができる。これにより急激な動きが最小限に抑えられ、車両の流れが最適となり燃費も向上する。Meimetis氏は、現在米国には2億5,000万台以上の車があり、いかに導入を急いだとしても高度のテクノロジーを即座に普及させることは難しいと指摘する。続いてMeimetis氏は、車両間で通信することで追い越しをかけるタイミングを知らせるといったケースを取り上げ、V2Xの普及率が低い状態であっても、全般的な認知度を向上させることで利便が得られることを説明した。V2XとADASを融合することで、低い普及率のもとでも周囲状況の認識がいかに向上するかがグラフにより説明された。

Comparison of MQB platform
battery and MEB platform battery
追い越し時のADASとV2Xの融合例
出所:u-blox)
Volkswagen I.D. Buzz
Concept
各システムの技術普及率に基づく 環境認識
出所:Gunther, Trauer, Wolf)

 V2XとADASの融合の他の例としては、他の車両の陰に入った横断中の歩行者といった車載センサーの感知範囲外にある情報を共有化する、或いはまたは車同士が連絡しあって事故の際の損傷を軽減するといった協調的衝突回避などがある。これらのすべてのケースの共通点は、V2Xアプリケーションでの正確な位置情報が必要要件になるということである。 現在の標準では汎地球測位航法衛星システム(GNSS)は1.5メートルの精度が必要とされている。しかし、今後ADASやV2Xアプリケーションで使用するためにはデシメートル(10cm)レベルの精度が必要となる。Meimetis氏はu-blox自動車デッドレコニング(自律航法、ADR)4.10システムでの改善点を紹介したが、これは衛星信号がブロックされたときでも、モーションセンサーと速度データに基づいて3次元で位置を測定し車の現在位置を特定するというものである。

Panelists of "Unlocking New Automotive Revenue Streams"
session
u-blox ADR 4.10 システムによる位置情報精度の向上
(出所:u-blox)

 



自動運転テクノロジーが社会やインターフェースの変化を牽引する

自動運転車やコネクテッドカーがもたらす将来の社会変化

Session: Changing the Shape of Society with Autonomous Vehicles
会社名 講演者 部門・役職
Harman International Steve Surhigh Vice President & General Manager,
Applications Services

 Steve Surhigh氏は、自動運転車が社会にもたらすであろう変化についての話に入る前に、彼がモビリティ1.0と呼ぶ廉価な自動車の登場によって社会がどう変化したかを説明した。そこには社会の5つの側面での変化があった。インフラストラクチャー、雇用、ライフスタイル、住宅、そしてビジネスモデルがそれである。自動運転車、並びにコネクテッドカーの登場は、Mobility 2.0+と言えるもので、これによって起こる社会の変化もまた前述の5つのカテゴリーに整理することができる。しかし今回の変化は、ほとんど全ての社会的なカテゴリーにわたり物理的効果とデジタル効果の両方での影響を持つという点に注目する必要がある。下の表にそれらを整理した。

カテゴリー 自動車による変化 自動運転車による変化
インフラ - 砂利道がフリーウェイに変貌
- 都市コミュニティが郊外コミュニティへ拡大
- 街灯、交通信号、道路標識の発達
物理的:
- 駐車場の減少
- 緑地スペースの増加
- 交通標識、信号などの撤去
デジタル:
- センサーや関連インフラの追加
- コンピューティング能力とデータ容量の増加
- 道路や交通の状況をモニターするシステムの発達
雇用 - 高収入の仕事の増加
- 都市部の外側での雇用創出
- 工業製品への需要増加
- タクシー運転手、バス運転手、交通巡査、トラック運転手の雇用減少
- ハードウェアおよびソフトウェアエンジニア、データを扱う科学者、自動車メカニック、ロジスティクスおよびフリート車両管理の雇用増加
ライフスタイル - より自由な旅行
- 家族揃っての休暇という概念の誕生
- 全体としての大気の状態改善
物理的:
- 自由時間の増加
- 安全性の向上
- 子供や高齢者のモビリティ向上
デジタル:
- リアルタイムな情報へのアクセス向上
- モビリティを促進するアプリケーション開発の進展
- より個々にカスタマイズされたユーザー体験
住宅 - 郊外コミュニティの発達
- 鉄道駅や港からの人口移動
物理的:
- ガレージや駐車路(driveway)の消滅
- 位置や距離の重要性が薄れる
デジタル:
- 住宅と各種IoTデバイスとのデータ交換
- 新たなニーズに対応する住宅内システム
ビジネスモデル - ガソリンスタンド/サービス拠点の登場
- ガソリン税の創出
- より効率的な物品輸送
物理的:
 - デリバリーサービスの効率向上
 - 保険分野および法規制での変化
 - 車の所有形態がビジネスチャンスに
デジタル:
- 周波数帯を持つプロバイダにとっての新たな車内コンテンツ・ビジネス機会
- フリート車両のモニターと管理
- 走行中の車内体験を収益に繋げる

 Surhigh氏は、自動運転車開発には3つのコア領域、すなわち車両の操作、車両内のコンテンツ、車両とさまざまなエコシステムとの間のコミュニケーションがあるとし、 これらが上述の社会変化を推し進める主要な要素になると述べた。さらに、これらの変化に備えてOEM各社は必要な活動を進めて行く必要がある。5Gとそれ以降に向けたコネクティビティ・テクノロジーの開発、他の企業や業界との共同作業によるデータアクセスの向上、マシン・ラーニング能力の強化、ユニークな体験を作り出す仮想現実やインテリジェンスの強化によるドライバーや同乗者の状況を十分理解したバーチャル・アシスタント機能、そしてビッグ・データの管理改善などが挙げられる。

 

将来を見据えたHMIの見直し

Session: HMI: Re-Imagining In-Car Experiences
会社名 講演者 部門・役職
Smart Design Edward Laganis Design Engineering Director
SRI International Ajay Divakaran Technical Director, Vision and Learning at Center for Vision Technologies
パナソニック Michael Tschirhart Manager, Holistic Innovation, Advanced Engineering
三菱電機 Jacek Spiewla User Experience Manager, Advanced Development
Mapbox Alex Barth Vice President, Business Development
WardsAuto 司会 Drew Winter Editor in Chief

 パネルセッション「HMI:車内体験のイメージを作り変える」では、テクノロジーの一層の高度化よって乗車体験がどう変わっていくかをめぐり様々なトピックが議論された。音声対話の今後の役割もテーマのひとつになった。Ajay Divakaran氏は、現在の音声コマンドはそのときどきの状況の理解を欠いており、しばしば1回限りの連絡になっていると指摘した。彼はより包括的なアプローチから、音声コマンドを例えばドライバーのモニターや感情の認識と組み合わせ、システムの更なるパーソナル化に繋げることを提案した。Jacek Spiewla氏は、音声コマンドは現時点では、主に運転中の利便性という冗長性の観点で装備されていると指摘し、運転がもはや主要なタスクではなくなる将来の車では、HMIはパラダイムシフトに合わせて調整されなければならないと訴えた。

Panelists of "Unlocking New Automotive Revenue Streams"
session
“HMI: Re-Imagining In-Car Experiences”セッションのパネリスト、左から右に: session. From left to right: Edward Laganis, Smart Design; Ajay Divakaran, SRI International; Michael Tschirhart, パナソニック; Jacek Spiewla, 三菱電機; Alex Barth, Mapbox; 司会のDrew Winter, WardsAuto

 別のトピックとして、ドライバーが混乱することのない象徴的なHMIデザインを開発するというアイディアが議論された。例として挙げられたテスラ車のセンタースクリーンについて、Edward Laganis氏は人間工学上の問題と触覚性の欠如という観点で賛否入り混じった評価だとしている。彼は、ボタンのようなより触覚的なコントロール方法にはメリットがあったとし、単独のディスプレイの代わりに車の意図するところに則したプラットフォームを活用するのが望ましいと思うと述べた。Michael Tschirhart氏は、現在のテクノロジーをもってすれば、ドライバーや周辺環境の情報を収集するシステムは遥かに幅広い役割を果たせると言う。この情報を活用することで、個々のユーザーに合った乗車体験を造り出すことができる。

 常に最新のテクノロジーを追い、スマートフォンになぞらえる見方に対してAlex Barth氏は、車の体験は電話の体験とは異なるものであり、電話と張り合うべきではないと指摘した。代わりに開発者は、システムを使い続けることでユーザーエクスペリエンスを進化させる方法を見つけ出すことに取り組むべきだと主張する。将来のHMIシステムのニーズを説明する中で、Tschirhart氏は、車を利用する全時間にわたるソリューションを開発するためには、他者との協力関係を強めることが重要になるとした。Barth氏は、使い易さやアクセシビリティが向上すればユーザーエクスペリエンスはより良いものになると指摘し、よりシンプルで使い易いクリーンなインターフェースを備えたアプリケーションということを強調した。Edward Laganis氏は、自動運転車がもたらす変化を更に注意深く見据え、ドライバーの役割が縮小または消滅していくなかでシステムをドライバーよりもより乗客を中心に据えたものにして行く必要があると述べた。

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キーワード
TU-Automotive、自動運転、 ADAS、HMI、マップ、レーダー、V2X

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