最新の軽量化技術:人とくるまのテクノロジー展 2016から

トヨタ紡織、ダイキョーニシカワ、アイシン化工、マグナ、住友電工、デルタ工業、アイシン高丘

2016/07/07

要約

トヨタ紡織が展示した軽量発泡ドアトリム(右)と従来品(左)

トヨタ紡織が展示した軽量発泡ドアトリム(右)と従来品(左)

 2016年5月に開催された「人とくるまのテクノロジー展2016 横浜(公益社団法人 自動車技術会主催)」では、様々な軽量化に資する技術の展示を各サプライヤーが行っていた。

 トヨタ紡織は、従来品より30%軽量な軽量発泡ドアトリムを、ダイキョーニシカワは鉄製より5kg軽い樹脂製のバックドアを展示した。またアイシン化工は欧州では普及が進んでいるが、日本ではほとんど採用されていない、樹脂製のオイルパンを披露。一方、マグナはGMの8速ATに採用されているアルミ製のオイルパンを展示した。

 他に、住友電工は板材加工に適したマグネシウム合金で試作したシートフレームを、デルタ工業は軽量シートのコンセプトを、アイシン高丘はダイクエンチ(ホットプレス)製品を出展した。

 

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トヨタ紡織:「シャープエッジ破壊」の起きない軽量発泡ドアトリム

高耐衝撃軽量発泡ドアトリム 高速面衝撃試験による効果確認
高耐衝撃軽量発泡ドアトリム 高速面衝撃試験による効果確認と高衝撃バイオプラスチックの構造

 

高耐衝撃軽量発泡ドアトリム トヨタ紡織は、車両側突試験において、搭乗者を傷つけてしまうような鋭角に破壊される「シャープエッジ破壊」がおこらない軽量発泡ドアトリムを開発。同社が開発した高耐衝撃バイオプラスチックを衝撃改質剤として利用。この改質剤をポリプロピレンに添加することでシャープエッジ破壊が起きないようにしつつ、従来製品と比べて約30%軽いドアトリム(1160g)を実現。車載向けの供給はもうすぐ実現するとしている。
素材メーカーにライセンスを渡して、素材の生産を委託することを計画。このことで、多くの自動車メーカー向けに供給していきたいとのこと。素材メーカーとは交渉中。


ダイキョーニシカワ:ダイハツTanto向けの樹脂製バックドア

先進運転支援システムのデモ画像 小型ステレオカメラ?
樹脂製バックドアの外側(ダイハツTanto向け) 樹脂製バックドアの内側(ダイハツTanto向け)

 

樹脂製バックドア ダイキョーニシカワは、ダイハツのTanto向けに供給した、樹脂製のバックドアを展示。外側は高耐衝撃・低熱膨張ポリプロピレンを用いた上下2つのパーツからなり、窓はガラス製。内側は剛性を持たせるためガラス繊維強化PPを利用。鉄製のバックドアに比べて20% 約5kg軽量化。樹脂部品の成形サイクルは1分程度。
窓ガラスの部分もポリカーボネートで代替可能で、さらに1.5kg軽量化を図ることができるとしている。しかし、価格が高いことと、ガラスに比べて低周波の音が入りやすいことが課題。


アイシン化工の樹脂製オイルパンと、マグナのアルミ製オイルパン

アイシン化工

軽量樹脂製オイルパン アイシン化工はトランスミッションのオイルパンを樹脂化した製品を開発。材質はガラス繊維強化66ナイロン。樹脂化することで、鉄製オイルパンでは別体であるフィルタをオイルパンと一体化できる。そのため搭載時の厚さで5mm薄くでき、重量も40%、約700g軽くなるうえ、組み立て工数も削減可能。
欧州では樹脂製のオイルパンは普及しているが、日本ではまだほとんど採用されていない。樹脂製のオイルパンは鉄製に比べて、衝撃に弱いという課題があるが、欧州では高級車を中心にアンダーカバーが装着されていることが多く、樹脂製オイルパンの弱点を補っているとのこと。
鉄製のオイルパンを装着したトランスミッションの断面。オイルフィルターとオイルパンが別体となっている。 ソリッド・ステート LiDAR?
鉄製のオイルパンを装着したトランスミッションの断面。オイルフィルター(樹脂製:断面が青く塗られた部分)とオイルパン(鉄製)が別体となっている。 樹脂製のオイルパンを装着したトランスミッションの断面。オイルフィルター(樹脂製:断面が青く塗られた部分)とオイルパン(樹脂製:同じく断面が青)が一体となり、高さを抑制できている。
従来型の鉄製オイルパン 新たに開発した樹脂製オイルパン
従来型の鉄製オイルパン 新たに開発した樹脂製オイルパン

 

マグナ・インターナショナル

アルミ製オイルパン マグナが初めて北米で生産する、プレス成形したアルミ製のトランスミッションのオイルパン。GMのCadillac CT6、CTS、ATSに搭載されている8速AT向け。2015年は28.2万個を生産。
成形性に優れた5000系アルミを使い、重量は0.9kg。鉄製と比べると1.3kgの軽量化が可能となった。また、樹脂製に比べても高強度である分、軽量になるとしている。
アルミは鉄に比べるとプレス成形が難しいが、同社の持つシミュレーション/分析技術を用いて、カーブの部分(R部)を滑らかに成形した。

マグナのアルミ製オイルパン

 



住友電工:マグネシウム合金でシートフレームを試作

マグネシウム合金で試作したシートバックフレーム マグネシウム合金で試作したシートフレーム部品
マグネシウム合金で試作したシートバックフレーム マグネシウム合金で試作したシートフレーム部品

 

マグネシウム合金プレス部品 住友電工は、延性が高く、強度も高いマグネシウム合金 AZ91を使った圧延板材を開発。AZ91材はマグネシウムにアルミニウム9%、亜鉛約1%を混ぜた合金。通常AZ91材はダイキャスト製品向けの材料であるが、すの無い結晶粒子が均一の板材を開発した。ノートパソコン向けのフレームなどに採用されている。
今回は、同社の熱間プレス成形技術、溶接技術を用いて、シートフレームを試作。フレームの重量は1.3kgで、鋼フレームに比べて60%軽量化。背もたれの部分が約650gで、座面部分は約670g。プレス部品は、素材を約250度に暖めてからプレス加工を行う。パイプへの加工は、強度の高い摩擦攪拌溶接を採用した。同社は今後、素材の販売を行っていきたいとのこと。課題は価格面で、現在1kg=4,500円程度するのを半分にしていきたいとしている

 

マグネシウム合金の特徴

  比重   引っ張り強度MPa
マグネシウム合金 1.8 住友電工のAZ91
マグネシウム合金
330
アルミニウム合金 2.7 AZ91マグネシウム
合金鋳造材
250
チタン合金 4.5 5000系アルミニウム合金 260
鉄・鋼 7.9 汎用鋼板 270


デルタ工業:次世代シートコンセプト

Net Seat Smart i heating Steel Frame Net Seat Carbon + Torsion Bar Unit Smart i heating技術を採用したシートフレーム(マツダロードスター(ND) 向け)
Net Seat Smart i heating Steel Frame Net Seat Carbon + Torsion Bar Unit Smart i heating技術を採用したシートフレーム(マツダロードスター(ND) 向け)

 

Net Seat

Smart i heating Steel Frame

デルタ工業の高周波熱処理技術「Smart i heating(注)」を使った鉄フレームと、立体式に編んだ織物(3Dネット)からなる軽量シート。リクライニング機構がないこともあり、通常のシートと比べて約2kg軽量。3Dネットは人間の筋肉に近い弾力性を持ち、シートのウレタンの代わりとなる。ウレタンがないため、通常のシートより座面高が2、3センチ程度低くなり、ヘッドクリアランスが取りやすくなる。

Net Seat

Carbon + Torsion Bar Unit

シートバックにカーボンフレームとトーションバーユニットのクッション構造を組み合わせた、ウレタンレスのシート。こちらはより大きなシート向けとのこと。

 (注):Smart i heatingは高周波誘導加熱技術を用いて、摂氏約1000度まで急加熱した後、急冷することで、プレス加工後の部品を部分的に高強度化する技術。

 



アイシン高丘のダイクエンチ製品と、アイシン化工の防音材

アイシン高丘:ダイクエンチ製品

加熱した鋼板を金型でプレス成形すると同時に、金型による冷却によって焼き入れを行うダイクエンチ工法(ホットプレストも言う)を用いて成形した、引っ張り強度1500MPa級の製品を展示。トヨタのFCVミライ、HVプリウスに採用されている。

(上)ドアインパクトビーム:1500MPa級、板厚2.0mm、(下)ベルトラインレインフォース:1500MPa級、板厚1.4mm

(上)ドアインパクトビーム:1500MPa級、板厚2.0mm

(下)ベルトラインレインフォース:1500MPa級、板厚1.4mm

 

アイシン化工:塗布型充填防音材

Aピラーなどの空洞部に充填する防音材の新しい開発品。従来製品は、人の手でシート状の防音材を貼付けており、部品の折り目など細かいところまで、防音材を充填することができなかった(左下写真)。(断面積で)約5%の隙間ができ、その隙間から音が漏れる。
そこで、ゲル状の防音材を開発して、機械で塗ることができるようにした。これにより、隙間無く防音材を充填できるようになり(右下写真)、防音性能が高まり、従来製品と比べて4db軽減。コストも自動化することで25%削減できるとのこと。まだ開発中であり、さらに材料の改良を進めているとのこと。
貼付け型充填防音材 塗布型充填防音材
貼付型充填防音材:上の角に隙間がある。防音材が膨らんだ後も角には隙間が残り、音が漏れる。 塗布型充填防音材:角までしっかり防音材が塗布されている。膨らんだ後には防音材が隙間無く充填する。

                     <自動車産業ポータル、マークラインズ>