GM:引き続き収益性を重視、2016年の利益は約10%増の見込み

モビリティの未来を見据え、自動運転車、カーシェアリング、配車サービスに投資

2016/06/15

要 約

GMの連結業績
2017年型GMC Acadia
2017年型GMC Acadia (デトロイトモーターショー2016)

 GMは、リコール問題が一段落した2015年には収益が改善、2016年第1四半期も好調な業績を維持している。中核事業である自動車事業の成功を背景に、未来のパーソナル・モビリティに対応するため、最先端技術やイノベーションに投資を行っている。

 パーソナル・モビリティの変化をリードする上で重要な分野が、インターネット接続、自動運転、カーシェアリング、電動化等である。GMは、2016年初頭に独自のカーシェアリングサービスを立ち上げたほか、配車サービス会社Lyftと戦略提携を結んだ。また、自動運転技術を開発するCruise Automationの買収も計画している。

 GMの2015年の世界販売台数は前年比0.3%増の995.8万台で、3年連続で過去最高。北米ではピックアップやSUV、中国では高級車やSUVの販売が好調で、南米やロシアの低迷をカバーした。売上高は2.3%減となったが、調整後EBIT(利払税引前利益)は前年の65億ドルから108億ドルへ、純利益は28億ドルから97億ドルへと増加し、いずれも過去最高。2016年第1四半期は、販売台数は1%減となったが、売上高は4.3%増、調整後EBITと純利益も前年同期を大きく上回り、好調を維持している。

 2016年は、重要な新型車の投入、コア事業での効率改善、隣接分野での事業拡大により、さらに業績が改善する見通し。調整後EBITは2015年を上回り、調整後1株当たり利益は5.25-5.75ドル(2015年は5.02ドル)を見込んでいる。


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パーソナル・モビリティの未来を形成する最先端技術へ投資

 GMは、未来のパーソナル・モビリティには、インターネット接続や自動運転等の先進技術と、カーシェアリングや配車サービスといった新たなサービスが必要不可欠と考え、革新的な技術やサービスに投資している。2016年1月には、GM独自の Maven ブランドでカーシェアリングサービスを立ちあげた。また、配車サービス会社のLyftに出資し、自動運転車による配車ネットワーク構築に向け、戦略提携を締結。同年3月には自動運転技術を開発するCruise Automationを買収する計画を発表し、自動運転車の開発を強化している。

カーシェアリング、配車サービス、自動運転技術への投資

Maven ブランドを立ち上げ  GMは2016年1月、新たなカーシェアリングサービスを立ち上げ、「Maven」 と名付けた。このブランドのもとで、様々なオンデマンド・モビリティ・サービスを提供する。Google, Zipcar, Sidecar等で経験を積んできた40名以上の専任スタッフを雇用。まず、米国ミシガン州でサービスを開始し、その後、ニューヨーク、ボストン、シカゴ、ワシントン D.C.など他の都市にも展開している。
Lyftと提携  GMは2016年1月、米国の配車サービス市場で Uber に次ぐ第2位の Lyft に 5億ドルを出資すると共に、自動運転車ネットワークの構築に向け、長期的戦略提携を結ぶと発表した。具体的には、自動運転車による配車ネットワークの共同開発、GM所有車両の Lyft ドライバーへのレンタル等を行う。
 GMの一般車両のレンタルについては、上記 Maven を利用して2016年3月にシカゴで開始、他の都市へも展開中。また、1年以内にGMのEV Boltを使用した自動運転タクシーの公道実験を行う計画と報じられている。GMの Ammann社長は「自動運転車の大規模な普及は配車・相乗りサービスから始まる」との見方で Lyft と一致したとされる。
Cruise Automation を買収  GMは2016年3月、サンフランシスコに本拠を置く Cruise Automation社を買収すると発表。同社のソフトウェアの知識を取得し、自動運転技術の開発を加速させるため。Cruise Automation は2013年に設立、自動運転技術の開発・試験を行っている。買収後は、GMが最近設立した自動運転車開発チームで独立ユニットとして活動する。買収は2016年第2四半期に完了する予定。


2016年第1四半期の販売:欧州が改善、中国ではSUVとCadillacが好調

GMの地域別販売台数

 GMの2015年の世界販売台数は、前年比0.3%増の995.8万台で(中国の合弁会社SAIC-GMとSAIC-GM-Wulingの台数を含む)、3年連続過去最高を更新。新型車の販売が北米と中国で好調であり、南米とロシアの低迷をカバーした。世界市場シェアは11.2%(2014年は11.4%)。

 地域別では、北米はChevrolet Silverado、Chevrolet Colorado、GMC Sierra等のピックアップやChevrolet Equinox等のSUVの販売が好調で5.8%増、中国を含むその他地域では3.4%増。中国では13の新型車・改良車を投入し、SUV販売も拡大したが、販売台数は横ばいだった。一方、ロシアを含む欧州は6.4%減、南米は26.5%減となった。

 ブランド別では、Chevroletは米国でのシェアを拡大し、北米では6%増。Buickは世界販売および中国販売が過去最高。Cadillacは世界販売が8%増、中国販売が過去最高。GMCは6年連続増加の11%増。Opel/Vauxhallはロシアから戦略的撤退をしたにもかかわらず過去4年間で最高となった。

 2016年第1四半期の世界販売は1.0%減の237.4万台。北米は1.1%増、欧州では市場の回復を上回る成長を示し、6.5%増となった。南米は26.1%減、その他地域は0.5%減であったが、中国ではSUVと高級車(Cadillac)セグメントの販売が拡大し、0.2%増となった。


GM の地域別販売台数

(1,000台)
地域 2011年 2012年 2013年 2014年 2015年 2015年
1-3月
2016年
1-3月
北米(GMNA) 2,925 3,019 3,234 3,413 3,612 790 799
欧州(GME) 1,751 1,611 1,557 1,256 1,176 292 311
南米(GMSA) 1,066 1,051 1,037 878 645 180 133
その他地域(GMIO) 3,281 3,616 3,886 4,378 4,525 1,137 1,131
うち中国 2,542 2,832 3,156 3,613 3,612 962 964
全世界合計 9,024 9,297 9,715 9,925 9,958 2,399 2,374

資料:GM Press Release 2016.2.3/2016.4.22



2016年第1四半期の業績:純利益が20億ドル、欧州では収支均衡

 2015年の売上高は1,524億ドルで前年比2.3%減となったが、調整後EBITは66.5%増の108億ドル、純利益は3倍強の97億ドルで、いずれも過去最高。売上高に対する調整後EBIT率も過去最高の7.1%(前年は4.2%)。調整後EBITは、北米が110億ドルを創出し、欧州と南米の赤字をカバーした。

 GMは2015年3月、50億ドルの自社株を購入すると発表。今後の資金配分の原則を定めた「資金配分フレームワーク」も発表し、株主還元と収益重視の方針を明確にした。新たな経営指標として投下資本利益率(ROIC)を取り上げ、20%以上を目標としている。2015年のROICは目標を超える27.2%となった。

 2016年第1四半期の売上高は4.3%増の373億ドル。調整後EBITは27.5%増の27億ドル、純利益は倍増の20億ドルとなった。全地域で業績が改善し、欧州では収支均衡、南米では赤字が大幅に縮小した。ROICは前年同期を9ポイント上回る28.5%。

 GMは2015年の決算発表時に、今後も景気の循環に備え、景気低迷時でも収益性を維持できる事業計画を進める、としている。具体的には、コスト効率化、資本分散の改善、米国市場規模1,000万~1,100万台での採算維持、モデルサイクルに影響されない成長機会の活用(ファイナンス、アフターサービス、OnStar、Cadillacのグローバル化)等である。

 2016年は、重要な新型車の投入、コア事業での効率改善、隣接分野での事業拡大により、さらに業績が改善する見通し。調整後1株当たり利益は5.25-5.75ドル(2015年は5.02ドル)、自動車部門の調整後フリーキャッシュフロー(FCF)は最大60億ドル(2015年はリコール関連の現金支出が25億ドルあり、FCFは22億ドル)を見込んでいる。

50億ドルの自社株買い、資金配分フレームワークを発表(2015年3月)

GMは2015年3月、オバマ政権のGM再建タスクフォースの主要メンバーで、GMに出資する投資グループを率いる Harry J. Wilson 氏と、50億ドルの自社株買いをすることで合意した。自社株買いは、2016年末までに完了する計画。GMとWilson氏率いる投資グループは、同日にGMが発表した「資金配分フレームワーク」を尊重することを条件に、取締役就任要求と株主提案を取り下げることに合意した。
GMの「資金配分フレームワーク」の3つの原則は以下の通り。
 (1)高収益事業への投資:投下資本収益率(ROIC)は20%以上を目標とする
 (2)投資適格企業としてのバランスシート維持:手元のキャッシュは200億ドルを目安とする 
 (3)株主への還元:必要以外のフリーキャッシュフローをすべて株主へ還元する


GMの連結業績

(100万ドル)
2011年 2012年 2013年 2014年 2015年 2015年
1-3月
2016年
1-3月
売上高 150,276 152,256 155,427 155,929 152,356 35,712 37,265
   自動車部門 148,869 150,293 152,100 151,092 145,922 34,364 35,195
北米(GMNA) 90,233 89,910 95,099 101,199 106,622 24,676 26,463
欧州(GME) 26,757 20,689 20,110 22,235 18,704 4,449 4,681
南米(GMSA) 16,877 16,700 16,478 13,115 7,820 2,092 1,343
その他地域(GMIO) 24,761 22,954 20,263 14,392 12,626 3,112 2,679
調整後EBIT 8,304 7,859 8,578 6,494 10,814 2,082 2,655
北米(GMNA) 7,194 6,470 7,461 6,603 11,026 2,182 2,296
純利益(普通株主帰属) 7,585 4,859 3,770 2,804 9,687 945 1,953

資料:GM Press Release 2016.2.3/2016.4.22
(注) 2015年に発生した特別項目は純利益に15億ドルの押し上げ効果をもたらした。特別項目には繰延税金資産の評価引当金が取り崩されたことによる利益39億ドル、イグニッションスイッチのリコール関連費用(14億ドル)、ベネズエラの通貨切り下げによる損失(6億ドル)等が含まれる。一方、2014年の特別項目は24億ドルのマイナスであった。



北米市場での新型車投入計画

2017年型 Chevrolet Bolt EV
2017年型 Chevrolet Bolt EV (デトロイトモーターショー2016)

 2016年には、SUVの需要が高まっている北米に、小型SUVのBuick Envision、中型SUVのGMC Acadia、中型高級SUVのCadillac XT5を投入。CadillacのフラッグシップセダンCT6やChevroletの世界戦略車Cruzeの新型車も発売。また、航続距離が200マイル超の電気自動車 Chevrolet Bolt を年内に投入する計画。













GM:2016年に北米市場に投入する新型車

モデル 発売時期 概要
Buick Cascada 2016年初頭  2ドアコンバーチブル。2013年から販売されている Opel Cascada の Buick版。ポーランドから輸入。米国で Buick ブランドのオープンモデルを販売するのは25年ぶり。1.6L 4気筒ターボエンジンを搭載。
Cadillac CT6 2016年1月  Cadillacの新型フラッグシップセダン。新開発の Omega プラットフォームを使用。2.0L 直4ターボ/3.6L V6/3.0L V6ツインターボの3種類のエンジンを設定。ミシガン州 Detroit-Hamtramck工場で生産。PHVも発売予定。
新型 Chevrolet Cruze 2016年4月  4月にセダン、秋にハッチバックバージョンを発売する。1.4L ターボエンジンを搭載。オハイオ州 Lordstown工場で生産。2017年にクリーンディーゼルエンジン(バイオディーゼル20%混合油のB20を使用可能な1.6Lディーゼルエンジン)を搭載予定。
Cadillac XT5 2016年4月  中型高級クロスオーバーSUV。SRXの後継モデル。3.6L V6エンジンを搭載。8速ATと組み合わせる。米国テネシー州 Spring Hill 工場で生産。
新型 GMC Acadia 2016年春  中型クロスオーバーSUV。C1XXプラットフォームを使用。2.5L 4気筒/3.6L V6エンジンと6速ATを組み合わせる。テネシー州 Spring Hill 工場で生産。
Buick Envision 2016年半ば  小型クロスオーバーSUV。Buick EncoreとEnclaveの中間に位置する。Chevrolet Equinox/GMC Terrainの姉妹車。上汽GMが中国・煙台工場で生産する車両を輸入。2.0L 4気筒ターボエンジンと6速ATを搭載。
新型 Buick LaCrosse 2016年夏  中型セダン。第2世代の3.6L V6エンジンに新型8速ATを組み合わせる。ミシガン州 Detroit-Hamtramck工場で生産。
Chevrolet Bolt 2016年末  サブコンパクト車のEV。LG電子製モーター(200 hp, 266 lb-ft)とLG化学製リチウムイオン電池(容量 60kWh)を搭載。航続距離は200マイル超。ミシガン州 Orion 工場で生産。
GM:2015年に北米市場に投入した新型車
Chevrolet Trax 2015年1月  小型クロスオーバーSUV。Buick Encore/Opel Mokkaの姉妹車。世界140カ国で販売されるが、これまで米国では販売されていなかった。1.4L 4気筒ターボエンジンを搭載。韓国から輸入。
新型 Chevrolet Volt 2015年秋  PHV専用のコンパクトカー。1.5L 4気筒直噴エンジン、モーター2基、リチウムイオン電池 (18.4kWh) を搭載。EV走行による航続距離は53マイル、航続距離は420マイル。Detroit-Hamtramck 組立工場で生産。
新型 Chevrolet Camaro 2015年11月  スポーツクーペおよびオープンカー。オープンカーは2016年初めに発売。2.0L ターボ/3.6L V6/6.2L V8 の3種のエンジンを設定。6速MT/8速ATを組み合わせる。旧型車はカナダ・Oshawa工場で生産していたが、新型車はミシガン州のLansing Grand River工場で生産。
新型 Chevrolet Malibu 2015年12月  中型セダン。ホイールベースを101mm延長して車内スペースを拡大する一方、車両重量は136kg軽量化。1.5L/2.0L 4気筒ターボエンジンを設定。HVバージョンはPHV Volt と HV部品の多くを共有。ただし、リチウムイオン電池の容量は1.5kWh。カンザス州 Fairfax工場で生産。
新型 Chevrolet Spark 2015年末  4人乗りサブコンパクトカー。新型1.4L 4気筒 ECOTECエンジンの出力は旧型車より16%改善して 98 hp。米国をはじめ世界40カ国以上で販売される予定。韓国の昌原(Changwon)工場で生産。


中国での新成長戦略(2016-2020年)を発表

 GMは中国市場で2015年に13の新型車・一部改良車を投入。販売台数は361万台で横ばいだったが、シェアは14.9%で第1位の座を取り戻した。今後も成長が期待される中国について、GMは2016年3月に新たな戦略を発表。SUV、MPV、高級車を重点的に投入し、需要増に対応する計画。

GMの中国成長戦略(2016-2020年)(2016年3月21日発表)

市場予測  GMの予測では、中国市場は2020年までに500万台増加する(年平均3-5%増)見通し。増加分の80%に当たる420万台はSUV、MPV、高級車。高級車は年平均10%以上伸びる見込み。
新型車投入  GMは2020年までに60余の新モデルおよび改良モデルを投入する(うち13車種は2016年内に発売予定)。約40%はSUVとMPVとし、高級車ブランドのCadillacから10車種を投入する予定。
先進技術  2020年までに10余の新エネルギー車(Chevrolet, Buick, Cadillac, Baojunブランド)を投入する計画。上海で生産するCadillac CT6 PHEVは2016年内に投入予定。
 2020年までに中国における Chevrolet, Buick, Cadillacの全モデルに、車載テレマティクスサービスOnStar等を利用したインターネット接続機能を搭載する。

中国:GMの生産拠点を開設

Cadillac 工場  SAIC-GMは2016年1月、上海の Cadillac専用工場を正式に稼働した。第1期工事の投資総額は80億元で、敷地面積は47万7,000平方メートル。車体製造、塗装、組立施設のほか、高速テストコースも擁する。年産能力は16万台。まず、高級セダン Cadillac CT6 の生産を開始した。
Baojun 工場の第2期工事を完成  SAIC-GM-Wuling は2015年8月、広西チワン族自治区柳州市で Baojun 完成車工場の第2期建設プロジェクトを完了。SUV の Baojun 560 の生産を開始した。また、新エネルギー車生産施設の建設を開始した。第2期工事の投資総額は80億元。年産能力は完成車40万台、エンジン40万基、新エネルギー車20万台の計画。
武漢工場  SAIC-GMは2015年1月、武漢工場の稼働を開始した。今回竣工した第1期工事の投資額は70億元。プレス、溶接、塗装、組立工場を擁し、年産能力は24万台。まず、新型Buick Excelle の生産が開始された。第1期工事の完了に伴い、第2期工事が開始。75億元を投じ、年産能力を倍増する計画。稼働開始は2017年の見込み。

新興国向けの新型車開発に50億ドルを投資

上海汽車と新型車ファミリーを協同開発  GMのChevrolet部門は、2015年7月、新興国向けの新型車ファミリーの開発に50億ドルを投資すると発表した。コア・アーキテクチャーとエンジンは、上海汽車と共同開発し、開発コストを節約する。ブラジル、中国、インド、メキシコで生産販売するほか、他の新興国にも輸出し、全体で年間販売が200万台超となる見込み。最初の新型車は2019年型車となる予定。
うち10億ドルをインドに投資  上記の50億ドルの投資の一部として、GMはインドに10億ドルを投資する計画。2020年までにインドでChevroletブランドの新型車10車種の生産を開始する。また、マハラシュトラ州のTalegaon工場の年産能力を、13万台から2025年までに22万台に増強し、30%以上を輸出に充てる。一方、グジャラート州Halol工場は、2016年下期までに生産を停止する。


その他の市場:タイとインドネシアでは事業再編、ロシアでは事業縮小

アジア:GMは事業再編へ

タイ  GMは2015年2月、タイ事業を再編すると発表。競争力の弱いモデルを廃止し、人気のあるピックアップやSUVへ資源を集中する。乗用車のSonicとMPVのSpinは現行モデルの販売が終了次第、ラインナップから消えるが、ピックアップのColorado、SUVの Captiva, Trailblazer 、乗用車のCruzeは販売を継続する。Rayong工場における Sonicの生産も2015年6月に終了した。また、第2期エコカー政策への参加も見送ることをタイ投資委員会に伝えた。
インドネシア  GMは、インドネシア・西ジャワ州Bekasi工場での生産を2015年6月末で終了した。GMインドネシアは、今後、販売・アフターサービス機能に特化し、Chevroletブランド車の販売を継続する。Bekasi工場では小型MPVのSpinを生産し、インドネシア国内で販売するほか、ASEAN諸国へ輸出していた。今回の生産中止により、約500名の雇用が失われた。
 一方、GMと上海汽車は2015年2月2日に、両社の合弁会社 SAIC-GM-Wulingがインドネシアに新工場を建設し、Wulingブランド車を生産する計画を発表した。新工場はジャカルタ近郊に立地、報道では、2016年1月に建設を開始したとされる。

ロシア:GMは事業縮小、Opel ブランドは撤退

 GMは2015年3月、欧米の経済制裁や原油安により中長期的にロシアの需要は見込めないとして、同国での事業を縮小すると発表した。St. Petersburg 工場の生産を2015年半ばまでに終了、Opel ブランド車の販売を2015年末に終了、ロシアの自動車メーカー GAZ に委託している Chevroletブランド車の生産も同年内に停止。
 これにより、ロシアにおけるGMの生産は現地大手 AvtoVAZ との合弁、GM AvtoVAZ の Togliatti 工場で生産する四輪駆動 SUV の Chevrolet Niva のみとなった。GMは今回の事業縮小に伴い、2015年第1四半期に約6億ドルの特別損失を計上した。


ホンダとは燃料電池車、いすゞとは小型トラックの供給で提携

ホンダとの提携

燃料電池車  2013年に提携。2020年にも共同開発のFCVを市場投入する計画。現在は量産に向けた検討も行っており、主要部品の燃料電池スタックの共同生産についても調整している。
提携拡大を検討  2016年1月、ホンダの八郷社長はGMとの提携について、情報技術(IT)化と人工知能(AI)など自動運転技術の分野にも拡大したい意向を表明した。これが実現すれば、環境対応から自動運転まで、今後の自動車開発の鍵となる技術を網羅する提携となる。

いすゞとの提携

GMに小型トラックを供給  GMといすゞは2015年6月、米国での商用車事業で協業を進めることで合意。いすゞの小型トラック 「Nシリーズ(日本名:エルフ)」を2016年からChevroletブランドでGMに供給、Chevroletディーラーで販売する。また、GMは6L V8ガソリンエンジンと6速トランスミッションのいすゞへの供給を引き続き行う。
南アフリカでの関係強化  GMといすゞは2015年7月、南アフリカにおける関係強化に焦点を当てた枠組み協定に署名した。主な目的は、同国における小型商用車の生産事業を確実なものとし、国内および輸出市場向けにChevrolet, Opel, Isuzuブランドの強力なモデルを引き続き供給することである。


リコール問題:補償ファンドの審査は終了、司法省とは罰金9億ドルで和解

 GMは、2014年初頭に起きたイグニッションスイッチの不具合によるリコール問題の対応に追われてきたが、2015年8月に、GMが設立した補償ファンドがすべての補償請求の審査を完了。同年9月には米国司法省と9億ドルの罰金を支払うことで和解した。しかし、補償金額をめぐる協議や被害者による訴訟の多くは、まだ審理中である。

イグニッションスイッチのリコール問題

リコール問題  2014年初頭にGMがイグニッションスイッチの不具合により2003-2007年型車162万台をリコールすると発表。問題となったのは、GMがこの不具合を知りながら直ちにリコールせず、米当局や顧客に必要な情報を開示しなかったこと、そしてリコールの届け出の遅れにより、この不具合に起因する事故が拡大したことで、組織ぐるみの隠蔽ではないかと疑われた。
社内調査と補償ファンド  GMは元連邦検事のValukas弁護士による社内調査を行うと共に、被害者に対するイグニッションスイッチ補償ファンド (Ignition Compensation Claims Resolution Facility) を設立。GMとは独立して補償を判断する権限を与え、2014年8月から被害者からの請求を受け付けた。
2014年は3,043万台をリコール  GMは2015年1月2日、2014年のリコール件数(イグニッションスイッチ関連を含む)の累計は84件、世界の対象車両は約3,043万台となったと発表した。2013年は23件で75.7万台だった。
死亡補償金請求認定は124人  GMのイグニッションスイッチ補償ファンドは2015年8月3日、全請求の審査を終了し、死亡補償金請求の認定が124人になったと発表した(GMは当初、13人と報告)。2014年8月1日から2015年1月31日までに計4,342件の請求があり、うち474件が死亡補償金請求だった。補償ファンドは319件の和解オファーを作成し、227件が受諾、6件は拒否され、86件は審理中である。
司法省と罰金9億ドルで和解  GMは2015年9月に米司法省と、イグニッションスイッチ不具合に関連したGMの対応について、9億ドルを支払うことで「刑事訴追延期」という形で和解した。この決定は、GMによる社内調査や補償ファンドの設立が評価されたため。9億ドルの罰金は第3四半期の費用として計上された。
民事訴訟の和解金5.75億ドルを計上  GMは2015年9月、2014年のリコール(イグニッションスイッチ関連を含む)に関する2件の民事訴訟で和解したと発表した。そのうち1件はニューヨーク南地区連邦地方裁判所に提訴された訴訟で、約1,380名の個人死亡傷害訴訟をカバーする(個人傷害訴訟の半分以上を含むとされる)。GMはこれら民事訴訟の和解金として、5億7,500万ドルを第3四半期の費用として計上した。


LMC Automotive 生産予測:GMの世界生産は2019年に835万台となる見込み

(LMC Automotive社、2016年4月)
GMの light vehicle 生産予測

 LMC Automotiveが2016年4月に発表した予測によると、GMの2016年の世界生産は前年比3.0%増の788万台。2017年以降も生産は増え続け、2019年には2016年比6.0%増の835万台となる見込み。2019年までは、北米が引き続き最大の増産拠点であるが、西欧とアジア・太平洋地域でも生産が増加する見通し。

 北米では、2016年の生産は前年比5.9%となる見込み。10月にBuick Veranoの生産終了により一時的に生産台数が減少するが、Chevrolet ブランドのCamaro、Cruze、Malibuの新型車投入等でカバーされる見通し。2018年第3四半期には、Chevroletは中型SUVのBlazerを再投入する計画。この5人乗りSUVの生産台数は8.5万台前後の見込み。メキシコでは、GMはRamos Arizpe工場の余剰能力の利用を始めており、2016年にはCruze のハッチバックモデルの生産を追加。2017年には新型Equinoxの生産を追加する。Ramos Arizpe工場は、GEM(新興国向け)プラットフォームを使用するモデルも生産する予定で、全モデルが投入されると、10万台を超える生産が追加されることになる。

 西欧での生産拡大は、GMが2016年からSUVのAstraを、フランスにあるPSAのSochaux工場で生産するためである。

 一方、GMの生産が最も増加するのはアジア・太平洋地域で、生産を押し上げるのは、SAIC-GMが武漢に建設した新工場と、上海に建設したCadillac工場である。上海工場では2016年1月にCadillac CT6の生産を開始。同年2月にBuick Excelle XT/GT (Astra) の生産を始めた武漢工場は、2016年に新型コンパクトカー、2017年に新型SUVの生産を追加する計画。これらの新型車の生産を支えるために、武漢工場は2017年に生産能力を現行の2倍の48万台とする見通し。


GMの市場・ブランド別生産予測 (LMC Automotive, 2016年4月)

(台)
COUNTRY GLOBAL MAKE 2013 2014 2015 2016 2017 2018 2019
GM by make Chevrolet 5,485,811 5,240,334 4,649,595 4,726,540 4,912,478 4,956,284 5,086,253
Opel 1,174,836 1,184,848 1,182,196 1,270,965 1,266,993 1,273,821 1,245,464
Buick 516,031 566,000 740,002 800,397 741,865 752,460 868,258
GMC 571,304 609,777 683,381 686,740 630,113 699,046 688,240
Cadillac 256,912 265,623 253,103 293,687 330,258 373,809 405,945
GM 47,772 24,784 43,069 27,767 34,456 33,893 34,067
Isuzu 21,281 13,726 11,136 7,428 11,652 13,254 15,884
Holden 42,109 32,798 30,350 41,757 37,443 4,731 9,894
Suzuki 3,446 3,907 1,104 0 0 0 0
Wuling 20,861 9,787 6,078 5,961 0 0 0
Daewoo 59,709 59,979 47,224 17,055 0 0 0
GM total 8,200,072 8,011,563 7,647,238 7,878,297 7,965,258 8,107,298 8,354,005
USA Chevrolet 1,381,058 1,473,568 1,490,596 1,676,858 1,551,633 1,796,803 1,827,998
GMC 359,013 362,041 423,910 450,960 413,579 506,686 506,452
Cadillac 109,197 100,507 88,339 181,526 196,764 220,748 245,583
Buick 173,173 164,310 139,092 136,208 107,205 116,148 111,407
Holden 0 0 0 0 0 4,731 9,894
USA sub-total 2,022,441 2,100,426 2,141,937 2,445,552 2,269,181 2,645,116 2,701,334
China Chevrolet 999,730 1,077,853 809,128 780,329 844,846 851,251 916,818
Buick 319,092 374,441 578,794 642,045 623,695 636,312 755,271
Opel 210,603 235,553 286,983 291,013 236,794 217,645 226,814
Cadillac 21,397 43,578 53,147 82,207 114,610 134,548 142,167
Holden 122 0 0 0 0 0 0
China sub-total 1,550,944 1,731,425 1,728,052 1,795,594 1,819,945 1,839,756 2,041,070
Mexico Chevrolet 457,205 458,317 485,949 555,332 689,809 587,076 548,603
GMC 99,611 129,463 137,339 123,885 185,803 192,360 181,788
Buick 0 0 0 0 0 0 1,580
Cadillac 89,385 100,251 90,575 7,991 0 0 0
Mexico sub-total 646,201 688,031 713,863 687,208 875,612 779,436 731,971
Korea Chevrolet 754,016 617,699 599,040 609,638 628,764 584,867 541,374
GM 24,930 6,196 13,847 9,704 9,153 8,027 8,182
Buick 3,693 5,335 2,955 0 0 0 0
Korea sub-total 782,639 629,230 615,842 619,342 637,917 592,894 549,556
Brazil Chevrolet 664,599 548,997 364,976 317,222 350,701 374,248 404,248
Spain Opel 283,891 302,625 275,640 270,904 279,925 312,808 323,057
Chevrolet 0 20,874 83,933 85,811 70,174 63,757 19,372
Spain sub-total 283,891 323,499 359,573 356,715 350,099 376,565 342,429
Germany Opel 360,561 365,410 258,936 283,729 277,852 284,135 283,136
Canada Chevrolet 458,851 428,858 416,638 347,814 325,135 223,911 209,685
Cadillac 35,886 20,470 20,390 21,481 18,431 17,909 17,469
GMC 112,680 118,273 122,132 111,895 30,731 0 0
Buick 20,073 21,914 19,161 22,144 10,965 0 0
Canada sub-total 627,490 589,515 578,321 503,334 385,262 241,820 227,154
Uzbekistan Chevrolet 164,140 170,261 108,954 72,421 146,307 176,352 181,184
GM 22,842 18,588 29,222 18,063 25,303 25,866 25,885
Daewoo 59,709 59,979 47,224 17,055 0 0 0
Uzbekistan sub-total 246,691 248,828 185,400 107,539 171,610 202,218 207,069
Poland Opel 102,535 87,038 169,330 196,203 197,969 159,150 123,666
Chevrolet 0 0 0 0 0 0 65,179
Poland sub-total 102,535 87,038 169,330 196,203 197,969 159,150 188,845
UK Opel 117,245 121,403 146,231 188,939 201,261 183,419 180,381
India Chevrolet 57,827 34,345 19,917 86,892 114,964 114,159 157,452
Isuzu 12,189 13,274 11,136 7,428 11,652 13,254 15,884
Wuling 20,861 9,787 6,078 5,961 0 0 0
India sub-total 90,877 57,406 37,131 100,281 126,616 127,413 173,336
France Opel 0 0 0 0 34,820 83,359 83,305
Thailand Chevrolet 108,700 55,410 51,077 43,331 45,411 45,331 59,480
Russia Chevrolet 174,386 123,385 43,646 32,040 26,065 36,019 45,703
Opel 49,011 28,447 1,733 0 0 0 0
Cadillac 1,047 817 331 0 0 0 0
Russia sub-total 224,444 152,649 45,710 32,040 26,065 36,019 45,703
Colombia Chevrolet 35,653 45,042 40,751 35,947 41,973 43,175 44,625
South Africa Opel 20,526 17,900 19,105 16,050 16,335 19,487 25,105
Chevrolet 6,595 8,383 5,428 5,483 4,779 5,027 5,033
South Africa sub-total 27,121 26,283 24,533 21,533 21,114 24,514 30,138
Ecuador Chevrolet 28,382 36,854 29,329 13,702 20,319 20,217 21,097
Suzuki 3,446 3,907 1,104 0 0 0 0
Isuzu 6,649 0 0 0 0 0 0
Ecuador sub-total 38,477 40,761 30,433 13,702 20,319 20,217 21,097
Argentina Chevrolet 111,355 86,931 57,378 42,795 21,182 18,765 20,569
Vietnam Chevrolet 4,615 5,368 7,088 6,368 7,445 7,227 7,782
Venezuela Chevrolet 22,515 4,501 4,759 2,048 3,176 4,091 4,892
Isuzu 2,443 452 0 0 0 0 0
Venezuela sub-total 24,958 4,953 4,759 2,048 3,176 4,091 4,892
Kazakhstan Chevrolet 9,566 6,712 956 1,203 2,781 3,296 4,426
Belarus Chevrolet 0 0 2,204 598 756 712 733
Cadillac 0 0 321 482 453 604 726
Opel 0 15 0 0 0 0 0
Belarus sub-total 0 15 2,525 1,080 1,209 1,316 1,459
Turkey Opel 17,515 20,402 24,238 24,127 22,037 13,818 0
Indonesia Chevrolet 21,669 10,484 4,405 0 0 0 0
Ukraine Chevrolet 73 2,205 0 0 0 0 0
Australia Holden 41,987 32,798 30,350 41,757 37,443 0 0
Chevrolet 24,876 24,287 23,443 10,708 16,258 0 0
Australia sub-total 66,863 57,085 53,793 52,465 53,701 0 0
Hungary Opel 12,949 6,055 0 0 0 0 0
Source: LMC Automotive "Global Automotive Production Forecast (April 2016)"
(注) 1. データは、小型車(乗用車+車両総重量 6t以下の小型商用車)の数値。
2. 本表の無断転載を禁じます。転載には LMC Automotive 社の許諾が必要になります。
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