メキシコの日系部品メーカー:活発化する新規進出

小糸製作所、ジェイテクト、アドヴィックス、東海理化、セーレン、KYB、ニッパツ、日本精工、不二越など

2015/06/19

要 約

Thailand Map
(地図をクリックすると拠点マップが開きます)。

 メキシコの2014年の自動車生産台数(除く大型バス・トラック)は322.0万台(前年比9.8%増)、輸出は264.3万台(同9.1%増)、新車販売台数は113.5万台(同6.8%増)といずれも過去最高を更新。2015年1-4月は生産台数が113.2万台(前年同期比10.7%増)、輸出台数が92.2万台(同14.0%増)、新車販売台数が40.1万台(同22.2%増)と各々増加幅を拡大させている。

 こうした中、日系自動車メーカーでは、2013年11月~2014年2月にかけて日産、マツダ、ホンダが相次いで新工場を稼働させた。また、トヨタはグアナファト州 (Guanajuato州) に年産能力20万台の乗用車工場を建設し、2019年に稼働させることを2015年4月に発表した。この他の新たな生産拠点としては、アウディおよび起亜自が2016年に、ルノー・日産アライアンスとダイムラーが合弁で2017年に、BMWが2019年に工場を稼働させる計画。

 日系部品メーカーでは、メキシコへの新規進出が引き続き多く、生産能力の増強は既存工場のみならず、一部の新規工場でも稼働開始前に、生産能力の上乗せが行われている。また、生産品目の追加のための新たな生産拠点構築もみられる。

 以下は、メキシコにおける日系部品メーカーの新規進出の動向である(収録対象は、2015年5月中旬までの約8カ月間)。

 メキシコにおける生産能力向上などの動向、ブラジルにおける動向については、別途報告したします。


メキシコでの新規工場設立:( )は生産品目

新規工場進出  ジェイテクト(電動パワーステアリング)、ショーワ(電動パワーステアリング)、アドヴィックス(ドラムブレーキ)、東海理化(スイッチ、セキュリティ製品など)、NTN(軸受、CVJ)、日本精工(軸受)、不二越(軸受)、ニッパツ(懸架ばね)、ビヨンズ(変速機部品)、安永(エンジン部品)、小糸製作所(ランプ)、スタンレー電気(ランプ)、旭化成ケミカルズ(樹脂コンパウンド)、日新化工(樹脂部品)、MCシステムズ(防錆処理)、DOWAホールディングス(熱処理加工)など
新規工場での増産・新生産品目のための追加投資  セーレン(内装材)、ダイキョーニシカワ(樹脂部品)、KYB(CVT用ベーンポンプに加えショックアブソーバー)、サンコール(弁バネ用鋼線工場に加えリングギア工場)
販売会社設立  三遠機材(CVT部品)

 
日系部品メーカー動向関連レポート:
東南アジア編 (2015年4月)、米国編(2015年3月)
中国編(上):華南・華中・西南での動向 (2015年1月)
中国編(下):華東・華北・東北地域・中国全体での動向 (2015年2月)
インド編 (2014年11月)
メキシコへの新規進出 (2014年10月)、メキシコでの工場拡充・ブラジルでの動向 (2014年10月)
タイ編 (2014年9月)
 



Guanajuato州、Jalisco州、Queretaro州への新規進出

 

会社名 活動内容
旭化成ケミカルズ
樹脂コンパウンド事業の現地法人設立、2015年9月に営業開始予定
旭化成ケミカルズは2015年3月、米子会社のAsahi Kasei Plastics North America Inc.が、Asahi Kasei Plastics Mexico Inc.(Queretaro州)を2015年6月に設立予定と発表。営業開始は同年9月予定で、ポリプロピレン、ポリアミドを中心とした機能樹脂コンパウンド品を販売。日米欧系自動車関連メーカーのニーズに対応した販売・技術サポートを展開する。将来的には製造拠点の開設も検討。
アドヴィックス
ドラムブレーキの生産拠点設立、稼働は2016年3月予定
アドヴィックスは、2014年10月にADVICS Manufacturing Mexico, S.de R.L de C.V.(Jalisco州)を設立。資本金は約10億円。ホンダ、日産、マツダなど日系メーカーの現地生産拡大に対応。2016年3月に稼働し、メキシコで新規受注した分のドラムブレーキを生産、供給する。投資額は15億円。売上高は2018年度に約34億円を計画。
MCシステムズ
部品の防錆処理加工工場を2014年末までに稼働
MCシステムズは、2013年に現地法人MCS Mexicana(Guanajuato州)を設立。レンタル工場でボルト、ナット、バネなどの防錆処理加工を2014年末までに開始。日系メーカーの現地工場でのニーズに対応。投資額は約4億円。この他に、別に工場用地を取得済で、需要動向を見極めて新工場建設を計画する。
KYB
CVT用オイルポンプ生産を2014年9月に開始、2015年12月からショックアブソーバー生産も
KYBは、KYB Mexico S.A. de C.V.(Guanajuato州)で2014年9月にCVT用オイルポンプを生産開始。また、同敷地内にショックアブソーバー工場を建設し、2015年12月から生産開始する。生産数量は、2016年に97万本。需要拡大を見込まれるメキシコのOEM、アフター市場や、中南米(除くブラジル)向けの生産拠点の位置付け。日米からの輸入をメキシコでの生産に切り替える。
ショーワ
北米での電動パワーステアリンング生産をメキシコに集約
ショーワは、SHOWA AUTOPARTS MEXICO, S.A. de C.V.(Guanajuato州)の電動パワーステアリング(EPS)工場が2015年7月に稼働予定。年産能力は50万台。これに伴い米国、カナダでのEPS生産を、モデル切り替えに合わせて順次終了させ、メキシコからの供給に変更する計画。メキシコ工場では、今後も既存のパワーステアリングの生産能力増強を進めるほか、新たに製品化したデュアルピニオン式EPSも生産し、事業の収益性を高める。
スタンレー電気
自動車用ランプの生産拠点を新設
スタンレー電気は、2015年3月に自動車用ランプ、電子製品などを製造販売するStanley Electric Manufacturing Mexico S.A. de C.V.(Jalisco州)を設立。資本金は約52億円。2016年夏頃に、ヘッドランプとテールランプなどの照明器具の生産を年産25万台で開始し、徐々に拡大していく予定。メキシコ国内への供給体制をまず構築し、将来的には米国への供給も視野に入れる。投資額は約75億円。売上高計画は、2016年度が約10億円、2017年度が約33億円。
セーレン
2015年11月に稼働予定のシート材工場の生産能力を倍増計画
セーレンは、Viscotec Mexico S.A. de C.V.(Queretaro州)のシート材新工場(Guanajuato州)で2015年11月に量産開始予定。当初計画の月産能力は、2017年にファブリックを25万メートル、合皮を20万メートル、投資額は約50億円だった。今後さらに約32億円を投資し、2020年までに各々50万メートル、40万メートルに倍増させる計画。工場用地は拡大して取得済。売上高計画は2017年に約25億円、2018年に約60億円。
ダイキョーニシカワ
樹脂部品新工場が2015年度からフル生産に
ダイキョーニシカワは、2014年1月に量産開始したDaikyoNishikawa Mexicana, S.A.de C.V.(Guanajuato州)が2015年度にフル生産に入る。メキシコのマツダ工場向けにバンパー、インストルメントパネル、樹脂製オイルストレーナーなどを納入。
日新化工
樹脂部品の工場を新設
日新化工は、2015年2月にNISSIN KAKOU MEXICANA S.A. DE C.V.(Jalisco州)を設立。資本金は2.4億円相当。2016年夏頃に工場稼働し、日系部品メーカー向けにエアコンのコントロール部品などの樹脂外装品用部品を生産する。総投資額は6億円。初年度の売上高は1億円程度だが、10年以内に20億円を目指す。
ニッパツ
スタビライザー用のコンパクトなラインを導入
ニッパツは、2015年度に生産開始するNHK SPRING MEXICO, SA. DE C.V. (Guanajuato州)にスタビライザー用のコンパクトなラインを導入し、生産変動に柔軟に対応できる工場とする。コイルばね、スタビライザーなどの懸架ばねを生産する計画だが、まず、スタビライザーから生産開始し現地の日系メーカーに供給する。
日本精工
軸受の新工場が2014年4月に稼働
日本精工は、2014年4月にNSK Bearings Manufacturing, Mexico S.A. de C.V.(Guanajuato州)の新工場が軸受生産を開始。工場には最新鋭の生産自働化ラインを導入。製品はメキシコを含む北米市場に供給するが、将来的には欧州や韓国などメキシコが関税協定を結んでいる国々への供給も計画。
不二越
軸受の新工場が2016年春に稼働予定
不二越は、Nachi Technology Mexico S.A. de. C.V.(Queretaro州)の新工場が2016年春に操業開始予定。米国やメキシコの日系や米系メーカーにトランスミッションや等速ジョイント用などの軸受を供給する。月産量は、2016年末に60万個、2018年末までに200万個を目指す。2017年までの投資額は約30億円。将来は、ロボットや工具、油圧機器、カーコントロールバルブなど他の事業にも拡大する計画。
安永
エンジン部品、工作機械の生産子会社設立
安永は、2015年7月にYasunaga Mexico S.A. de C.V.(Jalisco州)を設立する。資本金は約6.4億円。工場は2018年夏に稼働し、コネクティングロッドなどのエンジン部品及び工作機械を生産する。メキシコを含む北米での拡販を計画。

 

 



San Luis Potosi州への新規進出

 

会社名 活動内容
小糸製作所
ランプの新工場が2014年9月に生産開始
小糸製作所は、North American Lighting Mexico, S.A. de C.V.(San Luis Potosi州)の新工場が2014年9月に稼働。年100万台分のヘッドランプ、フォグランプなどの照明機器を生産。米国の現地法人North American Lighting, Inc. Paris工場(Illinois州 )も、2014年に生産能力を100万台分増強。2工場が相互補完を図り事業を拡大する。
ジェイテクト
電動パワーステアリング生産拠点が稼働へ
ジェイテクトは、2014年2月に設立した電動パワーステアリングの生産会社JTEKT AUTOMOTIVE MEXICO, S.A.DE C.V.(San Luis Potosi州)の工場が2015年末に稼働予定。年産能力は約90万台。投資額は80億円。
DOWAホールディングス
熱処理事業拠点を開設
DOWAホールディングスは、子会社のDOWAサーモテックがDOWA THERMOTECH MEXICO S.A.de C.V.(San Luis Potosi州)を2015年4月に設立し、営業開始。資本金は500万ドル。2017年4月に工場稼働を目指し、部品メーカーから熱処理加工を受託する。投資額は数億円。この他、熱処理炉の販売およびそのメンテナンス事業を行い、数年後に売上高10億円を目指す。

 

 



Aguascalientes州への新規進出

 

会社名 活動内容
NTN
新工場でハブベアリング、CVJの量産を2015年10月に開始
NTNは、NTN MANUFACTURING DE MEXICO, S.A.DE C.V.(Aguascalientes州)の新工場が2015年10月に稼働予定。第3世代ハブベアリングおよび等速ジョイント(CVJ)を量産する。設備投資額は約120億円。当面はメキシコ国内向けに供給するが、2018年3月までには北米向けの供給拠点とする。ただし、日本に生産余力があるため、北米向け供給は為替の状況を見ながら判断。
サンコール
弁バネ用鋼線の第1工場に続き、リングギアの第2工場を建設中
サンコールは、2013年に設立したSUNCALL TECHNOLOGIES MEXICO,S.A.DE C.V. (Aguascalientes州)で弁バネ用鋼線を生産する第1工場の建設を進めており、2016年1月に生産開始予定。投資額は約22億円。年産能力は当面3600トン。一方、変速機メーカーからリングギアの現地生産への要望を受けて、隣接地に第2工場の建設を2015年3月に着手。生産開始は2016年夏の予定。投資額は約10億円。
ビヨンズ
変速機部品などの新工場が2015年7月に稼働
ビヨンズは、BEYONZ MEXICANA,S.A. de C.V (Aguascalientes州)の新工場が2015年7月に稼働する。まず、ジヤトコの現地工場に変速機部品を納入。その後、日産などの日系メーカーにエンジン部品、サスペンション部品を納入する。2018年には、NAFTAを利用し米メーカーにサスペンション部品を納入予定。2018年までの総投資額は60億円。売上高は2018年に40億円を見込む。

 

 



米国との国境沿いの州(Nuevo Leon州)などへの新規進出

 

会社名 活動内容
国上精機
カーオーディオ向けパネルの現地生産を検討
国上精機工業は、カーオーディオ向けパネル製造事業で2016年にもメキシコ進出を計画。樹脂製品の成形を手掛ける現地企業のM&Aを軸に検討中。メキシコにおいてもパネルの成形から塗装、印刷までの一貫体制を構築し、取引先の日系カーオーディオメーカーへの現地供給体制を整える。
三遠機材
CVT部品の販売会社設立を2015年夏に計画
三遠機材は、2015年夏にメキシコに販売会社を設立する計画。無段変速機(CVT)部品の販売を強化する。一方、メキシコへの供給拠点となるタイ工場の設備を増強し、従来の2倍となる年産12万個の増産体制を整えた。
GMB
メキシコ進出を検討
GMBは、現代・起亜自動車グループのメキシコ進出に合わせて、現地進出を前向きに検討。
東海理化
スイッチ、セキュリティ製品などの生産・販売会社設立
東海理化は、TOKAI RIKA MEXICO, S.A. DE C.V.(Nuevo Leon州)を2015年5月に設立。資本金は約39億円。新工場でスイッチやセキュリティ製品、セーフティ製品の生産を2016年秋に開始予定。投資額は2018年度までで約3400万ドル。北米のトヨタ向けのほか、メキシコ国内の他の自動車メーカーへの供給を計画。売上高は、2018年度に5200万ドル、2020年度に1億2600万ドルを計画。
パイオニア
メキシコでの現地生産を検討
パイオニアは、現在の中期経営計画期間中(2017年3月期まで)をめどに、メキシコでカーナビやカーオーディオなどのカーエレクトロニクス製品の現地生産を始める方向で、場所や生産品目を検討する。
hakkai
プラスチック成形加工品の工場を新設
hakkaiは、HAKKAI MEXICO S.A. de C.V.(Nuevo Leon州)を設立。2016年1月に新工場を稼働する計画。プラスチック成形加工品をメキシコに工場を持つ日米欧系の1次、2次部品メーカーに供給する。投資額は約20億円。また、2017年までに米国に営業拠点を設け、北米での販売も計画。2021年に売上高15億円を目指す。

 

 

                     <自動車産業ポータル、マークラインズ>