自動運転技術のロードマップ:Telematics Japan 2014

メルセデス・ベンツ実証実験結果、メルセデス・ベンツ/日産/ホンダの実用化時期

2014/10/31

要 約

 Telematics Updateが主催のTelematics Japan 2014(ヒルトン東京10/15-16)での自動運転に関わる講演内容をレポートする。

 メルセデス・ベンツ、日産、ホンダの自動運転実現までのロードマップでは、2020年までに高速道路での自動運転が実現する見込みである。

 メルセデス・ベンツは2013年に行った自動運転実証実験で、市街地を含む複雑な交通状況においても、高度自動運転が可能だということを実証し、今後の課題を明確にした。

 欧州でクラウドサーバーを通じた地図の提供を行っているHEREは、自動運転に必要な高精度なマップデータ作成に取り組んでおり、様々な情報を含め、テレマティクスを使って自動運転車に情報供給する仕組みについて、各国での標準化が論議されているとの講演があった。

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自動運転実現へのロードマップ

 メルセデス・ベンツ、日産、ホンダの3社が今回の講演で、自動運転実用化までのロードマップを発表している。いつでもドライバーが運転できる前提で、各社は何らかの形で、2020年までに高速道路上での自動運転が実現するとしている。

メルセデス・ベンツ


報告者
ハルムート・シェーファー氏
2020年までに実現
第一段階:高速道路での渋滞路(低速)自動運転
第二段階:駐車時の自動運転
2025年までに実現
第三段階:高速道路の高速走行時自動運転
第四段階:高速道路以外での自動運転
日産


報告者
山本浩二氏
2016年末までに実現
混雑した高速道路上で安全な自動運転を可能にする技術、トラフィック・ジャム・パイロットを投入
ほぼ同時期に、運転操作が不要な自動駐車システムを投入
2018年までに実現
高速道路で危険回避や車線変更を自動的に行う、複数レーンでの自動運転技術を導入
2020年までに実現
ドライバーの操作介入なしに、十字路や交差点を自動的に横断できる交差点での自動運転技術を導入
ホンダ


発表者
横山利夫氏
2016年までに実現
同一車線内での連続走行を目指す(ドライバーの運転行動の支援)
2020~2021年前後に実現
高速道路本線上での連続走行(ドライバーの運転行動の支援)
2030年までに実現
全ての高速道路(連結路を含む)渋滞発生箇所等における混雑時の最適走行(車両による運転支援の拡大:平常時はドライバーのシステム監視、緊急時はドライバーが介入・操作)

 

 



メルセデス・ベンツによる自動運転実証実験

自動運転実証実験 市街地を含む一般公道約100kmで他社に先駆けて本格的な自動運転を実施


 メルセデス・ベンツジャパン(株)シニア・エキスパート、工学博士のハルムート・シェーファー氏が、2013年に実施した実証実験の結果を講演した。講演内容のメルセデス・ベンツの自動運転に対する取り組みの考え方、今回の実証実験の具体的内容、実験で得られた成果、次のステップに向け明確になった課題等について、2013年9月Daimler広報資料と合わせて以下にまとめた。


資料:Daimler

自動運転実証実験の概要

目的 「事故なき運転」を実現するための一つの重要なステップであり、ドライバーの不注意やミスに対し適切な対応で安全性を高めようとすること。そして退屈な運転や難しい運転操作からドライバーを解放すること。
実験の内容 今回の実証実験では遮蔽された自動車専用道ではなく、通常の市街地の交通状況で、歩行者、自転車、路上駐車など、障害物があらかじめ予想ができない環境下で、先導車なしに、高度な自動運転が可能だということを実証できた。そして、現在のシステムをどのような方向に今後進化させていく必要があるかという課題が明確になった。
実験ルート マンハイムからプオルツハイムまでの全長約100kmは、交通量も多く、信号のある交差点、歩行者、自転車、路面電車等が錯綜する難易度の高いシーンを切り抜けていく必要がある。このルートは125年前にカール・ベンツの妻ベルタが、世界初の長距離自動車走行を行った記念すべきルートであり、このルートを使うことで、メルセデス・ベンツは今回の実証実験に歴史的な意味を持たせている。

実証実験ルート

実証実験ルート
資料:Daimler

 

テスト車両

テスト車両は現在のSクラスを使用し、特殊なセンサーを使わずに、量販市販車にすでに採用されているものと、ほぼ同じセンサーやカメラだけで、その数を増やすことで、車両の全周囲の状況を把握できるようなシステムを搭載している。これは、今後の量産モデルで、この技術を採用することを現実的にするためである。

実証実験車両

実証実験車両
資料:Daimler

 

テスト車搭載システム

センサー&カメラ 近い将来、量産車へ技術移転しやすくするために、現在量販車に採用されているものに類似したセンサーとカメラを使用している。

センサー&カメラ

資料:Daimler

長距離レーダーセンサー
2個をフロントバンパーの左右に追加し、交差点で左右から近づく車両をいち早く検知できるようにしている。後方の道路状況を把握するために長距離レーダーセンサー1個を設置している。
近距離レーダーセンサー
車体のコーナー部四隅に設置して、車両の近くにあるモノや歩行者や自転車の検知性能を高めている。
ステレオカメラ
両眼の間の距離を拡大することで、対象物の距離の測定精度を向上し、より離れたところにある対象物をレーダーだけでなく、カメラによっても検知できるようにしている。
広角カラーカメラ
交通信号を確認するために、フロントガラス内側に画角90°広角カラーカメラを設置している。
後方監視カメラ
リヤウインドウから後方を確認するカメラ1個を設置して、周辺の特徴が保存されている3Dデジタルマップデータと比較することで、従来のGPSだけに比べて、高い精度で自車位置を決定できるようになっている。
制御システム センサーから得た情報、カメラで見えているモノを認識して、今回のために特別に作られたデジタルマップと突き合わせ、現在の自車位置を把握し、様々な状況に応じて走行可能なスペースを分析し、走行コースの計画を行う。これに必要なアルゴリズムはメルセデス・ベンツの研究チームが、The Institute for Measuring and Control Technology at The Karlsruhe Institute of Technology(カールスルーエ工科大学測定・制御技術研究所)と共同で開発した。
例えば、ロータリー式交差点、密集地での対向車による進路妨害、道路を走る自転車、まちまちのしかたで駐車された車両、赤信号、優先道路との交差点、道路を横断する歩行者や路面電車など、様々な課題に対し、ルートパイロットが適切な判断を行い、状況に応じた運転を行っていく。
デジタルマップ デジタルマップはノキア社及びHERE社と協力して、自動運転車の要件に特化したマンハイム~プフォルツハイム間の3Dデジタルマップを作成した。この地図には厳しい精度が要求されており、車線や交通標識の数や方向、交通信号の位置データが含まれている。

 

実証実験の成果

遮蔽された専用自動車道や比較的単純な交通状況という有利な条件がなくとも、ドライバーの監視のもと、いざという時にはドライバーが介入する前提で、高度自動運転が可能だということを実証することができた。そして、自動運転の公道実験で最大の成果は、開発チームが今後どの面に注力すべきかが確認されたことにある。現在のシステムをどのような方向でさらに進化させていくべきなのか、重要な知見を得ることができた。今回ドライバーの運転操作が必要となった場合のすべてについて記録が残された。そして、この記録について後日開発チームが評価を行うことで、自動運転で可能な操作のレパートリーを広げることができた。このようにして、技術開発が進み、対応可能な道路状況の範囲が拡大していく。

 

明確になった課題

交通信号の認識 様々な光の条件下で交通信号の色を認識し、各信号と車線を正しく結びつけることが非常に難しい。これを解決しないと市街地での自動運転ができない。
運転操作 ロータリー式交差点を自動運転で通り抜けるようなシーンにおいて、ステアリング、エンジン、ブレーキに対し、状況に応じた運転操作の制御指令がプログラミングされているが、そのレパートリーのどの部分を改善し、高度化するべきかということが明らかになった。
位置決定/
マッピング
道路上のクルマの位置をさらに正確に決定する必要がある。例えば交差点における停車で、交差する交通が確認できるような停車位置を探して、どの地点に停車するのが適切かを判断しなければならない。こうしたシーンでは、クルマの位置決定の精度が重要となる。
社会的相互作用 他の道路利用者といかにして通信したり、関係したりするかという点が、大きな課題の一つである。路上に障害物があった場合に、対向車との間でどちらが先に通るのかを決めるには、状況をきわめて詳細に分析することが必要となる。人間のドライバーなら行けそうだと思えば大胆に前進するところを、自動運転はより慎重になりがちである。
横断歩道で停止したクルマを先に行かせようと、歩行者が手を振って合図しているようなシーンでは、歩行者が何をしようとしているのかが分からない、等が今回明らかになった。これは、システムをプログラムする際、そういう心遣いがありうることを見落としていたためである。ただし、これらすべての道路状況に対処できるようにすることは考えていない。例えば、ゴミ収集車が道をふさいでいる場合等、センサーの視野が制限されている際は、自動的に追い越しすることは望ましくなく、そのような場合は運転操作の役目をドライバーに戻す方が適切だ。

 

社会的受容性

自動車が初めて発明された当時とまったく同様に、まずシステムの技術的性能に対する社会の信頼を醸成することが必要。
メルセデス・ベンツ・カスタマーリサーチセンターが18~60 歳の被験者約100 人を対象に実施した研究で、ドライビングシミュレーター内で自動運転を体験してもらったところ、当初の懐疑的な意見がほぼ解消された。否定的な考えを当初持っていた参加者についても、体験後は受容度が大きく高まった。

 

テレマティクスの実用化

マップデータやルート情報をつねに最新の状態に保つ一つの方法として、「Car-to-X Communication」通信が挙げられる。この通信が実現すれば、クルマ同士が協力しあいリアルタイムでマップを生成することが可能になる。このシステムを使えば、どのクルマも、自車が走ってきたルートを記録し、データベースに登録することができるようになる。
赤信号で停止すれば、そのクルマから他の道路利用者にその情報が発信されるようになる。今まで、直接可視範囲でしかわからなかった情報が、その先の情報を得ることが可能になる。
メルセデス・ベンツではこれまで数年にわたって車車間通信、および車と環境間の通信技術の開発を進めており、自動車メーカーとして世界で初めて「Car-to-X 機能」を市場に投入する計画がある。

 

 



自動運転に必要なマップデータとテレマティクス

 欧州でクラウドサーバーを通じた地図の提供を行っているHEREのFloris van de Liashorst氏講演内容から、自動運転に関わるマップデータとテレマティクスについてまとめた。

自動運転に必要な3次元地図データ

自動運転に要求される自車位置の精度は、従来のナビゲーションにおいてGPSだけで判断していたものに比べ、はるかに高い精度が求められる。従来の2次元地図データに加え、より詳細な道路配置の他、停止線、車線、ガードレール等の正確な位置、周囲の建物形状情報等、これまでの地図データにない3次元情報も必要である。交通ルールに従った運転のためには、標識認識のため、正確な信号の位置、交通標識の数や方向等も含む必要がある。更にリアルタイムに道路工事等による道幅の変更等、様々な変化を取り込み、最新のデータにメンテナンスする仕組みも重要となる。

 

クラウドサーバーの役割

クラウドサーバーの役割高精度マップデータは、膨大な情報量を求められるため、クラウドに格納して、車からはテレマティクス通信でアクセスする方法が有力と考えられる。クラウドサーバーからはマップデータ以外に、リアルタイムで交通情報、事故情報、落下物等の最新情報が自動運転車へ提供される。テレマティクスの通信機能を持った車両が増加すれば、実際に走行しているそれぞれの車両がセンサーとなり、そこから最新の道路情報をクラウドサーバーに集約し、周辺を走る車両へリアルタイムな情報として提供する仕組みができあがる。

資料:HERE

 

テレマティクスなくして自動運転は実現しない

テレマティクスによって、実際に走っている時の走行データを、クラウドサーバーに集約することで、マップデータはより高い精度になり、何か状況の変化があれば、最新のデータを供給できるようになる。将来、車両走行データがより高い精度で共有化されれば、実際の交差点の曲がり方や、高速道路のランプウェイ出口での速度落とし方など、場所ごとに適切な運転方法等、自動運転車に有効な情報が提供されるようになる。つまりテレマティクスが自動運転を実現するための情報ツールとして重要な役割となる。こういった様々な情報を含んだマップデータや通信システムについて、標準化をどう進めていくか、現在すでに各国で議論が始まっている。

                     <自動車産業ポータル、マークラインズ>