二次電池展2014とエネルギー回生対応蓄電デバイス

キャパシタの使用が拡大、ニッケル水素電池のシステムを日産/三菱自が採用

2014/03/20

要 約

ミルイラ
リチウムイオンキャパシタを電源とする2人乗りEV「ミルイラ」
(旭化成FDKエナジーデバイスの出展)

 本レポートは、2014年2月26日~28日に東京ビッグサイトで開催された第5回国際二次電池展2014における車載用途の出展を中心に、アイドリングストップとブレーキエネルギー回生に対応する蓄電デバイスについて報告する。

 またパナソニックは、日産と三菱自動車のアイドリングストップ車にニッケル水素電池を使用する回生システムの供給を開始した。新しい蓄電デバイスの採用例として報告する(本展示会には出展されていない)。

 アイドリングストップは、費用対効果に優れた省燃費技術として採用が拡大している。しかし通常の鉛蓄電池には負荷が大きすぎるため、アイドリングストップ専用鉛蓄電池が開発され普及している。さらに電気二重層キャパシタ、リチウムイオン電池、ニッケル水素電池など鉛蓄電池をアシストする蓄電デバイスの採用が拡大している。


アイドリングストップ/エネルギー回生に対応する蓄電デバイス

蓄電デバイス 日本国内採用例 同サプライヤー 概要
専用鉛蓄電池を開発 多数 鉛蓄電池メーカー各社 入力特性とサイクル寿命を強化した専用鉛蓄電池を開発。
新デバイスを追加 電気二重層キャパシタ マツダ、ホンダ 日本ケミコン 鉛蓄電池をアシストし、充電および放電能力を強化。鉛蓄電池の寿命を延長する
リチウムイオン電池 スズキ(エネチャージ) 東芝/デンソー
ニッケル水素電池 日産、三菱自動車 パナソニック


 また、EVやHVの蓄電デバイスとしてキャパシタを使用する例も出展された。アイオクサスは電気二重層キャパシタ(EDLC)を、JMエナジーはリチウムイオンキャパシタを、海外市場のハイブリッドバスに供給している。

関連レポート: 第4回国際二次電池展取材報告 (2013年3月掲載)



電気二重層キャパシタ(EDLC)

 電気二重層キャパシタ(EDLC:Electric double layer capacitor)は二次電池のような化学反応ではなく、電解液中のイオンの吸脱着による蓄電であるため、長期間使用しても劣化が非常に少ない(二次電池は化学反応を繰り返すうちに劣化し、サイクル寿命に限界がある)。また急速・大電流の充放電が可能で、ディーゼルエンジン、12気筒エンジン、寒冷地で使用する大型トラックなどの始動用に使用されている。しかし蓄電容量は小さいので、鉛蓄電池、リチウムイオン電池などとの併用が見込まれている。

 

日本ケミコン、アイオクサス、Maxwellの電気二重層キャパシタ

 日本ケミコンは、マツダとホンダに供給する電気二重層キャパシタを出展した。マツダは「急速充電」機能を重視し、EDLCに貯めた電力を車載の電気機器に供給して、オルタネータの発電を減らし燃費を向上させる。一方ホンダは「急速放電」機能を重視し、アイドリングストップ時の再始動をキャパシタの電力のみで行うシステムとした。両社のシステムとも、車両の寿命中EDLCの交換は不要。

 アイオクサスは2007年に米国で設立された新興キャパシタメーカーで、2012年に、三井物産とオムロンが出資していたキャパシタメーカー「パワーシステム」を傘下に収めた。 エネルギー回生や各種バイワイヤシステムのバックアップ電源など、車載用途での拡大を目指すとしている。中国でバスに供給しているモジュールを出展した。

 Maxwell Technologies社は、北米寒冷地で大型トラックのエンジンスタート用に供給するモジュールを出展した。日本では、集塵車の塵芥巻込み装置の電源として使用されている。

 

EDLC
日本ケミコンがホンダFit/Vezelに供給する
電気二重層キャパシタ(EDLC)
EDLC
日本ケミコンがマツダ新型Axelaに供給する
電気二重層キャパシタ (スペースの効率化のため、
5本のセル二段重ねの構造で搭載する)
ハイブリッドバスに供給するモジュール
中国のハイブリッドバスに供給するモジュール
(アイオクサスの出展)
エンジン・スタート・モジュール
Maxwell Technologiesが北米寒冷地で走行する大型
トラック向けに供給するエンジン・スタート・モジュール

 

電気二重層キャパシタ(EDLC)

日本ケミコン EDLC事業を拡大  日本ケミコンの車載用EDLC(商品名はDLCAP)は、使用可能な温度範囲を従来品の「-25℃~+60℃」から「-40℃~+70℃」に拡大し、耐熱性を高めたことでエンジンルーム内への搭載が可能になり、また低温特性を向上させたことで寒冷地の使用においても十分な性能を発揮するようになった。
 車載事業の拡大により、日本ケミコンの2013年度EDLC事業では、車載事業開始前の2011年度比10倍にあたる40億円の売上高を見込む。2015年度には、車載以外の分野も拡大し、年商100億円を目指す。
マツダ車向け  マツダのAtenzaと中国で販売するCX-5に続き、2013年11月に発売した新型Axelaの「SKYACTIV-G20」、「SKYACTIV-D2.2」が搭載する減速エネルギー回生システム「i-ELOOP」に供給する。DLCAP 10本で構成するモジュールを出展した。
 アクセルオフ時にエネルギーを回収して大容量キャパシタに蓄え、アクセルオン時のオルタネータによる発電を極力減らして燃費を向上させる。なお、エンジン始動は鉛蓄電池で行い、キャパシタに蓄えたエネルギーは使用しない。
ホンダ車向け  ホンダFitの1300ccガソリンエンジン車とVezelガソリン車(1500ccのみ)の、アイドリングストップシステム搭載車に、減速エネルギー回生システムとして供給する。6本のDLCAPで構成するモジュールを納入している。ホンダは「キャパシタ電源アイドルストップシステム」と呼称し、Fit 1300cc車のJC08走行モード燃費は26.0km/L(FF/CVT)を達成。
 減速時にオルタネータで発電したエネルギーをEDLCに蓄え、アイドリングストップ中に電装機器に供給する。また、世界で初めて、エンジン再始動時にEDLCに蓄電した電力のみでセルモーターを作動させるシステムを採用した。
アイオクサス
ジャパン
ハイブリッドバス  中国市場で、ハイブリッドバスに供給しているEDLCモジュールを出展した。バスの燃費を40%程度改善するとしている。アイオクサスは、中国市場でハイブリッドバスと風力発電用途を拡大する方針とされている。
Maxwell
Technologies
エンジン・スタート・
モジュール (米国)
 北米で輸送業者が使用する大型トラック向けの、エンジン・スタート・モジュールを出展。寒冷地で安定したエンジン始動をサポートし、鉛蓄電池の小型化または本数の削減ができる。
Start-stopシステム
(欧州)
 欧州での車載用途としては、Continental AGがパック化を担当して、PSAのディーゼル車"e-HDi"start-stopシステム(主にエンジン再始動に使用)、Lamborghini Aventadorのstart-stopシステム(同車の12気筒700hpエンジン再始動用)などに使用されている。
電動集塵車
(日本)
 日本国内では、新明和工業が装置を供給する「電動集塵車(パッカー車)システム」の、集塵巻き込み装置に電力を供給する。

(注)Maxwell Technologiesの製品は、日本代理店である極東貿易と、同社製品を組み込んだ製品を開発しているエンジニアリング会社であるクズミ電子工業が紹介した。

 

 



リチウムイオンキャパシタ

 リチウムイオンキャパシタは、正極にEDLCと同じ活性炭を、負極にリチウムイオン電池と共通するリチウムをドープ(添加)可能な炭素材料を用いる。EDLCと比較して高いエネルギー密度を有し、リチウムイオン電池に比べ出力密度が大きい。しかもEDLCと同等である100万回以上の充放電が可能。急速充放電、エネルギー回生、ピークアシスト、電力平準化などに多く用いられ、自動車、バス、鉄道などの移動体用途に向けた適用検討も増えているとのこと。

リチウムイオンキャパシタと電気二重層キャパシタの位置付け

リチウムイオンキャパシタ 電気二重層キャパシタ
(EDLC)
鉛蓄電池 リチウムイオン電池
最大電圧(V) 3.8 2.5 2.0 4.2
エネルギー容量(Wh)
出力(W) ×
サイクル特性 ×
温度範囲(℃) -20~80 -20~60 -30~50 -20~60

資料:旭化成FDKエナジーデバイスの展示資料より

 

JMエナジー、旭化成FDKエナジーサプライ、新神戸電機のリチウムイオンキャパシタ

 JMエナジーはJSRの子会社で、ラミネートタイプと角型タイプのリチウムイオンキャパシタを生産・販売している。英国の市街地バスに供給しているリチウムイオンキャパシタ・モジュールを展示した。

 同社は、60億円を投資して年産能力300万セルの新工場を山梨県の既存工場の隣に建設し、2015年6月から出荷を開始すると発表している(現在の年産能力は、ラミネートタイプ30万セル、角型タイプ12万セル)。

 旭化成FDKエナジーデバイス(AFEC)は、リチウムイオンキャパシタのみを電源とする超小型EV「ミルイラ(Miluira)」を出展した。また新開発した高容量セルと高入出力セルを出展した。

 新神戸電機は、リチウムイオンキャパシタ<LCAP>を出展した。

 

リチウムイオンキャパシタ

JMエナジー ハイブリッドバス  英国の市街地を走行するハイブリッドバスに供給しているリチウムイオンキャパシタ・モジュールを出展した。定格電圧2.2V~3.8Vの角型セル"CPP3300S" 15セルのモジュール12個をバスの屋根に搭載。減速時の回生エネルギーをリチウムイオンキャパシタに蓄電し加速時に駆動をサポートすることで、ディーゼルエンジンの燃費が35%向上する。
 JSRグループのベルギー拠点にある、JMエナジーの姉妹会社となる"JSR Micro N.V."が欧州で営業活動し、バスなど大型車の電動システムメーカーである"Bluways"(本社米国)から受注、Bluwaysがパック化してバス会社に供給している。バスのライフサイクルを通して交換不要の長寿命を持つ。
旭化成FDK
エナジーデバイス
EV Miluira
(ミルイラ)
 リチウムイオンキャパシタのみを電源とする2人乗りEV。全長2360mm×全幅1200mm×全高1400mm、車両重量350kg。電力量は864Wh。200Aの急速充電3.6分で満充電でき、13km走行できる。EV製造は、浜松市の「タカヤナギ」社。
旭化成FDK
エナジーデバイス
標準セル  同社の標準品。商品名はEneCapTen。
高容量セル  エネルギー密度(Wh/L)を、従来品比70%高めた高容量セル「FSC40RA」を開発した。稼働時間、走行距離の延長が可能で、バックアップ用途、マイクロビークルやAGV(Automatic guided vehicle、無人搬送車)の主電源用途に向く。
高入出力セル  出力密度(kW/L)を高めた高入出力セル「FSC10XA」を開発した。自動車・鉄道などの回生アシスト用途において、より多くのエネルギー回生が可能となる。
新神戸電機 LCAP  新神戸電機は、円筒形リチウムイオンキャパシタ「LCAP」を出展した。建設機械や産業機器の補助電源、主電源、電力回生、各種バックアップ電源用に供給している。

 

 



ニッケル水素電池の活用

 パナソニックは、ニッケル水素電池を使用する「12V エネルギー回生システム」を開発した。FDKは、マイナス40℃に耐えられるニッケル水素電池を開発した。

 

ヒーター付ニッケル水素電池
マイナス40℃でも使用可能な「ヒーター付ニッケル水素電池」(FDKの出展)
(「2HR」などの数字は使用されているセルの本数)

 

ニッケル水素電池の活用

パナソニック 12V エネルギー
回生システム
 パナソニックは、2014年2月に発売された日産デイズルークスと三菱eKスペースに、ニッケル水素電池を使用する「12V エネルギー回生システム」の供給を開始した。日産は「停車前アイドリングストップ&バッテリーアシストシステム」、三菱自は「オートストップ&ゴー(コーストストップ機能付)/アシストバッテリー」と呼称。
 鉛蓄電池の電圧に合わせた12Vの設計とし、従来のアイドリングストップシステムに変圧器不要で搭載できる。また高温特性を高めたニッケル水素電池を採用し、制御・冷却システムを簡略化した。
 鉛蓄電池は、アイドリングストップ用に開発された鉛蓄電池を使用する設計とした。アイドリングストップ車では電池にとって過酷な使用状況が要求されるので、ニッケル水素電池と組み合わせる場合も専用鉛電池が望ましいとのこと。
FDK eCall、eToll
用電池
 欧州市場に、eCall(事故等緊急時の連絡)、eToll(有料道路などの料金徴収)用電源として供給しているニッケル水素電池。現在の製品はマイナス20℃まで使用可能だが、市場の要望に応じてヒーターを付けることによりマイナス40℃で使用可能な新製品を開発した。

 

 



アイドリングストップ車向け鉛蓄電池

 新神戸電機と古河電池は、鉛蓄電池の弱点とされる入力特性とサイクル寿命を強化したアイドリングストップ用鉛蓄電池を出展した。古河電池のUltraBatteryは、鉛蓄電池とキャパシタの機能を融合した新技術を採用した。

 

TuflongECO-IS
新神戸電機の「アイドリングストップ車用バッテリー
(TuflongECO-IS)」 (写真右"Q-85"がVitz/March
クラス向け、左"M-42"は軽自動車向け)
UltraBattery
古河電池の「アイドリングストップ車用バッテリー(UltraBattery)」

 

ハイブリッド車用/アイドリングストップ車用鉛蓄電池

新神戸電機 HV補機用電池  HV(ハイブリッド車)では、12V電池が通常手の届かない場所に設置されることがあり、補水不要のVRLA(制御弁式鉛蓄電池)を採用。24カ月または3万km保証付き。トヨタアクア、プリウス、プリウスα、プリウスPHVに供給している。エンジン始動用には使用しない。商品名は"TuflongHV"。
 VRLA(Valve regulated lead acid)は、充電中にプラス極から発生した酸素をマイナス極板に吸収させ、水に還元する。これにより、電解液(希硫酸)が減ることを抑制する。
アイドリングストップ用鉛蓄電池  低抵抗構造による高性能化(低抵抗正極、高入力負極の採用)、高密度活物質採用による長寿命化(同社従来製品比3倍以上)、新添加材採用による入力性能向上(同1.5倍以上)を実現した。商品名は"Tuflong ECO-IS"。
古河電池 アイドリングストップ用鉛蓄電池  古河電池のアイドリングストップ用UltraBatteryは、正極は鉛蓄電池と同じ二酸化鉛、負極は鉛を同社独自技術のキャパシタ層で包んだ構造とし、鉛蓄電池とキャパシタの機能を融合させ、2倍の長寿命を実現した。保証期間は、国内メーカー最長の36カ月または6万kmを提供する。
 キャパシタ層により充電受入れ性が向上し、放電した後に充電状態を回復するスピードが30%高まった。これにより、頻繁なアイドリングストップにも対応できる。
 また受入れ性の向上により、サルフェーションと呼ぶ劣化(鉛蓄電池は、充電すると負極において硫酸鉛が鉛に戻る仕組みだが、戻りにくくなる現象)を抑え、寿命をほぼ倍増した。

(注)パナソニック、GSユアサなど他の鉛蓄電池メーカーも、アイドリングストップ用鉛電池を開発し販売している。

                     <自動車産業ポータル、マークラインズ>