ホンダ アコードハイブリッド 分解調査 (中)
SPORT HYBRID i-MMDの電池関連部品と電動サーボブレーキシステム
2014/02/21
要 約
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ベンチマーキング活動時のリチウムイオン電池パック。 *写真はクリックすると拡大されます。 |
公益財団法人 ひろしま産業振興機構 カーテクノロジー革新センターの主催で、2014年1月にホンダ アコードハイブリッドのベンチマーキング活動が行われた。パワーコントロールユニット(PCU)とシャシ関連部品については下記レポートにて報告した。
前回のレポート:
ホンダ アコードハイブリッド 分解調査 (上) (2014年2月掲載)
本レポートは「ホンダ アコードハイブリッド 分解調査(中)」として後部座席後方のトランクルーム内に搭載されているリチウムイオン電池パック関連部品インテリジェントパワーユニット(IPU、ホンダの電池パック関連部品の総称)と、回生エネルギーの回収率を向上させる電動サーボブレーキシステムについて紹介する。ドライブユニットについては「ホンダ アコードハイブリッド 分解調査 (下)」として改めて報告する。
関連レポート:
ホンダ フィットハイブリッド 分解調査 (1)、(2) (2013年12月掲載)
トヨタ アクア 分解調査 (1)、(2) (2012年11月掲載)
日産リーフ 分解調査 (1) (2012年2月掲載)、(2) (2012年9月掲載)、(3) (2012年11月掲載)
トヨタ プリウスの分解実験 (2010年3月掲載)
分解作業前
後部座席 | |
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後部座席の写真。右写真は座席が取り外されている。後部座席の後方にIPU (Intelligent Power Unit、ホンダの電池パック関連部品の総称)がある。 後部座席の両端にあるグリルからIPUを冷却するための空気を取り込む。右写真中央にある正方形の金属カバー(矢印)を外すとサービスプラグがある。 |
トランクルーム | |
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トランクルームの内部。IPUがあるため、トランクルームの奥は二段構造となっている。IPU上部には小さい荷物(最大重量は7kg)が置ける。右写真はトランクライニングを外した後の写真。 右写真の赤矢印はIPUを冷却した空気を排出するアウトレットダクト、青矢印はIPU冷却ファン。 |
IPUの取り外し
トランクルーム内部 | |
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IPUのフロントカバー(重量:1.29kg)を取り外した写真。写真はIPUがトランクに搭載されている状態で、後部座席から見ている。 中央にIPUがあり、両側の黒いダクトはIPUを冷却する空気を取り込むインレットダクト(白矢印)。赤矢印が指しているのがサービスプラグ(黒いテープが付着している)。その両側にジャンクションボード(青矢印)とコンタクターボード(黄色矢印)がある。 | トランクルーム右側の内部。赤矢印はIPUを冷却した空気を排出するアウトレットダクト、青矢印はIPU冷却ファン。白矢印は三菱電機製のテレビチューナー、黄色の矢印はクラリオン製のラジオチューナー、緑色の矢印はヨコオ製のラジオアンテナのディストリビューター。 重量はテレビチューナーが0.72kg、ラジオチューナーが0.58kg。 |
IPU構成部品
インテリジェントパワーユニット (IPU) | |
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カバーが取り外されたIPU。左写真は車両後方の上部から、右写真は後部座席から見た向きで置かれている。IPUのサイズはおおよそ長さ700mm X 幅400mm X 高さ330mm。両端にはIPUを冷却する空気を取り込むインレットダクトと発泡スチロールでできたインシュレーターがある。 白矢印はIPU冷却ファンに繋がるアウトレットダクト、赤矢印は新電元工業製のDC-DCコンバーター、青矢印はケーヒン製のバッテリーECU、黄色の矢印は矢崎総業製のリークセンサー。左写真の手前に3つある緑色の矢印は矢崎総業製の電池監視ユニット。右写真の紫色の矢印がコンタクターボード、水色の矢印がジャンクションボード。 ジャンクションボード単体の重量は1.24kg、サイズは縦130mm X 横240mm。コンタクターボード単体の重量は1.05kg、サイズは縦120mm X 横225mm。 インレットダクトから取り込まれた空気はリチウムイオン電池パック、DC-DCコンバーター、冷却ファンの順に流れ、アウトレットダクトから排出される。 |
電池監視ユニット | |
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電池モジュールを監視する矢崎総業製の電池監視ユニット。1ユニットの重量は180g。電池監視ユニットは1基で2つの電池モジュールを監視する。 アコードハイブリッドは電池モジュールが6つあるので3つの電池監視ユニットを搭載している。ちなみに、フィットハイブリッドは電池モジュールが4つあるので、2つの電池監視ユニットを搭載している。 | 電池監視ユニットの内部。 白いサークル部分は電池モジュールの電圧を監視し、赤いサークル部分は電池モジュールの温度を監視している。 電池モジュールの温度センサーは2モジュールに1つ搭載されているため、温度を監視する基板は1つの電池監視ユニットに1つ搭載されている。 |
DC-DCコンバーター | |
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DC-DCコンバーターの内部。 | DC-DCコンバーターの裏側。 板状になっている放熱フィンの厚さは根元が2mm、先端が1.4mm、高さは20mm。38枚の金属板が5mm間隔で並んでいる。この放熱フィンがIPU冷却用の空気を受けることで、DC-DCコンバーターは冷却される。 |
バッテリーECU | 電池パック上部 |
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ケーヒン製のバッテリーECUの内部。 サイズは縦130mm X 横160mm X 厚さ30mm。 | DC-DCコンバーター、バッテリーECU、リークセンサーが取り外された電池パック。電池パック上部のカバーの重量は3.75kg (ECUやDC-DCコンバーター等の重量を含む)。寸法が記載されている溝にはDC-DCコンバーターの放熱フィンが収められる。IPUを冷却する空気は電池パックを通った後、矢印が指す隙間を通り、DC-DCコンバーターを冷却する。 |
リチウムイオン電池
電池モジュール | |
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電池パックのロワフレームから1モジュールを取り外したリチウムイオン電池パック。電池パックのロワフレームの重量は2.9kg。 電池モジュールのサイズは長さ260mm X 幅130mm X 高さ190 mm。 | 住友電気工業製の電池配線モジュールが採用されている電池モジュール。オレンジ色のケースは樹脂製。 電池セルは+(プラス)と-(マイナス)を交互に繋ぐ、直列になっている。 |
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右上写真の電池モジュールの裏側。この写真の向きで左上写真の電池パックに搭載されていた。 矢印が指しているのは温度センサーで、両端または中央の電池セルの温度を計測している。温度センサーは6モジュールのうち、3モジュールに搭載されている。 | 電池モジュールの構成部品。 電池パックは6モジュール、1モジュールは12個のセルで構成されている。従って、電池パックには72個のセルがある。1モジュールの定格電圧は43.2V、定格容量は5.0Ah、電力量は216Wh。 |
電池セル | |
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ブルーエナジー製の電池セル。製品名はEH5。電池セルの重量は約280g。 | 電池モジュールから取り外された樹脂製の黒い仕切り(矢印)。IPU冷却用の空気が通る隙間を作るため、セルとセルの間に組み込まれている。 |
<参考>アコードプラグインハイブリッドのリチウムイオン電池パック
リチウムイオン電池パック | |
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2013年5月に開催された「人とくるまのテクノロジー展2013」に展示されていたアコードプラグインハイブリッド搭載のリチウムイオン電池パック。ベンチマーキング活動には使用されていないが、参考のため掲載している。 リチウムイオン電池パックの容量は6.7kWh/20.8Ah(ハイブリッドは1.3kWh/5.0Ah)、総電圧は320V。ブルーエナジー製の電池セルが100個搭載されている (同72個)。電池セルの製品名はEH19で、1セルあたりの電圧は3.2V。電池セルのサイズはハイブリッド車のEH5に比べ約4倍大きい。 右写真は電池パックを横から見た写真で、ケーヒン製の電池監視ユニットが見える。 |
電動サーボブレーキシステム
タンデムモーターシリンダー(ブレーキ操作部) | |
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左写真はドライブトレインの取り外し作業の写真。中央にあるサークル部分がタンデムモーターシリンダーで、エンジンルームの助手席寄りのダッシュパネルにある。右写真はタンデムモーターシリンダーの拡大写真。 右写真の左側の銀色の部位(赤矢印)はNTN製の減速ギヤとボールねじ、上の黒い部位(青矢印)はミツバ製のサーボ(ブラシレス)モーター、右側の銀色の部位(黄色い矢印)は日信工業製のピストン。ここで油圧を発生させ、四輪に送る。サイズはおおよそ縦150mm X 横300mm。 |
ペダルフィールシミュレーター(ペダル操作部) | 電動サーボブレーキECU |
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ブレーキペダルと、日信工業製のペダルフィールシミュレーター。ブレーキペダルとタンデムモーターシリンダーは通常遮断され、ペダルの踏み方は信号で電動サーボブレーキECU(右写真)に送られる。しかし、このままではペダルを踏む感覚がなくなってしまうので、ペダルフィールシミュレーターによりブレーキペダルを踏んだ感覚を運転手にフィードバックする。 | 助手席側のフロントピラー(Aピラー)下の車室内に搭載されているホンダエレシス製の電動サーボブレーキECU。重量は1.1kg。 |
電動サーボブレーキシステムはペダル操作部のペダルフィールシミュレーター、ブレーキ操作部のタンデムモーターシリンダー、ストロークセンサー、電動サーボブレーキECUで構成されている。ブレーキペダルの動きはストロークセンサーで検知され、ECUがタンデムモーターシリンダーのモーターに信号を送ることでボールねじとピストンが油圧を制御し、ブレーキをかける。サーボモーターの採用により高精度な油圧制御と素早い応答が可能となったため、ブレーキの踏み始めと停止間際の制動トルクを回生エネルギーとして回収できるようになった。緊急ブレーキ時やペダルストロークセンサーに不具合がある時は、ペダルフィールシミュレーターの油圧がタンデムモーターシリンダーに流れ、直接ブレーキをかける。2012年夏にリース販売を開始したフィットEVより電動サーボブレーキシステムを採用し、アコードハイブリッド、フィットハイブリッドにも搭載されている。 |
<自動車産業ポータル、マークラインズ>