VWの中国事業 (1): 乗用車とパワートレイン生産体制の最新動向

乗用車年産能力は2015年380万台に、EA211型/888型エンジン/MQ200型MTとDSG増産へ

2013/10/24

要 約

VWグループの中国乗用車生産台数とその比率の推移   独VW (Audi/ SKODA を含む) は2010年から、中国における乗用車シェア (工場出荷ベースの販売シェア) を順調に伸ばし、2013年1~9月では18%となり、20%の大台に近づきつつある。

  VWは2013年9月、グループのAudi とSKODA を合わせて、中国での乗用車販売目標 (工場出荷ベース) を、2020年に中国乗用車全需を約2,000万台と予測しその20%シェアとなる約400万台と設定した。これは、2009年2月に発表したVWの中国中期事業計画「VW (中国) 2018戦略」("Strategy 2018") に掲げた、2018年の同中国販売目標であった200万台の2倍となる。


  これに先立ち、上海汽車集団に続き、VWは2012年4月に、中国の事業パートナーである第一汽車集団とも、合弁会社の共同経営期間を25年間延長する契約に調印。2013年10月現時点、中国の中期販売目標の実現に向けて、西部地域及び日系メーカーが集中し且つ市場シェアが大きく占めている、華南地域における拡販を狙って現地新工場を建設するなど、中国でのVWグループの年産能力を、2015年に380万台へ拡大する生産体制構築を加速している。さらに、2017年以降には500万台近い規模の生産体制拡張構想を持っていることが明らかになった。


  以下は、VWグループの中国における乗用車完成車、エンジン及び変速機などパワートレインの現地生産体制整備の最新動向についてまとめた。

  なお、近々、そのシリーズとなる2本目VWグループの中国動向レポートとして、VWの中国事業計画や販売事業の最新動向についてまとめて掲載する予定。




 関連レポート:





VWグループの中国における乗用車生産推移

(台)

2007年 2008年 2009年 2010年 2011年 2012年 2012年
1~9月
2013年
1~9月
VW 中国生産合計 955,960 975,000 1,387,327 1,900,076 2,196,223 2,624,841 1,969,645 2,328,961
   上海VW 466,139 494,178 716,560 1,017,249 1,178,421 1,281,957 982,450 1,193,407
一汽VW 489,821 480,822 670,767 882,827 1,017,802 1,342,884 987,195 1,135,554
VW中国生産シェア 15.0% 14.5% 13.4% 13.7% 15.2% 16.9% 17.3% 18.0%
中国乗用車生産総計 6,381,116 6,737,745 10,383,831 13,897,083 14,485,326 15,523,658 11,367,320 12,927,096

 

 



完成車生産体制拡張: 現行310万台超が、2015年380万台へ拡張

  VWは、さらなる拡販を狙い、中国の投資優遇地域である西部地域や、日系販売シェアが大きい華南地域などにおける乗用車工場の建設・増強を加速している。現行の310万台規模の年産能力を、2015年までに380万台規模に拡大し、さらに2017年以降中期的に約500万台近くまでの拡張構想を明らかにしている。

  (但し、VWが2013年5月または同年9月に発表した中国におけるグループの現地生産体制の拡充計画は、2018年に400万台となっている。)


  上海汽車集団との合弁生産会社である上海VW (上海大衆汽車有限公司) は、華東地域の江蘇省 (儀徴) や浙江省 (寧波)、西部地域の新疆ウルムチ市で更に工場建設・拡張を行う。現行155万台の年産能力を、2015年に約200万台に引き上げ、更に、2017年以降は276万台に増強する計画としている。


  また、第一汽車集団との合弁生産会社である一汽VW (一汽大衆汽車有限公司) は、西部地域の既存四川省成都工場を拡張し、日系自動車メーカーが集結する広東省広州市に近い、佛山市に新工場を稼働させた。年産能力を現行160万台規模から、2015年に180万台、2016年までにさらに210万台規模に引上げる工場拡充を計画している。

  これに加えて、一汽VWは、販売状況によって、VWブランドSUVモデル生産体制構築のための新しい乗用車工場の建設も示唆した。(2013年9月に佛山工場稼動時の同社張丕杰総経理のインタービュー内容として報じられた。)


VWグループ: 中国合弁工場の完成車生産実績と生産能力

(1,000台)
生産車種モデル生産実績年産能力
2012年2012年
1~9月
2013年
1~9月
2013年
10月時点
拡張後
(計画年)
上海
VW
上海(安亭)
第一工場
Polo, SKODA Fabia 1,282 983 1,193 300 1,200
(拡張計画なし)
上海
第二工場
Lavida 300
上海
第三工場
Passat Lingyu, Tiguan,
Touran, Octavia, Superb
300
南京工場
(江蘇省)
Santana (Vistaも),
All-new Passat,
New Lavida
300
儀徴工場
(江蘇省)
新型Polo, All-new
Santana, SKODA Rapid,
(SKODA Yetiも追加へ)
300 360
新疆工場All-new Santana
(Cross Lavida追加へ)
50 300 (将来)
長沙工場
(湖南省)
(Cセグメント1車種、
Dセグメント 2車種)
(2013年5月着工、2015年
操業開始、2017年に
2期建設着工予定)
- 300 (2015年5月以降)
→ 600 (2017年以降)
寧波工場
(浙江省)
(SKODA Superb、Octavia等) (2012年1月着工、
2014年までに操業へ)
- 300 (2014年以降)
合計 1,282 983 1,193 1,550 1,850以上 (2014年以降)
→ 2,000 (2015年)
→ 2,760 (2017年以降)
一汽
VW
長春工場
(2工場)
VW, Audi モデル 1,343 987 1,136 900 1,440
(拡張計画なし)
成都工場
(1期)
Jetta/All-new Jetta
(CNG代替燃料仕様を含む)
350
成都工場
(2期)
New Sagitar
成都工場
(3期)
All-new Jetta 190
成都工場
(4期)
N/A (計画中) 60 (2015年)
佛山工場
(1期)
7代目Golf , (2014年初に
新型 Audi A3追加へ)
150~200 300~360 (2013年以降)
→ 600~720 (~2016年)
*内、Audi車 150以上 (2015年)
合計 1,343 987 1,136 1,590~
1,640
1,800以上 (2015年) →
2,100~2,160以上 (~2016年)
*内、Audi 700以上 (2015年)
総合計
(VW (中国))
2,625 1,970 2,329 3,140~
3,190
3,440~3,490 (2014年以降)
→ 3,800以上 (2015年、
内、Audi 700以上)
→ 4,100~4,160 (~2016年)
→ 4,860~4,920 (2017年以降)

(注) VW (中国)/上海VW /一汽VW等広報資料、各種報道

 

上海VW: 現行155万台の年産能力を、2017年以降276万台への拡張構想

新疆工場: 当初計画より1年半弱前倒しで、年産能力5万台体制/新型Santana生産で操業開始
 上海VWは2013年8月、新疆ウイグル自治区ウルムチ市 (ウルムチ経済技術開発区頭屯河区)にある新疆工場、「上海大衆汽車(新疆)有限公司」(Shanghai Volkswagen Automotive (Xinjiang) Co., Ltd.)の1期工場建設を完工し (2012年5月着工)、新型Santanaの生産を開始した。工場稼動時期は、予定の2014年末から(2012年5月発表)、1年4カ月の前倒しになっている。
 同工場の敷地面積は40.77万㎡。建設への投資総額は約20億元。車体/塗装/組立てなどの生産施設を有する。年産能力は1期建設5万台で、30万台まで引上げる計画もある。生産モデルについて、今後、小型クロースオーバー車の新型「Cross Lavida」 (朗境)などの西部市場に適切な小型・中型モデルを追加生産する予定。

寧波工場: 2014年初からSKODAブランド車の生産を開始へ
 上海VWは2012年1月、浙江省の寧波工場、(仮称)「上海大衆汽車有限公司寧波分公司」(Shanghai Volkswagen Automotive Ltd. Ningbo Branch) の工場建設に着工。2014年初 (早ければ2013年末) に完工し生産を開始する予定。同工場の年産能力は30万台。主にSKODAブランドの生産能力不足を解消するための工場と位置づけられる。
 同工場は、上海市郊外の洋山港に面し、上海浦東国際空港/上海虹橋空港から車で約1時間半前後距離にある、浙江省寧波市の杭州湾新区に立地。工場建設への投資総額は117.95億元。同工場建設は2013年4月時点、プリ・プロダクション・リリース車「VFF」(ドイツ語Vorserien-Freigabe-Fahrzeuge) のテスト生産段階に入った。
補足: 2013年10月25日付の上海VWリリースによると、上海VWの寧波工場は2013年10月24日に1期建設工場を稼働し、同工場初のモデルとなるSKODA Superbをラインオフした。1期建設は2014年末または2015年初に完工し、乗用車の年産能力 (1期) を30万台と整備する予定。

長沙工場: 2015年に1期工場完工、年産能力を30万台整備、60万台に拡大の計画
 上海VWは2013年5月、湖南省の長沙新工場、「上海大衆汽車有限公司長沙分公司」(Shanghai Volkswagen Automotive Ltd. Changsha Branch) の1期工場建設に着工した。同工場は、2015年3月にテスト生産、2015年5月に正式に操業・生産を開始する予定。
 同工場は長沙市経済技術開発区 (干杉鎮) に立地。敷地面積は138万㎡で、工場建設への投資総額は120.8億元。プレス/溶接/塗装/組立ての生産施設のほか、R&Dセンターも併設する。1期建設は2015年完工し、年産能力は1期最大30万台で、2期建設 (2017年前後着工予定)を経て60万台に拡大する計画もある。
 同工場の生産モデルについて、Cセグメントセダン 1車種 (製品コード"SK371CS"/新型SKODA Octaviaとの報道もある)、Dセグメント 2車種の生産が予定されると報じられている。稼動開始時点の生産ラインの自動化率は70%以上。2015年の生産目標はCセグメントセダン (3.75万台)、Dセグメント1車種 (1.67万台) と合計5.42万台。2017年はDセグメント1車種 (6.54万台) を追加し、既存Cセグメントセダン (17.92万台) およびDセグメント車 (5.54万台) と合わせて合計 30万台と生産を増強する。

儀徴工場: 2012年7月稼動、年産能力30万台新規追加
 これに先立ち、上海VW は2012年7月、江蘇省の儀徴工場、「上海大衆汽車有限公司儀徴分公司」(Shanghai Volkswagen Automotive Ltd. Yizheng Branch) を稼動し、VWブランド新型Poloの生産を開始した。フレキシブル生産方式を導入する同儀徴工場の年産能力は30万台 (最大36万台)。
 2012年末にVW新型Santana、2013年7月に新型SKODA Rapid (昕鋭)の生産を追加した。上海VWは同工場で今後、SKODAブランドを含む、VW 「PQ25」プラットフォームを搭載する新型車を中心に生産する方針。
 同工場建設への投資総額は91億元。敷地面積は128.05万㎡ (建屋面積50.2万㎡) で、プレス/溶接/塗装/組立施設のほか、R&Dセンター/トレーニングセンター/完成車・部品配送センターも併設。従業員数は稼動当初約2,000人で、今後3,000人以上に増員する計画。
 2013年7月時点、同工場はプレスライン2本/溶接用ロボット388台/塗装ロボット123台を導入済み。溶接工程の自動化率は70.72%、第4世代 Ecopaint RoDip 回転式塗装システムを採用する塗装ラインは 85%に到達している。自由に昇降できる完成車吊り上げならびに搬送用フレームや、モジュール化組立方式も導入済み。

南京工場: 年産能力は30万台に拡大
 2008年4月に操業を開始した、上海VWの江蘇省南京工場、「上海大衆汽車有限公司南京分公司」 (Shanghai Volkswagen Automotive Ltd. Nanjing Branch) は、年産能力を稼動当初の6万台から2013年9月時点30万台に引上げている。同工場は Santana (旧型)、Santana Vista, 新型Passat、新型Lavida の生産を分担している。

 

一汽VW: 現行160万台規模の年産能力を、2016年までに210万台規模に拡張へ


佛山工場: 2013年9月操業開始、Audiブランド車15万台を含む年産能力を最大72万台整備へ
 一汽VWは2013年9月、広東省の佛山工場、「一汽大衆汽車有限公司佛山分公司」 (FAW-Volkswagen Automotive Ltd. Foshan Branch) の1期建設を完工し、7代目 Golf 「Golf A7」の1.4L TSI ターボエンジン搭載仕様の生産を開始した。今後、「Golf A7」のその他仕様モデル (1.2LのTSI ターボ付型、1.4L/1.6L のMPI自然吸気型およびTSI ターボ付エンジン搭載仕様) のほか、新型「Audi A3」を2014年初に追加し、更に、2期工場建設を経て、新エネルギー仕様車を追加投入する予定。 (VW傘下のSEATブランド車の生産工場としても検討されていた。)
 同工場の1期建設の年産能力は、稼動当初15万台 (残業を含むと最大20万台、従業員6,500人体制) で、近いうちに30万台 (同最大36万台、従業員約1万人体制) に引き上げる。同工場稼動時点では、工場の自動化率は、アルミ部品が生産できるプレス工場が80%以上、ロボット800台超を揃えた溶接工場は70%超。メイン溶接ラインは全自動化式合計6本を導入済み。同工場の年間稼動日は300日強と設定している。
 2期建設については、2013年9月時点中国政府承認を取得済みで、2013年末までに着工し、2016年 (早ければ2015年末) に完工。同工場の年産能力を1期と合わせて60万台 (最大72万台)に拡大する。うち、Audiブランド車の年産能力を15万台と整備する (これによりAudiの中国での年産能力は70万台に拡大)。
 同工場建設への投資総額は286億元 (敷地面積100万㎡超)。うち、1期建設は133億元で、建設期間約36ヶ月の2期建設は153億元。当面、佛山工場で生産する「Golf A7」用の1.4TSI エンジンは、一汽VW の成都分公司発動機廠から納入している。今後、併設エンジン工場を建設し、自工場製に切り替える計画。

長春工場: Audi生産施設の新しい塗装ラインを稼動
 一汽VWは2013年7月、今後、長春のAudi 工場の生産ラインにおいて、新生産技術・設備の更新を強化する方針を明らかにした。先に稼動した塗装以外に、プレス/溶接/組立てラインも順次進めていく。
 一汽VWの長春工場は、2013年4月、Audi 生産施設の新しい塗装ラインを稼動した (2011年4月に着工)。同塗装工場の敷地面積は2.73万㎡、建屋面積は4階建てで合計5.67万㎡。塗装 (生産) 能力は15万台。Audi のグローバル最高品質基準に基づいて建設した同生産ラインは、主にCセグメントAudi ブランド車の生産に用いる。

成都工場: 第3期工場建設を完工
 一汽VWは2013年1月、四川省の成都分工場、「一汽大衆汽車有限公司成都分公司」 (FAW-Volkswagen Automotive Ltd. Chengdu Branch) の第3期建設を完工した。同工場の年産能力を54万台に拡大した。(これに併せて、フルモデルチェンジと共に2013年3月から新型Jettaの生産を同工場で開始。) 今後、更に、4期建設を経て、60万台に年産能力を拡張する計画もある。
 同工場建設への投資総額は3期合計で163億元 (第3期は約72億元)。第3期建設は、プレス/溶接/塗装/組立施設、ならびに物流センターの建設を含む。1期と2期建設による第1工場と第2工場の敷地面積は合計81万㎡で、年産能力は合計35万台。主に旧型Jetta、新型Sagitarを生産。 なお、同工場は当面、代替燃料CNG仕様を含む、VWのC/Dセグメント車種を生産する工場と位置づけられる。
 同工場は、原材料調達から完成車出荷まで一貫して、VWのグローバルスタンダードシステムを導入。塗装工程はドライ式分離技術も導入し省エネおよび節水を実現。溶接工程はレーザー式を採用している。

 

SEAT: ブランド認知度向上に注力し、現地生産体制構築も調査開始

 VWは中国における傘下のSEATブランド車の現地生産、とりわけ、SEATブランドの認知度についての調査・検証を加速している。2013年10月に、それに関する新しい調査活動を開始したとされる。これまで、一汽VWの佛山工場を最有力な生産工場として、2015年までに中国市販車を輸入から現地製に切り替えると計画していた。
 SEATブランド車の販売実績は、2012年合計2,200台で、2013年1~9月は合計771台 (「Leon」/「Alhambra」/「Ibiza」の3車種)に止まっている。2012年3月から中国での市販 (輸入販売) を再開し再び中国生産を計画しているSEATは、予想以上に販売不振の現状におかれ、近いうちの現地生産開始は先送りに余儀なくされている。
 SEATの中国事業責任者は2013年10月、中国進出について、2013年からの今後3~5年には拡販に焦らず、主に中国でSEATブランドのイメージ定着に注力する方針を明らかにした。

 

 



パワートレイン生産体制: EA211型/EA888型エンジン、MQ200型MT/DSGの生産ラインを増強

 VW は、中国での乗用車完成車年産体制を拡充し、現地の年産能力を現行の310万台規模から、2015年までに380万台、さらに中期的に500万台近くの規模まで拡大する計画を進めるに伴い、完成車用エンジンならびに変速機の現地生産体制の増強も加速して推進している。


 VWは今後、中国におけるエンジン工場での排気量1.6L以下の生産機種を、現行鋳鉄製機種の「EA111型」/「EA113型」から、新型アルミ製「EA211型」に切り替える。この方針に沿って、上海既存工場の新型機種生産への切り替え改修工事や、吉林省長春と四川省成都ないし広東省佛山の新工場でのエンジン工場併設計画を併行して対応を進める。

 また、吉林省長春や遼寧省大連、上海市で、排気量1.8/2.0Lの3代目「EA888型」シリーズガソリンエンジンの生産体制も、新工場(ライン)建設・改修を通じて増強している。


 変速機について、生産拡大する新型「EA211型」エンジンに組み合わせるエコ仕様MT「MQ200型」の生産体制拡大も進め、先行した上海変速機工場に続いて、「MQ200型」MT新ラインを稼働した長春工場は今後さらに生産能力を増強する。デュアルクラッチ変速機DSGについて、VWは大連既存工場拡充と、天津に新工場建設を通じて、単独出資で生産体制拡大を進めている。


VWグループ主な中国エンジン/変速機工場詳細

エンジンメイン工場出資比率メイン製品年産能力 (1,000基)
エンジン会社
(工場)
上海VW (嘉定)
併設エンジン工場
第1工場 VWグループ 60%,
上海汽車集団40%
「EA888型」
(1.8/2.0TSI) エンジン
(2010年3月から生産)
300 (2012年末)
第2工場 「EA827型」「EA113型」
エンジン
第3工場 「EA888型」 (1.8/2.0TSI)
エンジン
450 (2012年末)
上海大衆汽車動力総成有限公司
(Shanghai Volkswagen Power Train Company)
第1(期)工場 VW 60%,
上海汽車集団40%
「EA111型」 (1.4/1.6L,
1.4/1.8/2.0TSI),
「EA211型」(1.4/1.6TSI)
エンジン
700超 (2013年10月)
(2012年生産実績約70.9万基だった)
第2(期)工場
第3(期)工場
一汽VW長春発動機傳動器廠:
一汽VW (長春) 併設パワートレイン工場
既存工場 VW/Audi 合計40%, 
第一汽車集団 60%
「EA111型」「EA113型」
(1.4/1.6L等) エンジン
450 (2013年10月)→
(将来は移転の予定)
新工場 (「EA211型」エンジン) 450 (2014年以降)
→ 600 (将来)
一汽VW (成都)
併設エンジン工場
エンジン
工場
「EA211型」エンジン 600 (2013年)
一汽VW (佛山)
併設エンジン工場
エンジン
工場
(「EA211型」エンジン) (計画中、2013年
10月時点未着工)
大衆一汽発動機
(大連)有限公司
(Volkswagen FAW Engine (Dalian) Company)
大連本工場 VW 60%,
第一汽車集団40%
「EA888型」 (1.8/2.0TSI)
エンジン
300 (2013年8月)
大連新工場 (3代目「EA888型」エンジン、
「EA288型」ディーゼル
エンジン)
(2013年8月に工場
拡張決定を発表。
2015年完工・稼働へ)
長春分工場 3代目「EA888型」エンジン 300 (2013年10月) →
450 (2014年6月前後)
変速機メイン工場出資比率メイン製品年産能力 (1,000基)
変速機
会社
(工場)
大衆汽車変速箱
(上海)有限公司
(Volkswagen Transmission (Shanghai) Co., Ltd.)
合弁工場 VW 60%,
上海汽車集団20%、
第一汽車集団20%
「MQ200型」MT N/A (2011年生産実績
41.5万基超だった)
一汽VW長春発動機傳動器廠:
一汽VW (長春) 併設パワートレイン工場
既存工場 VW/Audi 合計40%,
上海汽車集団 60%
Audi物流倉庫に改修へ
(「O2K型」MT生産停止、
「MQ250型」MT生産を
新長春MT工場に移管へ)
N/A
新MT工場 「MQ200型」MT(「MQ250型」
MT生産の移管を受け入れへ)
N/A
大衆汽車自動変速器 (大連) 有限公司
(Volkswagen Automatic Transmission (Dalian) Co., Ltd.)
全額出資
工場
VW 100% デュアルクラッチ変速機:
7速DSG 「DQ200型」など
1期300、
2期建設2012年稼動、
3期建設(2010年12月
政府許可取得済み)は
2013年7月時点
建設を計画中。
大衆汽車自動変速器 (天津) 有限公司
(Volkswagen Automatic Transmission (Tianjin) Co., Ltd.)
新型
DSG工場
VW 100% 新型DSG 「DQ350型」
「DQ500型」等
1期450 (2014年以降)
上海汽車変速器
有限公司
変速機及び
その構成部
品の調達先
上海汽車集団 100% AT 上海VW用と上海GM用を
合わせて、2011年生産
実績22.8万基

 

エンジン生産体制: 「EA211型」「EA888型」の省エネエンジンの生産能力増強を加速

 

上海VW:併設エンジン工場3期建設を経て年産能力75万基に拡大
 上海VWは2012年末前後、上海市郊外の嘉定区での併設エンジン工場の第3期建設、「EA888型」エンジン工場の建設を完工したとされる (2011年12月着工)。上海VWの併設エンジン工場の年産能力を既存第1、第2工場 (合計30万基) と合わせて45万基増の75万基に引き上げた。
 第3工場の敷地面積は20万㎡で、建屋面積は4.9万㎡。投資総額は約26.96億元。同建設は「EA888型」エンジン用構成部品である、シリンダーブロック/シリンダーヘッド/クランクシャフト/コネクティングロッドの機械加工、エンジン組み立て生産施設を含む。

 

上海大衆汽車動力:「EA211型」エンジン生産を増強、年産能力は2015年後最大153万基へ
 VWと上海汽車集団とのエンジン合弁子会社、「上海大衆汽車動力総成有限公司」 (Shanghai Volkswagen Powertrain Co., Ltd.) は2012年末頃から、上海市 (嘉定区婁塘鎮) にある1期既存工場である、「EA111型」鋳鉄製エンジン専用工場の改修・増強工事を開始した。年産能力30万基を有する同既存工場を、新機種「EA211型」アルミ製エンジン工場に切り替えると同時に、年産能力 (「EA211」型) を2015年3月に45万基に増やす。
 このため、約10億元の投資を実施する。新建屋建設や敷地の拡大をしないが、同既存工場内に、シリンダーブロック/シリンダーヘッド/クランクシャフト/コネクティングロッドの機械加工、組立ライン合計5本を含む、「EA211型」エンジン向けの加工/生産補完用の設備を増設する。 旧型「EA111型」エンジン生産を中止し、2014年12月には「EA211型」のテスト生産を開始する予定。

 

 これまで、同エンジン合弁子会社は、年産能力30万台を有する2期工場建設を経て、「EA111型」シリーズエンジン年産能力を1期工場と合わせて、2011年に合計60万基まで整えた。2012年頃、第2期工場の改修工事を行い、フレキシブル生産方式を導入し、「EA211型」ターボ付アルミエンジンの追加生産を始めた。
 他方、2011年には、年産能力70万基 (最大78万基) 有する同エンジン合弁子会社の第3期工場建設に着工。2013年に同第3期工場を稼動し、エンジン年産能力を1期及び2期工場と合わせて102.5万基に引き上げた。同エンジン合弁子会社は2015年3月以降、改修工事中の1期既存工場と合わせて、年産能力を最大153万基に拡大している。同社はこれに併せて、2013年末までには従業員を現行の1,500人から2,087人に増員する予定。

 
一汽VW: 併設エンジン工場の「EA211型」エンジンの生産体制強化を加速

▽長春併設エンジン工場で「EA211型」エンジン生産ライン建設に着工
 一汽VW の長春本社に併設するパワートレイン工場、「一汽大衆長春発動機傳動器廠」は2013年5月、既存工場の隣接地に、VWの「EA211型」エンジンの新工場の建設を着工した。同新エンジン工場の敷地面積は12.4万㎡。1期建設の年産能力は45万基で、2期建設を経て60万基に拡大する計画。
 同型エンジンは、新型Jetta/Sagitar/新型BoraおよびAudi Q3/A3、佛山工場製 Golf A7など、一汽VWのVW/Audi ブランドのCセグメント車に搭載する。稼動当初は、排気量1.6L (MPI自然吸気型) と1.4L (TSIターボ付) の「EA211型」エンジン2機種を先に生産。その後、同型 の1.0/1.2L TSIターボ付機種、1.4L MPI自然吸気型機種、ないし、ハイブリッド車専用エンジンを追加して生産する。工場建設への投資総額は23億元。
▽成都併設エンジン工場の年産能力を60万基に拡張
 一汽VWは2012年10月、成都分工場に併設したエンジン工場 「一汽大衆汽車有限公司成都分公司発動機廠」の1期建設を終えて稼動し、「EA211型」シリーズエンジンの生産を開始した (2011年7月着工)。2013年3月には、同成都エンジン工場の2期建設を完工するとの発表があったが、2013年10月時点その進捗は明らかにされていない。
 同エンジン工場の年産能力は1期建設45万基。2期建設を経て60万基に拡大する計画だった (進捗不明)。同エンジン工場建設への投資総額は1期建設が28億元。敷地面積は16万㎡。
▽今後、佛山にも「EA211型」エンジン工場を建設の計画
 一汽VWは、広東省の佛山分工場で生産するCセグメント車向けに、「EA211型」アルミエンジン生産の新しいエンジン工場の建設を計画中と、2013年5月25日付有力情報紙「毎日経済新聞」(National Business Daily) などが一汽VWの内部関係者による情報として報じた。詳細は明らかにされていない。
▽次世代主力乗用車用に、省エネ新型内燃機関を開発中
 一汽VWは2013年7月、Audiと共同で、一汽VWの次世代主力乗用車向けに、省エネ新型内燃機関を開発していることを明らかにした。同新型内燃機関を一汽VWの長春パワートレイン工場で生産する予定。Audi 完成車のモジュール技術も採用し、新型内燃機関を搭載する一汽VWの同次世代主力車の燃費は、従来同型車に比べて18%向上するとされる。

 
大衆一汽発動機 (大連)有限公司: 長春/大連で新工場建設、3代目「EA888型」生産体制増強

▽長春分工場稼働で「EA888型」エンジン生産開始、2014年半ば年産能力45万基に拡大へ
 大衆一汽発動機 (大連)有限公司 (Volkswagen FAW Engine (Dalian) Co., Ltd.)の吉林省の長春市にある分工場、「大衆一汽発動機(大連)有限公司長春分公司」(Changchun Branch of Volkswagen FAW Engine (Dalian) Co., Ltd.) の1期建設は2013年8月に完工し、Audiが開発した3代目「EA888型」ターボ付エンジンの生産を開始した。1期建設の年産能力は30万基で、2014年半ばまでに2期建設を完工し45万基に引き上げる。
 同工場建設への投資総額は25億元。敷地面積は9.4万㎡。新工場は、シリンダーブロック/シリンダーヘッド/クランクシャフト/コネクティングロッドの機械加工ライン、ならびに組立ラインを有する。
▽大連で、2013年内新工場着工、3代目「EA888型」ガソリンエンジンとディーゼルエンジンを生産へ
 大衆一汽発動機(大連)は2013年末までに、大連で新工場の建設に着工すると明らかにした。新工場は2015年に3代目となる「EA888型 Gen3」ガソリンエンジンや「EA288型」ディーゼルエンジンの生産を開始する予定。なお、同大連既存工場のエンジン年産能力は2013年10月時点30万基。
▽大連で、パワートレインの再製造工場を稼動
 VW 60%, 第一汽車集団40%を出資する、大衆一汽発動機(大連)有限公司 (Volkswagen FAW Engine (Dalian) Company) は2011年8月、エンジン/変速機などパワートレインの再製造工場 (大連市金州新区) を稼動し (2010年9月着工) 、「EA888型」シリーズエンジン合計20数仕様モデルの再製造を開始した。稼動当初の年産能力は5,000基で、2014年に再製造対象機種も増やし能力1.5万基に引き上げる。更に、今後、変速機の再製造も追加する。
 再製造工場は、予備清浄、解体、清浄、検査・測定、機械加工、組立て、測定・テストなどの工程を含む。精密機器を導入する他、生産過程にVWグループの製品品質基準に沿って、パワートレインの中古品を、品質を含めて新品同様品に蘇らせて、再び市場に送り出す。

 

変速機生産体制: 「MQ200型」MTとDSGの生産能力を増強


一汽VW 併設パワートレイン工場: 「MQ200型」MTの新ラインを稼動、年産能力は45万基整備
 一汽VWの長春併設パワートレイン工場である、「一汽大衆長春発動機傳動器廠」は2012年10月末、VWの省エネ型手動変速機 「MQ200型」(横置式MT)の新ライン/新工場を稼動した (2010年10月着工)。合計8仕様モデルの生産を開始した。
 同新ラインはVW「MQ200型」の生産ラインとして世界で5本目。同ラインの年産能力は 45万基 (日産1,500基)。一汽VWはこれにより、これまでVWの上海変速機工場 (大衆汽車変速器(上海)) から調達・納入してきた同型MTを、自社製に切り替えた。
 同MT工場は、一汽VWの長春本社から5.5km 離れた、吉林省の長春西新経済技術開発区に立地。工場建設への投資総額は19.6億元。敷地面積は10.3万㎡ (建屋面積4.68万㎡)。モジュール化された同型MTは、主に、VWの「EA211型」または「EA111型」エンジンと組み合せて、一汽VWの排気量1.6L以下のMT仕様車に搭載する。
 なお、第一汽車集団(グループ)の一汽轎車の一部自主ブランド車 (奔騰B50/B90等) も「MQ200型」MTを搭載するため、同MT工場は今後、一汽轎車にも同型MTを供給すると見られる。
▽長春で、変速機生産体制を統合、「MQ200型」生産の新工場に「MQ250型」MTを移管・統合へ
 これに加えて、一汽VWは2013年5月、長春で、鋳鉄製「EA111型」の後継機種であるアルミ製「EA211型」エンジンの新工場建設・拡充のほか、長春における変速機の生産体制を統合する方針を明らかにした。一汽VWは今後、MT仕様を含む、1.6L以下の小排気量新型車のラインナップを拡充するにつれ、MT仕様車に搭載する 排気量1.4L/1.6L エンジンと組合せる「MQ200型」の生産体制を更に強化する。
 このため、長春における、「O2K型」MTの生産を2013年1月頃に終了したほか、排気量1.8L 以上のターボエンジンと組み合わせる「MQ250型」MTの生産体制を、「MQ200型」MTの長春 (新)工場に移管し統合する。一方、これまで、「EA111型」エンジンと組みあわせる「O2K型」「MQ250型」MTの長春工場を、Audi の長春物流倉庫に改修する。 なお、 一汽VWの佛山工場で生産する予定のAudi A3 も今後佛山工場内製「MQ250型」MTを搭載する。

 
DSG生産体制増強: 天津で新工場建設、大連工場も拡張

▽天津のDSG 変速機生産子会社を新規建設、2014年末稼動へ
 VWは2012年8月、天津市 (経済技術開発区) にある、100%出資する DSG 変速機 (デュアルクラッチ・トランスミッション)の生産子会社、「大衆汽車自動変速器 (天津) 有限公司」 (Volkswagen Automatic Transmission (Tianjin) Co., Ltd.) の(新) 工場建設に着工した。同工場は2014年末に稼動を開始。排気量2.4L以上のターボ付エンジンと組み合せる、「DQ350型」「DQ500型」などVWの最新型DSG を生産する。中国製のVW/SKODA/Audiブランド車に搭載する。
 同工場1期建設の年産能力は45万基 (従業員約1,500名体制) で、市場需要を見極めてから、中長期的に3期まで工場を拡張し、最新型DSGの生産能力を拡大する計画もある。初期の投資総額は約2.22億ユーロ (18.4億元)で、最大合計9億ユーロに増やす計画。
 他方、VWは、同天津生産子会社に、治具・工具技術および金型技術のトレーニングセンター、「大衆汽車工具・模具技術能力訓練中心」を併設する。同センターは主に、VWの中国工場の技術系従業員をトレーニングするための教員の育成教育を行う。
▽大連既存DSG工場: 2期建設は2012年稼動、2013年7月時点3期建設を準備中
 VWは100% 出資する既存大連DSG生産子会社、「大衆汽車自動変速器 (大連) 有限公司」 (Volkswagen Automatic Transmission (Dalian) Co., Ltd.) は2013年7月時点、3期工場建設 (2010年12月政府許可取得済み) の準備に入った。2018年をめどに第3期建設を完工して、DSG年産能力を100万基に拡大する計画。
 同工場は2010年10月、1期建設を終えて「DQ200型」 7速DSG の生産を開始し、年産能力30万基を整えた。2012年には2期建設を稼動し同年産能力を60万基に引上げた。
 同工場建設への初期投資総額は1.7億ユーロ。工場の総敷地面積は17万㎡。2013年初の従業員数は1,400人超。DSGの構成部品の現地生産率 (金額ベースの国産化率) は2012年約89% (稼動当初同35%) と報じられていた。中国で生産するVWのBセグメント車 (排気量1.8L以上) のほとんどは、「DQ200型」「DQ250型」などのDSG を搭載する。



(参考) VWの中国合弁会社別モデル別車種別乗用車生産台数

(台)

モデル2011年2012年2012年
1~8月
2013年
1~8月
VW 中国合計2,196,2232,624,8411,732,5852,056,324
  OEM別/
モデル別
内訳
一汽VWJetta, All-new Jetta 207,770 250,506 162,322 161,480
Sagitar 126,617 195,090 110,905 190,006
Audi A6L 112,897 44,604 44,601 生産終了
(フルモデルチェンジ)
Magotan 87,316 174,351 110,542 127,528
New Bora 200,692 224,615 151,660 157,622
Audi A4L 86,883 99,085 67,291 81,929
6代目Golf
(別称"Golf A6")
99,691 127,209 82,580 65,111
CC, New CC 37,160 37,680 23,903 29,243
All-new Audi A6L
(別称"Audi C7")
- 100,398 53,135 96,228
Audi Q5 58,776 89,346 58,091 67,206
Audi Q3 - - - 26,459
合計 1,017,802 1,342,884 865,030 1,002,812
上海VWSantanaVista/1.8L 201,415 204,835 155,270 51,988
Polo 2/3box 168,139 143,424 86,682 92,961
Passat Lingyu 67,433 21,759 19,364 生産終了
(フルモデルチェンジ)
SKODA Octavia 128,305 136,750 98,876 93,298
Cross Polo - 19,309 12,182 12,778
Lavida 247,465 152,149 126,988 36,895
Fabia 45,896 48,702 35,151 32,185
Superb 44,744 45,029 39,392 31,362
New Passat
(NMS)
109,645 200,668 126,688 160,381
New Lavida - 98,246 14,761 227,454
All-new Santana - 5,872 - 102,131
SKODA Rapid - - - 21,282
Gran Lavida - - - 28,855
Touran 33,187 36,299 26,395 26,036
Tiguan 132,192 168,915 125,806 135,906
合計 1,178,421 1,281,957 867,555 1,053,512
車種別/
OEM別
内訳
Sedan/HB一汽VW 959,026 1,253,538 806,939 909,147
上海VW 1,013,042 1,076,743 715,354 891,570
合計 1,972,068 2,330,281 1,522,293 1,800,717
MPV 合計
(上海VWのみ)
33,187 36,299 26,395 26,036
SUV上海VW
(2WD)
51,424 82,306 57,109 60,901
上海VW
(4WD)
80,768 86,609 68,697 75,005
一汽VW
(4WD)
58,776 89,346 58,091 93,665
合計 190,968 258,261 183,897 229,571

注: 一汽VWは、Jetta のフルモデルチェンジを行い、2013年3月9日に、新型になる All-new Jetta を発売した。

                     <自動車産業ポータル、マークラインズ>