トヨタの中国事業 (2): モデル計画/販売体制構築の最新動向
2013年新型Yaris/Viosと2015年前後HV/EV生産など、2015年まで3年間で新型20車種投入
2013/09/26
要 約
トヨタの中国における近年の乗用車の販売シェアは、2008年の6.4%をピークとして緩やかながら落ち続けている。2008年から増え続けていた乗用車の販売台数も、突発した反日デモが要因で販売不振に陥っている。2012年の同販売台数が前年比4.7%減にマイナス成長に落ち、2013年1~8月の累計販売台数でも前年比約7.5%減と、トヨタの中国販売全体が回復していない状況にある。
これに対して、トヨタは、世界でも優位性/競争力のあるハイブリッドなどの省エネ・新エネルギー技術を生かして、HV/PHV/EVなど次世代自動車の新車投入や、燃費の良い改良型エンジン搭載の従来型新型車投入・モデルチェンジ強化を通じて、中国での販売回復・拡販を図る。
トヨタは、2015年前後に現地で自社開発・生産のコンポーネント搭載のHV/EVの生産・販売開始に加えて、新型Yaris/ViosなどA0/Aクラスの小型ガソリン車や排気量2.0L以下/ハイブリッドモデルのLexusモデルの投入を強化するなど、2015年までの3年間で新型合計20車種の中国市場投入を計画。
また、販売体制では、Lexus専売店を含めて、Sales (完成車販売)/Service (アフターサービス)/Spare parts (部品供給)/Survey (情報フィードバック)といった4機能を有する「4S」販売代理店の小型化を進めて、中小都市での販売店舗の増設を急いでいる。
更に、高齢者人口も急速に増加しつつある中国で、新しい市場の開拓を探り、福祉車両のリース/試験運行を開始した。
以下は、2013年9月13日掲載済みのMarkLines調査レポート「トヨタの中国事業 (1) :生産・開発体制の最新動向」の続編として、トヨタの中国におけるモデル計画や販売体制の構築などの最近動向をまとめる。
関連レポート:
・トヨタの中国事業 (1) :生産・開発体制の最新動向 (2013年9月掲載)
・上海モーターショー2013取材 (4): 日本韓国等の乗用車8社の新型32モデル (2013年5月掲載)
・中国の2013年上半期新車販売: 1,078万台と史上最高を更新、欧米韓モデルが好調(2013年7月掲載)
乗用車中心とする、トヨタ中国販売の推移
トヨタのグローバル販売 (日野・ダイハツを含まず) に占める中国販売の比率(シェア)は、2008年の7.5%(59.8万台)から2011年の12.6%(89.5万台)まで中国市場の拡大に合わせてその比率は伸びてきていたが、反日デモが勃発した2012年には9.8%(85.3万台)と同比率が10%以下に落ち込んだ。トヨタは、2015年をめどとなる中期的に自社グローバル販売における中国販売の同比率を15% (約135万台前後)に持っていきたいとしている。
中国でのトヨタの販売シェアは、2008年の6.4%をピークとして緩やかながら落ち続けており、2012年はわずか4.4%にまで減少してしまった。一方で、トヨタと世界販売ナンバーワンを競っているVWとGMは、日本車の販売不振を尻目に中国で市場シェアを伸ばし続けている。中国市場でのトヨタの販売シェア順位は、2011年から現在に至るまで、VW、GM、現代・起亜、日産の後塵を拝する5位に低迷している。
トヨタは2013年8月時点、中国での販売シェアを、2012年の4.4%を底にして2013年に約4.6~4.7%、2015年に5.3%以上を目指している。
中国におけるトヨタの市場地位が低いのは、中国への進出がVWやGMよりも遅れたことが大きな要因であると多くの中国自動車業界関係者が見解を示しており、2012年の反日デモはトヨタの中国販売が伸びてきたところへの大きな打撃となった。しかし、日産にも後れを取っていることから、トヨタは自社今後の中国経営方針・市場戦略を、中国の顧客ニーズを迅速に把握し商品に反映させると、製品企画・開発から生産までを一貫とした事業の現地化を加速させるに転換している。
トヨタ中国販売のトヨタ世界販売と中国市場でのウェート(シェア) |
(1,000台) |
実績 | 計画/予測 | |||||||
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2008年 | 2009年 | 2010年 | 2011年 | 2012年 | 2013年 | 2015年 | ||
トヨタのグローバル販売 (Lexus/Toyota/Scionブランド合計) | 7,996.1 | 6,979.6 | 7,527.3 | 7,096.9 | 8,717.3 | 8,950.0 | n.a. | |
トヨタの中国販売 (Toyotaブランドのみ) | 598.2 | 716.1 | 857.0 | 895.2 | 853.5 | 950 (Max. 970) | 1,350.0 | |
トヨタ全体での中国比率 | 7.5% | 10.3% | 11.4% | 12.6% | 9.8% | 10.6% (Max.10.8%) | 15.0% | |
中国自動車販売 (工場出荷ベース) | 9,381.0 | 13,621.0 | 18,042.0 | 18,505.0 | 19,306.0 | 20,650 | 25,500 | |
トヨタの中国販売 (Toyotaブランドのみ) | 598.2 | 716.1 | 857.0 | 895.2 | 853.5 | 950 (Max. 970) | 1,350 | |
中国でのトヨタシェア | 6.4% | 5.3% | 4.8% | 4.8% | 4.4% | 4.6% (Max. 4.7% | 5.3% |
注1: | 2012年までの実績について ・「トヨタのグローバル販売」はトヨタ発表データで、「トヨタの中国販売」と「中国自動車販売」はトヨタ掲載の中国汽車工業協会発表データ (工場出荷ベース、輸入を含まず、輸出を含む)。 |
注2: | 2013年/2015年計画/予測(値)について ・「トヨタのグローバル販売」2013年予測は2013年8月に発表したトヨタの2014年3月期第1四半期決算発表資料によるもの。 ・「トヨタの中国販売」の2013年はトヨタ中国の2013年初/2013年7月発表報道、「トヨタの中国販売」「トヨタ全体での中国比率」の2015年は、トヨタの2011年3月記者会見での発表/トヨタ中国役員の董長徴執行副総経理が2012年10月の記者会見などでの発表として複数のメディア報道によるもの。 ・「中国自動車販売」の2013年は中国汽車工業協会が2013年初または2013年8月頃、2015年はIHS Automotiveが2012年9月発表したもの。 |
トヨタの中国販売事業戦略概要
概要 | ||
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事業経営方針 | ・中国の新政策や政策変更に順応し、中国消費者のニーズに迅速に把握するのに注力。 中国において、真の現地生産を行い、省エネ・新エネルギー車の普及を推進する、製品ラインナップが最も豊かで、世界最強の新エネルギー車ラインナップを保有する自動車メーカーを目指す。 ・次世代環境対応車では、HVを皮切りに、車載モーター/駆動用蓄電池/電子制御システムなどで共通な中核基礎技術を採用する PHV ならびに EVなど新エネルギー車も導入する。 ・中国事業マネジメントシステムの現地化を加速・強化。 | |
中国事業 への期待 | ・トヨタ成長の牽引役になる。 ・中国の顧客ニーズを正確にとらえて、迅速に商品開発に反映させる技術拠点になる。 | |
環境保護(エコ) 技術、省エネ・新エネルギー自動車事業 | ・省エネ (石油の節約) と脱石油を併行して、新エネルギー車の全方位的な発展戦略を推進。とりわけ、モーターとエンジンが共同して車を駆動するシステムを有する、フルハイブリッド技術 (中国語"双擎動力技術") を代表とした省エネ・新エネルギー技術戦略を最も重要視。 | |
<省エネ> 内燃機関、つまり、従来型エンジン搭載の自動車の燃費効率向上 (省エネ)/小型化に注力。これに加えて、プラグイン式でないHVを普及させる。 | ||
<脱石油> HV から、PHV/EV (BEV)などの新エネルギー車へ進化させ、最終的に石油依存からの脱出を実現させる。 | ||
社会貢献 (責任) | ・これまでの人材育成と植林公益事業の推進に加え、公益事業への更なる投資またはマネジメントを強化。中国社会への恩返し、中国社会の持続可能な発展に貢献する。 注: トヨタはこれに併せて、中国事業統括子会社「豊田汽車(中国)投資有限公司」の傘下に、中国社会貢献事業統括の専門部署「社会貢献部」を設置 (2012年4月時点設置済み) | |
販売目標 | ・2013年 合計95~97万台 (Lexus・輸入車を含む、工場出荷ベース、2013年2月頃発表)、その内訳は下記の通り。 (但し、2013年8月前後のトヨタの発表では、2013年のトヨタ中国販売目標 (内訳不明) は90万台以上だった。) | |
<一汽豊田銷售> 58~60万台 (工場出荷ベース) | ||
<広汽トヨタ> 29万台 (工場出荷ベース) | ||
<Lexus> 8万台 (輸入販売のみ) うち、Lexusは2013年9月、HV モデルシェアを年初設定の25%から30%に上方修正。 | ||
・2015年 トヨタグローバル販売台数の約15%の販売を中国市場で担う。 工場出荷台数ベースでは、Lexus・輸入車を含めて約135万台。 (2012年10月/2013年2月のトヨタ中国会社役員インタービュー報道などより) | ||
<一汽豊田銷售> 合計75万台前後 (工場出荷ベース、MarkLines推定) 但し、2012年5月一汽豊田銷售発表は100万台だった。 | ||
<広汽トヨタ> 50万台 (工場出荷ベース、2013年8月広汽トヨタ発表) うち、A0/Aクラス (small-low, small-high) となる小型モデルは20万台で、広汽トヨタ販売全体でのシェアは40% (2013年8月時点の同シェア実績は約5%) | ||
<Lexus> ハイブリッド仕様モデルのLexus中国販売全体に占める割合は50% (2011年実績は7%、2012年23%で、2013年目標は30%) | ||
"雲動計画" (China Vision)で掲げる中国事業計画 | ・下記のスリーステップに沿って戦略を施し、中国事業を展開。 | |
<フェーズ1> 2012年の中国での自動車販売 (Lexus等の輸入車を含む) は当初100万台 を目指したが、2012年後半に突発した反日デモ/日本車不買運動などが主因で、2012年販売実績は目標未達成の85.35万台 (トヨタ発表) に止まった。 省エネ車および新エネルギー車 (PHV/EV等) の普及の土台を構築という目標も、反日デモの影響で延期された。 | ||
<フェーズ2> 2015年の中国自動車販売 (Lexus・輸入車を含む) は、当初160万~180万台を目指したが、反日デモの影響が長引き、135万台前後が現実的目標になると思われる (MarkLines 推定)。 現地開発・生産のハイブリッドコンポーネント (駆動系部品など) を搭載する、HVの現地 (中国合弁工場) での生産を開始する。 | ||
<フェーズ3> 省エネ・新エネルギー車を主とした事業発展戦略を確立させ、新エネルギー車投入を加速させて、できるだけ多くの消費者に体験してもらう。 トヨタの中国販売車両に占める省エネ・新エネルギー仕様車両のシェア目標は20%。 | ||
商品 (ものづくり) | ・中国現地消費者ニーズ/需要に沿って、モデル (車種) など製品企画から研究開発・生産まで、現地で行う体制をつくる。各セグメントの消費者を感動させられ、かつ期待以上の完成度を持った、満足のいく自動車 (商品) を提供する。 | |
モデル計画 | ・2013年~2015年の3年間で、Lexus /輸入車を含めて、中国市場にフルモデルチェンジや初投入の新型車 (マイナーチェンジを除く) 合計 20車種を導入。 注: 現地生産車の現地開発事業を加速させる。主に、トヨタの世界戦略モデルをメインで導入。現地ニーズに応えられるモデルを現地で開発。 | |
その投入予定の同新型 20車種のうち、現地合弁工場で生産予定は合計 9車種以上 (フルモデルチェンジを含み、マイナーチェンジモデルを含まず)。その内訳は、以下の通り。 | ||
<一汽トヨタ/四川一汽トヨタ> 合計 5車種以上 | ||
<広汽トヨタ> 合計 4車種以上 (1年に1~2車種のペース) | ||
福祉車両 | ・高齢者や体の不自由な方を含めて、中国社会の人々にモータリゼーションの恩恵が享受できるという目標の実現を目指す。(調和の取れた自動車社会に貢献する) | |
・人口の多い中国で、体の不自由な方々が抱えている問題、少子高齢化問題の深刻さが増す中国社会現状に着目し、福祉車両事業を真剣に積極的に推進する。 注:2012年11月時点、中国での福祉車両市場の現地調査を完了。中国政府の関係機構と、福祉車両に関する法規制・認証などについて討議・提言中。 | ||
サービス | ・顧客満足第一主義を旨にし、顧客が安心できるToyota/Lexusブランド車の利用の実現を目指す。 | |
・顧客の視点/立場から考え、顧客に高品質なオートモーティブ・ライフが体感できる、感動させられるアフターサービスを提供する。 | ||
一汽豊田銷售系/広汽トヨタ系/Lexus系の、合計3つの販売チャンネルで、接客から補修サービスまでのあらゆるサービス水準を向上させる。 | ||
Lexusすべてのモデルに加えて、トヨタブランドの多数のモデルも、「G-Book」 テレマティックスサービスシステムを装備する。 |
資料: 2012年3月に発表・実施しはじめたトヨタの中国市場戦略 「"雲動計画" (Yundong Plan: China Vision)」 (2011年3月発表したトヨタグローバルビジョンの中国版とも言える)、トヨタやトヨタ中国投資広報資料/各紙報道など
モデル計画: 新型Yaris/Viosの小型車を2013年、現地化部品搭載のHV/EVを2015年前後生産へ
トヨタは、2013年から2015年までの3年間で中国市場に、フルモデルチェンジと中国初投入の新型車 (マイナーチェンジを除く) を合わせて合計20車種を導入する計画を発表している。主に、トヨタの世界戦略モデルをメインで導入。これに加えて現地ニーズに応えられる新型モデルを現地で開発する。
同新型20車種のうち、トヨタの現地合弁工場で生産する予定の新型車は9車種以上。うち、広州汽車集団との合弁会社 (広汽トヨタ) には計4車種以上 (1年に1~2車種)、第一汽車集団との合弁会社 (一汽トヨタ/四川一汽トヨタ) には計5車種以上。
トヨタは、中国で事業すべての現地化を推進、製品企画・開発から生産販売までを一貫とした体制作りを加速している。製品・モデルの中期計画では、燃費の良い改良型ガソリン車と、HV/PHV/EV (BEV) などの次世代自動車といった、「省エネ」と「脱石油」の両輪を駆使した省エネ・新エネルギー車事業を推進し、最終的に中国での事業展開・拡大を狙う。
トヨタ: 2013年~2015年3年間での中国モデル計画
販売会社 | 導入/実施時期(予定) | 導入モデル情報 |
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一汽豊田 汽車銷售 | 2013年 | 1月に、四川一汽トヨタの新型マイクロバス Coaster (高級感のあるインテリア・外観デザインに改良、V6新型エンジン搭載) を発売。 |
3月に、新型乗用車「86」の輸入販売を開始 (標準価格26.90万~27.90万元)。 | ||
8月に、四川一汽トヨタの新型となる 4代目 RAV4 を発売 (標準価格18.38万~27.28万元)。 | ||
11月(予定)に、天津一汽トヨタで生産する小型セダンVios を発売。 | ||
2014年以降 | 次期型 Corolla (11代目、天津一汽トヨタ生産が有力)、またはその他のCorollaシリーズ(派生)モデルを導入へ。 | |
天津一汽トヨタで次期型Crown (14代目) の生産販売を開始。 | ||
2015年前後 | 現地開発・生産のハイブリッドコンポーネントを搭載する、HV乗用車の (第一汽車系合弁工場での)生産・販売を開始。 | |
現地開発・生産の駆動系コンポーネントを搭載する、2014年に量産モデルの新車発表が予定されている「朗世 (Ranz)」合弁会社自社ブランドの EV セダンの(第一汽車系合弁工場での)生産・販売を開始。 | ||
排気量1.8Lエンジン搭載の Corolla hybrid を投入。 | ||
2015年 | 四川一汽トヨタ(長春工場) でのPrius (HV) の生産を、ノックダウン(KD)から、ハイブリッド中核コンポーネントの現地生産開始によって、国産化を推進。 | |
広汽トヨタ | 2013年 | 6月に、SUV VENZAの輸入販売を開始。 |
9月に、小型ハッチバックでの新型Yaris、"致炫"(YARiS L) の生産・販売予約を開始。 | ||
2014年以降 | 次期型Highlander (フルモデルチェンジ)の生産・販売を開始。 | |
2015年前後 | 現地開発・生産のハイブリッドコンポーネントを搭載する新型HV車の、(広汽トヨタの広州工場での)生産・販売を開始。 | |
現地開発・生産の駆動系コンポーネントを搭載する、合弁会社の自社ブランドEVクロースオーバーの新型車、(広汽トヨタの広州工場での)生産・販売を開始。(ベースとなるコンセプトカーは2013年4月開催の上海モーターショーで発表済み、ブランド名称は未発表)。 | ||
Lexus中国 (専売店) | 2013年 | 新型 IS シリーズ輸入販売を開始。 なお、HVモデルの中国Lexus販売でのシェアを、2012年の23% (約1.47万台) から30% (年初設定の25%からの上方修正後の目標、2013年9月時点の実績は28%) に向上。 |
2015年 | HVモデルの中国Lexus販売でのシェアを、2012年の23% (約1.47万台)/2013年(計画)の30%から、2015年には50%に向上。 |
注: 一部量産モデルのベースとなるコンセプトカー (2013年4月上海モーターショー展示モデル) の詳細は、既存掲載済みMarkLines取材レポート 「上海モーターショー2013取材 (4):日本韓国等の乗用車8社の新型32モデル」をご参照ください。
中国での従来型ガソリンエンジン車の省燃費化について
トヨタは今後、従来型省エネ車について、ガソリンエンジンの燃費性能を更に高める方針。2013年からは、広汽トヨタで新型Yaris、天津一汽トヨタで新型Viosを皮切りとして、改良された省燃費エンジンを搭載する小型乗用車を重要視する販売戦略へ移行した。 |
うち、広汽トヨタは2013年8月、同小型車販売を2015年に20万台と、自社販売全体で40%以上をシェアする目標を発表。2013年以降の数年 内に、自社のミドル/ハイエンド車の顧客に加えて、中国で数多い小型車の顧客をターゲットに顧客ベースの拡大を図るとしている。 |
次世代自動車事業について
トヨタはPrius (1.8L)/Camry Hybrid(2.5L) の現地生産・販売の実現を皮切りに、輸入販売で3代目Prius Plug-in HybridやLexusブランドを含む、トヨタ傘下の複数のHVモデルを中国で拡販。更に、2015年前後に、中国現地開発・生産の駆動系など新エネル ギーコンポーネントを搭載するHVおよびEVの生産・販売を開始する。 |
「Lexus」高級車事業について
また、トヨタは中国高級車分野でも、LexusブランドHVであるLS600hL、RX450h、GS450h 、CT200h、ES300h などのHVモデルを武器に拡販を図る。加えて、売れ筋であるエントリークラスの販売に注力しシェア拡大を進めていく方針。 |
Lexusは、2013年の中国販売のHVモデルシェア目標を、年初設定の25%から9月に30%に上方修正 (2011年実績は7%、2012年 23%)、2015年は50%に引上げる計画。これに併せ、2013年9月から、LexusのHVモデルに、6年間/15万kmの品質保証 (無料補修サービス) に加えて、車載動力蓄電池に10年間/25万kmの品質保証を付けたアフターサービスを開始したとされる。 |
中国福祉車両分野に着目、事業性探りにリース/試験運行を開始
中国での福祉車両事業の可能性を探るため、上海/北京に1年間半かけての試験運行を開始
トヨタは2013年5月、翌月 (6月) より約1年半をかけて、それぞれ、上海と北京で試験的に福祉車両のリースを行うと発表した。これに併せて、トヨタは2013年5月、上海市民政局および企業・法人福利厚生サービス事や介護綜合サービス事業を行う (株)リエイの中国現地法人である、理愛 (北京) 企業管理諮詢有限公司に、福祉車両「Alphard (埃尓法)」「Hiace (海艾士)」合計5台を無償でリースする。少子高齢化が進行する中国で、福祉車両の事業化の可能性を探るため。 |
これに加えて、トヨタの中国事業統括子会社「豊田汽車(中国)投資有限公司」は2013年8月、どなたにも車の利便性を届ける (中国語"愛不欠席") をスローガンとしたキャンペンを実施し、2013年末までに上海市にある65歳以上または出かけ不自由な方を持つ家庭を対象に公募し、抽選で4組に福祉車「Alphard」を一週間無料で提供する。これに加えて、出かける際の資金も援助する。 |
2011年末時点、中国で60歳以上の人口は総人口の13.7%に当たる1.85億人で、体の不自由な人口は8,300万人を超えた。2015年に60歳以上人口は2.21億人に増える見通しで、うち、一人暮らしは5,100万人に、80歳以上人口は約2,400万人になる見通し。少子高齢化問題が深刻を増す中国は今後、これらの数字は更に増える傾向にある。(中国政府「民政部」(厚生省)の発表として、2012年3月2日付北京の有力地方紙である「北京晨報(Beijing Morning Post)」が報道。) |
販売体制: 中小都市を中心に小型「4S」販売代理店モデル導入、販売チャンネルを拡張
トヨタは、近年、今までより迅速且つ効率的に販売網を拡大する新しい方策/新モデル方式として、地方都市ならびに農村部に近い小都市を中心にする、新しい販売チャンネルとなる小型「4S」販売代理店の増設に注力する方針。2012年末時点合計900店舗超 (内、Toyotaブランド系800店舗超)の中国販売代理店を、2013年末に1,080店舗 (同960店舗)に増やす計画。
トヨタブランド系では、標準「4S」(Sales/Service/Spare parts/Survey) 販売代理店舗の建設/サービス基準に対して、敷地2,040㎡以上/アフターサービスエリア480㎡以上を有し、建設投資は約300万~400万元と比較的少ない小型「4S」販売代理店を増設。これに伴って、サテライト販売代理店などの新しい販売チャンネルを導入し、販売網(販売体制)を増強・拡大する。
第一汽車集団系の一汽豊田銷售は、2013年後半から販売店舗の増設を更に加速する方針を表明している。2013年8月時点、同社が承認済みであるが近いうち開業予定の、小型を含む「4S」販売店数は100店舗を超えている。
広州汽車集団系の広汽トヨタは2013年末に、販売代理店を2013年8月時点の372年店舗強から78店舗を増設する。これに加えて、サテライト販売店を2013年末に50店舗にまで開設し、2015年には150店舗に増やす計画。
輸入販売から現地生産に切り替えると検討しているLexusは、現在大都市中心の(専売) 販売店設置を今後、中小都市に、標準「4S」専売店より比較的投資の少ない、コンパクトタイプの小型「4S」専売店を増設していく方針。Lexusは2013年8月時点、中国で18の都市にショールーム(実車展示場)を開設した。
トヨタのチャンネル別販売代理店増設状況
販売チャンネル | 既存 | 2013年末目標 | |
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・Toyotaブランド系合計 | 800店舗超 (2012年末) | 960店舗 | |
一汽豊田銷售系 (第一汽車系) | 463店舗 (2012年末) | 510店舗 | |
広汽トヨタ系 (広州汽車系) | 372店舗 (2013年8月) | 450店舗 | |
うち、広汽トヨタ系サテライト店舗 | n.a. | 50店舗 (2013年末) → 150店舗 (2015年) | |
・Lexus 系 (Lexus「4S」専売店)合計 | 103店舗 (2013年5月) | 120店舗 | |
総合計 (トヨタ中国) | 900店舗超 (2012年末) | 1,080店舗 (2013年末) |
その他の動向
トヨタグループ、ナビゲーションの車載地図配信サービス提供の合弁会社設立
トヨタは2012年6月、中国の地図製作会社 (北京四維図新科技股份有限公司)と、北京市 (朝陽区) に合弁会社、「北京図迅豊達信息技術有限公司」(Telemap China Co., Ltd.) を2012年12月に設立すると発表。2013年から、ナビゲーションの車載地図配信サービス、車両遠距離綜合情報サービスなどを提供する予定と明らかにした (進捗は未判明)。 |
合弁会社の資本金は920万米ドル。出資比率は、トヨタ 39%、トヨタメディアサービス子会社(北京美達雅科技開発有限公司:BMTS) 10%、北京四維図新科技股份 51%。トヨタは1996年より北京四維図新科技股份の親会社である、中国四維測絵技術有限公司と、ナビゲーションの地図製作での技術提携をしてきた。合弁会社は、今後、北京四維図新技術の地図製作および管理技術と、トヨタのテレマティックス技術を活用・融合し、よりタイムリーかつ正確な車載地図配信サービスの提供を目指す。 |
上海物流子会社の常熟分拠点が、倉庫/部品配送業務を開始
トヨタは2011年11月頃、江蘇省の常熟市 (東南経済技術開発区) に立地する、上海の物流子会社 (豊田汽車倉儲貿易(上海)有限公司: TPCS) の常熟分拠点、「豊田汽車倉儲貿易(上海)有限公司常熟分公司」を正式に開業し、華東地域におけるトヨタおよびLexusディーラーなど向けの倉庫・配送業務などの部品供給を始めた。 |
同分拠点への投資総額は4.4億元。敷地総面積は18万㎡ (1期建設は3.8万㎡、2期建設は4.8万㎡)。うち、部品倉庫とオイル倉庫を含む、倉庫敷地は8.6万㎡を保有。稼動当初の従業員数は100名。 |
なお、上海市保税区にある上海本拠点は、これまで、華東地域でのトヨタ/Lexusディーラーなど向けに、中国製および海外制輸入のトヨタ車種の各種構成部品供給業務や、自動車部品をメインとした保税区内での倉庫業務、部品供給調整/展示/技術コンサルティング、技術トレーニング、アフターサービス、国際貿易、保税区内企業間の貿易およびその代理、貿易コンサルティングなどの業務を行ってきた。 |
(参考) 中国で生産するトヨタブランド車の販売状況 (工場出荷ベース)
(台)
2011年 | 2012年 | 2013年 (計画) | |||||
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2012年 1~8月 | 2013年 1~8月 | ||||||
前年同期比 増減比率 | |||||||
一汽豊田 汽車銷售 (第一汽車系) | 威馳 (Vios) | 13,303 | 9,130 | 8,266 | 1,908 | -76.9% | *580,000 (Max. *600,000) |
花冠 (9代目Corolla EX) | 120,377 | 124,531 | 88,970 | 98,863 | 11.1% | ||
皇冠 (Crown 13代目) | 30,453 | 25,456 | 19,993 | 12,673 | -36.6% | ||
鋭志 (Reiz:10代目Mark X) | 65,422 | 59,846 | 46,576 | 35,925 | -22.9% | ||
卡羅拉 (10代目 Corolla) | 170,117 | 151,887 | 115,684 | 101,510 | -12.3% | ||
3代目 RAV4 | 100,218 | 98,179 | 79,318 | 55,161 | -30.5% | ||
4代目 RAV4 | - | - | - | 3,762 | - | ||
4代目 普拉多 (Land Cruiser Prado) | 21,903 | 18,706 | 14,883 | 12,987 | -12.7% | ||
蘭徳酷路澤 (Land Cruiser 200) | 7,253 | 5,308 | 3,550 | 3,222 | -9.2% | ||
普鋭斯1.8L (3代目Prius hybrid) | - | 2,434 | 2,108 | 341 | -83.8% | ||
柯斯達 (Coaster) | *8,219 | *4,833 | *3,007 | *3,681 | *22.4% | ||
合計 (現地製乗商完成車) | *537,265 | *500,310 | *382,355 | *330,033 | *-13.7% | *580,000 (Max. *600,000) | |
(内数) 乗用車 | 529,046 | 495,477 | 379,348 | 326,352 | -14.0% | n.a. | |
広汽トヨタ (広州汽車系) | 凱美瑞 (Camry) 6代目 | 133,159 | 26,861 | 15,241 | 27,433 | 80.0% | 290,000 |
凱美瑞 (Camry) 7代目 | 10,167 | 116,258 | 89,153 | 81,399 | -8.7% | ||
6代目凱美瑞(Camry) hybrid | 394 | 119 | 117 | 4 | -96.6% | ||
凱美瑞・尊瑞 (7代目 Camry hybrid) 2.5L | - | 2,164 | 1,144 | 3,271 | 185.9% | ||
雅力士 (Yaris) | 19,324 | 12,341 | 10,253 | 10,536 | 2.8% | ||
漢蘭達 (Highlander 2代目) | 94,635 | 75,059 | 53,259 | 58,264 | 9.4% | ||
逸致 (E'Z) | 16,738 | 17,286 | 13,455 | 11,590 | -13.9% | ||
合計 | 274,417 | 250,088 | 182,622 | 192,497 | 5.4% | 290,000 | |
総合計 (現地製Toyotaブランド車) | *811,682 | *750,398 | *564,977 | *522,530 | *-7.5% | *870000~ *890,000 | |
(内数) 乗用車 | 803,463 | 745,565 | 561,970 | 518,849 | -7.7% | n.a. |
(注) *付は、商用車、または乗用車との合計。
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