BMW i3 CFRP 製ライフモジュール車体構造

RTM成形によるCFRPモノコック構造で、スチールに対し50%の軽量化を実現

2017/04/17

要約

 BMWの電気自動車 i3のキャビン部分の車体構造は、CFRP製のモノコック構造である。F1等のレーシングカー等で使われているオートクレープ成形に対し、RTM成形とすることで、CFRPの成形工程を大幅に短縮している。RTM成形のモノコックボディは、高級スポーツカーや限定販売車への適用例はあったが、量産車としてはBMW i3が初めてである。今回のレポートでは、BMW i3のCFRP製ライフモジュールの構造について、その特徴を紹介する。

 本レポートは、デトロイトに本拠地を置く車両ベンチマークのエンジニアリング会社Munro社の協力を得て、マークラインズが作成している。Munro社は、BMW i3をはじめ、各種車両の分解調査を行い、分析結果のレポートを提供している。Munro社が提供しているレポートは全ての部品について、重量・寸法など詳細スペック、コスト分析を行っており、詳しい情報をご希望の方は、下記へお問い合わせください。



BMW i3の特徴的な骨格構造

BMW i3のライフモジュールとドライブモジュール ライフモジュールのCFRP製車体骨格
BMW i3のライフモジュールとドライブモジュール       資料:BMW ライフモジュールのCFRP製車体骨格         資料:BMW

 BMW i3の車体構造は、2つの特徴的な構造体で構成されている。一つは乗員が乗るキャビン部分の骨格となるCFRP製のライフモジュールで、もう一つはパワートレーン、バッテリー、サスペンション等を搭載する、アルミニウム製フレーム構造のドライブモジュールである。このドライブモジュールの上にライフモジュールが載って結合される構造となっている。

 CFRP製ボディ骨格を採用することの狙いは、ボディ剛性と乗員保護性能を向上のため、高い強度剛性を確保しつつ、スチールより50%、アルミより30%の軽量化することである。衝突時には、車両前後部分のドライブモジュールが衝撃を吸収し、車両中央部のCFRP製のキャビンは、変形を最小限にする。CFRP製のライフモジュールは、約150個のCFRPの部品で構成されており、スチールの場合に比べて、部品点数を約1/3に削減している。



RTM(Resin Transfer Molding)成形とは

RTM成形プロセス 資料:GSIクレオス HP-RTMの成形プロセス  資料:Krauss Maffei
RTM成形プロセス
資料:GSIクレオス
HP-RTMの成形プロセス
資料:Krauss Maffei

 RTM(Resin Transfer Molding)成形はプリフォームしたCFRPの繊維素材を型にセットし、樹脂を高圧で射出し、型内で熱硬化させる。レーシングカー等で使われるCFRPのように何時間もかけてオートクレープで熱硬化させる必要はなく、数分から十分単位の工程のため、量産車への適応することが可能になった。一般的なRTMの成形法の発展形として、HP-RTM (High Pressure RTM)はプリフォームを型にセットした後、型内を真空にし、高圧で樹脂を注入する成形法で、i3では13部品がこの成形法が使われている。



CFRPパネルを接着剤で接合し、モノコック構造の車体が組み立てられる

ボディサイドパネル 資料:BMW モノコックボディからボディサイドパネルを切り離した状態
ボディサイドパネル
資料:BMW
モノコックボディからボディサイドパネルを切り離した状態

 成形されたCFRPの各部品は最新の接着技術で100%自動化されたラインで接合されて、モノコックボディとなる。この工程では、接着剤の膜厚を適正にするために、部品と部品の隙間を正確に測定し管理している。接着剤は単一タイプの接着剤で、強度と弾力性を備えている。左上の写真のように、いくつかのCFRP部品が組み合わされて出来上がったボディサイドパネルは、車両内側を構成するダッシュパネルやルーフレイル等に接着で接合される。右上の写真は、車両分解調査として、モノコックボディの接合面からボディサイドパネル切り離した状態である。



必要な部位にはアルミパネルで補強、接合は接着とボルト締結の併用も

ダッシュパネル(車室内側) ダッシュパネル上部(車室内側)
ダッシュパネル(車室内側) ダッシュパネル上部(車室内側)

 ダッシュパネルは一枚の大きなCFRPのパネルで、その下側はフロアパネルと接着で接合されている。ダッシュパネルの上端はダッシュアッパーパネルとアルミ製レインフォースと組み合わせ補強されている。ダッシュパネルのステアリングメンバーやステアリングコラムの取り付け部には、アルミ製の補強パネルが設定されている。アルミ製パネルとCFRPの接合は、接着とスタッドボルトが併用されている。また、ステアリングメンバーや内装部品を取り付けるためのスタッドボルトや埋め込みナットが、CFRPパネルやアルミ製補強パネルに取り付けられている。



フロアパネルとフロントシート取り付け部のアルミ製補強パネル サイドシル後端部とBピラーの接合部
フロアパネルとフロントシート取り付け部のアルミ製補強パネル サイドシル後端部とBピラーの接合部

 フロアパネルには、フロントシートを取り付ける部分に、左右のサイドシルをつなぐ形で、アルミ製補強パネルが設定されている。フロアパネルの下側にも、アルミパネルが設定されており、CFRPのフロアをアルミ製補強パネルで挟んで補強するサンドイッチ構造となっている。フロントシートの取り付け部は、衝突時にシートベルトの大きな入力に対応する強度が必要であり、また、側面衝突の際にキャビン部分の変形を最小限にするための補強も必要となっている。

 右上の写真は、サイドシル後端部とBピラー下端部の接合部である。いくつものCFRP部品が重ね合わされて、接着接合されており、接合面から接着材がわずかにはみ出している。



ルーフレイルとルーフボウ(ルーフパネルを外した状態) ルーフ、ルーフボウとルーフレイル(車両下側から)
ルーフレイルとルーフボウ(ルーフパネルを外した状態) ルーフ、ルーフボウとルーフレイル(車両下側から)

 ルーフレイルとルーフボウは一般的なスチールパネルの場合とほぼ同じ形状で、CFRPに置き換えて作られている。中央のルーフボウとルーフサイドレイルとの接合は接着剤だけでなく、ボルトが併用されている。



外装部品はCFRPの骨格に外側に装着される

ライフモジュールのボディーサイド リヤサイドインナーパネル
ライフモジュールのボディサイド リヤサイドインナーパネル

 左写真のリヤサイドアウターパネルとサイドシルに取り付けられている金属ナットやクリップ取り付け金具は、この外側に取り付けられるリヤフェンダー、サイドシルカバー等の外装部品を取り付けるためのものである。右写真のリヤサイドインナーパネルには内装トリム部品を取り付けるための、金属ナット等が同様に設定されている。



ライフモジュールとドライブモジュールの結合はアルミダイキャスト製部品を介して、接着とボルト締結を併用

ダッシュパネル(車両前方から) ダッシュパネル部がドライブモジュール(シャシーフレーム)と結合した状態
ダッシュパネル(車両前方から) ダッシュパネル部がドライブモジュール(シャシーフレーム)と結合した状態

 CFRP製のライフモジュールとドライブモジュール(アルミ製シャシーフレーム)は、ボルト締結と接着の併用で接合される。左上の写真はライフモジュールだけの状態で、右上の写真はドライブモジュールと結合した状態である。アルミダイキャスト製の三角形状のレインフォースが、ダッシュサイドに広い面積で接着接合され、ライフモジュールのサスペンションスプリング上部を支える部分からの入力をしっかりと受け止める構造となっている。

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