新しいモビリティ 所有から共有へ(下):転換が迫られる自動車メーカーの戦略

Daimler、BMW、VW、Ford、GM、トヨタ、日産の動向

2017/01/17

なぜ新しいモビリティの動きが、自動車メーカーにおいても、注目されているのか?

未来のカーシェアリングサービス
未来のカーシェアリングサービス車のイメージ 出典:Daimler
モビリティ・サービスなどの潜在的な市場
モビリティサービスなどの潜在的な市場は年間5.4兆ドル規模
出典:Ford

 自動車メーカーでも、ライドシェアやカーシェアといった車の所有にこだわらない、新しいモビリティサービスを事業戦略に取り込む動きが2016年から目立ち始めた。

  その背景には、Daimlerが語るように(下表)、混雑や大気汚染、駐車スペースといった都市問題の拡大が今後も続くこと、デジタル化/所有意欲の減退という社会経済的な変化に対応して現れた、カーシェアなど新しいモビリティサービスは今後拡大して行く可能性が高いことがある。

 これらの共有を軸にした新しいサービスは、自動車を消費者に売り切るという、既存の自動車メーカーのビジネスモデルを毀損する可能性がある。

 そのため、自動車メーカー、例えば、Fordは伝統的な車両販売の市場規模は世界で2.3兆ドルだが、モビリティサービスなどの潜在的な市場規模は5.4兆ドルと見込み、今後の重要な収益源とみている(右図)。

 本レポートで纏める、世界の主要自動車メーカーのモビリティサービスへの取り組みは、それらの新しいサービスのビジネスモデルの理解と生き残り策の模索をしていると考えられる。







都市問題の拡大、デジタル化、所有意欲の減退という社会経済的な変化

 Daimlerの子会社でカーシェアサービスを運営するcar2go Europeの社長は、乗り捨て可能なカーシェアサービスが今後拡大していく背景として、都市問題の拡大、デジタル化、所有意欲の減退という社会経済的な変化があり、カーシェアサービスのユーザーは2025年までには約5倍に拡大するとしている(2016年12月)。

乗り捨て可能なカーシェアサービスは発展の初期段階 都市化、デジタル化、若者の所有を志向しないと言う変化が発展を促す。
カーシェアサービスは急速に伸びつつある (Frost & Sullivanの2016年の予測によれば)、カーシェアサービスのユーザーは現在の790万人から、2025年には3670万人へ約5倍になる。
大都市は乗り捨て可能なカーシェアサービスを必要とする 2045年には都市部に住む人は、現在の1.5倍、60億人になると世界銀行は予測。渋滞、駐車スペースの限界、大気汚染と言う要因によって、車の私的所有は限界をむかえている。乗り捨て式カーシェアサービスは、車の台数を減らし、これらの問題を解決する。
未来のカーシェアサービスは電動化 カーシェアサービスがEVを使い運営すれば、都市中心部での大気汚染は改善され、政府の後押しもある。
カーシェアが様々なサービスを生み出す カーシェアサービスに使われる車はネットワーク・顧客のスマートフォンとつながっている。このことが新たな他のサービスを生む基盤となる。
自動運転車は乗り捨て可能なカーシェアサービスの半分を占める (Frost & Sullivanの2016年の予測によれば)、自動運転車となれば、カーシェアサービスの車は、待機用の駐車場に自動で駐車でき、また呼ばれれば、顧客のところまで自動で迎えに行くことが出来る。つまり、需要を精密に予測すれば、稼働率を上げることができ、必要な自動運転のカーシェア用車両の数は、同等の需要量をまかなうのに現状の半分でよい。

資料:Daimler プレスリリース 2016/12/14



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