トヨタ紡織 (株) 2014年3月期の動向
ハイライト
業績 |
(単位:百万円) |
2014年 3月期 |
2013年 3月期 |
増減率 (%) | 要因 | |
全社 | ||||
売上高 | 1,218,399 | 1,079,497 | 12.9 | -北中南米地域での生産台数の増加や為替差益が寄与 |
営業利益 | 28,823 | 25,302 | 13.9 | -製品価格変動の影響や研究開発費の増加などを合理化、増産増収効果により吸収 |
経常利益 | 40,294 | 33,914 | 18.8 | |
当期純利益 | 12,610 | 15,792 | (20.1) |
要因
<日本>
-エコカー補助金により需要が増加した前期に比べ生産台数は減少したものの、車種構成の改善などにより売上高は前年比6.3%増の661,403百万円。
-営業利益は車種構成の改善や合理化などにより前年比44.7%増の8,300百万円。
<北中南米>
-生産台数の増加や為替差益などにより売上高は前年比21.3%増の214,252百万円。
-営業損失は、新製品の生産準備費用の増加はあったものの、増産効果などにより前年比52百万円減少の3,441百万円。
<アジア・オセアニア>
-生産台数の増加や為替差益などにより売上高は前年比15.9%増の322,795百万円。
-営業利益は増産効果や為替差益などにより前年比3.1%増の29,036百万円。
<欧州・アフリカ>
-生産台数の増加などにより売上高は前年比43.2%増の86,366百万円。
-営業損失は、増産効果や合理化などにより前年比1,293百万円減少の4,852百万円。
2020年Visionに基づく2015年中期経営計画
-2010年度までの「第2の創業期」に続く新たなステージとして、2011年度から2015年度までを「飛躍のための構造改革期」と位置づけ、4つの主要経営課題と経営目標を設定。主要経営課題
1. 事業領域の拡大に向けた先端技術の追求
-他社を凌駕する技術力の保有による、各地域ごとに最適な製品開発と事業領域の拡大
2. 新興国を中心としたグローバルでの事業拡大の加速
-受注競争を勝ち抜くため、お客様のニーズにあった低価格な製品を開発・生産
3. 幅広い顧客拡大に向けた業務・組織改革
-営業・技術など全社一体となった魅力的な製品の開発と受注活動に向けた体制整備
4. 日本事業のスリム、高効率、高付加価値化の徹底
-グローバル本社としてモデルライン等における効率化の徹底と高付加価値製品の開発・生産
経営目標 (2012年4月17日設定)
1. 連結売上高・連結営業利益
2016年3月期 (目標) |
2021年3月期 (目標) |
|
連結売上高 | 13,000億円 | 16,000億円 |
連結営業利益 | 650億円 | 800億円 |
連結営業利益率 | 5% | 5% |
2. 売上比率
-現在のトヨタ向けの売上高を維持し、新規顧客・新規プロジェクトの獲得を通じて事業拡大を目指す。それに伴い、欧州や新興国をはじめとする海外生産を拡大する。
売上比率 | 2016年3月期 (目標) |
2021年3月期 (目標) |
トヨタ | 90% | 70% |
BMW、Daimler、GM、VW他 | 10% | 30% |
ポーランド工場への新規ラインの導入
-2013年、独BMWから主力製品のシートを初受注した同社は、BMWの品質管理手法に基づいた組立ラインをポーランド工場に新規導入し、生産を開始。供給するのは電気自動車「i3」、プラグインハイブリッド車「i8」向け。トヨタ自動車向けでは立ち上げ前に品質面の仕込みを徹底し、量産段階では抜き取り検査を行う手法を採用している。これに対し、BMW向けは納入先の要請に沿って基本的に全品、全工程で検査を実施する。(2013年12月19日付日刊自動車新聞より)欧州事業の構造改革
-2016年度までに欧州事業を営業利益ベースで黒字転換させることを目指す収益構造改革に着手。欧州事業は域内の新車需要の低迷などで収益体質が悪化している。これに対し、不採算工場の閉鎖を含む生産再編などを行う。15年度にも生産子会社紡織オートモーティブヨーロッパ (BAE) がドイツ南部にあるゲーレッツリート工場を閉鎖。さらに欧州域内の全生産拠点で生産プロセスの見直しによる効率改善、不良低減を徹底する。これと並行して受注増による売り上げ規模の拡大を実現し、黒字化につなげる。(2013年12月14日付日刊自動車新聞より)中国事業
<合弁会社>-2013年、中国地域統括会社「豊田紡織 (中国) 有限公司」が広州汽車集団零部件有限公司と設立した合弁会社 「河源豊田紡織汽車部件有限公司 が正式に生産を開始したと発表。(2013年12月12日付け各種リリースより)
<新工場>
-2013年、中国・広東省河源市に設置したシートカバーの新工場が量産を開始したと発表。広汽豊田汽車が手がける「カムリ」向けのシートカバーの生産を9月から開始しており、18日に開所式を実施した。従来、シートカバーは広州市内でシートを生産する合弁会社広州桜泰で実施していたが、新工場に移管することにした。自動車産業が集中する広州市から200キロメートル程離れた河源市に生産基盤を構築することで人材確保や人件費の低減などに役立てる。新工場の生産能力は年23万台。約4億円を投じて、生産体制を構築した。(2013年10月22日付日刊自動車新聞より)
-2013年、中国・遼寧省瀋陽市に自動車用内装部品の生産会社を設立すると発表。7月に設立し、2016年の生産開始を目指して新工場を建設する。中国では13カ所目の生産拠点になる。BMWの合弁工場に納入すると見られる。新会社「瀋陽豊田紡織汽車部件有限公司」は中国事業を統括する子会社、豊田紡織(中国)有限公司が100%出資し、資本金1億4千万元(約20億円)で設立する。生産開始当初は従業員数70人でスタートし、天井、ドアトリムなどを生産する。(2013年3月30日付日刊自動車新聞より)
タイの新工場
-2013年、2014年秋をめどにタイ南部に新工場を建設すると発表。トヨタグループ以外の顧客への供給を目的とした専用拠点と位置づけ、新規受注を目指す自動車メーカーが集積するラヨーン県に設置する。まず同社が手掛ける既存の系列外ビジネスを新工場に移管し、14年10月から生産を開始する。工場建設に伴う投資額は18億円。中期的には新規顧客向けのシート構成部品なども生産する。新工場の設置に向け、11月をめどに新会社紡織オートモーティブ (タイランド) を設立する。工場の敷地面積は約6万4千平方メートル、建屋面積は1万4千平方メートルの予定。従業員数は16年度に80人を見込んでいる。(2013年8月29日付日刊自動車新聞より)トルコ事業の再編
-2013年、トルコで内装部品の生産体制を再編したと発表。生産子会社TBソーテックトルコを新設し、シートカバーを既存拠点と並行生産する形に切り替えた。新工場はこのほど、トヨタ自動車がトルコ工場で立ち上げた新型「カローラ」向けに供給を開始した。労働集約型のビジネスとなるシートカバー生産をトヨタの工場から約70キロメートル離れた場所に一部移転することで、労務費を抑制したり、人材を確保しやすい環境を整えた。今後は新会社を欧州向けの供給基地として活用することも視野に入れている。納入先や生産品目を増やし、事業規模を拡大する。(2013年7月3日付日刊自動車新聞より)TBカワシマの子会社化
-2013年、TBカワシマを子会社化すると発表。TBカワシマが第三者割当増資により発行する株式2万株を7月1日までに取得する。取得額は12億8500万円。持ち株比率は現在の39%から56.7%に高まる。トヨタ紡織の自動車用シート事業とTBカワシマのファブリック事業の連携を強め、競争力を高める狙い。TBカワシマが100%出資する米国子会社TBカワシマUSAもトヨタ紡織の子会社となる。(2013年5月29日付日刊自動車新聞より)パキスタン進出
-2013年、パキスタンの自動車部品メーカー、タール社と豊田通商の3社で、パキスタンに自動車部品製造の合弁会社を設立すると発表。タイなどで生産していた同国向けのシートフレーム部品などの組み立てを、タール社の工場を活用して現地化する。パキスタンでは同社として初の生産拠点になる。新会社「タール紡織パキスタン」はタール社が55%、トヨタ紡織が35%、豊田通商が10%を出資し、8月に設立、本社はカラチ市のタール社の敷地内に置く。(2013年5月10日付日刊自動車新聞より)ラオス進出
-2013年、2014年4月をめどにラオス・サワンナケート県に新工場を設置すると発表。同社がラオスに生産拠点を設置するのは初めて。タイのゲートウェイ工場の生産能力を増強することに合わせ、シートカバーの裁断、縫製工程の一部をラオス工場に移管する。ラオスでは14年4月にシートカバーなどを生産開始し、ゲートウェイ工場に供給する。ラオス工場をタイのサテライト拠点として活用し、生産能力の確保やコスト低減につなげる。新工場には約5億円を投じ、年20万台分の生産能力を確保する計画だ。(2013年4月9日付日刊自動車新聞より)受注
-2013年、トヨタ紡織の豊田周平社長は23日、愛知県豊田市内で開いた記者懇談会で、独BMWから中国で初受注したことを明らかにした。BMWが現地生産する5シリーズ向けのシートバックボードを供給する。2013年度中に中国・天津に専用工場を新設して生産を始める。中国にBMW向けの供給拠点を設けるのも初めて。(2013年1月24日付日刊自動車新聞より)HV用モーターコア事業への参入
-2013年、ハイブリッド車 (HV) 用のモーターコア事業に初参入したと発表。シートリクライナーで蓄積した精密プレス加工技術を生かし、製品化した。猿投工場に生産ラインを新設し、金型から部品の量産まで自前で製造する体制を構築した。生産能力は年20万個。昨年12月からトヨタ自動車の新型「クラウン」向けに供給開始した。トヨタのHV向けモーターコアは従来、三井ハイテックがほぼ独占供給してきたが、トヨタ紡織が新規参入した。(2013年1月17日付日刊自動車新聞より)
2015年3月期の見通し |
(単位:百万円) |
2015年3月期 (予想) |
2014年3月期 (実績) |
増減率 (%) | 要因 | |
全社 | ||||
売上高 | 1,200,000 | 1,218,399 | (1.5) | |
営業利益 | 27,000 | 28,823 | (6.3) | |
経常利益 | 29,000 | 40,294 | (28.0) | |
当期純利益 | 12,000 | 12,610 | (4.8) | |
セグメント別売上高 | ||||
日本 | 640,000 | 661,403 | (3.2) | |
北中南米 | 240,000 | 214,252 | 12.0 | |
アジア・オセアニア | 310,000 | 322,795 | (4.0) | |
欧州・アフリカ | 90,000 | 86,366 | 4.2 |
開発動向
研究開発費 |
(単位:百万円) |
2014年3月期 | 2013年3月期 | 2012年3月期 | |
全社 | 40,189 | 36,321 | 32,543 |
研究開発拠点
-日本で先端・先行開発を実施し、製品開発は客先の開発拠点のある各地域拠点で実施。
地域 | 所在地 |
日本 | -猿投開発センター (愛知県豊田市) -大口開発センター (愛知県丹羽郡) -刈谷開発センター (愛知県刈谷市) |
北中南米地域 | 米国ミシガン州 |
中国 | 上海 |
アジア・オセアニア地域 | タイ バンコク |
欧州・アフリカ地域 | ベルギー ザベンタム |
デザインスタジオ | イタリア ミラノ |
研究開発活動
<日本>-自動車用シートにおいてシートカバーとウレタンを金型内で同時に成形する「表皮一体発泡工法」によるスポーツシートを新たに開発、Lexus新型「IS F Sport」に採用。
-100%植物由来樹脂と石油由来樹脂を高度複合(アロイ)化し、世界トップクラスの衝撃強度を有する「バイオプラスチックアロイ」を実現する技術を豊田中央研究所と共同開発。高衝撃樹脂で知られるポリカーボネート系複合樹脂を上回る性能を持ち、実用化されれば、自動車部品におけるバイオプラスチックの適用範囲を飛躍的に拡大することが可能。
<欧州・アフリカ>
-欧州自動車メーカーからの初のシートビジネスとしてBMW「i3」のフロントシートとリアシートの開発を受託、フロントシートバックフレームやシートカバーなどを開発。フロントシートバックフレームにはプラスチック素材を採用。
防音機能を強化した内装パッケージ
-2013年、スイスの部品メーカー、オートニウムや日本特殊塗料と防音機能を強化した内装パッケージを共同開発し、自動車メーカーへの提案を開始。昨年7月に協業を決めたオートニウムと日本特殊塗料は防音部品の技術を蓄積している。これを活用し、走行中の車室内での会話明瞭度を従来に対して2割高める。オートニウムと日本特殊塗料とは車両の電動化によって車室内でモーター音や風切り音が増えることへの対応まで含めて、防音機能を持たせた新製品を開発するとしていた。一方、東海ゴム工業と東海化成工業とは導電ゴム技術や発泡ウレタン技術などを生かし、乗り心地や安全性、内装周りの利便性を高めることにした。(2013年6月19日付日刊自動車新聞より)
中国拠点の拡充
-2013年、中国の技術開発力強化に向けて上海市の地域統括会社「豊田紡織 (中国) 有限公司」を移転し拡充すると発表。5月に本社及びR&Dセンターの新社屋の建設に着手、2014年7月に稼働させる予定で、現地での製品設計から評価までを一貫して完結できる体制を整える。新社屋建設への投資額は約20億円としている。(2013年3月1日付日刊自動車新聞より)設備投資
設備投資額 |
(単位:百万円) |
2014年3月期 | 2013年3月期 | 2012年3月期 | |
全社 | 51,116 | 36,805 | 37,583 |
-新製品への対応、生産設備の合理化・更新などの投資を重点に実施。
<日本>
-主に新製品対応、生産設備の合理化・更新、多治見技術センターの設立などに16,888百万円を投資。
<北中南米>
-主に新製品対応、生産設備の合理化・更新などに8,902百万円を投資。
<アジア・オセアニア>
-主に新製品対応、生産設備の合理化・更新、豊田紡織(中国)の本社・R&Dセンターの設立などに20,516百万円を投資。
<欧州・アフリカ>
-主に新製品対応、生産設備の合理化・更新などに4,808百万円を投資。
設備の新設 |
(2014年3月31日現在) |
会社名/事業所名 | 所在地 | 設備の内容 | 投資予定 総額 (百万円) |
着手 | 完了予定 |
猿投工場 | 愛知県 豊田市 |
シート、ドアトリムの新製品対応、設備の維持更新 | 6,819 | 2014年 4月 |
2015年 3月 |
刈谷工場 | 愛知県 刈谷市 |
エアフィルター等の新製品対応、設備の維持更新 | 2,011 | 2014年 4月 |
2015年 3月 |
瀋陽豊田紡織汽車部件 [Shenyang Toyota Boshoku Automotive Parts Co., Ltd.] |
中国遼寧省 瀋陽市 |
新工場の建設、ドアトリム等の新製品対応 | 4,008 |
2014年 1月 |
2014年 12月 |