住友ゴム工業 (株) 2016年12月期の動向
業績
(単位:百万円)
2016年 12月期 |
2015年 12月期 |
増減率 (%) | 要因 | |
全社 | ||||
売上収益 | 756,696 | 798,483 | (5.2) | -一部の新興国通貨を除いて期中に円高が進行し、販売金額面で大きな影響を受けた。 |
事業利益 | 74,916 | 78,853 | (5.0) | - |
営業利益 | 73,284 | 89,173 | (17.8) | - |
税引前利益 | 70,093 | 88,951 | (21.2) | - |
親会社の所有に帰属する当期純利益 | 41,364 | 71,976 | (42.5) | - |
タイヤ事業 | ||||
売上収益 | 648,445 | 682,220 | (5.0) | -国内市販用タイヤ:夏タイヤの拡販推進と冬タイヤの出荷好調により、売上収益は前期を上回った。 -国内新車用タイヤ:自動車生産台数が前期を下回ったため、売上収益は前期を下回った。 -海外市販用タイヤ:北米・欧州をはじめ、中近東、アフリカ、中南米などで販売を伸ばしたが、為替の円高による影響により前期を下回った。 -海外新車用タイヤ:タイや南アフリカに加えて昨年より納入を開始したブラジルで販売を伸ばした。また、北米・欧州においても引き続き海外自動車メーカー向けを中心に納入を拡大したことにより、販売数量は前期を上回ったが、為替の影響により売上収益は前期を下回った。 |
事業利益 | 67,924 | 74,021 | (8.2) | - |
-2016年12月期より日本基準に替えてIFRS(国際会計基準)を適用。
Goodyearとの提携解消
-2016年1月1日付で連結子会社であるダンロップグッドイヤータイヤ株式会社 (DGT) を住友ゴム工業に吸収合併すると発表した。住友ゴムを存続会社とする吸収合併方式で、DGTは解散する。DGTは国内新車用タイヤなどの販売を行っている。(2015年11月5日付プレスリリースより)
-2015年10月1日、The Goodyear Tire & Rubber Companyとのアライアンス契約及び合弁事業の解消が完了。
-同社は2015年6月4日付でThe Goodyear Tire & Rubber Companyとのアライアンス契約及び合弁事業の解消について合意したと発表した。 「ダンロップ (Dunlop)」 ブランドの使用権は、住友ゴムが北米の日系自動車メーカーの新車向けタイヤ、ロシア、中近東アフリカなどの33カ国で獲得。北米の市販用と欧州ではGoodyearが使用する。北米のタイヤ生産拠点を住友ゴムが、欧州の生産拠点はGoodyearが買い取る。購買及び技術開発の合弁会社は解散する。(2015年6月5日付日刊自動車新聞より)
Goodyearとの新委託契約
<日本>
-The Goodyear Tire & Rubber Companyは、住友ゴム工業と日本国内における 「グッドイヤー」 ブランド補修用タイヤの開発および生産に関する新たな長期委託契約を結んだ。両社はグローバル事業に関する提携解消に合意したものの、国内の補修用タイヤ事業では住友ゴムの開発力や供給体制を活用し、市場ニーズに適したタイヤを供給できる体制を構築する。グッドイヤーは補修用タイヤの安定供給を通じて、国内におけるブランドの存在感を高めていく。(2015年6月9日付日刊自動車新聞より)
Goodyearとの契約解消後の欧州・米州での動向
<英国>
-同社は、英国のMicheldever Group(MD)を買収することでGraphite Capital Managementと合意していたが、すべての手続きを完了したと発表した。MDは傘下にタイヤ卸・小売会社であるMicheldever Tyre Services(MTS)等を保有する持株会社。MTSは英国内の約6,000以上の小売店、自動車修理工場等にタイヤ卸を行う他、直営のタイヤ小売チェーン「PROTYRE」を英国内に約100店展開し、英国市販タイヤ市場において年間約600万本を販売するタイヤ販売会社。今回の買収により、英国市場における「FALKEN」ブランドのプレゼンス向上を図り、長期ビジョン「VISION 2020」で掲げたアクションプランである「欧米事業の拡大」を加速する。(2017年2月13日付プレスリリースより)
-同社は、タイヤや自動車用品の卸・小売りを手がける英ミッチェルディーバー・グループ(MD)を買収すると発表した。MDを傘下に収め英国市場で「ファルケン」ブランドのプレゼンスを高めるのが狙い。MDの株主である英ファンドのグラファイト・キャピタル・マネジメントから株式を取得する。取得価格は2億1500万ポンド(約312億円)。MDは1972年の創業で自動車やモーターサイクル、農業機械用タイヤや自動車用品の卸・小売り事業を展開している。2016年3月期の売上高は約3億2千万ポンド(約464億円)。イギリスの調査会社LMCオートモーティブによると2015年の英国での市販用タイヤ市場は3700万本で、MTSは英国内で約16%のシェアを持つとみられる。(2017年1月10日付日刊自動車新聞より)
<欧州>
-同社は欧米での現地開発体制の強化の乗り出す。米国に研究開発拠点を来年1月に稼働するとともに、欧州にも研究開発拠点を新設、来年9月に本格稼働する予定。米国は50人、欧州が30人程度のエンジニアを配置する予定で、大半を現地で採用する。また、米国にあるテストコースを四輪車全てのテストが可能になるように設備を充実させる。市場に適したタイヤをスピーディーに開発できる体制を構築する。米グッドイヤーとアライアンスを解消したのに伴って、欧米市場攻略を加速、早期に世界3極での開発・生産体制を確立する。(2016年12月19日付日刊自動車新聞より)
-同社は、欧州での開発、販売体制を強化する。欧州現地のニーズを採り入れたタイヤ開発に向けて、欧州初となる開発拠点をドイツに新設する。また、ドイツ国内に分散していた販売や技術サービスのグループ会社3社を2018年1月までに1箇所に集約する。同社では、米グッドイヤータイヤ&ラバーカンパニー(GY)とのアライアンス解消によって自由度が大幅に高まった欧州での事業拡大を加速する。同社では、欧州・アフリカ市場向けの製品開発を行う「欧州テクニカルセンター」をドイツ・ハナウ市に設置、17年8月に本格稼働する。これまでタイヤの製品開発は全て日本で行っていたが、現地ニーズに応じた製品開発・評価をできる体制を構築する。欧州の開発拠点では、主に現地の道路状態に適したトレッドパターンなどを設計する予定。新材料や新構造といった基本技術の開発は、引き続き日本で行う。(2016年8月10日付日刊自動車新聞より)
受注
-2016年から2017年までの主な受注
ブランド | 製品名 | 搭載モデル |
Falken | AZENIS FK453、ZIEX ZE914A ECORUN、SINCERA SN832A ECORUN | Seat 「Ibiza」 |
SINCERA SN250A A/S | 日産 「Rogue Sport」 Volkswagen 「Golf Alltrack」 |
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ZIEX ZE914A ECORUN | Volkswagen 「Touran」 Volkswagen 「Tiguan」 Skoda 「Superb」 |
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Wildpeak H/T01A2 | Jeep「Compass Trailhawk」 | |
AZENIS FK453CC、ZIEX ZE914A ECORUN | Seat 「Ateca」 | |
ZIEX CT50 | FCA 「Pacifica」 マツダ 「CX-9」 |
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ZIEX ZE001 A/S | 日産 「Rogue」 | |
Dunlop | エナセーブ EC300+(プラス) | ダイハツ 「Mira e:S」 トヨタ「Vitz」 トヨタ「C-HR」 ダイハツ「トール」 トヨタ「ルーミー」「タンク」 ダイハツ 「MOVE Canbus」 トヨタ ダイハツ 「Passo/ Boon」 スズキ 「Ignis」 |
ECOPIA EP150 | トヨタ 「プリウスPHV」 | |
エナセーブ EC300+(プラス)、エナセーブ PREMIUM | 日産 「Serena」 | |
SP SPORT MAXX GT600 DSST CTT | 日産 「GT-R」 |
中期経営計画 (2016年1月~2020年12月)
-2016年から20年を対象とした中期経営計画を発表した。The Goodyear Tire & Rubber Companyとの提携解消を受けて欧米での事業拡大を重点項目に掲げ、17年に北米と欧州で開発拠点の本格稼働を検討。20年のタイヤ販売で北米で2015年の6割増、欧州で4割増を目指す。海外での開発拠点の開設は初めてとなる。これにより12年に発表した20年までの長期ビジョン 「ビジョン2020」 で掲げた20年売上高1兆2千億円、営業利益1500億円の必達を目指す。(2016年2月16日付日刊自動車新聞より)
主な施策
米州 | 米国工場:需要の多いSUV用のタイヤを中心に生産能力の増強 開発体制:米州テクニカルセンターが米国工場内で2017年1月に本格稼働開始 ブラジル工場:需要増加が見込まれるトラック・バス用のタイヤの現地生産化 |
欧州・アフリカ | トルコ工場:欧州市場への供給拠点として2015年に稼働したトルコ工場が順調に生産能力を増強 南アフリカ工場:乗用車・SUV用高性能タイヤの生産能力を増強。またトラック・バス用のタイヤの生産設備導入を計画 開発体制:欧州テクニカルセンター(ドイツ・ハナウ市)が2017年8月に本格稼働開始 販売:英国大手タイや販売会社Micheldever Group(MD)社を買収 |
アジア・太平洋 | 中国:2016年9月からの低燃費タイヤの自主規制に適合した商品の展開 中国、インド、オーストリア:Falkenブランドの取扱店舗数の拡大 |
長期ビジョン 「VISION 2020」
-「新市場への挑戦」、「飽くなき技術革新」、「新分野の創出」といった新たな挑戦を原動力とし、以下の目標を達成する。
2015年12月期 (実績) |
2020年12月期 (目標) |
|
売上高 (億円) | 8,487 | 12,000 |
営業利益 (億円) (率) |
771 (9.1%) |
1,500 (12%以上) |
ROE | 13.3% | 15%以上 |
ROA (営業利益ベース) | 8.1% | 14%以上 |
D/E比率 (Debt Equity Ratio) | 0.6倍 | 0.5倍以下 |
2017年12月期の見通し |
(単位:百万円) |
2017年12月期 (予測) |
2016年12月期 (実績) |
増減 (%) | |
売上収益 | 850,000 | 756,696 | 12.3 |
営業利益 | 50,000 | 73,284 | (31.8) |
税引前利益 | 48,600 | 70,093 | (30.7) |
親会社株主に帰属する当期純利益 | 33,000 | 41,364 | (20.2) |
研究開発費 |
(単位:百万円) |
2016年12月期 | 2015年12月期 | 2014年12月期 | |
全社 | 24,257 | 23,372 | 23,543 |
-タイヤ事業 | 20,966 | 19,865 | 20,543 |
タイヤ事業が占める割合 (%) | 86.4 | 85.0 | 87.3 |
研究開発拠点
-2009年に竣工した、タイヤテクニカルセンター (兵庫県神戸市) をタイヤ技術研究開発の中心とし、「原材料」、 「低燃費性」、 「省資源」 の3つの方向性で、環境に配慮した次世代タイヤの開発を行う。
タイヤテクニカルセンター | 兵庫県神戸市 米国・ニューヨーク州トナワンダ ドイツ・ハナウ市 |
タイヤテストコース | 岡山県美作市 北海道名寄市 北海道旭川市 米国・アラバマ州 |
製品開発
シーラントタイヤ技術 「コアシール (CORESEAL)」
-粘着性のある素材でトレッド部損傷による空気漏れを防ぐパンク防止タイヤ 「シーラントタイヤ」 を2017年に実用化する。トルコ工場で生産して、欧州自動車メーカー向けに供給する。シーラントタイヤは、釘などでトレッド部が損傷しても空気圧を維持したまま走行できるタイヤで、車両のスペアタイヤをなくすことができる。ランフラットタイヤに比べると、低コストで製造できるメリットがある。車両からスペアタイヤの装備をなくすことができるタイヤのバリエーションに、シーラントタイヤを加え、価格や性能など、自動車メーカーの多様なニーズに対応していく。(2016年5月27日付日刊自動車新聞より)
タイヤセンシング技術「SENSING CORE(センシング コア)」
-2017年5月16日、同社は回転するタイヤの車輪速信号を解析して、路面の滑りやすさやタイヤにかかる荷重などを検知するセンシング技術「センシング コア」を開発したと発表した。路面の滑りやすさを検知し、ドライバーへの注意喚起や、四つのタイヤそれぞれの荷重状況に合わせて、制御を最適化するなどの活用方法を想定する。自動車メーカーに提案を開始しており、2020年頃の新型車への搭載を目指す。(2017年5月17日付日刊自動車新聞より)
-同社は高性能なNMR(核磁気共鳴)装置を使った独自の解析手法で、これまで解析されていなかったパラゴムノキから採取された天然ゴムの末端基構造の解析に成功したと発表した。タイヤの低燃費性能や耐摩耗性能の向上につながる天然ゴムの性能向上や加工性の改善に期待できるとしている。(2016年10月28日付日刊自動車新聞より)
設備投資額 |
(単位:百万円) |
2017年12月期 (予定) |
2016年12月期 (実績) |
2015年12月期 (実績) |
2014年12月期 (実績) |
|
全社 | 63,800 | 49,606 | 58,911 | 62,814 |
-タイヤ事業 | 59,700 | 46,384 | 55,862 | 58,638 |
タイヤ事業が占める割合 (%) | 93.6 | 93.5 | 94.8 | 93.4 |
-2016年度は、タイヤ事業の国内工場においては、設備改善および生産設備の合理化・省人化、生産改善に投資。海外工場においては、南アフリカ・トルコ工場の生産設備増強に投資。
海外投資
<米国>
-同社は、米国工場の乗用車、ライトトラック用タイヤの生産能力を2019年末に現状の2倍となる日産1万本に引き上げると発表した。総投資額は8700万ドル(約90億円)。北米で需要が多いSUV用タイヤを中心に現地生産比率を拡大し、北米でのタイヤ販売を拡大する。現在、米国工場では乗用車・ライトトラック用タイヤ、トラック・バス用タイヤ、モーターサイクル用タイヤを生産している。このうち、乗用車・ライトトラック用タイヤの生産能力は日産5千本。これを19年末までに日産1万本にする。(2016年8月8日付日刊自動車新聞より)
<ブラジル>
-2016年7月20日、同社はブラジル工場でトラック・バス(TB)用タイヤを2019年3月に生産開始すると発表した。投資額は3億1200万レアル(約100億円)で、生産能力は日産500本を計画する。 現在ブラジル市場で販売しているTB用タイヤは日本から輸入している。TBタイヤを現地生産することで製品の安定供給を図るとともに、為替変動リスクを回避する。また、従来から生産している乗用車用・ライトトラック用タイヤも17年以降に1億7500万レアル(約56億円)を投資して生産能力を増強する。(2016年7月21日付日刊自動車新聞より)
<南アフリカ>
-2016年3月、2018年7月から南アフリカのタイヤ工場でトラック・バス用 (TB) タイヤを生産すると発表。設備投資額は9億1千万ランド (約66億円) で、日産750本を計画する。海外でのTBタイヤ生産は中国、米国に続いて3カ所目となる。急激な経済成長が続くアフリカ市場ではトラック用タイヤの需要も拡大している。現地生産に切り替えることで安定した供給体制を整え、さらなる拡販に結びつける。同工場は、13年12月に現地のアポロタイヤ社から取得した。同工場の生産能力は15年末現在で日産1万本。現在能力増強を進めており、17年末までに日産1万4500本まで高める計画で、今回のTBタイヤを合わせると日産1万5千本を超えることになる。(2016年3月25日付日刊自動車新聞より)