住友ゴム工業 (株) 2015年12月期の動向

業績

(単位:百万円)
2015年
12月期
2014年
12月期
増減率 (%) 要因
全社
売上高 848,663 837,647 1.3 -主力のタイヤ事業において、新興諸国での販売が低迷。国内の冬用タイヤの販売も暖冬により想定を下回ったが、円安の効果などにより増収。
営業利益 77,067 86,251 (10.6) -
経常利益 78,894 87,968 (10.3) -
当期純利益 55,834 53,206 4.9 -日本グッドイヤー社との提携解消に伴い、過年度に計上した欧州合弁会社の評価損に係る税負担が解消されたことにより、増益。過去最高を更新した。
タイヤ事業
売上高 732,168 731,245 0.1 -国内市販用タイヤ:低燃費タイヤの販売数量は前期を上回ったが、冬タイヤの販売数量は暖冬により前期を下回った。
-国内新車用タイヤ:自動車生産台数が前期を下回った。
-海外市販用タイヤ:新興諸国での販売が低迷したが、米国を中心に拡販し販売数量が増加、加えて円安効果などにより、前期を上回った。
-海外新車用タイヤ:インドネシアや中国では販売数量が減少。タイでは高シェア納入車種の販売が好調。米国では非日系メーカーへの納入拡大、加えて円安効果もあり、前期を上回った。
営業利益 73,114 78,416 (6.8) -


 

Goodyearとの提携解消

-2016年1月1日付で連結子会社であるダンロップグッドイヤータイヤ株式会社 (DGT) を住友ゴム工業に吸収合併すると発表した。住友ゴムを存続会社とする吸収合併方式で、DGTは解散する。DGTは国内新車用タイヤなどの販売を行っている。(2015年11月5日付プレスリリースより)

-2015年10月1日、The Goodyear Tire & Rubber Companyとのアライアンス契約及び合弁事業の解消が完了。

-同社は2015年6月4日付でThe Goodyear Tire & Rubber Companyとのアライアンス契約及び合弁事業の解消について合意したと発表した。 「ダンロップ (Dunlop)」 ブランドの使用権は、住友ゴムが北米の日系自動車メーカーの新車向けタイヤ、ロシア、中近東アフリカなどの33カ国で獲得。北米の市販用と欧州ではGoodyearが使用する。北米のタイヤ生産拠点を住友ゴムが、欧州の生産拠点はGoodyearが買い取る。購買及び技術開発の合弁会社は解散する。(2015年6月5日付日刊自動車新聞より)



Goodyearとの新委託契約

<日本>
-The Goodyear Tire & Rubber Companyは、住友ゴム工業と日本国内における 「グッドイヤー」 ブランド補修用タイヤの開発および生産に関する新たな長期委託契約を結んだ。両社はグローバル事業に関する提携解消に合意したものの、国内の補修用タイヤ事業では住友ゴムの開発力や供給体制を活用し、市場ニーズに適したタイヤを供給できる体制を構築する。グッドイヤーは補修用タイヤの安定供給を通じて、国内におけるブランドの存在感を高めていく。(2015年6月9日付日刊自動車新聞より)


タイヤの生産能力

-2015年12月期のタイヤ生産能力は前年比11%増で海外生産比率56%。トルコ工場が稼働開始したことや、米国工場を取得したことなどによる。
 

高付加価値タイヤの製造・販売

<日本>
-日本市場向け戦略として高付加価値タイヤの販売を強化することを打ち出した。静粛性や乗り心地にこだわった低燃費タイヤブランド 「LE MANS (ルマン) 4」、 「VEURO (ビューロ) VE303」 について、商品特性を訴求する新しい専用ツールを用意するなどし、拡販に取り組む。新車販売台数や保有台数の頭打ちに直面する自動車業界だが、そうした中でも1千万円を超える高級輸入車や、150万円を超える軽自動車がよく売れるなど、価値を高めた商品が各カテゴリーで存在感を発揮していることによる。 (2015年3月19日付日刊自動車新聞より)

<米国>
-米国のタイヤ工場でSUVや高性能車向け高付加価値タイヤの生産を本格化する。今後100億円弱の投資を行うことで生産設備を切り替え、高付加価値品の生産体制を他工場と同等水準まで引き上げていく。日産1万5千本の同工場の生産能力は維持する。The Goodyear Tire & Rubber Companyとのアライアンス解消により手に入れる米国工場を補強することで市場ニーズに即した生産品目に切り替え、北米でのタイヤ販売拡大に結びつける。ニューヨーク州のバッファロー工場は、今回の提携解消により住友ゴムが引き継ぐことに決定。これまで提携により北米事業で制約のあった住友ゴムにとっては、北米唯一の生産拠点となる。バッファロー工場は現在、乗用車、トラック、二輪車用タイヤを生産している。(2015年8月7日付日刊自動車新聞より)

<トルコ>
-2015年10月、トルコ工場 (トルコ・チャンクル県) で開所式を開いた。同工場は、トルコでタイヤの製造販売を手がけるAKO社と合弁で設立。住友ゴムの欧州・中近東初のタイヤ生産拠点で、海外工場としては7拠点目。2015年6月から乗用車用ラジアルタイヤの生産を開始した。敷地面積は100万平方メートルで、これまでの投資総額は5億ドル (約595億円)。順次生産能力を増強し、2015年末で日産4千本、2019年末までに日産3万本を計画している。(2015年10月23日付日刊自動車新聞より)


FALKENブランドの販売

<日本・中国>
-タイヤブランド 「ファルケン」 の再構築に乗り出す。これまで 「ダンロップ」 ブランドの使用権を持たない欧州を中心に販売を強化してきたが、ダンロップを使用できる日本や中国でも露出を高め、商品ラインアップを拡充しグローバルで販売を伸ばす。2020年にはファルケンの世界販売本数を14年比2倍の4千万本以上、構成比は2割から3割に引き上げる計画。(2015年7月6日付日刊自動車新聞より)



受注

-2015年12月期の主な受注

ブランド 製品名 搭載モデル
Falken ZIEX ZE914 ECORUN FCA 「Chrysler 200」
ZIEX ZE914 マツダ 「Demio 15MB」
ZIEX ZE914A、ZIEX ZE914A ECORUN Volkswagen 「Passat」
Dunlop SP Sport MAXX 050

トヨタ 「Lexus RX」、スバル 「Impreza Sport Hybrid」

エナセーブEC300+ トヨタ 「Prius」
ダイハツ 「Cast」、 「Move」、 「Wake」
マツダ 「CX-3」
スズキ 「Alto Lapin」
エナセーブEC300 スズキ 「Alto」
SUV用タイヤGRANDTREK PT3A、GRANDTREK PT2A、
GRANDTREK AT23
トヨタ 「Lexus LX」
SUV用タイヤGRANDTREK PT2A、GRANDTREK AT23 トヨタ 「Land Cruiser」
SUV用タイヤGRANDTREK ST30 日産 「X-Trail Hybrid」


中期経営計画 (2016年1月~2020年12月)

-2016年から20年を対象とした中期経営計画を発表した。The Goodyear Tire & Rubber Companyとの提携解消を受けて欧米での事業拡大を重点項目に掲げ、17年に北米と欧州で開発拠点の本格稼働を検討。20年のタイヤ販売で北米で2015年の6割増、欧州で4割増を目指す。海外での開発拠点の開設は初めてとなる。これにより12年に発表した20年までの長期ビジョン 「ビジョン2020」 で掲げた20年売上高1兆2千億円、営業利益1500億円の必達を目指す。(2016年2月16日付日刊自動車新聞より)

主な施策

北米地域
  1. アライアンス解消で獲得した米国工場 (ニューヨーク州) の生産能力 (460万本/年) を最大限に活用する。
  2. FALKENブランドによる事業展開の強化
    ・商品ラインナップの拡大
    ・非日系自動車メーカー向け新車用タイヤの装着を拡大
    ・プロモーション活動の強化
  3. DUNLOPブランドの一層の強化
    ・日系自動車メーカー向け新車用タイヤの装着を拡大
    ・二輪車用タイヤの展開拡大
  4. 2017年にテクニカルセンターの本格稼働を検討

    2020年販売数量、2015年比60%増を目指す。
欧州
  1. トルコ工場が2015年6月より生産開始、欧州市場への高性能タイヤの供給能力を強化。
  2. FALKENブランドによる事業展開の強化
    ・商品ラインナップの拡大
    ・ドイツ中心から国別販売戦略をとることで販路を拡大する。
    ・プロモーション活動の強化
  3. 2017年にテクニカルセンターの本格稼働を検討

    2020年販売数量、2015年比40%増を目指す。



長期ビジョン 「VISION 2020」

-「新市場への挑戦」、「飽くなき技術革新」、「新分野の創出」といった新たな挑戦を原動力とし、以下の目標を達成する。

2015年12月期
(実績)
2020年12月期
(目標)
売上高 (億円) 8,487 12,000
営業利益 (億円)
(率)
771
(9.1%)
1,500
(12%以上)
ROE 13.3% 15%以上
ROA (営業利益ベース) 8.1% 14%以上
D/E比率 (Debt Equity Ratio) 0.6倍 0.5倍以下

2016年12月期の見通し

(単位:百万円)
2016年12月期
(予測)
2015年12月期
(実績)
増減 (%)
売上高 810,000 848,663 (4.6)
営業利益 70,000 77,067 (9.2)
経常利益 66,000 78,894 (16.3)
親会社株主に帰属する当期純利益 53,500 55,834 (4.2)

>>>次年度業績予想 (売上、営業利益等)

研究開発費

(単位:百万円)
2015年12月期 2014年12月期 2013年12月期
全社 23,372 23,543 21,822
-タイヤ事業 19,865 20,543 18,976
タイヤ事業が占める割合 (%) 85.0 87.3 87.0



研究開発拠点

-2009年に竣工した、タイヤテクニカルセンター (兵庫県神戸市) をタイヤ技術研究開発の中心とし、「原材料」、 「低燃費性」、 「省資源」 の3つの方向性で、環境に配慮した次世代タイヤの開発を行う。

タイヤテクニカルセンター 兵庫県神戸市
タイヤテストコース 岡山県美作市
北海道名寄市
北海道旭川市

<日本>
-2015年8月、兵庫県神戸市の同社敷地内に建設していた技術研究センター5号館が完成したと発表した。総工費は約13億円で、延床面積は約3,700平方メートルとなる。(2015年8月4日付プレスリリースより)

<ドイツ>
-欧州での開発、販売体制を強化する。欧州現地のニーズを採り入れたタイヤ開発に向けて、欧州初となる開発拠点をドイツに新設する。また、ドイツ国内に分散していた販売や技術サービスのグループ会社3社を2018年1月までに1箇所に集約する。同社では、The Goodyear Tire & Rubber Companyとのアライアンス解消によって自由度が大幅に高まった欧州での事業拡大を加速する。同社では、欧州・アフリカ市場向けの製品開発を行う 「欧州テクニカルセンター」 をドイツ・ハナウ市に設置、17年8月に本格稼働する。これまでタイヤの製品開発は全て日本で行っていたが、現地ニーズに応じた製品開発・評価をできる体制を構築する。欧州の開発拠点では、主に現地の道路状態に適したトレッドパターンなどを設計する予定。新材料や新構造といった基本技術の開発は、引き続き日本で行う。(2016年8月10日付日刊自動車新聞より)

共同開発

-従来のパラゴムノキ由来の天然ゴムに代わる新たな天然ゴム資源として 「ロシアタンポポ」 に着目し、米国ミズーリ州を本拠とするバイオ企業Kultevatと、その実用化検討に向けた共同研究を開始したと発表した。Kultevatは、バイオ燃料などの原料を植物から生産する高い技術と、環境負荷が小さく、持続性・収益性の高い植物の商業利用に豊富な経験を持つ。(2015年8月5日付プレスリリースより)

新材料開発技術

-2015年11月、タイヤの耐摩耗性を2倍に向上するタイヤ材料開発技術 「ADVANCED 4D NANO DESIGN」 を開発したと発表。東京モーターショー2015に新技術を採用したコンセプト商品 「耐磨耗マックストレッドゴム搭載タイヤ」 を出品した。「ADVANCED 4D NANO DESIGN」 はスーパーコンピューター 「京」 を活用してより詳細なゴムのシミュレーションを可能とし、タイヤの背反性能であるグリップや低燃費、耐磨耗性などを大幅に向上させた。「ADVANCED 4D NANO DESIGN」 は、11年に開発した 「4D NANO DESIGN」* の後継技術として12年から開発を開始していた。さらに20年以降は、京の後継機器を活用した材料開発技術 「NEXT 4D NANO DESIGN」 の展開を目指す。

*「4D NANO DESIGN」 とは:タイヤ性能を向上させる新材料を効率的に開発するために (1) 「調べる」 (2) 「予測する」 (3) 「作る」 (4) 「引き出す」 の4つの技術を融合させ、ナノレベルで分子の挙動を表現しながら、材料シミュレーションを行う技術。



製品開発

-東京モーターショー2015では、空気フリータイヤ技術 「ジャイロブレイド (GYROBLADE)」 や、トレッド部のパンクなどによる空気漏れを防止するシーラントタイヤ技術 「コアシール (CORESEAL)」 などが発表された。(2015年11月2日付日刊自動車新聞より)

エアレスタイヤ 「ジャイロブレイド (GYROBLADE)」
-金属製ホイールと特殊樹脂スポークからなる車輪の外周にタイヤのトレッド部を接着させた形状をしており、空気充填することなくタイヤの基本性能を満たす技術。パンクや整備不良による空気圧の過不足の心配がなく、メンテナンス作業の負荷を大きく軽減するとともに、スペアタイヤが不要になることで環境にも配慮した技術。

シーラントタイヤ技術 「コアシール (CORESEAL)」
-粘着性のある素材でトレッド部損傷による空気漏れを防ぐパンク防止タイヤ 「シーラントタイヤ」 を2017年に実用化する。トルコ工場で生産して、欧州自動車メーカー向けに供給する。シーラントタイヤは、釘などでトレッド部が損傷しても空気圧を維持したまま走行できるタイヤで、車両のスペアタイヤをなくすことができる。ランフラットタイヤに比べると、低コストで製造できるメリットがある。車両からスペアタイヤの装備をなくすことができるタイヤのバリエーションに、シーラントタイヤを加え、価格や性能など、自動車メーカーの多様なニーズに対応していく。(2016年5月27日付日刊自動車新聞より)

バイオマス由来のゴム軟化剤
-バイオマス由来のゴム軟化剤の性能を向上させ、2016年に量産化を目指すと発表。軟化剤はタイヤのグリップ性能を確保する役割がある。既存のバイオマス材料を用いた軟化剤よりもゴムとの結合を高めてグリップ性能を長期間維持できるようにした。バイオマス材料を非石油系への材料置換目的としてだけでなく、タイヤの性能向上に活用する。(2015年11月16日付日刊自動車新聞より)


設備投資額

(単位:百万円)
2016年12月期
(予定)
2015年12月期
(実績)
2014年12月期
(実績)
2013年12月期
(実績)
全社 64,200 58,911 62,814 57,270
-タイヤ事業 59,700 55,862 58,638 54,268
タイヤ事業が占める割合 (%) 93.0 94.8 93.4 94.8


-2015年度は、タイヤ事業の国内工場においては、設備改善および生産設備の合理化・省人化、生産改善に投資。海外工場においては、タイおよび南アフリカ工場の生産設備増強、トルコ工場の建設に投資。

-2016年度全社投資予定金額は、64,200百万円。内、タイヤ事業は59,700百万円の予定。


海外投資

<米国>
-2016年8月、米国工場の乗用車、ライトトラック用タイヤの生産能力を2019年末に現状の2倍となる日産1万本に引き上げると発表。総投資額は8700万ドル (約90億円)。北米で需要が多いSUV用タイヤを中心に現地生産比率を拡大し、北米でのタイヤ販売を拡大する。現在、米国工場では乗用車・ライトトラック用タイヤ、トラック・バス用タイヤ、モーターサイクル用タイヤを生産している。このうち、乗用車・ライトトラック用タイヤの生産能力は日産5千本。これを19年末までに日産1万本にする。(2016年8月8日付日刊自動車新聞より)

<ブラジル>
-2016年7月、ブラジル工場でトラック・バス (TB) 用タイヤを2019年3月に生産開始すると発表。投資額は3億1200万レアル (約100億円) で、生産能力は日産500本を計画する。 現在ブラジル市場で販売しているTB用タイヤは日本から輸入している。TBタイヤを現地生産することで製品の安定供給を図るとともに、為替変動リスクを回避する。また、従来から生産している乗用車用・ライトトラック用タイヤも17年以降に1億7500万レアル (約56億円) を投資して生産能力を増強する。(2016年7月21日付日刊自動車新聞より)

<南アフリカ>
-2016年3月、2018年7月から南アフリカのタイヤ工場でトラック・バス用 (TB) タイヤを生産すると発表。設備投資額は9億1千万ランド (約66億円) で、日産750本を計画する。海外でのTBタイヤ生産は中国、米国に続いて3カ所目となる。急激な経済成長が続くアフリカ市場ではトラック用タイヤの需要も拡大している。現地生産に切り替えることで安定した供給体制を整え、さらなる拡販に結びつける。同工場は、13年12月に現地のアポロタイヤ社から取得した。同工場の生産能力は15年末現在で日産1万本。現在能力増強を進めており、17年末までに日産1万4500本まで高める計画で、今回のTBタイヤを合わせると日産1万5千本を超えることになる。(2016年3月25日付日刊自動車新聞より)