住友ゴム工業 (株) 2014年12月期の動向
業績 |
(単位:百万円) |
2014年 12月期 |
2013年 12月期 |
増減率 (%) | 要因 | |
全社 | ||||
売上高 | 837,647 | 780,609 | 7.3 | 1) |
営業利益 | 86,251 | 77,055 | 11.9 | |
経常利益 | 87,968 | 74,582 | 17.9 | |
当期純利益 | 53,206 | 44,794 | 18.8 | |
タイヤ事業 | ||||
売上高 | 731,245 | 681,099 | 7.4 | 2) |
営業利益 | 78,416 | 69,850 | 12.3 |
要因
1) 全社
-為替の円安による輸出環境の改善、天然ゴム相場が引き続き低位で安定的に推移したことに加えて、原油相場が大幅に下落した好条件があったが、世界的な需要の停滞によりタイヤ販売における競合他社との競争が激化するなど、厳しい状況で推移。
2) タイヤ事業
-国内新車用タイヤは、自動車生産台数が前期を上回るなか、低燃費タイヤをはじめとする高付加価値商品の拡販に引き続き努めたことにより、売上高は前期を上回った。
-海外新車用タイヤは、インドネシアやタイでは景気の低迷により販売本数が減少したが、中国の自動車生産拡大に対応して大幅に販売本数を伸ばしたことなどにより、売上高は前期を上回った。
Goodyearとの提携解消
-同社は2015年6月4日付でThe Goodyear Tire & Rubber Companyとのアライアンス契約及び合弁事業の解消について合意したと発表した。「ダンロップ (Dunlop)」ブランドの使用権は、住友ゴムが北米の日系自動車メーカーの新車向けタイヤ、ロシア、中近東アフリカなどの33カ国で獲得。北米の市販用と欧州ではGoodyearが使用する。北米のタイヤ生産拠点を住友ゴムが、欧州の生産拠点はGoodyearが買い取る。購買及び技術開発の合弁会社は解散する。(2015年6月5日付日刊自動車新聞より)
-2015年10月1日、The Goodyear Tire & Rubber Companyとのアライアンス契約及び合弁事業の解消が完了。
高付加価値タイヤの拡販
日本市場
-日本市場向け戦略として高付加価値タイヤの販売を強化することを打ち出した。静粛性や乗り心地にこだわった低燃費タイヤブランド「LE MANS (ルマン) 4」、「VEURO (ビューロ) VE303」について、商品特性を訴求する新しい専用ツールを用意するなどし、拡販に取り組む。新車販売台数や保有台数の頭打ちに直面する自動車業界だが、そうした中でも1千万円を超える高級輸入車や、150万円を超える軽自動車がよく売れるなど、価値を高めた商品が各カテゴリーで存在感を発揮していることによる。 (2015年3月19日付日刊自動車新聞より)
受注
-2014年の主な受注
*RFT:ランフラットタイヤ = 空気圧がゼロになっても、時速80kmで距離80kmの走行が可能なタイヤ
ブランド | 製品名 | 搭載モデル |
Falken | ZIEX ZE914A、ZIEX ZE914A ECORUN | Volkswagen 「Passat」 |
ZIEX ZE914 ECORUN | Chrysler 「Jeep Compass」、 「Patriot」 | |
Dunlop | SP Sport MAXX GT 600 DSST CTT *RFT | 日産 「GT-R」 |
SP Sport MAXX A1 DSST CTT | トヨタ 「Lexus LS」 | |
SP Sport MAXX 050 | スバル 「WRX S4」、 「Levorg」 | |
SP Sport MAXX 050 DSST CTT *RFT | 日産 「Skyline」 | |
SP Sport MAXX RT | スバル 「WRX STI」 | |
SP Sport 2030 | トヨタ 「Aqua X-URBAN」 | |
エナセーブEC300+ | ダイハツ 「Move」、「Wake」 | |
マツダ 「CX-3」 | ||
スズキ 「Hustler」 | ||
エナセーブ EC300 | ダイハツ 「Boon」、トヨタ 「Passo」 | |
日産 「DAYZ ROOX」、三菱 「eK Space」 | ||
スズキ 「Alto」 | ||
エナセーブPREMIUM | 日産 「Serena」 |
認証
-タイヤ製造・販売子会社の住友橡膠 (常熟) 有限公司 [Sumitomo Rubber (Changshu) Co., Ltd.] とSumitomo Rubber do Brasilが、エネルギーマネジメントシステム「ISO50001:2011」の認証を取得したと発表。ISO50001の認証取得は同社グループとして初めてとなる。 (2015年2月27日付プレスリリースより)
長期ビジョン 「VISION 2020」
-「新市場への挑戦」、「飽くなき技術革新」、「新分野の創出」といった新たな挑戦を原動力とし、以下の目標を達成する。
2020年度目標
- 売上高: 12,000億円
- 営業利益: 1,500億円
- 新興市場 (中国除く) の販売比率: 20% (2011年度は10%)
- 中国市場の販売比率: 17% (2011年度は11%)
- 海外自動車メーカーへの販売比率: 35% (2014年度は15%)
研究開発費 |
(単位:百万円) |
2014年12月期 | 2013年12月期 | 2012年12月期 | |
全社 | 23,543 | 21,822 | 19,538 |
-タイヤ事業 | 20,543 | 18,976 | 17,033 |
タイヤ事業が占める割合 (%) | 87.3 | 87.0 | 87.2 |
研究開発体制
-グッドイヤーとの世界的提携に基づく技術交流を実施。テーマ別にプロジェクトチームを編成し、共同調査研究を行っている。
>>>グッドイヤーとの提携に関する詳細へ
研究開発拠点
-2009年に竣工した、タイヤテクニカルセンター (兵庫県神戸市) をタイヤ技術研究開発の中心とし、環境に配慮した次世代タイヤの開発を行う。
タイヤテクニカルセンター | 兵庫県神戸市 |
タイヤテストコース | 岡山県美作市 北海道名寄市 北海道旭川市 |
-神戸市の同社敷地内に技術研究センター5号館の起工式を実施したと発表。総工費は約13億円。延床面積は約3,700平方メートルで、2015年8月に竣工予定。既存の技術研究センターやタイヤテクニカルセンターとあわせて、タイヤ技術開発の場として機能する。 (2014年9月22日付プレスリリースより)
-本社やテストコース、国内各工場のタイヤ性能試験で試験所及び校正機関に関する国際規格「ISO/IEC17025」の認定を取得したと発表。今回の認定取得項目は、神戸本社が乗用車やトラック・バス用タイヤなどの転がり抵抗測定試験。岡山タイヤテストコースが乗用車とライトトラック用タイヤのウエットグリップ測定試験。白河・名古屋・宮崎工場がモーターサイクルや乗用車用タイヤなどの寸法及び強度、リム外れ、耐久性能、高速耐久試験。 (2014年7月29日付日刊自動車新聞より)
新材料開発技術
-タイヤ性能を向上させる新材料を効率的に開発するために (1) 「調べる」 (2) 「予測する」 (3) 「作る」 (4) 「引き出す」 の4つの技術を融合させ、ナノレベルで分子の挙動を表現しながら、材料シミュレーションを行う技術「4D NANO DESIGN」を確立した。すでに「エナセーブPREMIUM」他、「WINTER MAXX」、「エナセーブSP688」などに適用。今後は次世代コンピューター「京 (けい)」を活用しこの技術を進化させ、2015年には材料をよりリアルに表現し複雑な現象を解析する「ADVANCED 4D NANO DESIGN」、2020年には材料からタイヤ性能までを予測し材料設計する技術「NEXT 4D NANO DESIGN」を確立する予定。
工法開発
プレミアムランフラットタイヤ用次世代新工法
-次世代新工法「NEO-T01」は (1) タイヤの内側の形状をした金属の成形フォーマーに、タイヤの各種部材を貼り付ける「メタルコア工法」 (2) 部材の生成、加工などを100分の1ミリメートル単位のコンピューター制御システムでコントロールする「全自動連結コントロール」 (3) 強靭な素材を補強部材とした「高剛性構造」 の3つのキー技術を使用。これにより、寸法や剛性などが不均一になるユニフォミティーの低減、軽量化、高速走行時の形状変化を抑制する。 (2014年11月29日付日刊自動車新聞より)
シミュレーション技術
-タイヤ製造プロセスにおけるシミュレーション技術「Tyre Manufacturing Simulation」を開発したと発表。この技術は、各工程における現象を可視化することで製品の品質を正確に予測する。タイヤ品質を向上しながら、タイヤ開発時の精度向上により環境負荷低減にも貢献するという。 (2014年7月30日付プレスリリースより)
製品開発
-近年の製品開発
製品名 | 内容 | 製品化時期 |
石油外天然資源タイヤ 「エナセーブ100」 | 「100%石油外天然資源タイヤ」の完成を目指して、残された3%の石油由来原材料のうち、「老化防止剤」と「加硫促進剤」について、バイオマス資源から合成する技術を開発。「カーボンブラック」については、植物由来の油分から、従来と同等の性能を有するカーボンブラックを製造。100%石油外天然資源タイヤが完成。 | 2013年11月発売 |
プレミアムランフラットタイヤ Falken 「AZENIS FK453 RUNFLAT」 | 次世代新工法「NEO-T01 (ネオ・ティーゼロワン)」による安全性と快適性、軽量化を高次元でバランスさせた次世代の高性能タイヤ | 2014年7月 欧州発売 |
プレミアムランフラットタイヤ Dunlop 「SP SPORT MAXX 050 NEO」 | 次世代新工法「NEO-T01 (ネオ・ティーゼロワン)」による安全性と快適性、軽量化を高次元でバランスさせた次世代の高性能タイヤ | 2014年11月 日本発売 |
フラッグシップ低燃費タイヤ 「エナセーブNEXT」 |
新材料開発技術「4D NANO DESIGN (フォーディーナノデザイン)」により開発した高純度天然ゴム「UPNR (Ultra Pure Natural Rubber)」「新シリカ用変性ポリマー」をはじめとする先進技術を採用し、転がり抵抗を大幅に低減するとともに、背反性能であるウェット性能を向上。低燃費タイヤのラベリング精度最高ランクの「AAA-a」を達成。 | 2014年9月発売 |
ミニバン専用低燃費タイヤ 「エナセーブRV504」 |
剛性分布を最適化した「新パターン」採用により優れた耐摩耗性能を実現。 | 2015年2月発売 |
設備投資額 |
(単位:百万円) |
2014年12月期 | 2013年12月期 | 2012年12月期 | |
全社 | 62,814 | 57,270 | 56,889 |
-タイヤ事業 | 58,638 | 54,268 | 53,940 |
タイヤ事業が占める割合 (%) | 93.4 | 94.8 | 94.8 |
-タイヤ事業の国内工場においては、設備改善および生産設備の合理化・省人化、生産改善に投資。
-タイヤ事業の海外工場においては、タイおよびブラジル工場の生産設備増強、トルコ工場の建設に投資。
-2015年度全社投資予定金額は、76,128百万円。
海外投資
<南アフリカ>
-2014年10月2日、現地子会社スミトモ・ラバー・サウス・アフリカ (SRSA) の本社移転に伴う開所式を開催し、投資計画を明らかにした。南アフリカ工場のタイヤ生産能力を2017年に現状の5割増となる日産1万4500本に高める。投資額は11億ランド (約110億円)。この工場は2013年12月にアポロ・タイヤ・サウス・アフリカから買収したもの。住友ゴムの生産方式を順次導入して生産の効率化を図るとともに、生産能力を増強、品質改善も行っていく。特に、高付加価値製品を製造できる設備を導入して高性能タイヤを生産、アフリカ各市場に投入する。アフリカ市場向けタイヤの開発にも注力していく。
設備の新設計画 (自動車事業関連) |
(2014年12月31日現在) |
会社名 事業所 (所在地) |
設備の内容 | 投資予定 総額 (百万円) |
着手年月 | 完了予定 年月 |
完成後の 増加能力 |
住友ゴム工業 名古屋工場 (愛知県豊田市) |
自動車タイヤ製造設備 | 5,585 | 2014年1月 | 2015年12月 | - |
住友ゴム工業 白河工場 (福島県白河市) |
自動車タイヤ製造設備 | 8,966 | 2014年1月 | 2015年12月 | - |
住友ゴム工業 泉大津工場 (大阪府泉大津市) |
自動車タイヤ製造設備 | 1,548 | 2014年1月 | 2015年12月 | - |
住友ゴム工業 宮崎工場 (宮崎県都城市) |
自動車タイヤ製造設備 | 6,489 | 2014年1月 | 2015年12月 | - |
P.T. Sumi Rubber Indonesia (インドネシア ジャカルタ) |
自動車タイヤ・ゴルフボール 製造設備 |
4,493 | 2014年1月 | 2015年12月 | - |
住友橡膠 (常熟) 有限公司 [Sumitomo Rubber (Changshu) Co., Ltd.] (中国 江蘇省) |
自動車タイヤ製造設備 | 3,825 | 2014年1月 | 2015年12月 | 生産能力5%増加 |
住友橡膠 (湖南) 有限公司 [Sumitomo Rubber (Hunan) Co., Ltd.] (中国 湖南省) |
自動車タイヤ製造設備 | 30,500 | 2010年9月 | 2019年12月 | 生産能力50,000本/月 |
Sumitomo Rubber (Thailand) Co., Ltd. (タイ ラヨーン県) |
自動車タイヤ製造設備 | 21,142 | 2014年1月 | 2015年12月 | 生産能力27%増加 |
産業車両タイヤ製造設備 | 12,100 | 2012年5月 | 2017年12月 | 生産能力50,000本/月 | |
Sumitomo Rubber Do Brasil Ltda. (ブラジル パラナ州) |
自動車タイヤ製造設備 | 35,200 | 2011年7月 | 2015年12月 | 生産能力15,000本/日 |
Sumitomo Rubber AKO Lastik Sanayi ve Ticaret A.S. (トルコ共和国 チャンクル県) |
自動車タイヤ製造設備 | 50,200 | 2012年10月 | 2019年12月 | 生産能力30,000本/日 2015年7月稼働予定 |
Sumitomo Rubber South Africa (Pty) Ltd. (南アフリカ共和国 クワズール・ナタール州) |
自動車タイヤ製造設備 | 11,800 | 2013年12月 | 2017年12月 | 生産能力14,500本/日 |