TRW Automotive Holdings Corporation 2012年12月期の動向

ハイライト

業績

(単位:百万ドル)
  2012年
12月期
2011年
12月期
増減率
(%)
要因
全社
売上高 16,444 16,244 1.2 -売上高の増加は、主に北米とアジア太平洋地域の自動車生産量の増加、モジュール製品の売上増、アクティブ・パッシブセーフティ関連製品の需要増によるが、欧州の自動車生産量の減少と為替差損により一部相殺された。
純利益 1,008 1,157 (12.9) -
シャシーシステム
売上高 10,324 9,960 3.7 -売上高の増加は、主に生産量の拡大とモジュール製品の売上増 (912百万ドル) によるが、為替差損 (450百万ドル) と2012年第3四半期と2011年第4四半期の資産売却による売上減 (104百万ドル) により一部相殺された。
乗員安全システム
売上高 3,287 3,580 (8.2) -売上高の減少は、主に為替差損 (201百万ドル) と価格下落 (86百万ドル) に因るが、数量増による売上増 (34百万ドル) により一部相殺された。
電子部品
売上高 1,015 842 20.5 -売上高の増加は、主に生産量の拡大 (240百万ドル) に因るが、為替差損 (19百万ドル) により一部相殺された。
自動車部品
売上高 1,818 1,862 (2.4) -売上高の減少は、主に為替差損 (101百万ドル) に因るが、数量増による売上増 (59百万ドル) により一部相殺された。

受注
-同社は電動パーキングブレーキ「EPBi」および横滑り防止装置 (ESC) の統合システムを初受注したと発表。2つのシステムを一体化することにより、システムネットワークにおいて個々の電子制御ユニットが不要となる。このシステムはまず、2014年に欧州とアジアの大手自動車メーカー向けに発売され、その後北米でも発売される予定。欧州および中国ではC、D、Eセグメント車およびMPV向けとなる。なお、新型プラットフォームは、TRWの横滑り防止装置「EBC460」を採用する予定。 (2012年10月29付プレスリリースより)

-同社はFord 「Fiesta」および 「Focus」に、Body Control Systems部門の統合型電子制御パネル (IECP) を納入すると発表。同社は、直感的インターフェースやカスタマイズ可能なトリムオプションなどにより、IECP技術の強化を進めている。これらの技術には、投影グラフィックス、再構成可能アイコン、静電容量式タッチパネルとディスプレイスクリーン統合、文字認識機能付きタッチパッド、静電容量式タッチセンシング、カラーオンデマンド、薄膜スイッチ、傷・指紋防止技術、触覚統合などが含まれている。 (2012年5月17日付プレスリリースより)

-同社は、北米の自動車メーカー2社より次世代の電動パーキングブレーキ (EPB) を受注したと発表。このシステムには同社の第5世代電子制御ユニット (ECU) が統合され、2013年モデルの車両に搭載される予定。従来のフットペダルやハンドレバーの代わりに、電気ケーブルや制御スイッチを使用する。また、ドライバーが誤ってギアを入れたまま車を離れようとした場合でも、ドアを開けたりシートベルトを外したりすると、それを感知して自動的にパーキングブレーキがかかる機能が備わっている。 (2012年4月17日付プレスリリースより)

-同社は、欧州の大手自動車メーカーよりシートベルトシステム「アクティブバックルリフター (ABL)」を初受注したと発表。2013年から生産を開始する。今回供給するシステムはリアシート向けとなるが、フロントシートにも対応が可能。バックルが最大70ミリ上昇するため、届きにくい場所でもシートベルトの装着が簡単になるうえ、装着されるとバックルは元の場所に戻る。また、急ブレーキ・急カーブなどの際は、車載のアクティブセーフティセンサーのデータにより、バックルが引き込まれて骨盤・胸部周辺のベルトの緩みを軽減することが可能。さらに、衝突の危険が迫るとシートベルトは最大80ミリ締まり、エアバッグ展開に備えて乗員の安全な姿勢を維持する。 (2012年3月7日付プレスリリースより)

海外事業
<France>
-同社は、24ギガヘルツ前方監視レーダー「AC100」の生産を仏ブレスト近郊のオートクルーズ拠点で開始したと発表した。トラックや量販モデル向けとして、性能を維持しながら価格を抑えた。AC100は、車間距離警告、衝突警告、追従停車機能付きクルーズコントロール、自動緊急ブレーキなどの安全運転を支援する様々な機能を提供する。従来製品の77ギガヘルツレーダー「AC20」とほぼ同等の機能を持たせながら、動作周波数を低くすることと機能を最適化したことで低価格化を実現した。車両の周囲約150メートルの範囲内で車両を検知することが可能で、高速道路を含む道路状況に対応するとともに、霧や豪雨などの悪天候下でも効果を発揮する。欧州では2013年11月に、トラックへの自動緊急ブレーキ (AEB) の搭載を義務化する。同社では、トラック向けにAC100の供給を開始し、欧州のCセグメント乗用車へと搭載車種を拡大させる。 (2012年10月10日付日刊自動車新聞より)


カルテルに関して米国司法省と和解

-同社は、ドイツ子会社のTRW Deutschland Holding GmbHと米国司法省 (DOJ) の間で、独占禁止法違反に関する和解が成立したと発表。同子会社は、乗員安全システムの販売において取引を制限するカルテル1件について有罪を認めている。今回の合意により、TRW Deutschland Holdingは罰金5.1百万米ドルを支払う予定。 (2012年7月30日付プレスリリースより)

2013年12月期の見通し

-同社は2013年12月期の売上高を、第1四半期の売上高約4,100百万ドルを含め、16,400百万ドルから16,700百万ドルと予想。この売上高は、生産レベルが北米で15.8百万ユニット、欧州で18.3百万ユニットに加えて中国とその他市場の継続的な成長を期待したもの。また、期待為替レートを考慮して予測。

開発動向

研究開発費

(単位:百万ドル)
  2012年12月期 2011年12月期 2010年12月期
全社 834 827 669

研究開発拠点

(2012年12月31日現在)
  北米 欧州 アジア
太平洋
その他 合計
シャシーシステム 3 4 4 1 12
乗員安全システム 2 3 - - 5
電子部品 2 - - - 2

技術提携

-ショーワは30日、米TRWオートモーティブと電動パワーステアリングの技術に関し、戦略的な業務提携関係を結ぶ方向で検討を始めると発表した。両社が持つ技術を生かし、国内の顧客ニーズに対応した製品やサービスを提供する。具体的な提携内容については今後決定する。  (2012年4月2日付日刊自動車新聞より)

研究開発活動

-ビデオカメラセンサー「S-Cam」を公開するとともに、第3世代のビデオカメラ開発に向けた投資計画を発表した。同社が現在生産している「S-Cam」は、ヘッドライト制御、車線検知、交通標識認識、自動緊急ブレーキ用の車両検出・分類などの機能を備えているが、開発中の次世代カメラでは、歩行者検出機能がさらに強化されるという。この製品の開発についてはMobileyeとの連携を継続しており、欧州・アジア市場に現在供給されている前方監視カメラ「S-Cam」は、2013年中に米国市場に投入される予定。 (2012年9月17日付プレスリリースより)

-新型の電子ホーンシステム (EHS) を開発中。このシステムは、ステアリングホイールのエアバッグカバー上に設置された導電部に触れることで作動するもの。エアバッグカバーには特殊コーティングを用いているため、表面が3Dの導電体となっている。この面が指や手の位置を検知して、ECUへ信号を送りホーンを作動するが、この際押す力は不要。また、このカバーにより誤作動も防ぐことが可能になる。ECUに接続するセンサーのエリアを小さくすることにより、ドライバーの手が誤ってカバーの側面に近づいてしまったのか、作動のために上部から近づいたのかを判断することができる。なお、2014年にこのホーンシステムの生産を開始する予定。 (2012年9月12日付プレスリリースより)

-新興国や低価格車に対応する次世代型の拡張型エアバッグ制御ユニット (ACU) の開発に着手したと発表した。次世代ACUは、共通のプラットホームにより、標準型と高性能型の2種類の仕様が設計できるため、低コストで新興国と先進国向けへのACU供給が可能となる。標準型ACUは、サテライトセンサーを装備せずに1~4個の点火装置に対応し、前面衝突保護として機能する。高機能安全制御装置としての拡張機能も持たせている。高性能型ACUは、四つのサテライトセンサーを有し、最大12個までの点火装置に対応。前面衝突や側面衝突の保護機能を提供する。同時に、センサーの追加により横滑り防止装置 (ESC) を支援する機能もオプション設定している。 (2012年3月6日付日刊自動車新聞より)

-同社のBody Control Systems部門がマルチグラフィックのリアプロジェクションディスプレイ技術を開発中と発表した。同じディスプレイ上に様々なシンボルを表示させることができるもの。この技術はまず、キーパッドエントリーシステムに採用されており、セキュリティコードを用いることでキーがなくても乗車が可能になる。また、このキーパッドにはトランク、ルームランプ、パワーウィンドウなどその他の機能を制御するための選択肢も表示される。このような様々な機能の記号は、ユーザーがコントロールパネルの表面に触れると自動表示され、しばらく動きがないと非表示となる。同社はこの新型ディスプレイを2012年より生産開始する予定。 (2012年1月5日付プレスリリースより)

製品開発

エアバッグ・シートベルト
-ドイツで開催された展示会「エアバッグ2012」で、車両衝突時に乗員を保護するアクティブ・バックル・リフター (ABL) シートベルトシステム、後部座席用ルーフエアバッグ、ダイナミック・ロッキング・タング (DLT) を紹介した。欧州の安全性能評価基準「ユーロNCAP (エヌキャップ)」で2015年に導入される後部座席の新基準を満たすための乗員安全性を高める技術を中心に展示。新技術の提案により、導入車種の拡大につなげる。 (2012年12月13日付日刊自動車新聞より)

-同展示会において新型インフレーター「DI10.1G45」を発表した。同社の「DI10」製品群を改良したもので、これまでのインフレーターのなかでは最軽量・最小の製品となる。前世代の製品に比べて約25%の軽量化を実現しており、特に同社の「マイクロ」エアバッグモジュール向けに開発された。この製品はドイツのAschau拠点で2014年はじめから生産が開始され、欧州における大型受注に貢献する見込み。 (2012年12月10日付プレスリリースより)

-新型のアダプティブサイドエアバッグを開発した。このエアバッグは「フレックスアダプティブベント」を備えており、異なる衝突の度合いに対応して乗員の保護を強化することが可能。このシステムでは車両の側面が大きく押し込まれる重度の衝撃の間、エアバッグのストラップが通気口を閉める。これによりエアバッグの圧力を長時間維持し、強い衝撃においてより多くのエネルギーを吸収することができる。さらに、ドアトリムと乗員の間の空間がつぶれてしまう可能性を低減することにも貢献する。TRWは、2013年よりこの次世代アダプティブサイドエアバッグの生産を開始する見込み。 (2012年12月3日付プレスリリースより)

-アクティブシートベルトプレゼンターを新開発した。シートベルトを締める際のベルトを掴む動作をサポートするもの。高齢者や体の不自由な乗員の助けになるほか、乗車時にシートベルトの着用を喚起する役割も持つ。このシートベルトプレゼンターは、Bピラー内のハイトアジャスターに直接装着されている。乗員がシートに座ると、プレゼンター (Bピラー内に設置された小型アーム) が掴みやすい場所までベルトを最大30cm前方に押し出す構造。乗員がベルトを掴むと同時に、アームは元の場所に戻る。TRWは、この4ドアおよび5ドア車向けのシートベルトプレゼンターを2016年に生産開始する予定。 (2012年7月5日付プレスリリースより)

-再生プラスチック材料を使用した運転席エアバッグモジュールを開発したと発表した。エアバッグカバーやリテーナプレートなどの構成部品にバイオ素材を採用した。バイオ材料は、車内が高温となった際に内装材から発生する低レベルのガスの量を低減することで、指定化学物質発生量の削減にもつながる。また、プラスチックは再生可能な原材料に由来しているため、化石燃料を節約する。今年中旬に生産を開始、今後数年間をかけて運転席エアバッグモジュールを石油系素材からバイオ素材に置き換える。 (2012年3月12日付日刊自動車新聞より)

歩行者検知・衝撃緩和システム
-歩行者の接触を正確に検知する圧力センサーを装備した次世代歩行者保護システム(PPS) を開発したと発表した。2016年までに供給を始める。新開発のPPSは、チューブ状の圧力センサーをフロントバンパーの幅全体に搭載した。加速度センサーとともに圧力センサーで衝突を検知することで、歩行者がどの位置に接触したのかを正確に認識する。 (2012年8月2日付日刊自動車新聞より)

-予防安全評価基準強化に伴い、新型のレーダーモジュールと次世代カメラを開発したと発表した。2014年に予定されるユーロNCAP (欧州安全性能評価基準) による、予防安全基準と歩行者安全基準の厳格化に対応する。ユーロNCAPでは、安全性能評価基準で最高ランクの5つ星を取得する要素として自動緊急ブレーキ (AEB) の搭載を掲げる。また、16年以降には歩行者保護性能としてAEBシステムの搭載が必須要件となる可能性もある。TRWでは次世代カメラにより、高解像度の画像処理が可能となると同時にセンサーが検知できる範囲も広がり、歩行者検出機能が向上するという。また、新型レーダーモジュールプラットホーム「AC1000」は多くの安全機能の拡張が可能で、ユーロNCAPの条件を満たしている。 (2012年7月13日付日刊自動車新聞より)

ブレーキコントロール
-TRWは、統合ブレーキコントロール (IBC) システムを開発した。バキュームシステムに依存しないこのシステムは、機能性の向上と同時にブレーキシステムの簡素化を実現する。IBCは、横滑り防止装置 (ESC) をはじめ、バキュームブースター、関連ケーブル、センサー、スイッチ、電子コントローラーのほか、低真空および非真空構造において必要となるバキュームポンプなどに代わる機能を1つのユニットに統合したもの。IBCシステムの中核となるアクチュエーターは、超高速作動ブラシレスモーターによって駆動する。また、このアクチュエーターを監視するロータリーエンコーダーは、回転数、回転速度、位置に関するデータをコントロールECUに送信する。さらに、従来のESCシステムと比べると、パッケージングと重量の面で大幅な軽量化を実現。従来の部品一式が7kgであるのに対し、IBCは4kg以下となる。このIBCは、2016年モデルの生産に合わせて供給される予定。 (2012年9月17日付プレスリリースより)

-横滑り防止装置 (ESC) 「EBC460」の新製品を発表した。この製品群は、製品設計の標準化が実現されており、同社の欧州・北米・南米・アジアの拠点で生産される。標準システム・上位システム・最上位システムが提供され、すべてのグレードでHV・EVをサポートし、アンチロックブレーキシステム (ABS) やトラクションコントロールシステム (TCS) 、ESC機能を持つ。また、前世代のシステムに比べて多くのアップグレードが行われており、長寿命モーターポンプの活用、2つの統合圧力センサーの追加、NVHの軽減、高周波数モータースピード制御によるモーターの長寿命化などを実現。さらに、EHCU (電動油圧コントロールユニット) には、ヨーセンサーと加速度センサーが統合されている。 (2012年4月30日付プレスリリースより)

タッチパッドセンサー
-乗員が車内で様々な機能を操作できる静電容量式タッチパッドセンサーを新開発した。手書き文字認識ソフトウェアを搭載したタッチパッドは、スタンドアロン型としても多機能コントロールパネルとしても使用が可能。ユーザーがタッチセンサーエリアに書いた文字をソフトウェアが認識し、音声で確認する。手書きによる数字・文字・記号を認識するとともに、メッセージの送信や携帯電話・ナビゲーションシステム・ラジオなど各種機器の操作を1ヶ所で行うことが可能になる。多機能コントローラーとして使用する場合、センターコンソールやドアのアームレストに搭載するのが最適だとされるが、デザインや設置場所はユーザーのニーズに合わせてカスタマイズできる。なお、このタッチパッドセンサーは、2012年から生産開始となる予定。 (2012年4月2日付プレスリリースより)

トランスミッションポンプ
-モーターポンプユニット (MPU) の技術を、デュアルクラッチトランスミッションをはじめとする燃費技術に関連したトランスミッション分野に適用すると発表した。欧州・北米・アジアでは既に受注を獲得している。このトランスミッションポンプは、同社の電動油圧パワーステアリング (EPHS) 用のモーターポンプユニット構造を採用している。同社は1998年の発売開始から、累計20百万超のEPHSシステムを生産している。一方のトランスミッションポンプユニットの累計生産数は3百万超。このポンプ技術は、オートマチックシステムやマニュアルシステムだけでなく四輪駆動システムのサポートなど、ディファレンシャルを切り替えることで、他のトランスミッション構造へも適用できる可能性がある。なお、同社は現在、イタリアのOstellato工場でポンプの生産を行い、欧州・米国市場に供給している。今後、アジア市場においては中国で現地生産を行う計画。 (2012年5月10日付プレスリリースより)

設備投資

設備投資額

(単位:百万ドル)
  2012年12月期 2011年12月期 2010年12月期
シャシーシステム 300 302 164
乗員安全システム 104 73 49
電子部品 125 127 42
自動車部品 86 62 36
Corporate 8 7 3
合計 623 571 294

-同社は、2013年12月期の設備投資額を、2013年売上の約4.5%と見込んでいる。

海外投資

<ブラジル>
-同社は、南米市場の事業拡大に向けてブラジル・リメイラ市の工場で電動パワーステアリング (EPS) の生産を開始したと発表した。同社では、自動車メーカーのEPS採用拡大に伴う現地生産体制を構築するため、ブラジルで2010年からEPSのメカニカルギアおよびコラムパワーヘッドアセンブリーの生産設備の導入を行ってきた。生産能力は年間40万ユニットを見込む。今後は、南米向けコラム式EPSを完全現地生産するため、電子制御ユニットの生産に向けて追加投資を行う予定。低コストで効率的な生産体制を実現することで、自動車メーカーの現地調達要望に対応する。 (2012年2月20日付日刊自動車新聞より)