GKN Plc 2017年12月期の動向
業績
(単位:百万ポンド)
2017年12月期 | 2016年12月期 | 増減率 (%) |
要因 | |
全社 | ||||
売上高 | 9,671 | 8,882 | 8.9 | 1) |
営業利益 | 699 | 335 | 108.7 | 2) |
部門別売上高 | ||||
-ドライブライン部門 | 5,308 | 4,614 | 15.0 | 3) |
-粉末冶金部門 | 1,174 | 1,032 | 13.8 | 4) |
要因
1) 全社売上高
-2017年12月期の売上は前年比8.9%増の9,671百万ポンド。売上増の主な要因として為替の好影響が挙げられるが、主にStromagの売却に関連する企業買収及び投資の引き揚げによる減少で相殺された。
2)営業利益
-2017年12月期として営業利益は699百万ポンドで前年比108.7%増であった。
3) ドライブライン部門
-2017年12月期のドライブライン部門の売上は前年比15.0%増の5,308百万ポンド。本業の売上は9%増で、世界のライトビークル生産高より高い伸びを示した。為替の好影響は237百万ポンド。
・製品別の売上比率は CVJシステム 65%、AWDおよびeDriveシステム 28%、オフハイウェイパワートレイン 7%
・地域別売上比率は 欧州 40%、北米 32%、中国 12%、日本 6%、南米 3%、インド 2% その他 5%
・納入先別売上比率は FCA 13%、VW Group 11%、Ford 10%、GM Group 8%、Renault Nissan 8%、Toyota Group 6%、Tata Group 4%、Mercedes 4%、Geely Group 4%、その他 32%
4) 粉末冶金部門
-2017年12月期の粉末冶金部門の売上は前年比13.8%増の1,174百万ポンド。本業での売上は55百万ポンド増加、これにはスクラップ鉄等の価格上昇の顧客への転嫁33百万ポンドを含む。為替の好影響は60百万ポンド。中国の粉末冶金メーカーとトルコの金属部品メーカーの過半数株式取得が売上増に寄与。
・納入先別売上比率は Ford 9%、GM Group 5%、Shaeffler 4%、FCA 4%、Hilite 3%、ZF Group 3%、Linamar 3%、BorgWarner 3%、Bosch 2%、その他 64%
Dana/Melrose IndustriesによるGKNドライブライン買収交渉の経緯
-2018年3月29日、英投資会社Melrose Industriesによる買収提案について、議決権ベースで52.43%のGKNの株主がMelroseの提案を支持したと発表した。これを受け、GKNの取締役会は、同社の成功を確かなものにするため、Melroseと協力する意向を示した。一方、GKNドライブトレイン事業部との合併話を進めていたDanaは、GKNの過半数の株主による決定を受け入れると表明。合併話が撤回される見通しとなったことについて、DanaのCEO(最高経営責任者)のJames Kamsickas氏は、「落胆している」とコメント。Danaは「GKNドライブライン事業部の最良のオーナー、経営者になれると今でも信じている」と語った。 (2018年3月29日付プレスリリースより)
-Danaは、GKNドライブライン事業部との合併に関する投資家の関心の高さを受けて、合併条件を見直し、GKNに支払う現金を140百万ドル増やし、自社株買いの上限を2倍の200百万ドルに引き上げると発表した。これにより、GKNに支払われる現金は総額約17億7,000万ドルとなる。(2018年3月26日付プレスリリースより)
-Danaは、GKNドライブライン事業部と合併して設立する新会社について、米ニューヨーク証券取引所への上場に加え、英ロンドン証券取引所への上場も目指すと発表した。また、Danaは、GKNの株主に現在の四半期の配当0.1ドルの支払いを継続する意向も確認した。ドライブシステムと電気駆動システムのグローバルリーダーを目指して設立される新会社は、グローバルな顧客の長期的な需要にも対応可能で、そのシナジー効果は235百万ドルとなる見込み。(2018年3月19日付プレスリリースより)
-同社は、英投資会社Melrose Industriesが示した最終的な買収案を拒否すると発表した。Melroseは、GKN1株当たり81ペンスの現金とMelroseの新株1.69株に買収額を引き上げたが、GKNは過小評価と主張。世界トップクラスの航空宇宙事業や、ドライブトレイン事業部のDanaへの売却などが正しく反映されてないと批判した。(2018年3月12日付プレスリリースより)
-Danaは、GKNのドライブライン事業部と合併し、新会社Danaを設立することでGKNと最終合意に達したと発表した。新会社は、ドライブラインシステムでグローバルリーダーを目指す。取引額は、GKNへのキャッシュでの支払い16億ドル、年金負債の引き継ぎが約10億ドル、GKNの株主に発行される新会社の株式133百万株(約35億ドルに相当)の計61億ドル。英国を拠点とする新会社の持ち株比率は、Danaが52.75%、GKNが47.25%。3年以内に年間235百万ドルのコストシナジーを生み出す見通しだという。 (2018年3月9日付プレスリリースより)
-同社は、GKN Drivelineの分割を巡り、Danaと協議中であると発表した。対等合併を中心に協議しているという。GKNは、2018年1月12日に航空宇宙事業と自動車事業の分割を表明し、同2月27日に2019年半ばまでに分割を完了したい考えを示していた。一方、Danaも声明を発表し、GKNと協議中であることを認めた。交渉が決裂する可能性もあるとした上で、正式な合意に至るなど、事態がはっきりするまでコメントは差し控えるとした。 (2018年3月1日付プレスリリースより)
受注
-GKN Drivelineは、同社の一体型同軸eAxleが英ロンドンEVカンパニー(LEVC)のTXモデルに採用されたと発表した。GKNの一体型同軸eAxleは、Volvoの「T8 Twin Engine」プラグインハイブリッドに初搭載され、2016年には「Automotive News PACE Innovation Award」を受賞している。新型タクシーは、英Coventry近くの工場で既に生産中で、2018年1月1日に施行されたロンドン交通局のより厳しい排出ガス規制にも適合しているという。(2018年2月5日付プレスリリースより)
-GKN Drivelineは、2017年末までのeDriveシステム受注額が20億ポンドを記録したと発表した。世界の主要自動車メーカーからの受注が牽引した。2022年には、eDrive製品の年間売上高が500百万ポンドに達する見込み。同社が受注した20億ポンドには、中国OEMメーカーが2018年に発売する複数のモデル向けマルチモードeトランスミッションシステムや、欧州の大手自動車メーカーが2019年以降に投入する新型車向けセミインテグレーテッド電動ドライブラインユニット、欧州のOEMメーカーが2019年から中国市場に投入する予定のグローバルモデル向け一体型電動ドライブラインシステムなどが含まれるという。(2018年1月22日付プレスリリースより)
-GKN Drivelineは、同社の新型軽量VL3等速ジョイントシステム(CVJ)が、BMWの新型「5 Series」に採用されたと発表した。VL3ジョイントはCO2排出量を削減し、ドライブラインをより効率的にする。同社はこの軽量高性能サイドシャフトシステムを、18カ月間で納品した。ダイヤフラムタイプのCVJは、従来のキャップとブーツを使用したものに代わり、浅い1ピースのカバーを使用している。(2017年6月23日付プレスリリースより)
事業提携
-同社は、GE AdditiveとConcept Laser、Arcam ABと、付加製造分野での提携に関する了解覚書(MOU)を締結したと発表した。合意によると、GKNは、GE Additiveの開発・生産パートナーとなるほか、GE AdditiveやGE関連会社に粉末を供給。GE側はGKNに製造機械を提供する見通し。(2017年10月17日付プレスリリースより)
事業再編
-同社の付加製造事業を再編成し、新ブランド「GKN Additive」に統合すると発表した。GKN Additiveは4カ国で操業を行い、高度な3Dプリンティング技術を航空宇宙および自動車エンジニアリングに活用する。GKN Additiveの付加製造専門技術によって、GKNは航空宇宙・自動車産業の既存顧客のみでなく、新規市場の事業開拓も図る。(2017年10月16日付プレスリリースより)
海外事業
-GKNドライブラインジャパン(栃木県栃木市) は2019年末~20年に駆動システム「GKNマルチモードeトランスミッション」の生産台数を現状の年間3万台から6万台程度に倍増する。プラグインハイブリッド車 (PHV) に対応した製品で、車の電動化が急速に進む中国系の地場の自動車メーカーから受注が増えている。加えて、同製品の主要納入先である三菱自動車が日産自動車の傘下に入ったことで、今後、日産からの受注獲得も視野に入れて増産体制を構築する。(2017年9月8日付日刊自動車新聞より)
研究開発費
(単位:百万ポンド)
2017年12月期 | 2016年12月期 | 2015年12月期 | |
全体 | 201 | 186 | 157 |
研究開発施設
-ドライブライン部門は4つのグローバル技術センターと10の中核研究拠点を保有。
-2016年に上海に最先端の研究開発施設を完成させた。
-粉末冶金部門はドイツRadevormwaldに中央研究開発センター、米国ミシガン州Auburn Hillsとニュージャージー州Cinnaminsonに地域開発拠点を保有。
研究開発組織
-2020年までに、電気駆動システム(eドライブ)の技術者を現状の5割増となる100人規模に増員すると発表。このうち3割程度を日本に常駐させ、日本を電動技術開発の主力拠点の一つと位置づける。プラグインハイブリッド車(PHV)など電動車の普及が見込まれることから、世界的に駆動システムの電動化に対するニーズが高まっている。駆動系システムの受注は、主力の等速ジョイント(CVJ)の拡販にもつながるため、需要拡大が見込めるeドライブの開発に注力していく。同社では、買収した旧栃木富士産業が世界で初めて電動式の四輪駆動システム「e-4WD」を開発。日産やマツダに供給した。eトランスミッションも日本で開発するなど、eドライブの開発では日本が重要な役割を担っている。(2016年3月22日付日刊自動車新聞より)
製品開発
eTwinsterXトルクベクタリング電動システム
-GKN Drivelineは、技術開発用のプラグインハイブリッドSUVデモカー「GKN Technology Demonstrator 2018 (GTD18)」の試験を開始したと発表した。Mercedesの「AMG GLA 45」をベースとした新デモカーは、電動トルクベクタリングやプラグインハイブリッド、再設計された制御システムが特徴。フロントアクスルに電動トルクベクタリングAWD「Twinster」を、リアアクスルに「eTwinsterX」を搭載するなど、新デモカーには電動ドライブトレインやAWD、システムインテグレーション分野をリードする同社の最新技術が結集されているという。(2018年2月28日付プレスリリースより)
-新型電動アクスルのコンセプトモデルをIAA Frankfurt 2017に出展すると発表した。新型「eTwinsterX」はeアクスルでは世界初のオフロード性能を持ち、前輪駆動、後輪駆動、全輪駆動のあらゆる乗用車に適応可能となっている。同軸フォーマットは等価パワー出力システムより小さく、効率的なトルクベクタリング技術が車両に安定性、敏捷性、安全性をもたらす。(2017年9月4日付プレスリリースより)
新開発ドライブライン
-GKN Drivelineは、モータースポーツで培った技術を活かし、2018年型Jeep「Grand Cherokee Trackhawk」向けに、強固で耐久性のある、高性能なドライブラインを開発したと発表した。「Grand Cherokee」のリアハーフシャフトとプロペラシャフトを改良し、0-60mphを3.5秒で加速するトルクを実現。リアハーフシャフトには、航空機にも使用される高強度低合金鋼の300M鋼を採用し、現行の「Grand Cherokee」用ハーフシャフトと比べ、強度を42%向上した。リアプロペラシャフトも、同プロペラシャフトと比べ、20%強度が増したという。(2017年10月24日付プレスリリースより)
設備投資額
(単位:百万ポンド)
2017年12月期 | 2016年12月期 | 2015年12月期 | |
合計 | 519 | 494 | 411 |
国内の投資
-最先端の自動車技術を開発するイノベーションセンターを英オックスフォードシャー州Abingdonに新設したと発表した。電化ドライブラインや軽量構造、複合材料、付加製造における同社の専門技術を活用し、次世代自動車向けの広範な技術の開発を目指す。EVの軽量化や静音化、高効率化にもGKNの専門知識が役立つとしている。(2017年10月3日付プレスリリースより)
英国以外の投資
<日本>
-GKN Drivelineは、愛知県常滑市に生産施設を建設すると発表した。今後4年間で収益の大幅増が予想される同社のAWDシステムとeDriveシステムへのニーズに対応する。新工場は2017年9月に着工し、2018年中頃に完成する予定。常滑工場は最先端の製造技術を備え、電動ディスコネクト機能やトルクベクタリングを持つ次世代のAWDシステムやリアドライブモジュール(RDMs)を生産する。さらに同社のエンジニアリング技術を用いて、アジアで増加する車両電動化の需要にも対応する準備ができているという。(2017年9月7日付プレスリリースより)
<イタリア>
-同社は、イタリアBruneckのeドライブ生産工場を大幅に拡張すると発表した。延床面積11,000平方メートルの施設を60%以上拡大、主にeドライブ製品を生産する18,000平方メートルの施設に拡張する。現在等速ジョイントの生産に携わる70~80名の従業員は、今後eドライブの生産へ移行する。計画は2019年までに完了予定で、Bruneck工場はeドライブ生産に注力して10件のプログラムにeドライブを供給する見込み。Bruneck工場では、VolvoのPHVに供給しているPACE Award受賞の動軸eアクスル、BMW「i8」に搭載の世界初の2速eアクスル、電動トルクマネジメントシステムなどのAWD製品を生産している。同工場は1960年代設立、従業員数は約800名。(2017年6月1日付プレスリリースより)