The Goodyear Tire & Rubber Company 2015年12月期の動向

業績

(単位:百万ドル)
2015年
12月期
2014年
12月期
増減率
(%)
要因
全社
売上高 16,443 18,138 (9.3) 1)
営業利益 2,022 1,712 18.1 2)


要因
1) 売上高
-2015年12月期の売上高は前年比9.3%減の16,443百万ドル。主な減収要因は、為替の影響が1,563百万ドル、タイヤ関連事業 (化学品など) の売上減少が283百万ドル、価格・製品ミックスの悪化が83百万ドル。減少分の一部は、アジア太平洋、欧州/中東/アフリカ地域等で販売を伸ばしたことによる売上増308百万ドルに相殺された。

2) 営業利益
-2015年12月期の営業利益は前年比18.1%増の2,022百万ドル。主な増益要因は原材料価格の下落によるもの (594百万ドル)。増益分の一部は、加工費の増加 (149百万ドル)、為替差損 (145百万ドル)、販売管理費の増加 (70百万ドル) 等の減益要因により相殺された。

住友ゴム工業との提携解消

-同社は2015年6月4日付で住友ゴム工業とのアライアンス契約及び合弁事業の解消について合意したと発表した。合意に基づき 「ダンロップ (Dunlop)」 ブランドの使用権は、住友ゴムが北米の日系自動車メーカーの新車向けタイヤ、ロシア、中近東アフリカなどの33カ国で獲得。北米の市販用と欧州では同社が使用する。欧州タイヤ製造拠点Goodyear Dunlop Tires Europe B.V.および日本国内の市販用グッドイヤー・ブランド・タイヤ販売合弁会社 (日本グッドイヤー) は同社が買い取る。一方、住友ゴムは北米タイヤ製造拠点Goodyear Dunlop Tires North America, Ltd.およびテストコース、日本国内の新車向けタイヤ販売会社 (ダンロップグッドイヤータイヤ) を買い取る。共同購買合弁会社および共同技術開発合弁会社は解散する。住友ゴムとのグローバルアライアンス契約解消手続きは2015年10月に完了した。

事業再編

-2015年12月、北米事業およびラテンアメリカ事業を2016年1月1日付で米州事業として1つに統合すると発表した。製品開発や市場予測、製品供給などのプロセスを統合することで、顧客や消費者に向けてより効率的なサービス体制を構築する。メキシコのSan Luis Potosiに2017年に開設予定の新工場を含め、今回統合される地域にある全工場で、メキシコ、ラテンアメリカ、北米の全ての顧客向けに生産を行う計画。(2015年12月1日付プレスリリースより)

事業提携

-2015年6月、住友ゴム工業と日本国内における 「グッドイヤー」 ブランド補修用タイヤの開発および生産に関する新たな長期委託契約を結んだ。両社はグローバル事業に関する提携解消に合意したものの、国内の補修用タイヤ事業では住友ゴムの開発力や供給体制を活用し、市場ニーズに適したタイヤを供給できる体制を構築する。グッドイヤーは補修用タイヤの安定供給を通じて、国内におけるブランドの存在感を高めていく。(2015年6月9日付日刊自動車新聞より)

事業動向

-2015年7月、同社はVolkswagen of Americaに協力し、「非ハイブリッド車で米国48州を最も低燃費で走行する」 というギネス認定の燃費記録において、81.17mpgという新記録の達成に貢献したと発表した。今回、新記録を達成したVolkswagen 「Golf TDI」 には、Goodyearの 「Assurance Fuel Max」 タイヤが装着された。(2015年7月8日付プレスリリースより)

-2015年6月、中国の益海糧油工業有限公司 [Yihai Food and Oil Industry] より、米のもみ殻灰から作ったシリカを調達することで合意したと発表した。Goodyearは、中国市場向けに遼寧省大連の普蘭店 (Pulandian) 工場で生産する乗用車用タイヤに、2015年中にシリカを使用する計画。同社は過去2年間、米国オハイオ州Akronのイノベーションセンターにおいて、米のもみ殻灰で作ったシリカの試験を行っており、タイヤ性能への影響が従来の原料と同レベルであるという結果を得た。同社は、益海糧油工業のほかにも別のサプライヤーとの交渉を行っている。(2015年6月9日付プレスリリースより)

-同社の製品は、2015年に米国で販売されているSUV及び小型トラックのトップ15モデルのうち75%に装着されている。

主な受注

カーメーカー
/ブランド
モデル タイヤ タイヤサイズ
FCA Jeep 「Renegade」 Vector4Seasons (オールシーズンタイヤ) 215/60R17 96V
トヨタ Tacoma" Off-Road Wrangler All-Terrain Adventure with Kevlar (オフロードタイヤ) P265/70R16
Alphard EfficientGrip (ウェット路面タイヤ) 215/65R16 98H
Vellfire EfficientGrip (ウェット路面タイヤ) 215/65R16 98H
GM Chevrolet Camaro LT Goodyear Eagle Sport All-Season (オールシーズンタイヤ) 245/50R18
Chevrolet Camaro LT Goodyear Eagle F1 Asymmetric All-Season RunOnFlat (ランフラットタイヤ) 245/40R20
Chevrolet Camaro SS Goodyear Eagle F1 Asymmetric 3 RunOnFlat (ランフラットタイヤ) 245/40ZR20 (前輪)
275/35ZR20 (後輪)

2016年12月期の見通し

-2016年12月期のタイヤ販売は、2015年12月期実績の164.8百万本に比べて、3%増加すると見込んでいる。(ベネズエラ子会社生産分を除く)

研究開発費

(単位:百万ドル)
2015年12月期 2014年12月期 2013年12月期
全社 382 399 390

研究開発拠点

-イノベーションセンターを2カ所 (米国Ohio州Akron、ルクセンブルグColmar-Berg)、研究開発センターを3カ所 (米国Ohio州Akron、ドイツHanau、中国大連普蘭店区)、タイヤ性能試験場を7カ所保有している。

-2015年3月、中国に同社初の開発センターを開設したと発表した。開発センターは、遼寧省大連の普蘭店 (Pulandian) 市に位置する同社のタイヤ工場内に建設された。新センターの開設により、同社はアジア太平洋地域での事業を拡大し、主に中国に拠点を置く自動車メーカーに向けたタイヤ開発のスピードと効率アップを図る。なお、中核技術の開発は、引き続き米国のオハイオ州AkronおよびルクセンブルクのColmar-Bergにあるイノベーションセンターで行い、中国の新センターでは新車装着用に製品のカスタマイズやプロジェクトのサポートを行う予定。(2015年3月26日付プレスリリースより)

製品開発

パフォーマンスシリカ 「Agilon」 を採用した低燃費タイヤ
-2015年5月、燃費向上に向けて同社製タイヤにPPG Industriesのパフォーマンスシリカ 「Agilon」 を採用したと発表した。まず、GoodyearのSUV用タイヤ 「EfficientGrip」 に使用し、2015年5月にラテンアメリカ市場で販売を開始する。同社は、2016年中にその他の地域にもシリカを使ったタイヤを導入する計画。(2015年5月5日付プレスリリースより)

2015年ジュネーブモーターショーに出展したコンセプトタイヤ
-2015年3月、2015年ジュネーブモーターショーで2種類のコンセプトタイヤを発表する。「BHO3」 は、タイヤの転がりで発生した熱を電気エネルギーへ変換し、電気自動車 (EV) のバッテリーを充電するというコンセプト。もう一方の 「Triple Tube」 は、3本のチューブを用いてタイヤの空気圧を道路状況に応じて調節するもので、性能と用途の広さを高いレベルで実現させるという。(2015年3月3日付プレスリリースより)

静寂性を向上させたEV用タイヤ
-EU後援のCityHushプロジェクト (都市部の騒音レベルを引き下げる取り組み) の一環として、電気自動車 (EV) 向け新コンセプトタイヤを開発。路面特性、タイヤのサイズ、材料、デザイン等さまざまな要素を踏まえ設計した。

インターレースストリップ技術
-ベルト技術により、タイヤのクラウン部分 (路面接地部) を強化する技術を開発。タイヤ荷重能力を10%向上させた。

無線自動識別装置 (RFID)
-トラックタイヤにRFID (無線自動識別装置) マイクロチップを組み込み、インターネットを使用した同社のタイヤ管理プログラム 「FleetOnlineSolutions」 と連携させる。スキャナーによるタイヤ識別が可能となり、フリート顧客の管理効率を大幅に上げることができるという。

特許

-2015年12月末時点における製品、工程、設備などに関する特許数は、米国で約2,000件、米国以外で3,500件。さらに、米国で約500件、米国以外で2,200件の特許を申請中。

設備投資額

(単位:百万ドル)
2015年12月期 2014年12月期 2013年12月期
北米タイヤ 353 282 262
欧州/中東/アフリカタイヤ 223 266 332
南米タイヤ 125 152 243
アジア太平洋タイヤ 124 154 257
その他 158* 69 74
合計 983 923 1,168

*メキシコSan Luis Potosi新拠点の建設費用関連投資140百万ドルを含む。

-2015年12月期の設備投資は、主に米国、ブラジル、ドイツ、中国工場の改修・拡張、およびメキシコSan Luis Potosiの新工場の建設に充てられた。

国内投資

-住友ゴム工業は米国のタイヤ工場でSUVや高性能車向け高付加価値タイヤの生産を本格化する。今後100億円弱の投資を行うことで生産設備を切り替え、高付加価値品の生産体制を他工場と同等水準まで引き上げていく。日産1万5千本の同工場の生産能力は維持する。Goodyearとのアライアンス解消により手に入れる米国工場を補強することで市場ニーズに即した生産品目に切り替え、北米でのタイヤ販売拡大に結びつける。ニューヨーク州のバッファロー工場は、GYと住友ゴムの合弁会社が運営しているが、今回の提携解消により住友ゴムが引き継ぐことに決定。これまで提携により北米事業で制約のあった住友ゴムにとっては、北米唯一の生産拠点となる。バッファロー工場は現在、乗用車、トラック、二輪車用タイヤを生産している。(2015年8月7日付日刊自動車新聞より)

海外投資

<メキシコ>
-2015年4月、メキシコのSan Luis Potosiに新たにタイヤ工場を建設すると発表した。米州の顧客向けに供給する。米国やカナダの既存工場への投資と合わせて、北米およびラテンアメリカにおいて乗用車向けの高付加価値タイヤの需要増加に対応する計画。新工場は2017年半ばに生産を開始し、年間約600万本のタイヤを生産する予定。フル稼働時には、従業員約1,000名を雇用する。このプロジェクトへの投資総額は約500百万~550百万ドルを見込んでいる。(2015年4月24日付プレスリリースより)