Delphi Automotive PLC 2011年12月期の動向

ハイライト

業績

(単位:百万ドル)
  2011年
12月期
2010年
12月期
増減率 (%) 要因
全社
売上高 16,041 13,817 16.1 1)
EBITDA 2,119 1,361 55.7 -

要因
1) 売上高
-2011年12月期の売上高は、前年比16.1%増加の16,041百万ドル。

-顧客である自動車メーカーの販売量の増加、一台当たりの同社製品搭載率の上昇、主に対ユーロの為替変動が売上増加に寄与。

-一方で、2010年12月期に、Autolivに売却した事業の売上減少(120百万ドル)により売上増加分が一部相殺。

受注

-同社の高圧コモンレールシステムが、長城汽車(Great Wall Motors) 「Wingle」のディーゼルエンジン「Green-Quiet 2.0T」に採用されていると発表。「Wingle」は、2011年6月にイタリアで発表された。同エンジンは、長城汽車のSUV「Haval H5」(AT/MT)にも搭載されている。このコモンレールシステムは噴射圧力1,800バールで、1エンジンサイクルあたり最大7回の燃料噴射を行う。なお、本システムにはサーボソレノイドインジェクター、高圧燃料ポンプ、制御ユニットが含まれる。同社と長城汽車は、将来の欧州排出ガス基準に対応する新型ディーゼルエンジンを共同開発することで合意している。(2011年8月18日付プレスリリースより)

 
-電子走査レーダー(ESR)をFord 「Focus」の欧州モデルに納入している。同社のESRにより、前方警告機能付き車間距離適応走行制御が可能となり、様々なセグメントの車両においてドライバーの安全確保に貢献する。このシステムは長距離をカバーし、効率的な対象識別によって距離・速度の正確なデータを提供。衝突の可能性がある際に可聴警報を発する。このレーダーは欧州・米国・アジア市場において、フルサイズセダンおよびミッドサイズセダンに搭載されている。(2011年6月27日付プレスリリースより)

-アダプティブクルーズコントロール (Adaptive Cruise Control : ACC)システムを2011年モデルのFord 「Explorer」に供給している。このACCシステムは同社とFordが共同で開発したもので、衝突警報機能とブレーキサポート機能を内蔵。また、この車両には「パッシブ乗員検知システム」(Passive Occupant Detection System : PODS)も採用された。このPODSは助手席乗員の体格を検出し、エアバッグコントローラーに信号を送信。乗員のサイズに応じたエアバッグ展開を可能にする。(2011年1月19日付プレスリリースより)

-Connectivity Navigation Radio (CNR)をAudi 「A6 Sedan」、「A7 Sportback」へ供給している。また、「A6」と「A7」の両モデルには、同社のセキュリティシステム、LEDライトコントロールモジュールおよびインテリアワイヤーハーネスも搭載されている。(2011年1月10日付プレスリリースより)

事業提携

-同社と長城汽車(Great Wall Motors)は戦略的提携契約を締結した。既存の電子制御システム・燃料ポンプなどをベースに、電気・電子構造システム、エレクトロニクス・安全システム、パワートレインシステム、サーマルシステムに関して協業を行う計画。また両社は、アクティブセーフティシステムおよびナビゲーション製品に関しても共同で研究・開発を行い、今後、長城汽車のモデルに採用することで基本合意した。なお、同社の電子制御システムは、2005年に長城汽車のガソリンエンジン「491QE」に採用された。また、2010年には、電子制御式高圧コモンレールシステムを「Lvjing 2.0T」エンジンに納入。さらに、2010年10月、高出力ガソリンエンジン「GW4C20」にも同社の製品が採用されている。(2011年11月7日付プレスリリースより)

海外事業

-2009年に生産を開始したルーマニアMiroslavaのディーゼル工場がフル稼働に入ったと発表。同工場では、コモンレールシステム向けのディーゼル燃料噴射部品(ポンプ、インジェクターなど)を生産している。最新製品は、インジェクター用コントロールバルブが付いた複合バルブアダプター(CVA)。なお、同社はこれまで、同拠点に155百万ユーロ超を投じている。ディーゼル用エンジンマネジメントシステム事業の拠点としては、フランス・スペイン・英国・ルーマニア・ハンガリー・トルコ・メキシコ・ブラジル・インド・シンガポール・韓国で操業を行っている。(2011年11月7日付プレスリリースより)

受賞

-2011年、同社は日産から、「Certificate of Appreciation」を受賞。タイの洪水によるサプライチェーンの途絶で生じた、ワイヤーハーネスの品不足を同社が軽減させたことにより受賞。

-2011年、Volvo Carsから、衝突防止検知システムに対して「2011 Volvo Excellence Award in Technology」を受賞。

売却 (2010年度)

-同社の再建プロセスに沿って2010年に下記の事業・資産を売却。
 
<Autoliv社への売却>

乗員パッシブセーフティ事業
-韓国と中国の乗員パッシブセーフティ(OPS)事業を売却。この事業は現代・起亜自動車グループ、奇瑞汽車(Chery)、Tataなどが既存顧客(2010年1月28日付プレスリリースより)

パイロテクニック・セーフティスイッチ(PSS)事業
-パイロテクニック・セーフティースイッチ(PSS)事業の欧州資産をAutolivへ売却すると発表。PSSは衝突事故の際にエアバッグ展開により作動する装置。バッテリーとスターター、オルタネーターなどを結ぶ回路を遮断することで、ショートを防ぎ発火などの可能性を軽減する。電気自動車やハイブリッド車では、回路配線や蓄電システムを保護する目的などで使用される。Delphiの同事業はDaimler、Audi、Porscheなどを納入先としていた。(2010年4月9日付プレスリリースより)

北京徳爾福汽車安全産品有限公司(中国のシートベルト合弁会社)
-中国のシートベルトメーカー北京徳爾福汽車安全産品有限公司(Beijing Delphi Automotive Safety Products Co., Ltd.: BDS)の株式51%をAutolivへ売却。BDSは同社と北京海納川汽車部件股份有限公司(Beijing Hainachuan Automotive Parts Co., Ltd: BHAP)との合弁により、2008年に設立された。BDSの主な納入先は東風悦達起亜や北京現代など。(2010年10月19日付プレスリリースより)

開発動向

研究開発費

(単位:億ドル)
2011年12月期 2010年12月期 2009年12月期
合計 12 10 3

研究開発体制
-全世界に17,000名を超える科学者、エンジニア、技術者が研究開発に従事している。

-全世界に15の研究拠点を保有。

  • 北米:5拠点
  • 欧州、中東およびアフリカ:5拠点
  • アジア太平洋:4拠点
  • 南米:1拠点
-燃料ポンプの耐久試験を行う研究施設を、ルクセンブルク拠点に開設したと発表。同拠点はテクニカルセンターであると同時に、Delphi Powertrain Systemsのグローバル本社およびDelphiの欧州本社としての機能も持つ。同テクニカルセンターでは、エネルギー/エンジンマネジメント、HVAC、パワーエレクトロニクス、HV/EV用エネルギー貯蔵などに関連する部品およびシステムの設計・開発・試験を行っている。また、様々なモデル向けに部品を開発しており、ディーゼルエンジン用コモンレールシステムがMercedes-BenzおよびVolkswagenへ、イグニションシステム・燃料システムがBMWへ、ラジエーターがBentleyへ、エアコンシステムがFerrariへ供給されている。なお、同テクニカルセンターで近年開発された製品には、均質混合GDiインジェクター「Multec」、HVACシステム、チャージエアクーラー、低コスト・高出力インバーターが含まれる。(2011年10月10日付プレスリリースより)

研究開発活動

-Sheetakとの協業を発表した。Sheetakは、米国エネルギー省のエネルギー先端研究計画局(ARPA-E)より、熱エネルギー貯蔵システムの開発を受注している。EV・HV向け補助冷暖房に使用され、受注金額は4.7百万米ドル。Delphiは今回のプロジェクトにおいて、システムの統合および製品化の加速に向け協力する。現在開発中の熱エネルギー貯蔵システムは、軽量でエアコン冷媒が不要となる。バッテリーの消費電力を大幅に軽減し、EV・HVの燃費向上・走行距離伸張を実現する。なお、Sheetakは米国を本拠とし、冷凍/冷蔵・HVAC・発電などの市場向けに、固体エネルギー変換システムを提供している。(2011年12月7日付プレスリリースより)

製品開発

<電気・電子アーキテクチャー>
アルミケーブル
-従来の銅芯ケーブルに比べて48%の軽量化を実現したアルミケーブルを開発した。454gの銅ケーブルに対し、アルミケーブルは約227g。一般的な自動車では約1.8kg軽量化となる。このケーブルを使用した車両は、2012年から販売される予定。(2011年8月25日付プレスリリースより)

低コスト型高出力インバーター
-低コスト型の高出力インバーターを開発した。パワー半導体パッケージ技術を用いることで、自動車メーカーが低燃費・低排ガス車を廉価で提供することに貢献する。新開発されたパッケージは高電流・高出力密度を実現し、インバーターのコスト削減・小型軽量化に繋げたという。(2011年5月4日付プレスリリースより)

エレクトリカルセンター
-回路保護用のマイクロヒューズを使用したエレクトリカルセンターを新開発した。従来品に比べてパッケージサイズを30%小型化。従来のミニヒューズより35%小型のマイクロヒューズを用いることで、PCB上により多くの回路を配置できる。これにより、エレクトリカルセンターの高容量・多機能化につなげた。(2011年4月13日付プレスリリースより)

<パワートレインシステム>
新型ディーゼルエンジン用コモンレールシステム
-新型ディーゼルエンジン用コモンレール(CR)システムには、次世代燃料ポンプ「DFP6」付きのソレノイド式コモンレールインジェクターが搭載されている。燃料噴射装置(FIE)システムの重量を最小化することで、エンジンおよび車両の重量削減を目指した。CRポンプの改良により、従来のFIEシステムに比べて40%軽量化することに成功している。(2011年8月25日付プレスリリースより)

ガソリン直噴エンジン
-自然吸気エンジンを30%小型化したガソリン直噴(GDi)エンジンにより、エンジンを20~30kg軽量化したと発表。これにより、燃料消費を1.0~1.5%、二酸化炭素排出を1kmあたり1.5~2.5kg削減する。なお、同社のGDi燃料システムには、高圧燃料ポンプ・燃料レール、多噴孔インジェクター「Multec」が含まれる。(2011年8月25日付プレスリリースより)

フューエルインジェクションシステム
-ドイツのStuttgart国際シンポジウムで、フューエルインジェクションシステム「Multec」の新製品を発表する予定。この「Multec」には、最近開発された高圧燃料ポンプ「DFP6」、サーボソレノイドインジェクター、新型エンジンコントロールユニット(ECU)が含まれる。このポンプは最大レール圧力2,000バールを実現。(2011年2月21日付プレスリリースより)

<電子・安全>
オープンアーキテクチャプラットフォームを用いた接続システム
-オープンアーキテクチャプラットフォームを用いた接続システム「MyFi」は、Bluetooth、WiFi、セルラーコネクティビティ、音声認識、ハンズフリー操作、オーディオストリーミングなどの機能を持つ。2010年に、最初の「MyFi」システム(connected navigation radio: CNR)をAudi 「A1」に納入した。また同社は、今後1年以内に「MyFi」の新製品を発表する意向。スマートフォンアプリへの接続、テキストメッセージ(SMS)の確認・返信、ナビゲーションエンジンの利用などを、全てハンズフリーで行うことが可能になる。今後、この「MyFi」には車線逸脱の監視、眠気・衝突危険性の警告、インフォテインメントシステムからの情報フロー管理などが可能な、アクティブセーフティシステムも統合する予定。(2011年9月2日付プレスリリースより)

レーダーとカメラシステムを統合した「RACam」
-レーダーとカメラシステムを統合した「RACam」を新開発した。この「RACam」には、電子走査レーダー(ESR)およびビジョンセンシングをモジュール化。車間距離適用走行制御、車線逸脱警報機能、前方衝突警告機能、低速衝突緩和機能、歩行者・車両に対する自動ブレーキ制御などのアクティブセーフティ機能が可能になる。「RACam」を搭載したモデルは、2014年に販売開始となる予定。また、同社の後側方検知システム(RSDS)は、サイドミラーで確認しづらい接近車両をドライバーに警告する。このシステムは、2012年中に生産開始となる見込み。(2011年8月26日付プレスリリースより)

電子走査レーダー(ESR)
-従来の製品より61%軽量化した電子走査レーダー(ESR)を開発した。これまでは、大型自動車に搭載されていたが、コンパクトカーにも搭載が可能になる。(2011年8月25日付プレスリリースより)

超軽量ラジオ
-同社の軽量化技術を電気・電子システム用のフレームおよびケースに適用している。超軽量ラジオは、プラスチック複合材を使用し、従来の金属製ケースに比べて0.54kg軽量化。また、最大30個の部品を削減している。(2011年8月25日付プレスリリースより)

HV、EV用警告音発生器
-ハイブリッド車(HV)、電気自動車(EV)用の警告音発生器を開発したと発表した。小型軽量化と高音質を実現した二つの電子音響システムを開発し、消費電力の低減と小型軽量化を実現した。さらに一定の周波数の範囲内で自動車メーカーごとに個別の警告音を発生できるようにした。2012年に発売予定の欧州自動車メーカーの車両に搭載する。(2011年2月22日付日刊自動車新聞より)

<サーマルシステム>
シティバス用HVACシステム

-シティバス用の新型HVACシステム「Diavia City Bus HVAC」を開発した。従来のルーフ外付けタイプに比べて、乗客の快適性向上と燃料消費削減を実現したもの。座席の位置に関係なく、均一な冷気を供給する。複数の小型ユニットをバス内に設置することで、ダクトレスのモジュール化を実現。また、ブラシレスモーターを使用し、騒音を削減する。この新型システムは、2011年中に車体メーカーやカーメーカーに採用される予定。(2011年10月20日付プレスリリースより)

新型カーエアコンシステム
-環境負荷の低い新冷媒を採用した新型カーエアコンシステムを開発、今秋から欧州自動車メーカーに供給開始すると発表した。地球温暖化係数を従来冷媒の300分の1未満に抑えた「R-1234yf」を使用するもので、同時に電子制御式可変コンプレッサーを活用するなどして燃費特性を改善した。欧州では2011年以降の新型車に温暖化係数の低い冷媒の使用が義務付けられた。同社は新型エアコンの早期投入を生かして受注を開拓、同分野での優位性につなげる。(2011年10月3日付日刊自動車新聞より)

5気筒小型可変式コンプレッサー
-従来製品より大幅な軽量化を実現した、5気筒小型可変式コンプレッサー(5CVC)を開発。アルミダイカストシェルを用いることで、快適性・燃費・除湿機能を向上させる。この5CVCを搭載したモデルは、2014年に発売開始となる予定。(2011年8月25日付プレスリリースより)

フロントエンド冷却モジュール
-4kgの軽量化を実現したフロントエンド冷却モジュールを開発した。ラジエーター、チャージエアクーラー、コンデンサー、ファンモーターカバーを一体化したもので、冷却ファンの電力消費を350W削減する。(2011年8月25日付プレスリリースより)

折りたたみ式チューブコンデンサー
-12ミリの折りたたみ式チューブコンデンサーを新開発した。組立チューブ構造を用いることで、軽量化および最薄化を実現。2015年に販売が開始される予定で、新型冷媒システム「R-1234yf」の効率化にも貢献する。(2011年8月25日付プレスリリースより)

エアコンシステム
-新型冷媒「R-1234yf」を使用したエアコンシステムを発表する。従来の「R-134a」は、地球温暖化係数(GWP)が1,430であるのに対し、「R-1234yf」の係数は4となる。このエアコンは、2011年フランクフルトモーターショーで展示される欧州車に搭載の予定。(2011年8月24日付プレスリリースより)

商用車用HVACシステム
-「E3 HVAC」シート向けの商用車用HVACシステムを新開発した。「E3 HVAC」シートは同社の「Diavia」HVAC製品と、イタリアCobo Groupのステアリングコラム、シート、ランプ、電気および電子装置を組み合わせたもの。「E3 HVAC」の冷却能力は6.2kW、暖房能力は5.8kW。通気口からの空気の流れをコントロールすることで、キャビンのみ、もしくはキャビンとシートクッションの温度調整が可能になる。また、通気口の調節により、最も快適な車室温度の選択や、シートの乾燥を保つ機能も持っている。 (2011年3月23日付プレスリリースより)

設備投資

設備投資額

(単位:百万ドル)

2011年12月期 2010年12月期
電気・電子アーキテクチャー 219 202
パワートレインシステム 228 186
電子・安全 100 59
サーマルシステム 70 35
排除およびその他 13 18
全社 630 500

海外投資

<ルーマニア>
-ルーマニアMoldova Nouaに新工場を開設したと発表。欧州カーメーカー向けにワイヤーハーネスモジュールを生産する。2011年末までに、従業員数1,000名に到達する見込み。今回、第一フェーズとして面積1,400平方メートルの工場を建設したもの。さらに、2011年9月には2,400平方メートルの工場が開設となる予定。同社は現在、ルーマニアに3工場(Sannicolau Mare、Moldova Noua、Ineu)を保有し、ワイヤーハーネスおよびディーゼルエンジン用コモンレールシステム部品の生産を行っている。(2011年6月7日付プレスリリースより)