Autoliv, Inc. 2018年12月期の動向
業績 |
(単位:百万ドル) |
2018年 12月期 |
2017年 12月期 |
増減率 (%) |
要因 | |
全社 | ||||
売上高 | 8,678.2 | 8,136.8 | 6.7 | 1) |
営業利益 | 686.0 | 859.6 | (20.2) | 2) |
製品群別売上高 | ||||
エアバッグ製品 | 5,698.6 | 5,342.3 | 6.7 | 3) |
シートベルト製品 | 2,979.6 | 2,793.6 | 6.7 | 4) |
要因
1) 売上高
-2018年12月期の全社売上高は、前年比6.7%増の8,678.2百万ドル。為替の影響と買収効果を除くと前年比4.8%増。為替による好影響が売上高を1.9%押し上げた。すべての事業地域において売上高は増加したが、特に新モデルの立ち上げがあった米州、販売が伸びたインドによって牽引された。
2) 営業利益
-2018年12月期の営業利益は前期比20.2%減の686.0百万ドル。営業利益率は7.9%となり前年度の10.6%から低下した。一部は販売費及び一般管理費の減少により相殺されたものの、独占禁止法関連費用の増加、研究開発費及びエンジニアリングにかかる費用が影響した。
3) エアバッグ製品
-2018年12月期のエアバッグ製品の売上高は前年比6.7%増の5,698.6百万ドル。既存事業は北米、欧州、中国でのステアリングホイール販売増および北米でのインフレータブルカーテンエアバッグの販売増により4.9%増となった。この一部は欧州でのインフレータブルカーテンエアバッグの販売減によって一部相殺されている。
4) シートベルト製品
-2018年12月期のシートベルト製品の売上高は前年比6.7%増の2,979.6百万ドル。当該セグメントにおける既存事業成長率は4.5%で、北米、インド、中国での販売増が押し上げた。一部欧州での売上により相殺された。
エレクトロニクス部門のスピンオフ
ー2017年12月、エレクトロニクス事業部門を2018年第3四半期に独立化させると発表。同社のエレクトロニクス部門はアクティブセーフティ(自動車用レーダー、運転アシストシステム用カメラ、ナイトビジョンシステム、ポジショニングシステム)、抑制制御(エアバッグ等)、センサー、ブレーキシステム事業で構成されている。独立後、パッシブセーフティ事業は引き続きAutolivの名称のもと事業展開し、その他の事業については新会社の名称で操業する見込み。両社とも本社はスウェーデンのStockholmに置く。(2017年12月12日付プレスリリースより)
ー2018年1月、独立するエレクトロニクス事業部門の新会社名が「Veoneer」になると発表。Veoneerは、アクティブセーフティ、先進運転支援システム(ADAS)、自動運転、先進ブレーキコントロール関連のセンサーやソフトウェアなどを開発、製造する。Veoneerの独立後、パッシブセーフティ事業についてはAutolivが継続して行うという。(2018年1月29日付プレスリリースより)
ー2018年3月、エレクトロニクス事業部門の分社化に先立ち、新会社「Veoneer」のトップ人事を発表。分社化は、2018年第3四半期に完了する予定。VeoneerのCEO (最高経営責任者) には、Autotivの現会長、社長兼CEOであるJan Carlson氏が就任する。同氏は、2018年4月1日付でVeoneer事業部のCEOに就任し、分社化完了まで、現職に留まる予定。分社後、Mikael Bratt氏がAutolivのCEOに就任する。Autolivの現CFO (最高財務責任者) Mats Backman氏は分社化後も留任し、VeoneerのCFOには2018年4月1日付でHermansson氏が就任する。VeoneerのCOO (最高執行責任者) には、Autolivの現エレクトロビジネス事業部長であるJohan Lofvenholm氏が就任する予定。(2018年3月22日付プレスリリースより)
ー2018年4月、エレクトロニクス事業部門の分社化に関連し、新会社「Veoneer」は2018年第3四半期に米ニューヨーク証券取引所とナスダック・ストックホルムに上場する予定と発表。Veoneerの資本金は、Autolivから最大12億ドルが投入される見通し。同社によると、エレクトロニクス事業の分離や従業員の移動、取締役会の設置などは予定通り順調に進んでいるという。(2018年4月26付プレスリリースより)
ー2018年7月、同社のエレクトロニクス事業部門Veoneerの分社化が完了したと発表。Veoneerはニューヨーク証券取引所での取引を開始し、独立企業としてナスダック・ストックホルムに上場する。分社化に伴い、AutolivはVeoneerに対して約10億ドルの資本投入を行った。(2018年7月2日付プレスリリースより)
事業動向
ー32百万ドルを投資し、米Detroit近郊にある北米本社の建物を拡張する。米ミシガン州Auburn Hills市に計画が提出された。オフィスと技術センターを近代化し、建物を2階建てから3階建てに増床する。建設工事に先立ち、すでに駐車場を拡張。プロジェクトの第1段階は2018年後半に始まり、2020年秋に完了する予定。(2018年7月24日付各種報道より)
受注
-2018年の主な受注
メーカー/モデル名 | 搭載部品 |
日産「Altima」 | ニーエアバッグ、サイドエアバッグ、インフレータブルカーテンエアバッグ、プリテンショナー付シートベルト |
Ford 「Focus」 | ニーエアバッグ、助手席用エアバッグ、サイドエアバッグ、プリテンショナー付シートベルト |
ホンダ「Crider」 | ステアリングホイール付ドライバーエアバッグ、助手席用エアバッグ、サイドエアバッグ、プリテンショナー付シートベルト |
起亜「K3」 | ステアリングホイール、プリテンショナー付シートベルト |
Ram 「1500」 | ステアリングホイール付ドライバーエアバッグ、助手席用エアバッグ、サイドエアバッグ |
Mercedes 「Sprinter」 | ステアリングホイール付ドライバーエアバッグ、助手席用エアバッグ、サイドエアバッグ、インフレータブルカーテンエアバッグ、プリテンショナー付シートベルト |
スバル「Forester」 | 助手席用エアバッグ、サイドエアバッグ、インフレータブルカーテンエアバッグ |
Audi 「Q3」 | ステアリングホイール付ドライバーエアバッグ、助手席用エアバッグ、プリテンショナー付アクティブシートベルト |
VW「Jetta」 | ドライバーエアバッグ、プリテンショナー付シートベルト、ステアリングホイール |
-2018年5月、同社のエレクトロニクス事業部門Veoneerが大手自動車メーカーからモノビジョンカメラシステムの開発・製造パートナーに選出されたと発表。2022年から製品供給を開始する予定。Veoneerのモノビジョンシステムは、NHTSAと欧州のNCAPが設定した5つ星の安全評価基準を満たすように設計されており、クラス最高級の歩行者検出、前方衝突警告、車線維持アシスト機能を有するという。(2018年5月29日付プレスリリースより)
ー2018年3月、同社とVolvo Carsの合弁会社である自動運転車用のソフトウェア開発会社Zenuityと共に、吉利汽車 [Geely] 向けにレベル3の自動運転向け先進運転支援システム (ADAS) を開発・生産すると発表した。吉利汽車の「レベル3」プロジェクトのサプライヤーとして、ADAS ECU(電子制御ユニット)やソフトウェア、レーダーシステム、ビジョンカメラシステムなどを提供するとしている。(2018年3月8日付プレスリリースより)
受賞
-2018年2月、同社はトヨタ自動車から「グローバル貢献賞」を受賞したと発表した。Autolivがこの賞を受賞するのは5回目。(2018年2月26日付プレスリリースより)
2019年12月期の見通し
-2019年12月期の売上高は前年比約4%増と予測。本業での売上増加が5%、為替の影響が1%増と見ている。
研究開発費 |
(単位:百万ドル) |
2018年 12月期 |
2017年 12月期 |
2016年 12月期 |
|
研究開発費 | 413 | 371 | 357 |
売上高に占める割合 (%) | 4.8 | 4.6 | 4.5 |
-2018年12月期、研究開発費総額の2%を超える単一プロジェクトは無い。
-同社によると、2019年12月期の研究開発費は、今期の4.8%以下となる見込み。
研究開発拠点
-以下10カ国に14のテクニカルセンターを保有:
- 中国
- フランス
- ドイツ
- インド
- 日本
- ポーランド
- ルーマニア
- 韓国
- スウェーデン
- 米国
-同社は、2019年1月に茨城県つくば市に研究開発拠点「ジャパンテクニカルセンターつくば」を新設する。投資額は70億円。既存拠点から異動する100人に加え、3年間で新たに100人を新規雇用する。エアバッグ、シート、ステアリングの開発力を強化し、同社のグローバル売上高の3割を占める日系自動車メーカーの受注拡大につなげる。(2018年10月30日付日刊自動車新聞より)
研究開発活動
-2018年7月、将来の車両の乗員保護と安全性向上を目的として欧州H2020プロジェクトOSCCAR(Future Occupant Safety for Crashes in Cars)に参加したと発表。OSCCARに参加する自動車メーカー、研究機関、サプライヤーとの提携により、Autolivは拘束システム開発強化を目指す。乗員保護のための指針と概念は、複雑なテストケースのために人体モデルを使用し、性別、年齢およびその他人口統計的要因などの異質性の特性を考慮して開発、評価されるという。(2018年7月18日付プレスリリースより)
ー2018年5月、同社のエレクトロニクス事業部門VeoneerがスウェーデンのStockholmでジオフェンシングの都市環境技術デモに参加したと発表。ジオフェンシングとは、コネクテッドカーが速度、燃料使用をデジタル制御できる地理的ゾーンのことを指し、スウェーデン政府は2017年にジオフェンシング技術を使用して、より安全で気候に敏感な都市をつくるプロジェクトを開始、Gothenburg、Stockholmなどの自治体やVeoneer、Scania、Volvo Cars、Volvo Groupなどの自動車メーカーおよびサプライヤーがプロジェクトに参加している。(2018年5月29日付プレスリリースより)
製品開発
CES 2019出展 次世代ラーニングインテリジェントビークル
-2018年11月、同社傘下のVeoneerは、最新技術を搭載したLearning Intelligent Vehicle(LIV)をCES 2019に出展すると発表した。LIVのコアは、ドライバーの視線、感情、認知負荷、眠気、手の位置、姿勢を感知し、これらの情報を外部環境のデータと融合して効果的なコミュニケーションを可能にすることにより、運転時の安全をより体感できる深層学習アルゴリズムを有する。VeoneerはEricssonと提携しており、Ericssonの安全なクラウドプラットフォームと最先端の5G対応ネットワークを活用している。(2018年11月23日付プレスリリースより)
自動運転向けコンピューター「Zeus」
-2018年10月、同社からの分社化が完了したVeoneerは、自動運転レベル4の要件を満たすように設計されたスーパーコンピューター「Zeus」を開発したと発表した。「Zeus」はADAS/AD ECU、カメラからのデータを融合する「脳」、レーダーおよびセンサー、状況判断・必要行動処理機能で構成されている。NVIDIAのスケーラブル・アーキテクチャ「NVIDIA DRIVE AGX Xavier」をベースとし、OSは「NVIDIA DRIVE OS」を搭載、Zenuityの自動運転ソフトウェアスタックを使用している。開発はVeoneerがハードウェアと基本ソフトウェアを担当し、VeoneerとVolvo Carsの合弁会社Zenuityが自動運転機能ソフトウェアと車両への統合を担当した。(2018年10月10日付プレスリリースより)
特許
-2018年12月時点、自動車安全および主要な支援技術に関する6,050件以上の広範囲にわたる特許を保有。
設備投資額 |
(単位:百万ドル) |
2018年 12月期 |
2017年 12月期 |
2016年 12月期 |
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合計 | 555 | 570 | 499* |
売上高に占める割合 (%) | 6.4 | 5.5 | 5.0 |
*2016年度はスピンオフ以前のエレクトロニクス部門を含む。
ー2018年12月期における設備投資は主に欧州、北米、中国の垂直統合・成長支援に用いられた。
欧州では、シートベルト、エアバッグ工場における設備の拡大、北米では、新規プログラムに向けた生産設備等、また中国ではシートベルトおよびエアバッグの生産量増強のためにそれぞれ投じられた。
スウェーデン国外での投資
<メキシコ>
-2018年7月、120百万ドルを投資し、メキシコTijuanaにある2工場を拡張すると地元当局が明らかにした。現在の従業員数は3,500人だが、今後4年間に200人以上が新たに雇用される見通しという。Autolivは、メキシコのLerma de Villada、Queretaro、Matamorosにも生産拠点がある。(2018年7月23日付 Mexico-Nowより)