日清紡ホールディングス (株) 2016年3月期の動向

業績

(単位:百万円)
2016年3月期 2015年3月期 増減率 (%) 要因
全社
売上高 533,989 523,757 2.0 -繊維事業が大幅な増収。
営業利益 12,617 13,744 (8.2)


-日本無線 (株) のソリューション事業や通信機器事業の低調により、エレクトロニクス事業で減益。

経常利益 17,034 20,650 (17.5) -
親会社株主に帰属する当期純利益 10,775 13,693 (21.3)
エレクトロニクス
売上高 205,367 209,115 (1.8) -日本無線 (株) はソリューション・特機事業の低調により、減収・減益。
-新日本無線 (株) は、主力の電子デバイス事業やマイクロ波応用製品が堅調で推移したことなどにより、増収・増益。
営業利益 8,318 12,703 (34.5)
ブレーキ
売上高 165,037 161,886 1.9 -国内:2015年4月からの軽自動車税増税の影響等により自動車販売が減少したことから、減収・減益。
-海外:
韓国子会社:商品構成の変化や原料費減等により、増収・増益。
中国・タイ子会社:経費削減等により、増収・増益。
TMD社:欧州の自動車市場の穏やかな回復により、増収・赤字縮小。
営業利益 (886) (2,068) -
精密機器
売上高 29,525 28,607 3.2

-精密部品事業:2015年3月期に設立した中国子会社が量産を開始したことなどにより、増収・増益。
-プラスチック製品事業:インド子会社を新たに連結範囲に加えたこと等により、増収。厳しい価格競争の影響を受け、減益。

営業利益 318 263 20.6
化学品
売上高 8,285 8,138 1.8 -燃料電池セパレーターは国内家庭用・定置用の売上が減少したが、新規開発製品の受注により増収。
営業利益 753 396 90.2 -

買収

-2015年10月、プラスチック製品を手がける南部化成 (株) (静岡県吉田町) を買収すると発表。19日付で全株式を取得する。買収額は非公開。自動車向けプラスチック事業を主力とする南部化成 (株) を買収することで、需要拡大が見込める自動車関連事業のさらなる拡大を目指す。買収は、子会社の日清紡メカトロニクス (株) (東京都中央区) が株式の90%、Nisshinbo Singapore Pte. Ltd.が同10%取得する。南部化成は、自動車用ワイヤーハーネスやヘッドランプなどのプラスチック製品を中心に展開している。生産拠点は国内5カ所、海外5カ所の計10拠点展開しており、海外拠点の相互活用や集中購買によるコスト削減などのシナジーも見込む。(2015年10月14日付日刊自動車新聞より)

完全子会社化

-2016年3月、エレクトロニクス事業において日本無線 (株) が長野日本無線 (株) と上田日本無線 (株) を完全子会社化を実施。事業の一体運営とガバナンス体制の強化を図り、オートモーティブ分野での事業拡大などさらなる成長を目指す。

中長期経営戦略

-中長期業績目標

  • 2018年3月期:売上高6,000億円、ROE9%
  • 2026年3月期:売上高10,000億円、ROE12%
  • 売上高年平均成長率 (CAGR): 6.6%
  • 2026年3月期と2018年3月期の売上差額:4,000億円
    -2,000億円を既存事業の強化および研究開発の成果で捻出。
    -2,000億円をM&Aの積極展開で補足。


-中長期経営戦略施策

ブレーキ
  1. 世界レベルで需要が見込まれる銅規制対応摩擦材の生産を開始。今後も製品ラインナップを拡充し、環境保護への貢献を通して業容拡大を図る。
  2. TMD社におけるドイツ工場の集約やブラジル工場の移設により、生産体制の合理化を推進するとともに、生産設備の更新を進める。
  3. 日清紡ブレーキ (株) とTMD社との技術補完・業容拡大をとおしてシナジー効果を創出し、摩擦材専業メーカーとしての優位性をグローバルで確保する。
精密機器
  1. プラスチック製品事業では、連結子会社化した南部化成 (株) の強みを生かし、需要拡大が期待される車載ビジネスの拡充とグローバル展開を推進する。
  2. 精密部品事業では、中国の合弁会社での増産体制を整えるとともに、中国子会社との連携を進める。
化学品
  1. 燃料電池車部品 (カーボンセパレーターおよび白金代替触媒) の市場投入に向け、カナダのBallard Power Systems Inc.との提携を強化し、開発を加速する。
エレクトロニクス
  1. グループの無線通信技術や電子部品生産技術を融合させ、ADAS (先進運転支援システム) ビジネスへ参入する。
  2. 日本無線 (株) :グループ内の多様なレーダー・センサー技術を集結し、オートモーティブ分野での事業拡大を図る。
  3. 新日本無線 (株) :オートモーティブ・産業機器向け電子デバイスの拡販に努めるとともに、スマートデバイス市場向けに、引き続きSAW (弾性表面波)・MEMS (微小電気機械システム) およびマイクロ波デバイス (GaAs IC) の開発・拡販を進める。IoT対応で需要が拡大する、通信・センサー関連デバイスの伸長を図る。
全社
  1. Industry 4.0やIoT、AIの発展を踏まえたセンシング技術と通信との連携により、超スマート社会の実現に取り組む。
  2. エレクトロニクスやメカトロニクス、ケミカルの技術や知見を融合する。
  3. M&Aを積極的に活用する。
  4. 「環境・エネルギーカンパニー」グループとしての成果につなげる。


>>>次年度業績予想(売上、営業利益等)

2017年3月期業績予想

 (単位:百万円)
2017年3月期
(予想)
2016年3月期
(実績)
増減
(%)
全社
売上高 570,000 533,989 6.7
営業利益 16,000 12,617 26.8
経常利益 21,000 17,034 23.3
親会社株主に帰属する当期純利益 10,000 10,775 (7.2)
エレクトロニクス
売上高 214,000 205,367 4.2
営業利益 9,400 8,318 13.0
ブレーキ
売上高 163,100 165,037 (1.2)
営業利益 (500) (886) -
精密機器
売上高 60,700 29,525 105.6
営業利益 1,400 318 340.3
化学品
売上高 10,500 8,285 26.7
営業利益 1,200 753 59.4



研究開発費

(単位:百万円)
2016年3月期 2015年3月期 2014年3月期
全社 21,774 20,938 19,630
-エレクトロニクス 10,638 9,781 9,018
-ブレーキ 9,287 9,142 8,573
-精密機器 3 12 23
-化学品 363 490 580

研究開発拠点

全社
日清紡ホールディングス (株)
中央研究所
千葉県千葉市
エレクトニクス
日本無線 (株)
先端技術センター
長野県長野市
ブレーキ
日清紡ブレーキ (株)
開発センター、実験センター (館林事業所内)
群馬県邑楽郡
日清紡ブレーキ (株)
旭テストコース
千葉県旭市
NAMI BD Center 米国Detroit
Saeron Automotive 韓国天安市
TMD Friction EsCo ドイツLeverkusen
TMD Friction do Brazil ブラジルIndaiatuba
精密機器
日清紡メカトロニクス (株)
事業開発部
-
化学品
日清紡ケミカル (株)
中央研究所
千葉県千葉市

研究開発活動

エレクトロニクス
<日本無線グループ>
-通信機器事業において、交通の安全と高度化に貢献することをキーワードに、ミリ波レーダー、ETC2.0車載器、車車間/路車間通信機等の自動車関連の製品開発を推進。

<新日本無線グループ>
-主力の 「電子デバイス」 を中心に、車載向けやスマートフォン等の通信デバイス向け等、各種デバイスの実用化に向けた開発等に注力。新規分野であるパッシブ製品の研究開発も推進。

ブレーキ
1. 安全第一 (Safety First) の徹底
2. KPI (重要業績評価指標) を通じたキャッシュフロー経営の強化
3. 人材育成
4. 品質保証の強化
5. グローカル事業戦略の推進
6. コスト競争力のある差別化商品の提供
7. 法令遵守と事業リスクへの確実な対応
を品質目標に製品・技術の開発に取り組む。

<摩擦材>
-重要保安部品としての高い信頼性の堅持、銅規制等に対応した環境負荷物質低減材質の開発、音・振動などの顧客ニーズへの対応等に重点に開発。

-海外子会社への開発支援体制の強化や、開発・製造・生産技術の連携による原価低減活動を促進し、競争力強化を図っている。

-TMD Friction Group S.A.とのシナジー効果の早期発揮を目指し、グローバルニーズに応える製品の開発を引き続き推進。

<ブレーキ>
-グローバルビジネスの受注・拡大のため、海外子会社への開発支援体制を強化するとともに、海外技術提携先との協業を推進。

-軽量化製品の開発等、環境対応技術の実用化や将来を見据えた新技術の実用化にも注力。

-部品の標準化、開発業務の効率化を進め、開発段階からの原価低減により競争力強化を図っている。

精密機器

-プラスチック製品事業においては、空調機器用ファンや自動車部品をはじめ、広い分野で成形・金型技術を活かした製品の研究開発を実施。

化学品

<燃料電池部門>
-カーボンの特長を生かした燃料電池セパレーターの高性能化の研究開発に取り組んでいる。

-新エネルギー・産業技術総合開発機構 (NEDO) は5日、燃料電池自動車の本格普及に向け新たな研究開発プロジェクトに着手すると発表した。燃料電池の高度な解析・評価技術や新材料の設計指針の創出、生産性の大幅な向上といった実用化に欠かせない課題についての基盤技術開発を推進する。民間企業での技術開発を加速させるのが目的だ。全国の研究機関をはじめ、ユーザー企業と連携してプロジェクトを推進し、FCVの市場拡大と同分野における日本の競争力強化を目指す。燃料電池の解析技術開発では3テーマ、セルスタックにかかわる材料コンセプト創出においては6テーマについてそれぞれ研究機関に委託して進める。プロセス実用化の技術開発については石福金属興業、東レ、旭化成イーマテリアルズ、SCREENホールディングス、日清紡ケミカル、ユメックスの技術開発を助成する予定だ。(2015年6月6日付日刊自動車新聞より)

全社共通
<無機機能材料>
-水素社会の到来に向け、白金触媒の代替として世界最高性能を持つカーボンアロイ触媒や水素吸蔵カーボンの研究開発を推進している。

主な技術導入契約

(2016年3月31日現在)
会社名
(国名)
内容等 締結年月
(有効期間)
Meritor Heavy Vehicle Braking Systems (UK) Limited.
(英国)
ディスクブレーキASSY、ドラムブレーキASSYおよびその部品の設計並びに製造技術に関するノウハウの提供 2003年11月 - 2008年11月
(2008年11月以降1年毎自動延長)

主な技術供与契約

(2016年3月31日現在)
会社名
(国名)
内容等 締結年月
(有効期間)
Rane Brake Linings Limited
(インド)
ブレーキライニング、ディスクパッド、クラッチフェーシングの製造技術、原料配合および製造設備技術情報に関するノウハウの提供 2010年1月 - 5年間
亨通機械股份有限公司
[Heng Tong Auto Parts Inc.]
(台湾)
ブレーキライニング、ディスクパッドの製造技術、原料配合および製造設備技術情報に関するノウハウの提供、提携製品の工場建設の指導 2013年12月 - 3年間
ドラムブレーキおよびその部品の設計並びに製造技術に関するノウハウの提供 2013年6月 - 3年間



設備投資額

(単位:百万円)
2016年3月期 2015年3月期 2014年3月期
全社 22,861 36,909 19,895


-2016年3月期、主たる設備投資の内容

  • 日本無線 (株) の開発センター、主要生産施設の移転等:5,650百万円
  • 新日本無線 (株) の半導体製造・研究開発設備:3,449百万円
  • 連結子会社TMD Friction GmbH他の摩擦材製造設備の増強等:4,986百万円


-日清紡ブレーキ (株) は、2016年度からの次期中期経営計画で、3年間の設備投資額を現中計の25%増となる400億円に設定した。ドイツ工場の合理化やブラジル工場の移設を進めるほか、館林事業所(群馬県邑楽町)の設備更新などを実施する。生産体制の合理化を図るとともに、普及が見込まれる銅フリー摩擦材の生産対応を進める。同社は欧州摩擦材メーカーの買収などグローバルビジネスを拡大している。買収拠点の合理化を進めることで、主力である摩擦材事業の利益率を高める。(2016年3月7日付日刊自動車新聞より)

設備の新設計画 (自動車関連)

(2016年3月31日現在)
会社名
事業所名
(所在地)
設備の内容 投資予定
総額
(百万円)
着手 完了
予定
完成後の
増加能力
日本無線 (株)
長野事業所
(長野県長野市)
エレクトロニクス
システム等
5,295 2014年
7月
2021年
3月
-
日本無線 (株)
川越事業所
(埼玉県ふじみの市)
エレクトロニクス
建設費用等
4,137 2015年
4月
2016年
7月
-
新日本無線 (株)
川越製作所
(埼玉県ふじみの市)
エレクトロニクス
電子部品製造設備
2,648 2014年
4月
2017年
3月
-
TMD Friction do Brasil S.A.
(ブラジル)
ブレーキ製品
製造設備
5,182 2014年
2月
2016年
12月
-
TMD Friction Esco GmbH
(ドイツ)
ブレーキ製品
製造設備
9,711 2015年
1月
2020年
12月
-
Nisshinbo Somboon Automotive Co., Ltd.
(タイ)
ブレーキ製品
製造設備 (第三期投資)
1,478 2014年
9月
2017年
12月
生産能力10%増加