日清紡績(株) 2007年3月期の動向

ハイライト

業績

(単位:百万円)

  2007年
3月期
2006年
3月期
増減率
(%)
要因
全社
売上高 312,875 278,616 12.3 前年度下半期より連結子会社となった新日本無線(株)の業績が通期で寄与。また、ブレーキ製品事業において受注が増加したことによる増収。
営業利益 11,551 10,524 9.8 上記要因のほか、ブレーキ事業の米国子会社の収益改善による増益。
経常利益 17,282 14,033 23.1
当期純利益 15,107 11,182 35.1
ブレーキ製品事業
売上高 61,764 58,130 6.3 ブレーキ製品
北米を中心とした輸出増による国内自動車生産や、日系・韓国系メーカーの海外現地生産増に伴う受注増により、国内・海外子会社ともに増収。

ABS製品
合弁会社コンティネンタル・テーベス(株)に事業移管中のため、大幅な減収。
営業利益 7,009 5,462 28.3

ブレーキ製品
国内は原材料値上げの影響や、名古屋工場から新拠点の豊田工場への生産移管に伴う経費増により減益となったが、海外子会社は新規受注品の寄与や米国子会社の収益改善により増益となり、全体として増益を記録。


事業計画

-ブレーキ製品事業

2008年をめどにインドに生産進出。韓国子会社のセロン・オートモーティブ、資本・技術提携先の現地企業との3社合弁で新会社を設立することなどを含む、本格的なフィジビリティースタディー(FS)に着手。

2008年度までに中国工場の生産能力を倍増。韓国最大手の現代自動車や一部日系メーカーからの受注が増加基調にあり、自動車関連で唯一の中国拠点を増強し対応。

2008年度までにタイでのブレーキ事業を2005年度実績に比べ40%引き上げ。ブレーキ部品の内製化率向上や生産性改善に続き、今後は受注活動の拡大と能力増強投資を加速。

>>>詳細は設備投資 参照

-エレクトロニクス事業

今後のエレクトロニクス関連事業において、2005年12月に子会社化した新日本無線を中核企業として、事業拡大を支援。次世代の自動車ブレーキ用を始め、精密加工機、キャパシター向けの電子装置開発・製造を新日本無線に集約するなどして、グループとしてのシナジーを活用する。2008年度にはグループ全体の営業利益のうち、約26%をエレクトロニクス部門でまかなう計画。具体的には、車載電子デバイスの開発、製造を集約、特にABS関連会社のコンティネンタル・テーベス向け部品の全量をまかなえる体制を早期に整え、次世代のブレーキ制御系ビジネスをグループ内で完結できるようにする。また、キャパシターや精密加工機械向けの回路技術、半導体製品なども新日本無線が受け持つ。(2006年4月17日付日刊自動車新聞より)

開発動向

研究開発費 (単位:百万円)
  2007年3月期 2006年3月期 2005年3月期 2004年3月期
全体 12,244 9,607 5,987 6,219
ブレーキ事業 3,702 3,511 3,102 3,070
ブレーキ製品事業
・摩擦材は、地球環境保護に対応した、有害物質を使用しない材質(いわゆるグリーン材)の研究開発に注力。
・ブレーキは、開発手法の標準化により開発期間の短縮化、効率化を図り、原材料・部品の共通化を併せて原価低減を実施。
・ABS製品は、関連会社コンティネンタル・テーベス(株)で、グローバル市場に対応可能な次世代電子制御ブレーキシステムの開発を推進中。

その他事業(新エネルギー関連材料)
同社と日本無線は、世界トップレベルの18.2キロワット/リットルのパワー密度を実現した電気二重層キャパシタを、「第22回国際電気自動車シンポジウム(EVS22)に出展。キャパシタは電気自動車やハイブリッド車などで本格採用が期待される蓄電装置で、2次電池と比べて大電流を短時間で充放電できることが特徴。パワー密度の劣ることが弱点だったが、電極部分の材料、構造を最適化して内部抵抗を半減し、改善につなげた。低格電圧は3ボルト。(2006年10月20日付日刊自動車新聞より)

技術導入(ブレーキ製品事業) (2007年3月末現在)
会社名
(国名)
契約内容等 契約締結年月
(有効期間)
TMD Friction Holding GmbH
(ドイツ)
ブレーキライニング、ディスクパッドの製造技術及び原料配合に関するノウハウの提供ならびに製品の販売に対する援助
(クロスライセンス契約)
1991年11月~10年間(2001年11月以降1年毎自動延長)
TRW Automotive Inc.
(英国)
乗用車用ドラムブレーキアッセンブリィ、ブレーキバルブ及びその部品の設計ならびに製造技術に関するノウハウの提供ならびに製品の販売に対する援助(クロスライセンス契約) 1995年11月

2006年10月 (*1)
Meritor Heavy Vehicle Braking Sysytems (UK) Limited.
(英国)
ディスクブレーキアッセンブリィ、ドラムブレーキアッセンブリィ及びその部品の設計並びに製造技術に関するノウハウの提供 2003年11月

2008年11月
*1:契約満了に伴い、その変更に関して交渉中。


技術供与(ブレーキ製品事業) 
(2007年3月現在)
会社名
(国名)
契約内容等 契約締結年月
Rane Brake Linings Limited
(インド)
ブレーキライニング、ディスクパッド、クラッチフェーシングの製造技術、原料配合及び製造設備技術情報に関するノウハウの提供 2005年1月~
5年間
TMD Friction Holding GmbH
(ドイツ)
ブレーキライニング、ディスクパッドの製造技術及び原料配合に関するノウハウの提供ならびに製品の販売に対する援助
(クロスライセンス契約)
1991年11月~10年間(2001年11月以降1年毎自動延長)
亨通機械股份有限公司
[Heng Tong Auto Parts Inc.]
(台湾)
・ブレーキライニング、ディスクパッドの製造技術、原料配合及び製造設備技術情報に関するノウハウの提供
・提携製品の工場建設の指導
2005年12月~
5年間
亨通機械股份有限公司
[Heng Tong Auto Parts Inc.]
(台湾)
ディスクブレーキ及びその部品の設計ならびに製造技術に関するノウハウの提携 2002年12月

2007年6月
TRW Automotive Inc.
(英国)
乗用車用ドラムブレーキアッセンブリィ、ブレーキバルブ及びその部品の設計ならびに製造技術に関するノウハウの提供ならびに製品の販売に対する援助
(クロスライセンス契約)
1995年11月

2006年10月 (*1)
*1:契約満了に伴い、その変更に関して交渉中。

設備投資

設備投資費
(単位:百万円)
  2007年3月期 2006年3月期 2005年3月期 2004年3月期
全体 17,077 16,548 12,504 8,989
ブレーキ事業 4,546 5,177 5,290 3,489
ブレーキ製品事業において、豊田工場のブレーキ製造設備および館林工場の摩擦材製造設備に対して投資。

海外投資

-インド
2008年をめどにインドに生産進出。韓国子会社のセロン・オートモーティブ、資本・技術提携先の現地企業との3社合弁で新会社を設立することなどを含む、本格的なフィジビリティースタディー(FS)に着手した。進出方法の詳細や投資額などは2007年中に詰めるが、既存工場を買収・改良するなどで初期投資を抑える。同社の海外生産拠点は米国、韓国、タイ、中国(孫会社)に次ぐ5番目となる。インド進出のベースとなるのは、日清紡が1996年から10%出資し筆頭株主となっている摩擦材メーカーのRANEブレーキライニング(ニューデリー市)。現地の上場企業で、摩擦材では同国最大手。摩擦材でインド国内に3工場を擁し、現地自動車メーカーのマルチ、現代自動車、タタ、ホンダ、トヨタ自動車などにブレーキパッドなどを供給している。(2006年11月17日付日刊自動車新聞より)

-中国
2008年度までに中国工場の生産能力を倍増。韓国最大手の現代自動車や一部日系メーカーからの受注が増加基調にあり、自動車関連で唯一の中国拠点を増強し対応する。ブレーキの摩擦材は自動車生産の現地化にとって通常は最終段階となるため、海外での日系向け供給は大半が日本からの輸出で対応してきた。現代自からの大量受注を機に量産基盤を整え、将来的な日系向け供給体制の本格化に備える。(2006年11月27日付日刊自動車新聞より)

-タイ
2008年度までにタイでのブレーキ事業を2005年度実績に比べ40%引き上げる。ブレーキ部品の内製化率向上や生産性改善に続き、今後は受注活動の拡大と能力増強投資を加速。ブレーキ本体の生産能力に加え、ブレーキパッド(摩擦材)の開発・生産体制も強化する。これにより2005年度に14億バーツ(1バーツ=3.1円)だったタイ工場の売上高を3年後には20億バーツの大台に乗せる。同社タイ工場は、1996年に設立した日清紡ソンブーン・オートモーティブ・タイランド(NSA、ラヨン県)。ライニングの生産からスタートしたが、その後ドラムブレーキ、ディスクブレーキなどにも生産品目を拡大。最近では、日本以外のアジアでの主力生産拠点として大半のブレーキ関連部品を手掛ける。同社では2006年度からの3カ年計画で、繊維に次ぐ第2の柱である自動車部品事業に130億円の設備投資を行う計画。このうち半分強を海外投資に充てる見通しだが、NSAは生産性改善や増産投資で25億-30億円規模と最大の投資先となる。(2006年4月19日付日刊自動車新聞より)

国内投資
電気二重層キャパシタ(大容量蓄電装置)や燃料電池セパレータなどの化学品事業を大幅に強化する。2007年4月1日付で化学品事業本部を新設した上で、千葉工場(千葉県旭市)に約10億円を投じてキャパシタの量産設備を導入、同年秋にも生産を開始する。燃料電池セパレータも2008年をめどに千葉工場で生産体制を整える。(2007年1月11日付日刊自動車新聞より)