パナソニック (株) 2019年3月期の動向

業績

(米国基準、単位:百万円)
  2019年
3月期
2018年
3月期
増減率
(%)
備考
全社
売上高 8,002,733 7,982,164 0.3
営業利益 411,498 380,539 8.1 ー車載、インダストリアル、家電事業での収益悪化及び事業構造改革費用を計上したが、年金制度一部見直し、また資産売却等の一時益により増益
税引前利益 416,456 378,590 10.0 -
当社株主に帰属する
当期純利益
284,149 236,040 20.4 -

オートモーティブ&インダストリアルシステムズ
ー同事業部門売上高は前年比6%増の29,831億円。中国市況悪化によるインダストリアルの減販影響があったものの、オートモーティブ、エナジーが伸長し増収。営業利益は、オートモーティブ開発資産の減損などにより前年比370億円減の564億円となった。

組織再編

同社は28日、2019年4月1日付で全社組織体制の変更を行うと発表した。新たなカンパニー体制は、アプライアンス社、ライフソリューションズ社、コネクティッドソリューションズ社、オートモーティブ社、インダストリアルソリューションズ社に加え、中国・北東アジア社、US社の2社を新設し、計7社体制でスタートする。自動車関連では、AIS社を4月1日付でオートモーティブ社とインダストリアルソリューションズ社に分離、再編する。オートモーティブ社傘下には、インフォテインメントシステムズ事業部、HMIシステムズ事業部、車載システムズ事業部、フィコサ・インターナショナル、三洋電機オートモーティブエナジー事業部を組織再編の上、移管する。インダストリアルソリューションズ社傘下には、メカトロニクス事業部、産業デバイス事業部、三洋電機エナジーソリューション事業部、デバイスソリューション事業部、エナジーデバイス事業部、電子材料事業部、パナソニックセミコンダクターソリューションズを組織再編の上、移管する。パナソニック液晶ディスプレイについては事業部扱いを見直す。(2019年3月2日付日刊自動車新聞より)

 

トヨタとの合弁企業

ートヨタ自動車とパナソニックは22日、車載用角型電池事業に関する合弁会社の設立に合意したと発表した。2020年末までにトヨタが51%、パナソニックが49%を出資する新会社を設立し、角型リチウムイオン電池、全固体電池、次世代技術の研究開発から調達、製造、受注までを一貫して担う。トヨタは電池関連事業をすべて合弁会社に移管し、パナソニックはテスラに供給する円筒型電池事業と要素技術開発を除き移管する。両社の車載電池の経営資源を集め、世界ナンバーワンの開発・製造力の実現を目指す。パナソニックが窓口となりトヨタ以外にも幅広く販売する。新会社は両社から3500人が移り発足する。パナソニックは角型電池を製造する国内3工場と中国の1工場を移管する。新会社の生産能力や投資額は検討中としている。新会社はトヨタの子会社となる。トヨタ子会社のプライムアースEVエナジー (PEVE) は引き続きハイブリッド車 (HV) 用電池を主体に生産する。(2019年1月23日付日刊自動車新聞より)

 

事業動向

ーオートモーティブ&インダストリアルシステムズ(大阪府門真市)が中国・大連市に建設していた車載用角形リチウムイオン電池工場が量産出荷を開始したと発表した。同社はこれで日本、米国、中国の世界3極で車載用リチウムイオン電池の生産体制を構築、電動車両を製造する自動車メーカーのニーズに対応していく。中国で車載用リチウムイオン電池を製造するために設立した子会社のパナソニック オートモーティブエナジー大連の生産拠点が稼働した。同工場は車載用リチウムイオン電池の中でも高出力で高容量、安全性も高い角形電池を製造する。当面は環境規制の強化で、電気自動車(EV)やハイブリッド車(HV)、プラグインハイブリッド車(PHV)の需要拡大が見込まれる中国や北米向けに電池を出荷しその後に供給先を増やしていく方針だ。(2018年3月14日付日刊自動車新聞より)

 

協業

ドイツに本拠を置き車載インフォテインメントシステム用マルチメディア・ミドルウェアの開発を行うCinemoは、パナソニックの半導体事業部門パナソニックセミコンダクターソリューションズのSOC(System-On-a-Chip)シリーズ「Gerda」のサポートを発表した。GerdaベースのインフォテインメントユニットにCinemoのソリューションを組み込むことにより、高性能同期再生、超高速インデックス作成、コンテンツ共有を可能にする一方、個人が保有するCarPlayやAndroid Autoに対応したスマートフォンやタブレットなどの携帯機器でのRSE(リアシート・エンタテインメント)スクリーンを実現するという。(201912日付プレスリリースより)

ー同社は、モデルベース開発(MBD)などによる開発支援を手がけるAZAPA(名古屋市中区)と資本業務提携すると発表した。MBDを使った小型電気自動車(EV)向け電動パワートレーンの開発に加え、協業範囲をコックピットや先進運転支援システム(ADAS)分野に拡大する。(2018年4月11日付日刊自動車新聞より)

 

受注

ー米国現地法人Panasonic Automotive Systems Company of Americaは、プレミアムオーディオシステム「ELS STUDIO 3D」がAcuraRDX2019年モデルに採用されたと発表した。「ELS STUDIO 3D」は、4台のオーバーヘッドスピーカーと16台のスピーカーで構成され、合計アンプ出力は710W。ハイライン・オーバーヘッドスピーカーの装備により、3Dの音声イメージを作り出す。「ELS STUDIO 3D」は、2018年中頃からAcuraRDX」に装備される予定。(2018521日付各種報道より)

 

研究開発費

(単位:百万円)
  2019年3月期 2018年3月期 2017年3月期
全社 488,800 448,900 436,100
-オートモーティブ & インダストリアルシステムズ 225,900 190,000 189,600

 

研究開発動向

第5世代移動通信システム「5G」向けハロゲンフリー対応の超低伝送損失多層基板材料
ー同社オートモーティブ&インダストリアルシステムズは、第5世代移動通信システム「5G」などの通信インフラ機器に適した、ハロゲンフリー対応の超低伝送損失多層基板材料「Halogen-free MEGTRON6」を製品化、20194月から量産を開始すると発表した。同社は「5G」のサービス開始により、データ通信のさらなる大容量・高速伝送化が予想される中、通信ネットワークの基幹システムを支えるサーバ、ルータ等の中枢を担う多層基板材料にも、大容量・高速伝送に加え、環境への観点からハロゲンフリー対応の材料が要求されるとしており、独自の樹脂設計技術と配合技術により、ハロゲンフリーでありながら低伝送損失、高耐熱、高信頼性を実現した通信インフラ機器用の多層基板材料の製品化を実現したという。(2019121日付プレスリリースより)

次世代コックピットシステム「スパイダー2.0」
ー次世代コックピットシステム「スパイダー2.0」を開発し、「CES2019」で、一部顧客向けのプライベートスペースに展示した。複数のディスプレーやカメラを1台のSoC (システムオンチップ) で制御できる。1.0から新たにグーグルの「Android P」を採用したほか、ドライバーモニタリングシステム (DMS) を組み込んだ。デモ機では、交通情報や路面状況を取得するサービス、衛星ラジオや4K動画サービスの再生、車両の周囲に装着した四つのカメラを合成したサラウンドビュー機能などを実演した。また、車内用赤外線カメラとヘッドアップディスプレー (HUD) を組み合わせ、ドライバーの背丈や目の位置に合わせ、投影情報の照射位置を常時最適に変更できる新たなHUDシステムも展示した。 (2019年1月16日付日刊自動車新聞より)

モビリティサービスのための新技術
ーさまざまなモビリティサービスを支える新しい技術をCES 2019に出展すると発表した。同社は、CES2018に出展した「48v ePowertrainプラットフォーム」を進化させた最新技術を発表。このプラットフォームは、容積は同サイズながら2倍の出力を実現し、小型EVの軽量化や車室空間の拡大、走行距離の延長に貢献するという。「SPACe_C」は、下部の「48v ePowertrainプラットフォーム(駆動部)」上部にさまざまなキャビン(車室空間部)を自由に載せ替えることで、コストを抑えながら多目的な用途に対応し、さまざまな利用の可能性を拡げるソリューション。また、コネクティッドモビリティの世界を実現するV2Xプラットフォーム「CIRRUS by Panasonic」や、セキュリティ監視コストを大幅に削減する車載用サイバーセキュリティシステムなども出展予定。(201918日付プレスリリースより)

EV及びHV向け車載用導電性高分子ハイブリッドアルミ電解コンデンサー「ZSシリーズ」
ーオートモーティブ&インダストリアルシステムズ (AIS) 社は、ハイブリッド車 (HV) や電気自動車 (EV) に適した車載用導電性高分子ハイブリッドアルミ電解コンデンサー「ZSシリーズ」を製品化し、量産を開始すると発表した。ZSシリーズは、独自の新規構造とポリマー含浸工法の採用で、直径10ミリメートル、高さ16.5ミリメートルの形状でコンデンサーの内部抵抗の低減を図り、同社の従来品に比べて2.5倍の大電流化を実現した。また、独自の電極箔材料技術と新規構造設計により、電極箔の面積を拡大し、同じく1.8倍に大容量化した。これにより、コンデンサーの使用員数を減らし、基板の省スペース化が可能になる。(2018年9月22日付日刊自動車新聞より)

高耐熱性 二次実装アンダーフィル材 CV5794シリーズ
ーオートモーティブ&インダストリアルシステムズは、車載部品の実装信頼性を向上させる「高耐熱性 二次実装アンダーフィル材 CV5794シリーズ」を製品化し、201810月から量産を開始すると発表した。独自の樹脂設計技術により、車載用途に適した実装信頼性と、大型半導体パッケージの生産性向上に貢献する新製品は、冷蔵保存(5℃)ができ、取り扱いが容易で、輸送コストの削減も実現するという。主な用途として、車載カメラモジュール、車載通信モジュール(ミリ波レーダー用モジュール)、車載ECU(電子制御ユニット)、次世代コックピット/IVI(次世代自動車通信システム) などへの半導体パッケージや電子部品の実装補強が挙げられる。(201893日付プレスリリースより)

車載機器に適したガラスコンポジット基板材料
ーオートモーティブ&インダストリアルシステムズ社は、車載機器に適したガラスコンポジット基板材料を開発し、6月から量産開始すると発表した。新製品は独自の製造工法と樹脂設技術を使って板厚0.8ミリメートルの熱膨張係数を15~17ppm/度と業界最小を達成した。また、独自の樹脂設計技術によって耐トラッキング性の等級で業界最高クラスを達成したほか、独自の成型工程によって一般的なガラスエポキシ基板材料よりも優れた板厚精度を実現した。電子回路基板の安定作動が可能になり、基板製造での歩留まりの改善が図れる。車用インストルメントパネルや、電源・パワーデバイスモジュール基板などでの用途を想定している。(2018年6月12日付日刊自動車新聞より)

高耐振動対応面実装タイプ車載用パワーチョークコイル
ーオートモーティブ&インダストリアルシステムズが、HEVEV、ガソリン車などの車載ECU(電子制御ユニット)の電源回路に適した、高耐振動対応(50G以上)の面実装タイプ車載用パワーチョークコイル (10mm角サイズ) を製品化し、20184月から量産を開始すると発表した。車載ECUを構成する電源回路のノイズ除去や電源の平滑化に不可欠な、高い耐振動性、耐熱性および大電流に対応するチョークコイルを提供し、車載ECUの振動対策に貢献するとしている。(2018417日付プレスリリースより)

Time of Flight (TOF)方式長距離画像センサー
ー視認性の悪い夜間において250m先の物体を検知するTOF方式長距離画像センサーを開発。倍増性能を維持しながらアバランシェフォトダイオード(APD)画素の面積を大幅に低減する「APD画素化技術」と、高密度な距離画像を実現する「長距離計測画像化技術」を新たに開発し、採用。これらにより、三次元距離画像の長距離化と高解像度化の両立を可能とした。車載用距離測定及び暗闇における広域監視等への展開を想定する。

 

設備投資額

(単位:百万円)
  2019年3月期 2018年3月期 2017年3月期
全社 300,500 392,200 311,600
-オートモーティブ & インダストリアルシステムズ 172,200 226,000 195,000

 

設備の新設計画

(2019年3月31日現在)
  計画金額
(百万円)
主な内容・目的
全社 365,000 -
-オートモーティブ & インダストリアルシステムズ 160,000 -二次電池の増産、車載、インフォテインメント関連、電子部品等の新製品生産および増産

新中期戦略

ー同社内の「高成長事業」「安定成長事業」「収益改善事業」との区分を「基幹事業」「再挑戦事業」「共創事業」とし、低収益の車載事業(オートモーティブ、車載電池事業)を「再挑戦事業」として収益改善を図る。2018年度、角型車載電池においてはトヨタとの合弁会社を設立。3年後、グループ全体で1,000億円の利益貢献を狙う。