パナソニック (株) 2016年3月期の動向

業績

(米国基準、単位:百万円)
2016年3月期 2015年3月期 増減率 (%) 備考
全社
売上高 7,553,717 7,715,037 (2.1) -
営業利益 415,709 381,913 8.8 -
税引前利益 217,048 182,456 19.0 -
当社株主に帰属する当期純利益 193,256 179,485 7.7 -
オートモーティブ & インダストリアルシステムズ
売上高 2,540,754 2,625,351 (3.2) -北米において好調な車両販売が売上高を押し上げたものの、事業の縮小・撤退影響に加え、ICT (情報通信技術) 関連の電池・デバイスが落ち込んだ影響により、全体では減収。
営業利益 102,698 116,390 (11.8) -二次電池やインダストリアル事業の不振により、減益。

事業方針

-同社は成長事業と位置づける車載事業に注力する。2016年3月31日に都内で開いた事業方針説明会で、パナソニック全体で2018年度に売上高10兆円を目指す目標を撤回したものの、車載事業の売上目標は1千億円の引き下げにとどめた。車載事業では、次世代コックピットや先進運転支援システム (ADAS) 分野などに先行投資して収益の柱とする。事業戦略ではスペインのFicosa Internationalとの協業を加速することなどにより次世代コックピット事業を拡大する。18年度以降を見据え、ADAS分野や車載電池での開発強化、生産拠点の拡充にリソースを集中する。鉛蓄電池事業のGSユアサへの売却については「将来の発展に向けて一番良いと判断した」 (津賀一宏社長) と、収益改善を進める上で事業売却は多様なオプションの中の一つの選択肢と説明した。(2016年4月4日付日刊自動車新聞より)

車載事業の経営指標・方策
-2020年以降の目指す指標として、家電・住宅・車載事業については、営業利益率5%以上、営業利益3,000億円以上。

-2018年度の車載事業の売上高見通しは、当初計画の2.1兆円から1千億円引き下げ2.0兆円とした。

-環境領域では、全種類の電池技術を保有する強みと電源デバイス技術を発揮する。リチウムイオン電池の円筒形は米テスラモーターズのギガファクトリー内に設立した新工場で16年から量産を開始する予定。(2015年6月12日付日刊自動車新聞より)

参考) 事業方針:車載事業の事業内訳 (当初計画)
(単位:億円)
2018年3月期
(目標)
2016年3月期
(計画)
増減
(%)
強み・挑戦
売上高
快適領域 - コックピット事業 9,300 6,000 55.0 (強み) -家電AV・モバイル技術を車載へ応用できる。
(挑戦) -高投資効率の新事業/新商品を拡大
安全領域 - ADAS事業 4,700 3,100 51.6 (強み) -センシング・画像処理技術を保有。
(挑戦) -協業・M&A
    -検知から判断・表示までを手掛ける。
環境領域 - 電池・電源システム事業 7,000 4,200 66.7 (強み) -全種類の電池技術を保有。
    -電源デバイス技術を保有。
(挑戦) -旺盛な需要に機を逃さず対応。
合計 21,000 13,300 57.9 -

資本業務提携

-2015年7月、自動車部品メーカーのFicosa International (スペイン・バルセロナ) と資本業務提携を開始すると発表。両社の技術を融合した電子ミラー事業を早期に立ち上げるほか、先進運転支援システム (ADAS) 分野などでも協業を拡大する。両社は昨年9月に資本業務提携の合意を発表した。関係当局の承認など諸条件が整い、6月30日に出資および株式譲渡を完了した。パナソニックはFicosa株の49%を取得。Ficosaへの経営参画に伴い取締役4人を派遣する予定だ。将来的な資本や業務、技術での提携強化についても検討を継続する。(2015年7月3日付日刊自動車新聞より)

事業譲渡

-2015年10月、パナソニックが保有する鉛蓄電池事業の譲渡に関して、GSユアサ (京都市南区) と基本合意を締結した。日本、中国、インドの3カ国でパナソニック子会社の株式を譲渡するほか、タイでは鉛蓄電池の事業を譲り渡す。堅調な成長を続けるアジア市場や需要の拡大が見込まれる新興国に焦点を当て、両社の知見を融合することで制御弁式鉛蓄電池やアイドリングストップ車用鉛蓄電池の製造・販売を加速する。(2015年10月31日付日刊自動車新聞より)


合弁事業

-2016年2月、中国・大連市に車載電池製造の合弁会社を設立したと発表。ハイブリッド車 (HV) や電気自動車 (EV) など環境対応車向けに角型のリチウムイオン電池を供給する。車載用の角型リチウムイオン電池を海外で生産するのは初めて。今後の中国での需要拡大に対応する。新会社はPanasonic Automotive Energy Dalian Co., Ltd. [大連松下汽車能源有限公司]。資本金は2億7300万元 (約48億円) で、同社中国法人と大連遼無二電器 (劉国臣董事長) が50%ずつ出資する。董事長は劉氏が、総経理は山西伸和氏が就任した。2017年からHVやEVなど環境対応車用のリチウムイオン電池を生産する予定。(2016年2月8日付日刊自動車新聞より)

運行管理システムを拡充

-2015年12月、カーナビを利用した運行管理システムを拡充すると発表した。多拠点で車両を管理する事業者をターゲットに、データの一元管理ができるクラウドサービス「ドライブボス」を1月下旬に販売開始する。カーナビを利用した簡易型の運行管理システムは、専用機器が不要のため低コストで導入できるのがメリット。同社では中小企業の営業車両などをターゲットにした運行管理車両の市場規模を130万台とみる。(2015年12月4日付日刊自動車新聞より)

受注

-独Volkswagenは、新型プラグインハイブリッド車 (PHV)「Golf GTE」にパナソニック製電池を搭載した。中長期的に共通システムを活用してVolkswagen、Audi車の商品構成を拡充する方針で、パナソニック製の拡大が見込まれる。(2015年11月24日付日刊自動車新聞より)

-スズキの新型「Alto Lapin」、「Spacia」のXグレード、「Spacia Custom」のXSグレードに、脱臭効果や菌・ウイルスの発生を抑制する効果のある「nanoe (ナノイー)」技術が採用されたと発表した。放電部、冷却機構を効率化し、従来品に比べ消費電力を50%、重量を約30%それぞれ削減した。オートエアコンに組み込まれ、エアコンの空調と連動して、ナノイーをフロントのエアコン吹き出し口から放出する。(2015年6月5日付日刊自動車新聞より)

2017年3月期の見通し

(IFRS基準、単位:百万円)
2017年3月期
(予想)
全社
売上高 7,600,000
営業利益 310,000
税引前利益 300,000
当社株主に帰属する当期純利益 145,000
オートモーティブ & インダストリアルシステムズ
-売上高 2,640,000
-営業利益 100,000

-2017年3月期よりIFRSを任意適用予定。当業績予想はIFRSに基づき作成されているため、対前期増減率は提示していない。

>>>次年度業績予想 (売上、営業利益等)

研究開発費

(単位:百万円)
2016年3月期 2015年3月期 2014年3月期
全社 449,800 457,300 478,800
-オートモーティブ & インダストリアルシステムズ 189,500 181,200 170,000


-2017年3月期の研究開発費は、全社で470,000百万円を見込む。

研究開発体制

-2014年4月、「ADAS開発センター」を設立。各種デバイスや画像関連技術など全社の知見を結集した研究開発を加速。「後方接近物検知システム」「緊急ブレーキシステム」などを開発・受注している。今後も自動車メーカーと新規技術の共同開発を進め、社会課題の解決に貢献するとともに、ADAS分野での事業拡大を目指す。カメラモジュール、バック&コーナーセンサー、角速度センサー、加速度センサー、舵角センサー、コンバインセンサー、電子制御ユニット (ECU) などの連携により、ドライバーの「認知・判断」をサポートするシステムを提案してゆく。

研究開発活動

<全社>
-それぞれのセグメントにおいて、成長を目指し、急速に発展するIoT、ロボティクス技術や環境課題への貢献に向けた技術の開発に注力。

<オートモーティブ & インダストリアルシステムズ>
-車載向けなどのインフォテインメント関連機器、二次電池をはじめとした電子部品、電子材料等の研究開発を行っている。

製品開発

インテリジェントリアビューミラー
-リアビューミラーにディスプレイを組み込んでおり、必要に応じてミラーとしても、車両後部に設置されたカメラの画像のモニターとしても使用することができる。Ficosa Internationalとの提携開始以降、両社が初めて開発した製品で、従来のミラーに比べて後方視野を2倍超となる50度に拡大した。また、パナソニックのLCDスクリーンも使用している。FicosaはこのIRMSの採用に関して、すでに複数の自動車メーカーと提携を進めており、2018年はじめごろまでにはこのシステムを採用した車両が販売されると見込んでいる。(2016年3月30日付プレスリリースより)

静電容量方式曲面タッチパネル
-カーナビゲーションなどの表示画面向けの「静電容量方式曲面タッチパネル」を2015年9月末から量産すると発表した。樹脂製カバーパネルと高感度フィルムセンサーの一体型で、コックピットのデザイン性向上に貢献するほか、スマートフォンのような軽快な操作性を実現できる。高感度フィルムセンサーにより、手袋での操作やマルチタッチ対応で操作性も向上するという。(2015年8月14日付日刊自動車新聞より)

伸縮自在なストレッチャブル樹脂フィルム
-熱可塑性樹脂に、特徴である3次元架橋構造を生かした独自の樹脂設計技術を採用することで、伸縮自在で繰り返し使用可能なフィルム状の絶縁材料を開発した。併せて、この材料を用いたストレッチャブル樹脂をベースに、繰り返しの伸縮によっても導電性が維持できる透明電極材料や配線用導電ペーストも開発。これにより、衣服や体に付けるなど、あらゆる形に追従できる柔らかく、しなやかなエレクトロニクスデバイスが実現でき、ウェアラブル、センサー、ディスプレイ、ロボットなど幅広い分野への適用が期待される。

ヘッドアップディスプレイユニット
-車の曲面形状のフロントガラスに、ナビ情報などを画面歪みのない状態で投影することができる特殊な形状のミラーを開発。業界最小*のヘッドアップディスプレイユニットを実現した。*2014年12月9日現在同社調べ

電磁ノイズ抑制・熱拡散一体シート
-電磁ノイズを抑制する効果のある均質な金属磁性粒子を樹脂中へ高密度に配向分散できる分散・圧縮プロセス技術を独自に開発。これまで困難だった高い電磁ノイズ抑制能力とシートの薄型化の両立を実現した。また、電磁ノイズ抑制効果を有する機能性接合層を開発し、電磁ノイズ抑制シートに付与する一体貼りあわせ技術を採用することで、熱拡散特性とノイズ抑制特性を向上している。これにより、業界で初めて1枚の薄型シートで熱とノイズの対策を同時に行うことができ、機器設計の簡素化と効率化を実現している。

赤外線アレイセンサーを用いた温冷感推定アルゴリズム
-赤外線アレイセンサー「Grid-EYE (グリッドアイ)」を用いた温冷感推定アルゴリズムを開発したと発表した。人の温熱快適性を見分ける高精度な温冷感センシングソリューションとして、自動車の空調制御などに活用することで省エネと快適性の両立に貢献する。奈良女子大学生活環境学部の久保博子教授との共同研究により、グリッドアイを用いた放熱量算出による温冷感推定アルゴリズムを開発した。同アルゴリズムは人の表面温度と周囲温度の差から人の放熱量を算出し、暑さや寒さなど人の感覚を見分けることが可能。一人ひとりの体感温度に合わせた空調制御を実現できる。(2016年3月29日付日刊自動車新聞より)

レーザー溶着用ポリブチレンテレフタレート(PBT) 樹脂成形材料
-業界最高のレーザー光透過率で高強度溶着を実現した「レーザー溶着用ポリブチレンテレフタレート(PBT) 樹脂成形材料」を製品化したと発表した。車載用スイッチやセンサーなどの工程を削減でき、長期信頼性や設計自由度の向上に貢献する。3月から本格量産を開始する。(2016年2月24日付日刊自動車新聞より)

パワーデバイス向けの高耐熱半導体封止材
-電力の変換や制御を行うパワーデバイス向けの高耐熱半導体封止材を製品化したと発表した。産業用や車載用パワーデバイスの性能向上に貢献する。10月にサンプル対応を、2016年12月に量産を開始する。(2015年10月9日付日刊自動車新聞より)

高出力の青紫半導体レーザー
-高出力の青紫半導体レーザーを開発したと発表した。独自の両面放熱構造で光出力を向上し、一般的にレーザー動作温度の上限であるセ氏60度でも従来品比1.5倍の4.5ワットの高出力動作を実現した。レーザーの搭載数を削減でき、システムの小型化と低消費電力化につながる。(2015年10月6日付日刊自動車新聞より)

低電圧での動作にも対応するGaNダイオード
-従来の4倍となる大電流動作ができ、低立上り電圧のため低電圧での動作にも対応するGaNダイオードを開発した。これは新たに低電圧で電気を流す部分と、高電圧に伴い大電流化された場合に電気が通る部分をそれぞれ別に備えたハイブリッド構造にすることで実現している。大電力を必要とする車載・産業機器の電圧変換回路やインバータ回路に使用することで変換効率の向上が実現でき、省エネルギー化・小型化に大きく貢献するという。(2015年9月30日付プレスリリースより)

設備投資額

(単位:百万円)
2016年3月期 2015年3月期 2014年3月期
全社 248,800 226,700 217,000
-オートモーティブ & インダストリアルシステムズ 116,300 107,700 85,400


-2016年3月期、オートモーティブ & インダストリアルシステムズの投資の主な内容は、

  • 二次電池の増産
  • 車載、インフォテインメント関連、電子部品等の新製品生産および増産

設備の新設計画

(2016年3月31日現在)
計画金額
(百万円)
主な内容・目的
全社 345,000 -
-オートモーティブ & インダストリアルシステムズ 185,000 -二次電池の増産
-車載、インフォテインメント関連、電子部品等の新製品生産および増産



海外投資

<タイ>
-タイ子会社のPanasonic Manufacturing Ayuthaya Co., Ltd. (PMFAT)で車載部品用耐熱フェノール樹脂成形材料を生産すると発表した。生産ラインを新設し、2016年2月に本格稼働する。当初の月産能力は250トン。タイで車載用の同材料を生産するのは業界初(AIS調べ)で、東南アジアで高まる現地生産の要求に対応する。(2015年12月24日付日刊自動車新聞より)

<中国>
-パナソニックエコシステムズ(愛知県春日井市)は9日、中国・蘇州にディーゼルエンジン(DE)用排ガス浄化触媒フィルターの生産工場を新設したと発表した。12月から生産を開始し、現地のエンジンメーカーに供給する。同社のDE用触媒の受注は今回が初めてとなる。工場の新設に合わせて今後、DE触媒事業を本格的に展開し、2018年度に100億円規模の販売を目指す。(2015年11月10日付日刊自動車新聞より)