パナソニック (株) 2015年3月期の動向

ハイライト

業績

(単位:百万円)
  2015年3月期 2014年3月期 増減率 (%) 備考
全社
売上高 7,715,037 7,736,541 (0.3) -車載関連事業が牽引
営業利益 381,913 305,114 25.2 -
税引前利益 182,456 206,225 (11.5) -
当社株主に帰属する当期純利益 179,485 120,442 49.0 -
オートモーティブ & インダストリアルシステムズ
売上高 2,620,809 2,563,709 2.2 -不採算事業の縮小や事業譲渡などによる販売減があったものの、車載事業の需要が北米や欧州地域を中心に海外で堅調に推移したことに加え、円安による増収効果により、全体として増収。
営業利益 105,677 69,150 52.8 -為替の影響に加え、液晶パネルや半導体事業をはじめとする構造改革効果や合理化推進により、増益。

海外事業

<米国>
-米Tesla Motorsの電気自動車 (EV) 向けリチウムイオン電池を生産する新会社Panasonic Energy Corporation of North Americaを設立したと発表。資本金500万ドル (約5億4千万円) をPanasonic Corporation of North Americaが出資して2014年10月1日付で設立した。Teslaがネバダ州Sparksに建設する建屋面積55万5千平方メートルの大規模電池工場 「ギガファクトリー」内で生産する。「ギガファクトリー」は電気自動車 (EV) 向けのリチウムイオン電池セル、モジュール、パックの生産拠点で、生産はパナソニックを始めとする仕入先が担当する。2020年までに年間35ギガワット/時相当のセルと50ギガワット/時相当のパックを量産する計画。従業員数は同年までに6500人になる見通しだ。リチウムイオン電池の生産コストを大幅に低減することで、新型車 Tesla 「Model 3」への搭載が予定されている。

<スペイン>
-2014年9月、スペインの自動車部品メーカー大手Ficosa International (本社=バルセロナ) と資本業務提携の出資契約を締結した。Ficosaの第三者割当増資を引き受け、発行済み株式の49%を取得する。株式の取得金額は200~300億円。Ficosaは2013年12月期の売上高が925百万ユーロ (約1,300億円)。自動車ミラーでおよそ2割の世界シェアを持ち、カメラで撮影した映像を画像処理し、車両周辺の物体を認識する技術を保有している。パナソニックは、自動運転技術の共同開発を視野にFicosaの取得を通じてクルマとITの融合を進める意向とみられる。

合弁事業

<インド>
-インドの自動車部品メーカー、Minda Industriesと鉛蓄電池の開発、生産、販売を手がける合弁会社を同国ニューデリーに設立すると発表。二輪・四輪車や無停電電源装置 (UPS) 向けの鉛蓄電池の市場拡大に対応する。2014年11月に新会社を設立、2015年10月以降に稼働する。資本金は16億ルピー (約25.9百万ドル) で、出資比率はパナソニックが60%、Uno Mindaが40%。年産能力は、2018年に200万個を見込んでいる。パナソニックは同国市場を開拓、Mindaは鉛蓄電池の製品ラインアップを拡充することで、事業拡大につなげる。

組織再編

<欧州>
-パナソニックヨーロッパは、欧州の車載・産業分野のグループ会社を統合して新会社を設立したと発表。営業や技術サポートの体制を一本化して事業活動を効率化するとともに、2018年度までに2013年比で売上高の倍増を目指す。Panasonic Automotive Systems Europeを存続会社とし、Sanyo Components Europe、Panasonic Industrial Devices Sales Europe、Panasonic Electric Works Europeを統合。2014年10月1日付でPanasonic Automotive & Industrial Systems Company Europe (PAISEU) を設立した。 (2014年10月7日付日刊自動車新聞より)

<日本>
-パナソニック オートモーティブ&インダストリアルシステムズ社 (AIS社、大阪府門真市) は、電子部品や電源モジュール、スピーカーなどを手がけるデバイス分野の国内生産拠点を2015年3月までに再編すると発表。スピーカーや車載電源モジュールを生産する松阪工場のすべての機能を本社、津山工場 (岡山県津山市)、本宮工場 (福島県本宮市) に集約する。移管後は松阪工場の稼働を停止し、同工場の従業員は他拠点やグループ内で異動、再配置する予定。間接部門の重複などを解決した上で事業の効率化を図る。 (2014年9月10日付日刊自動車新聞より)

車載事業成長戦略

-パナソニックオートモーティブ&インダストリアルシステムズ社は主力の車載事業で2019年3月期に売上高2兆1千億円を目指す。次世代コックピットなどのインフォテインメントと先進運転支援システム (ADAS)、電池・電源システムの3事業を強化し、2015年3月期比で約7割増となる目標の達成につなげる。快適領域では家電AVやモバイル技術を車載に応用し、インフォテインメント事業を拡大する。HMI (ヒューマンマシンインターフェース) 表示技術を核にしたヘッドアップディスプレーや資本業務提携で合意したスペイン・Ficosa社と共同開発する電子ミラーなどの新事業に力を注ぐ。安全領域では車載カメラモジュールや超音波センサーなどのセンシング技術と画像処理技術を融合し、他社との協業も含めてADAS事業を強化する。環境領域では全種類の電池技術を保有する強みと電源デバイス技術を発揮する。 (2015年6月12日付日刊自動車新聞より)

車載事業で2019年3月期に売上高2兆1千億円達成するための事業内訳 (単位:億円)
  2018年3月期
(目標)
2016年3月期
(計画)
増減
(%)
強み・挑戦
売上高
快適領域 - コックピット事業 9,300 6,000 55.0 (強み) -家電AV・モバイル技術を車載へ応用できる。
(挑戦) -高投資効率の新事業/新商品を拡大
安全領域 - ADAS事業 4,700 3,100 51.6 (強み) -センシング・画像処理技術を保有。
(挑戦) -協業・M&A
     -検知から判断・表示までを手掛ける。
環境領域 - 電池・電源システム事業 7,000 4,200 66.7 (強み) -全種類の電池技術を保有。
      -電源デバイス技術を保有。
(挑戦) -旺盛な需要に機を逃さず対応。
合計 21,000 13,300 57.9 -

受注

-パナソニックオートモーティブ&インダストリアルシステムズ社 (AIS社) は、車載用ニッケル水素電池を用いたエネルギー回生システムがアイドリングストップ車の日産 「DAYZ Roox」 と三菱 「eK Space」 に採用されたと発表した。採用された「12Vエネルギー回生システム」は、鉛電池の電圧に合わせて設計したため変圧器を使用せずに従来のアイドリングストップシステムに搭載できる。 (2014年2月14日付日刊自動車新聞より)

-パナソニック オートモーティブ&インダストリアルシステムズ社 (AIS社) は、小型化・省電力化した「ナノイー」デバイスがトヨタの新型 「Voxy」 と 「Noah」 のフロントオートエアコンに採用されたと発表。放電部と冷却機構を高効率化、従来のデバイスと比較して消費電力を50%、重量を30%削減した。また、ナノイーに含まれるラジカルの発生量を従来比1.5倍に向上した。エアコンのブロアと連動してナノイーをエアコンの吹き出し口から放出する。ナノイーが標準装着のグレードは 「Noah」 のG、ハイブリッドGと、「Voxy」 のV、ハイブリッドVとなっている。AIS社は、ナノイーの発生部、駆動回路、ファン、駆動時のノイズを抑制するシールド板を一体化したモジュールを納入する。エアコンへの搭載は、これまで国内自動車メーカーの19車種で実績がある。 (2014年1月23日付日刊自動車新聞より)

2016年3月期の見通し

(単位:百万円)
  2016年3月期
(予想)
2015年3月期
(実績)
増減
(%)
全社
売上高 8,000,000 7,715,037 3.7
営業利益 430,000 381,913 12.6
税引前利益 300,000 182,456 64.4
当社株主に帰属する当期純利益 180,000 179,485 0.3
オートモーティブ & インダストリアルシステムズ
-売上高 2,835,000 2,620,809 8.2
-営業利益 142,500 105,677 34.8


>>>次年度業績予想 (売上、営業利益等)

研究開発費

(単位:百万円)
  2015年3月期 2014年3月期
全社 457,300 478,800
-オートモーティブ & インダストリアルシステムズ 181,200 170,000

-2016年3月期の研究開発費は、全社で470,000百万円を見込む。

研究開発体制

-それぞれのカンパニーにおいて、成長戦略に基づき、強みを持つ事業をさらに強化すべく、将来を担う新技術や新製品の開発に注力。
-新規領域における中長期の革新的な研究は、新設の先端研究本部がその役割をを担っている。

<オートモーティブ分野>

主要開発部門 所在地
オートモーティブ事業開発センター 神奈川県横浜市
eコックピット事業開発室 大阪府門真市
商品開発センター 神奈川県横浜市
グローバル基盤技術開発センター 神奈川県横浜市
グローバル生産革新センター 長野県松本市
Panasonic Automotive Systems Company of America (PASA) 米国ジョージア州
(カーオーディオ)
Panasonic Automotive Systems Europe GmbH (PASE) ドイツ ランゲン市
天津松下汽車電子開発有限公司 (パナソニックAS開発天津有限会社: PASDT)
[Panasonic Automotive Systems Development Tianjin Co., Ltd.]
中国天津市
(カーオーディオ、カーナビ)
Panasonic Automotive Systems Asia Pacific (Thailand) Co., Ltd. (PASAP) タイ サムットプラカーン

共同開発

-同社と独Infineon Technologiesは10日、窒化ガリウム (GaN) を素子とするパワーデバイスを共同開発することで合意したと発表。両社が持つ技術を共有してパワーデバイスを高性能化するとともに2社で供給体制を整えることで、GaNパワーデバイスの普及拡大につなげる。 (2015年3月11日付日刊自動車新聞より)

-トヨタと共同でクルマと家電をつなぐサービスの開発を進めていると発表。便利で快適なスマートモビリティ社会の実現を目指し、2014年後半に新たなクラウド連携サービスの提供を開始する計画。 (2014年6月9日付プレスリリースより

製品開発

<オートモーティブ & インダストリアルシステムズ>
-車載向けなどのインフォテインメント関連機器、二次電池をはじめとした電子部品、電子材料等の研究開発を行っている。

業界最小のヘッドアップディスプレイ
-家電で培った光学技術を車載用ヘッドアップディスプレイに展開。車の曲面形状のフロントガラスに、ナビ情報などを画面歪みの無い状態で投影することができる特殊な形状のミラーを開発することで、業界最小のヘッドアップディスプレイユニットを実現した。

ナノファイバーを常温で大量生産できる製造技術
-紡糸ノズル内のポリマー溶液に高電圧を加えてナノファイバーにする方法に独自の工夫を加え、常温で様々な高分子のナノファイバー化が可能な製造方法を開発した。

業界最小、低損失なSiC (炭化ケイ素) パワーモジュール
-同社の持つSiCパワートランジスター技術と (株) 三社電機製作所の持つパワーモジュール工法の強みを生かし、複数のSiCトランジスターを組み込んだ、業界最小のSiCパワーモジュールを共同開発した。従来比で約1/3の小型化とともに、電力変換損失の要因となるオン抵抗の低減も実現した。

高速マルチユーザー伝送に向けた無線通信技術
-4K・8K映像などの大容量データを複数の端末で同時に送受信でき、最大2Gbpsの通信速度を実現する60GHz帯無線LAN規格に対応した高速無線技術を開発した。

設備投資額

(単位:百万円)
  2015年3月期 2014年3月期
全社 226,700 217,000
-オートモーティブ & インダストリアルシステムズ 107,700 85,400


-2015年3月期、オートモーティブ & インダストリアルシステムズの投資の主な内容は、

  • 二次電池の増産
  • 車載、インフォテインメント関連、電子部品等の新製品生産および増産

設備の新設計画

(2015年3月31日現在)
  計画金額
(百万円)
主な内容・目的
全社 285,000 -
-オートモーティブ & インダストリアルシステムズ 133,000 -二次電池の増産
-車載、インフォテインメント関連、電子部品等の新製品生産および増産