Pirelli & C. S.p.A. 2007年度の動向

ハイライト

業績
(単位:百万ユーロ) 2007年12月期 2006年12月期 増減率(%) 要因
売上高 4,161.7 3,949.5 5.4 (1)
営業利益 358.1 342.3 4.6 (2)

要因
(1)
-最終四半期における欧州でのウインタータイヤの販売は不振であったものの、販売量の伸び(+1.8%)が売上高を押し上げた。その他のプラス要因は、価格/製品ミックス(+4.7%)、高付加価値製品に販売が集中したため。

-為替レートはマイナス要因(-1.1%)。これは主に米国ドル安に起因。

-成長市場での販売は好調を持続。特に高い生産水準を確保できた国々は、中国、南米、ルーマニアなどで、ルーマニアは好調を続ける東欧市場n販売活動の側面を担った。

-北米の売上高はドル表示では高い水準であったが、ドル安により、ユーロベースでは前年度と同じ水準に留まった。

(2)
-売上高営業利益率は8.6%で基本的に前年と同じレベル。販売の伸びと価格/製品ミックス傾向、生産性向上と原価低減の相乗効果などが、生産コストの上昇分など各種マイナス要因をほぼ吸収した。厳しい経済環境のなかで、研究開発費はほぼ昨年並みの水準を確保した。


製品別事業概況
-アフターマーケットが安定している一方、OEメーカーへの供給が減るなどの市場背景はあるが、北米における乗用車・小型トラック部門は成長。一方、南アメリカ市場ではOEメーカーへの供給が好調で売上高増。 欧州市場も同様に、OEメーカーへの供給とアフターマーケットでの高付加価値製品の販売が増えた。ただし、ウインタータイヤだけは、最終四半期が特に不調で需要の落ちこみによる影響を受けた。アジア、アフリカ、太平洋地域では、同地域への投資が功を奏し極めて好調であった。

産業用タイヤ
-産業用タイヤ販売は7.1%上昇し1,300百万ユーロを計上。営業利益額は3.8%伸び105.6百万ユーロ。利益の売上高比率は前年からの微減(0.3%)で8.1%。これは、天然ゴム、鉄鋼などのコストアップ要因によるもので、価格調整や製品ミックスでは対応しきれなかった。欧州市場のトラック用タイヤは上半期のアフターマーケットに引き続き、下半期も比較的好調に推移。また、OEメーカーへの供給は年間を通して好調。東欧のトラック市場が活況を呈していたことがこれらの背景。南アメリカでは、アフターマーケット、OEマーケットともに好調。アフターマーケットでは農耕機械用タイヤ、OEメーカーでは農耕機械分野ほか経済状況が良かったブラジルを中心に新型モデルの立ち上がりがあったことなどが理由にあげられる。アフリカと中近東では、一般仕様タイヤをタイヤラジアルタイヤに切り替える傾向が継続し、また、中国では10%以上の販売増を記録した。このような世界の需要を背景として、同社の販売は南アメリカ、アジア・大洋州での販売量を増やし、欧州、アフリカ、中近東での高付加価値製品の品揃えや集中活動を推進した。

スチールコード
-スチールコードの販売と生産はともに対前年比で4%伸びた。世界需要は約6%伸びたがこれは国内消費伸び率が25%近くをマークしている中国市場が主たる要因。南アメリカと東ヨーロッパでも需要増があった。これは生産拠点の移動や拡張が引き続き行われたことが要因。成熟市場である北米と西欧はさらに減少。日本と韓国での需要はコンスタントに推移した。

開発動向

研究開発費
(単位:百万ユーロ) 2007年度 2006年度 2005年度
研究開発費 148 147 146
売上対比 3.6% 3.7% 4.0%

-同社の研究開発は、伝統的に新規の高性能製品(UHP、ウインタータイヤ、ランフラット、SUV及び二輪車用タイヤ等)の開発に重点を置いており、そのために材料、デザイン、プロファイル、トレッド・パターン並びに生産工程分野における徹底的な研究の成果である先進的なノウハウや技術的構成部品を活用している。 製品ポートフォリオの改革・革新を継続するために、新しいタイプのポリマーやナノテクノロジーの調査・適用を通して革新的なソリューションを開発するための研究が進行中である。


開発体制
-2007年7月、イタリアのPiedmont Regional Authority(ピードモント州)、Turin Provincial Authority(トリノ県)、Settimo Torinese Municipal Authority(セッティモ・トリネーゼ市)、Settimo Torineseに、乗用車/商用車用タイヤを生産するための、最先端の技術・産業センターを建設することに関する基本合意書に調印した。同社 は、Settimo Torineseに、既に2ヵ所の拠点を構えている。当地域の産業再生計画に基づく技術・産業センターの新設にともない、同社は、現在Settimo Torineseの乗用車用タイヤ工場が行っている生産を、同じSettimo Torineseのトラック用タイヤ工場に移管する。

-2007年7月、ルーマニア国内の2ヵ所に、統合型の産業・技術拠点の新設を発表。高性能タイヤの生産技術を向上させ、中/東欧地域のタイヤ市場において圧倒的な市場占有率確保を目指すと同時に、新たに排気微粒子除去フィルター(DPF)事業を立ち上げるのが狙い。ルーマニアにおける新たな事業基盤拡充にともなう一連の投資は、総額約2億3,500万ユーロに上る見通し。中核となるのは、乗用車/SUV向けの高性能タイヤ生産を手掛けるスラティナ(Slatina)工場。Slatina工場は、2006年末に竣工、創業初年度終了時における生産能力は当初予測に沿った水準で伸びており、2008年には、高性能タイヤの年産能力を現行の200万本余りから約400万本に増強する計画。一方、新工場の建設にも着手している。ゴルジ(Gorj)に建設中の新工場では、主に排気微粒子除去フィルターの量産を行う計画で、2008年後半に稼動予定。


技術提携
-2007年度に世界の有名大学と技術開発に関する覚書に署名。広範囲な協力について合意されたプロジェクトにはルーマニアCraiova大学の工業オートメーション学部とのものが含まれる。この研究のひとつとして、生産工程のモニタリングシステムーチップを使った電波の遠隔モニタリング(RFID)の開発がある。イタリアPolitecnico University di Torino大学と同社技術を駆使したハイテク生産工程と製品の開発を開始。生産工程に関してはMIRS™(Modular Integrated Robotized System) の次世代型とCCM™(Continous Compound Mixing System)の開発を行っている。新製品分野では、サイバータイヤを精力的に開発。このタイヤは車体からの情報伝達を解析し、路上でのさらなる安全性を追求する新規製品。


新製品開発
-2007年に、ドバイのレース場でP Zero the Heroを発表。この超高性能タイヤは同社のモータースポーツの経験から生み出された技術。

設備投資

設備投資額
(単位:百万ユーロ) 2007年度 2006年度 2005年度
タイヤ部門 262 224 208

乗用車向け
-新規次世代型MIRS(Modular Integrated Robotized System)の工場設置が始まった。欧州工場の従来型生産工程では、生産能力の高性能製品への集中と既存機械設備の改造と更新を進めている。成長市場への対応と同時に生産コストを引き下げることを目的として低コスト地域での生産を拡大した。特に、中国Yanzhou工場の竣工とルーマニアSlatina工場の設備拡張があげられる。トルコではモータースポーツ用タイヤの生産工場がIzmitで稼働を開始。

大型トラック向け
-ブラジル、エジプト、中国などの低コスト地域を中心として生産量の拡大をはかった。又、MIRS技術より生まれた革新的なSATT (トラック向けSpiral Advanced Technology)技術を応用した新しいAmaranto製品ラインの生産拡大がSettimo Torinese工場でおこなわれている。この生産ラインはトルコのIzmit工場に設置された。

スチールコード
-ルーマニアとブラジルの新工場を中心とした生産拡張計画が継続中。イタリアでは、新製品の試作品開発と材料の開発の研究に集中して努力している。