Faurecia S.A. 2015年12月期の動向

ハイライト

業績

(単位:百万ユーロ)
  2015年
12月期
2014年
12月期*1
増減率
(%)
要因
売上高 18,770.4 16,876.6 11.2 1)
営業利益 830.0 595.4 39.4 2)
部門別売上高
-シート 6,188.2 5,309.1 16.6 -
-排気コントロール 7,450.0 6,747.4 10.4 -
-内装システム 5,018.6 4,709.3 6.6 -
-外装 2,035.1 2,063.1 (1.4) -
-IFRS5による修正 (1,921.5) (1,952.3) - -

*1: 国際会計基準IFRS5号「売却目的で保有する非流動資産及び非継続事業」により修正されている。

要因
1) 売上高
-2015年12月期の売上高は、前年比11.2%増の18,770.4百万ユーロ。
-地域別では、欧州地域での売上高が前年比8.7%増。 (車両生産台数の伸び率は3.8%。)
  北米地域での売上高が前年比5.2%増。 (同2.7%)
-納入先別では、Renault-Nissan向けの売上が前年比23.8%増。 (欧州:26.9%増、北米:28.4%増)

2) 営業利益
-2015年下期の売上高営業利益率は4.8%を記録。これは2013年に立てた2016年の目標値を達成している。

売却

-2015年12月、同社はCompagnie Plastic Omniumに自動車外装部門 (バンパーおよびフロントエンドモジュール) を売却することで合意したと発表。売却金額は665百万ユーロ。複合材事業としてFaureciaが 「Smart」 向けに納入しているフランスのHambach工場、ブラジルと中国の合弁会社2社は、今回の取引に含まれていない。売却手続きは2016年に完了する見込 み。(2015年12月14日付プレスリリースより)

合弁事業

<中国>
-東風汽車が過半数株式を所有する東風鴻泰 (Dongfeng Hongtai) と折半出資により設立した合弁会社 「東風佛吉亜内飾公司 [Dongfeng Faurecia Automotive Interior Company]」 は、2015年11月、武漢開発区 (Wuhan Economic&Technological Development Zone) で工場建設を開始した。工場の建築面積は約30,000平方メートル。2016年8月までに完成、稼働開始を予定している。年産能力は100万セット。さらに第2フェーズとしてテストセンターとシート・排ガス研究センターも建設する計画。武漢工場は主にインストパネル、ドアパネル、遮音部品、内外装プラスチック部品などを生産し、神龍汽車、東風乗用車、Renault、東風ホンダなどに供給する。2020年には売上高30億元超を見込む。また、同じく東風鴻泰 (Dongfeng Hongtai) との間で設立した合弁会社 「Dongfeng Faurecia Automotive Exterior Company」 は、四川省成都 (Chengdu) に新工場を建設し、外装部品を東風汽車と傘下の自動車関連子会社に納入する予定。 (2015年7月31日付および同11月31日プレスリリースより)

-2015年10月、内装・外装トリムシステムメーカーである北京威卡威汽車零部件股份 [Beijing WKW Automotive Parts] と、折半出資による合弁会社 「Beijing WKW-FAD Automotive Interior Parts Co. Ltd. (BWKWFAD)」 を設立することで合意。InfinitiやVolvoなどの顧客に納入する予定。BWKWFADへの投資総額は14百万ユーロ (100百万元)。内装用アルミ装飾部品に特化し、アジア市場向けに開発・生産・組立・販売を行う。さらに、アフターサービスや技術サポートも提供する計画。 (2015年10月12日付プレスリリースより)

<ブラジル>
-2015年5月、Magneti Marelliとのブラジル合弁会社が自動車用内装・外装部品の生産を開始したと発表。同国のペルナンブーコ州Goianaに位置するFiat Chrysler Automobiles (FCA) の新工場で生産される車両向けに生産する。新会社 「FMM Pernambuco Componentes Automotivos Limitada」 にはMagneti Marelliが過半数の65%、Faureciaが35%を出資。長期的に年間売上高200百万ユーロ超を目標としている。同合弁会社では、インストパネル、コックピット、センターコンソール、ドアパネルなどの内装部品のほか、バンパーやスポイラーなどの外装部品を生産する。新工場は、GoianaにあるFCA工場のサプライヤーパーク内に位置しており、「Jeep Renegade」 向けに生産を開始した。 (2015年5月7日付プレスリリースより)

海外事業

<インド>
-いすゞ自動車が生産する予定の低価格ピックアップトラック向けに、内装部品を供給する。いすゞと取引するのはこれが初めて。インド南部、チェンナイにある内装部品の工場で生産する。日本やタイでいすゞに内装部品を納める日系サプライヤーがインドに生産拠点を持っていないため、同社が生産を担うことにした。いすゞが2016年にインド工場で生産を開始するのに合わせて供給を始める。 (2015年7月22日付日刊自動車新聞より)

受注

-2015年12月期の主な採用実績

OEM モデル 製品
Audi 「A4」 -シート一式
-フロントエンドモジュール
Alfa Romeo 「Giulia」 -インストパネル、ドアパネル、センターコンソール
Jaguar Land Rover 「Range Rover」、
「Range Rover Sport」
-ドアパネル
「Discovery 4」 -インストパネル、センターコンソール
Citroen 「C4 Cactus」 -フロント・リアシートストラクチャー
-フロントバンパー
-エキゾーストシステム一式
Peugeot 「208」 -テクスチャー加工済みバンパー (「Ice Grey」と「Ice Silver」の2色)
Renault 新型 「Talisman」 -フロントシート一式、CMFシートフレーム (クッションおよびバックレスト)、シートカバー、シートフォーム、ヘッドレスト、全てのマニュアルおよび電動シートメカニズム
東風汽車 「東風風神L60」 -シートフレーム、シートメカニズム
-エキゾーストシステム (ホットエンド、コールドエンド)
Ford 「Edge」 (China) -内装システム一式
-2列目・3列目シート
-エキゾーストシステム (ホットエンド、コールドエンド)
吉利汽車 新型 「GC9」 -インストパネル、ドアパネル、センターコンソール
-エキゾーストシステム (ホットエンド、コールドエンド)
Mercedes-Benz 「S-Class Coupe」 -エキゾーストシステム (ホットエンド、コールドエンド)
-コックピット
-フロントバンパー、リアバンパー、ロッカーパネル
Volkswagen 「Passat」 -インストパネル (微細発泡 (マイクロセルラーフォーム) 射出成形技術 「Microject」 採用)

受賞

-シート部門および内装システム部門がVolkswagenグループの 「Future Automotive Supply Tracks (FAST)」 プログラムにおいて、戦略的パートナーに指名されたと発表。Volkswagenグループのモデル向けのシートストラクチャーやインストパネルの納入実績が評価された。 (2015年9月2日付プレスリリースより)

-Jaguar Land Rover (JLR) のサプライヤーリーグにおいて第2位に選出されたと発表。このサプライヤーリーグは、定期的な顧客監査が行われている主要サプライヤー26社によるもの。内装システム部門が英国のFradley工場の業績を大幅に改善したことによりこの結果につなげた。 (2015年6月24日付プレスリリースより)

-Faurecia Emissions Control Technologiesは、PSA Peugeot-Citroenよりサプライヤー賞を 「Program Management」 部門で受賞したと発表。4事業グループすべてがCitroen 「C4 Cactus」 向けに製品を納入しており、シート、バンパー、カーペット、排気システムの設計・快適性・軽量化・排ガス削減に貢献している。また、このほかにスペインのPorrino工場 (内装システム部門) およびOrense工場 (内装システム部門)、フランスのAudincourt工場 (外装部門)、Sielest工場 (シート部門)、Meru工場 (内装システム部門) の5拠点が 「Best Plant」 として表彰された。(2015年6月23日付プレスリリースより)

2016年12月期の見通し

  • 売上高: 前年比1~3%増
  • 営業利益率:4.6~5.0% (2015年12月期:4.4%)
  • ネットキャッシュフロー:約300百万ユーロ (2015年12月期:303百万ユーロ)

研究開発費

(単位:百万ユーロ)
  2015年12月期 2014年12月期*1
合計 924.3 866.9
売上に占める割合 (%) 4.9 5.1

*1: 国際会計基準IFRS5号「売却目的で保有する非流動資産及び非継続事業」により修正されている。

研究開発体制

-6,000名のエンジニア・技術者が在籍。11カ国に30カ所の主要なR&Dセンターを保有。

研究開発拠点

<韓国>
-2015年12月、韓国の龍仁 (Yongin) 市との間で、韓国総合研究所の設立に関する投資契約を締結した。この契約に基づき、同社は6,800万ドルを投資し、敷地面積8,089平方メートル、延床面積3,855平方メートル規模の研究所を2016年下半期に完成させる計画。韓国国内に点在している研究拠点を本研究所に統合し、次世代の排気ガス低減および燃費向上技術の製品化研究を行っていく。アンモニアガスを使用することにより、尿素水使用時より20%多くのNOx排出量を削減する技術。現代自動車を含め25の韓国企業と協力し開発する。製品化されれば現代および起亜のモデルに採用される予定。

<日本>
-日産自動車向けの開発拠点を新設する。日産テクニカルセンター (神奈川県厚木市) の近くに設置し、2015年末から16年初頭に稼働する。同社はニッパツなどと提携し、日産向けのシートや内装をグローバルで生産・供給している。日本での開発体制を拡充することで日産とのビジネスをさらに拡大する。 (2015年7月21日付日刊自動車新聞より)

技術提携

-2015年11月、スタンフォード大学のデザイン研究センター (Center for Design Research) と、自動運転車における乗員の行動変化の研究を目的とした提携を発表。両者は、この新たな運転様式において、ユーザーの不安を軽減するために自動車産業が取り組むべき課題を挙げている。スタンフォード大学の研究データによると、状況認識を向上させることで自動運転車のドライバーにシステムに対する信頼感を持たせることができるという。先進運転支援システム (ADAS) による警告などの技術は、正しく使われれば車が何をしているかという重要な情報を提供できる。しかし、ドライバーはこれらのシステムの使用方法やインターフェースが複雑だと感じることがあり、時にはシステムを止めてしまうため、きちんと活用できていないという報告がある。また、ドライバーへの警告を維持し、運転の交代に備えることも非常に重要だとしている。容易に注意を引きつけ、ドライバーの状況認識を効率的に向上させる新たな方法で情報を提供することが必要になる。さらに、ユーザーの新たな運転状況を安全に実現することや、乗り物酔いの軽減なども重要な課題となっている。 (2015年11月12日付プレスリリースより)

製品開発

カバーカービング技術 (Cover Carving Technology:CCT)
-カバーに彫刻模様を施す技術を用いたフロントシート用軽量バックパネルを、Renaultの新型 「Talisman」 のセダンおよびエステート向けに開発したと発表。この技術により、後部座席の乗員の足回りスペースを3cm拡大し、従来の樹脂製シートバックシェルに比べて重量を1列あたり1kg軽量化している。この技術は、フランスMagny-Vernoisにある技術センター 「Automotive Seating TechCenter」 で設計・開発が行われ、ポルトガルのSao Joao da Madeira工場にある欧州初の専用ラインで生産されている。 (2015年9月30日付プレスリリースより)
-同社はこの技術で、Automotive News Pace Award 2016のファイナリストとして選出されている。

ガソリン粒子フィルター
-中国および欧州で施行される新たな乗用車用排ガス規制に向けた世界初のガソリン粒子フィルター (gasoline particulate filter:GPF) を発表。これまで、ディーゼルエンジンでは煤などの粒子を除去するディーゼル粒子フィルター (DPF) が利用されてきたが、GPFは主にガソリン直噴エンジン向けとなる。DPFには炭化ケイ素が使われていたのに対し、GPFにはコーディエライトが使用された。このGPFは、ガソリンエンジン搭載の全ての乗用車およびトラックに適用可能で、今後、標準搭載されていくとみられる。なお、2014年より大手欧州自動車メーカーの高級車向けにGPFの生産を行っている。 (2015年4月20日付プレスリリースより)

排気システムアダプティブバルブ
-マフラーの重量を半分にするアダプティブバルブを開発した。中間パイプ中のリアマフラーの前段に置かれ、自己調整力があり排気の流れに応じて作動する。低速から巡航速度の範囲でノイズを低減する。
-同社はこの技術で、Automotive News Pace Award 2016のファイナリストとして選出されている。

部門別設備投資額

(単位:百万ユーロ)
2015年12月期 2014年12月期
シート 184.8 152.6
排気コントロール 200.7 139.5
内装システム 189.6 158.7
外装 56.9 45.5
その他 45.7 22.9
IFRS5による修正 (54.3) (44.5)
合計 623.4 474.7

地域別設備投資額

(単位:百万ユーロ)
2015年12月期 2014年12月期
フランス 116.5 73.7
ドイツ 61.9 54.4
その他欧州諸国 156.0 160.0
北米 154.5 123.0
南米 20.2 21.3
アジア 159.3 83.8
その他 9.3 3.0
IFRS5による修正 (54.3) (44.5)
合計 623.4 474.7