ZF Friedrichshafen AG 2015年12月期の動向

業績

(単位:百万ユーロ)
2015年
12月期
2014年
12月期
増減率 (%) 要因
全社
売上高 29,154 18,415 58.3 1)
営業利益 1,081 897 20.5 2)
部門別売上高
パワートレインテクノロジー 7,785 6,742 15.5 3)
シャシーテクノロジー 6,550 5,885 11.3 4)
商用車テクノロジー 2,983 3,036 (1.7) 5)
アクティブ&パッシブセーフティテクノロジー 8,941 N/A - -


要因
1) 売上高
-2015年12月期の売上高は、前年比58.3%増の29,154百万ユーロ。TRW買収による増収効果は8,753百万ユーロ。アクティブ&パッシブセーフティテクノロジー部門およびZF TRWによる売上貢献分を除くと、前年比11.0%増。

2) 営業利益
-2015年12月期の営業利益は、前年比20.5%増の1,081百万ユーロ。TRW買収が主な増益要因。売上高利益率は4.9%から3.7%に下落。TRWの買収ならびにBosch Rexrothの事業買収など特別要因によりマージンが低下した。

3) パワートレインテクノロジー部門
-2015年12月期の売上高は、前年比15.5%増の7,785百万ユーロ。米国、欧州、アジアで中型車、高級車向けオートマチックトランスミッションの販売が伸びたことが主な増収要因。さらに、米国サウスカロライナ州にあるGray Courtオートマチックトランスミッション工場での増産が販売拡大につながった。

4) シャシーテクノロジー部門
-2015年12月期の売上高は、前年比11.3%増の6,550百万ユーロ。欧州、米国、中国におけるアクスルシステム事業の好調が増収要因。為替による好影響も売上増に貢献した。

5) 商用車テクノロジー部門
-2015年12月期の売上高は、前年比1.7%減の2,983百万ユーロ。ブラジルおよびロシア市場の低迷、為替のマイナス影響が減収要因。

TRW買収

概要
-2014年9月、米TRWの買収について合意したと発表。買収額は12,400百万ドル。2015年5月に買収完了。

買収の狙い

-先進運転支援システム (ADAS) や自動運転に不可欠なセンシング技術とソフトウェアの確保が狙い。TRWが持つカメラ、レーダー、ブレーキコントローラーなどの技術を、同社のシャシーやトランスミッションなどと組み合わせることで、自動運転分野におけるキープレーヤーになることを目指す。同社はシャシーコントロールのハードウェア技術を保有しているが、今後は自動運転技術関連のシステムサプライヤーが主導権を握り、アクスルやショックアブソーバーなどの仕様をも決めることになる。同社CEOのStefan Sommerは、従来のままでは自動運転分野でTier2の地位を脱することができないため、TRWが持つ電子制御のステアリング、ブレーキコントロール、運転支援システム、センサーなどの技術を取り込む必要があったとしている。

統合プロセス
-3~5年をかけて4段階に分けて統合していく。

フェーズ 内容
フェーズ 1 買収完了後の「Day 1」 (初日) に向けての準備期間
フェーズ 2 TRWを第5部門として統合 (ただし、TRWは独立事業法人として存続)
フェーズ 3 プロジェクトベースでの協調体制を計画
フェーズ 4 販売、アフターサービス、購買を最優先に組織統合を実施

買収

-2015年6月、ドイツのバーデン・ヴュルテンベルク州Amtzellを本拠とするHalla DAS Lab Europe (HDLE) の開発部門を2015年7月1日付で買収すると発表した。同部門の従業員約50名も含まれる。同社はこの買収により、運転支援システムに関する技術を高め、半自動運転分野を強化する意向。HDLEから取得するソフトウェア開発チームは、ZFのCorporate Research and Development (R&D) 部門に統合される。今回の買収には、開発チームのほかに複数の試験車両と開発成果も含まれる。ZFは現在、半自動運転分野におけるサラウンドビューシステムに注力している。(2015年6月29日付プレスリリースより)

再編

-2015年1月、Robert Boschとの折半出資合弁会社ZF Lenksysteme (ZFLS) の持株 (50%) をすべてRobert Boschに売却。旧ZF LenksystemeはBosch Automotive Steeringに社名変更。独Schwabisch Gmundを本拠とする旧ZFLSは、8カ国に従業員13,000名超を雇用している。乗用車・商用車向けステアリングシステムの開発・生産・販売をグローバルで行っており、2013年の売上高は約41億ユーロ。主要市場に20拠点を保有し、欧州、米国、中国のほか、インド、ブラジル、マレーシアにも拠点を持つ。

-2015年10月、2016年より全ての電動モビリティ関連事業を、新部門 「E-Mobility」 に統合すると発表した。同部門はSchweinfurtを本拠とする。新部門は、既存のパワートレインテクノロジー (Car Powertrain Technology) 部門、シャシーテクノロジー (Car Chassis Technology) 部門、商用車テクノロジー (Commercial Vehicle Technology) 部門、インダストリアルテクノロジー (Industrial Technology) 部門のほか、新たに設立されたTRWの事業分野が含まれるアクティブ&パッシブセーフティテクノロジー (Active & Passive Safety Technology) 部門と並んで、グループ傘下に所属する予定。 (2015年10月20日付プレスリリースより)

受注

-同社の新型8速オートマチックハイブリッドトランスミッションがBMW 「X5 xDrive40e」 に初搭載される。 (2015年9月8日付プレスリリースより)

-2015年2月、トー角を調整することでリアアクスルのステアリング動作をサポートする電動アクチュエーター 「AKC (Active Kinematics Control)」 の量産準備が整ったと発表した。Porsche 「911 Turbo」 および 「911 GT3」 にリアアクスルステアリングシステムとして標準搭載されている。Porscheの2モデルでは、リアアクスルの中央にアクチュエーターを置く 「セントラルアクチュエーター」 システムと、リアホイール1個につき1つのアクチュエーターを置くシステムの2種類が用意されるという。 (2015年2月5日付プレスリリースより)

2016年12月期の見通し

-2016年12月期の売上高は、35,000~36,000百万ユーロとなる見通し。TRW買収による売上貢献分が通年で計上されるため、大幅増収になると見ている。

研究開発費

(単位:百万ユーロ)
2015年12月期 2014年12月期 2013年12月期
合計 1,390 891 836


-同社は毎年、売上高の約5%を研究開発費に充てている。

研究開発体制

-世界各国で約13,600名が研究開発業務に従事。

研究開発拠点

-主な研究開発拠点

  • Friedrichshafen (ドイツ) :研究開発本部。Pilsen (チェコ共和国) と東京の開発活動を調整している。
  • Dielingen (ドイツ)
  • Passau (ドイツ)
  • Schweinfurt (ドイツ)
  • Pilsen (チェコ共和国)
  • 上海
  • 東京
  • Detroit (米国ミシガン州)

-2015年10月、横浜に研究開発センターを設立し、Eモビリティを中心とした研究開発業務を行うと発表した。この 「ジャパン・テックセンター (Japan Tech Center)」 では、顧客サポート対応と自動車の電動化に関する新技術の開発力強化に向けて、今後2年間で新たに約70名のエンジニアを採用する予定。さらなる増員も計画されている。日本の市場要件に適合する製品の提供に向けて、自動車メーカー各社と緊密に協力していく。また、パワーエレクトロニクスおよびドライブラインの完全電動化に向けた開発・設計にも注力する。2016年1月に設立されるEモビリティ (E-Mobility) 事業部に所属し、本社の各事業部とも連携していく。(2015年10月29日付プレスリリースより)

-2015年6月、チェコ西部Pilsenの研究開発センターの拡張が完了したと発表した。従業員250名がZFグループおよび各部門向けに開発を行っている。新たに建設した建物を含め、同センターの利用可能スペースはこれまでの2倍の約7,000平方メートルとなった。同社はこのプロジェクトに4百万ユーロ (約100百万チェココルナ) を投じている。(2015年6月24日付プレスリリースより)

研究開発活動

-2015年7月、標準的なサブコンパクトカーをベースとした完全自社製造のEVコンセプトカー 「Advanced Urban Vehicle」 を開発した。動力源はトラクションバッテリーで、これらのバッテリーはフロントおよびリアアクスルに搭載された3つのモジュールに格納されている。このコンセプトカーは、ホイール近くに電動リアアクスルドライブ 「eTB (electric Twist Beam)」 を搭載しているのが特徴となる。また、フロントアクスルの操舵角は最大75度で、敏捷性や操縦性を大幅に向上させるという。運転支援機能 「Smart Parking Assist」 は、スマートフォンやスマートウォッチなどモバイル機器のボタンにより、狭い駐車スペースにも車を遠隔操作で誘導することができる。さらに、クラウドベースのアシスト機能「PreVision Cloud Assist」 により、快適で効率的な走行を実現する。 (2015年7月3日付プレスリリースより)

製品開発

EcoLife 6速ATにアイドリングストップ機能を追加
-2015年10月、6速オートマチックトランスミッション 「EcoLife」 を改良し、アイドリングストップ機能を追加したと発表した。これにより、従来のディーゼルシティバスの燃料消費を最大10%低減することができる。また、ドライブトレインに電気モーターを追加する必要がなく、コスト低減および設置スペースの削減につながるという。(2015年10月16日付プレスリリースより)

8速ハイブリッドAT
-2015年9月、同社の最新の8速オートマチックトランスミッションに小型電気モーターを統合し、プラグインハイブリッド車向けのハイブリッドシステムを開発した。この新しいシステムは量産され、BMW 「X5 xDrive40e」 に初搭載される予定。同モデルにおける電気モーターの出力は83kW (113HP) で、停止状態からの最大トルクは250Nmとなる。電気モーターのみで走行した場合、時速120kmまでで最長31kmの走行が可能。これにより、欧州の燃費測定法 「ECE 101」 において最大70%の燃費向上を実現するという。(2015年9月8日付プレスリリースより)

前輪駆動車向けトーションビーム式リアサスペンション
-2015年7月、世界で初めてリーフスプリングにガラス繊維強化プラスチック (GFRP) を用いた前輪駆動車向けトーションビーム式リアサスペンションを開発した。マルチリンク式サスペンションと同等の運動性能を維持しながら13%の軽量化を実現。コストもマルチリンク式並みに抑えた。Cセグメント以下の小型車やハイブリッド車 (HV) をターゲットに自動車メーカーへ提案を積極化し、3年以内の実用化を目指す。 (2015年7月14日付日刊自動車新聞より)

クラウドを活用したADAS搭載コンセプトカー
-2015年7月、米Googleと連携して開発したクラウドを活用した先進運転支援システム (ADAS) を搭載したコンセプトカーを公開した。ZFが自動運転関連の技術を手がけるのは今回が初めて。クラウドデータを用いてカーブの走行スピードを自動的に調整するなど、危険回避や予測運転を可能とした。さらにTRWが開発した多機能ステアリングホイールを組み合わせた。TRWを買収した同社では、両社の技術を組み合わせることで安全性と環境性能を向上する新技術の開発に注力していく。 (2015年7月7日付日刊自動車新聞より)

設備投資額

(単位:百万ユーロ)
2015年12月期 2014年12月期 2013年12月期
全社 1,290 1,005 954


-2015年12月期の設備投資額の内訳は、技術設備および機械に約79%、工場やオフィスなどに18%、土地・建物に3%となっている。新製品の立ち上げ、既存製品の生産能力拡大に関連する設備投資が最も大きな割合を占めている。

-地域別に見ると、設備投資額の大半は、ドイツ、米国、メキシコ、中国に充てられている。

-パワーテクノロジー分野の主な投資対象は、米国サウスカロライナ州Gray Court工場における8速および9速トランスミッションの生産能力拡大。このほか、ドイツSaarbrucken工場でのトランスミッションおよびトランスミッションコントロールユニット、ドイツBrandenburg工場でのクラッチトランスミッション、ドイツSchweinfurt工場でのトルクコンバーターなど、各工場での生産能力拡大に投資。

-シャシーテクノロジー部門、サスペンションテクノロジー事業ユニットでは、ショックアブソーバーを生産する中国第2工場の建設に投資。

-商用車テクノロジー部門では、TraXon商用車用トランスミッションを生産するドイツFriedrichshafen工場、バス用ポータルアクスルを生産するドイツPassau工場などに投資。

-アクティブ&パッシブセーフティテクノロジー部門では、北米、欧州、アジアでの生産能力拡大に投資。具体的には、ドイツAuerbach工場およびDiepholz工場における8速および9速トランスミッションコントロールユニットの生産能力拡大に充てられている。さらに、ドイツDiepholz工場、中国・瀋陽工場、メキシコJuarez工場におけるシフトバイワイヤーシステムの組立ならびに試験設備にも投資。

海外投資

<中国>
-2015年11月、中国江蘇省張家港 (Zhangjiagang, Jiangsu) にブレーキシステムと乗員安全システムの2つの工場を建設し、それぞれ操業を開始したと発表した。ブレーキ工場は敷地面積約23,000平方メートル。主に電動パーキングブレーキ (EPB) 統合パーキングブレーキシステム、フロントブレーキキャリパー、バキュームブースターを生産するほか、ハウジング加工、キャリア加工、アクチュエーション加工および組み立てを行う。2016年に750名以上を雇用する計画。乗員安全システム工場は敷地面積約16,000平方メートル。主に運転席エアバッグ、助手席エアバッグ、サイドエアバッグ、カーテンエアバッグを生産するほか、「FS1」 および 「SPR4」 リトラクター、ロックシステム、フードリフターなどの組み立てを行う。2016年末までに500名以上を雇用する計画。(2015年11月2日付け各種リリース)

<東欧>
-2015年10月、ショックアブソーバーの生産に関する基本計画を導入する。同社はこれまで、ドイツのSchweinfurt、Eitorf、Ahrweilerでショックアブソーバーの生産を行ってきた。人件費が高額なドイツでは、生産においてこれ以上のコスト削減が困難なことから、この3拠点から他拠点への生産移管を進めている。生産の大部分は今後、スロバキアのLeviceおよびトルコのGebzeにあるZF拠点で行われる予定。さらに、より高度な技術を用いた最新世代の電子制御式ショックアブソーバーを含むその他製品の生産の一部を、Schweinfurt拠点からEitorf拠点やAhrweiler拠点、複数の東欧拠点に移管する。これにより、EitorfおよびAhrweilerの拠点では、少なくとも2022年末まで雇用を維持できるという。なお、段階的に全てのショックアブソーバーの生産を中止するSchweinfurt拠点には、新たにEモビリティ部門が入居する予定。(2015年10月20日付プレスリリースより)