ZF Friedrichshafen AG 2012年12月期の動向

ハイライト

業績

 (単位:百万ユーロ)
  2012年
12月期
2011年
12月期
増減率 (%) 要因
グループ
売上高 17,366 15,509 12.0 -
EBITDA 1,667 1,574 5.9 -

事業概況

<自動車関連部門別>
パワートレインテクノロジー部門
-2012年12月期の売上高は、高級車向けトランスミッションおよびドライブトレイン部門の好調から前年比24%増の4,902百万ユーロ。

シャシーテクノロジー部門
-2012年12月期の売上高は、前年比17%増の4,969百万ユーロ。これは乗用車向けアクスルシステムの需要が高水準で推移したことが背景。

商用車テクノロジー部門
-2012年12月期の売上高は、商用車市場の低迷から前年比7%減の3,043百万ユーロ。
 
ステアリングシステム部門 (ZF Lenksysteme GmbH)
-Robert Boschとの合弁会社であるZF Lenksystemeの売上高が前年比11%増の3,976百万円 (うち50%が連結決算に反映)。ZF Lenksystemeの電動パワステ「Servolectric」が世界シェアを伸ばした。

<地域別>
欧州
-2012年12月期の売上高は、前年比5.1%増の9,942百万ユーロと伸び率は前年の19.8%を下回った。売上構成比も前年の61%から57%に低下。

北米・南米
-2012年12月期の北米の売上高は、前年比40.9%増の3,267百万ユーロ。売上構成比も前年の15%から19%に上昇。パワートレインテクノロジー部門とシャシーテクノロジー部門の乗用車事業が売上拡大に寄与した。

-2012年12月期の南米の売上高は、前年比13.6%減の760百万ユーロ。2012年の新排ガス規制の導入を前に2011年に駆け込み需要が発生した反動で商用車事業が低迷した。

アジア・太平洋
-2012年12月期のアジア・太平洋地域の売上高は、前年比21.0%増の3,183百万ユーロ。アジア最大の自動車市場である中国で乗用車と小型商用車の生産が拡大した。特に、中国ではドイツの高級車の売れ行きが好調に推移。

受注

-2012年、Ivecoとの間で新型トランスミッションシステム「TraXon」の供給契約に関して基本合意に達したと発表。ZFは2014年10月より供給を開始する。この「TraXon」は、Ivecoの大型トラック「Stralis」および「Trakker」に現在採用されているオートマチックトランスミッション「ZF-AS Tronic」に取って代わる予定。 (2012年9月19日付プレスリリースより) 

-2012年、日産自動車の新型「Altima」に新技術を採用した「ツインチューブ・ダンパー」が採用されたと発表した。同ダンパーは、ZFが製造する標準ダンパーバルブの進化型であるプリロードバルブを初めて採用した。これにより、操縦性重視のダンパー特性曲線を示しながら、優れたノイズ特性を保つことを可能としている。新型アルティマはシャシー設計を全面的に見直しており、高い性能と静粛性を両立したZFのダンパー搭載につながった。 (2012年5月26日付日刊自動車新聞より)

-2012年、Porscheの新型「911 Carrera」および「911 Carrera S」向けに、7速マニュアルトランスミッション (7MT) を供給していると発表。7速デュアルクラッチトランスミッション (7DT) をベースとしており、7MTが乗用車に搭載されるのは今回が初めてとなる。Porsche 「911」 は6速で最高速度に達し、7速ではハイギアリングで燃費向上に貢献する。 (2012年5月9日付プレスリリースより)

-2012年、トルコに拠点を持つ11のバスメーカーに、ドライブライン・シャシーシステムを供給していると発表。納入先は、Mercedes-Benz、MAN、Temsa、BMC、Otokar、Guleryuz、Karsan、TCV、Tezauto、Isoto、いすゞ。また、トルコの大手交通会社IETT、EGO、Eshotの3社は、ZF製品を搭載したバス900台を2012年向けに発注している。まず、Istanbulを本拠とするIETTには、Mercedes-Benz Turkが低床連結式バス「Conecto」221台を納入する。これらのバスには、ZF製のドライブアクスル「AV 132」、タグアクスル「AVN 132」、ステアリング「Servocom」、オートマチックトランスミッション「EcoLife」、トランスミッション制御ユニット「TopoDyn Life」が搭載。また、BMCがIETTに納入する低床式バス「Procity」279台にも、ZFの「EcoLife」やフロントおよびリアアクスル、ステアリングコラムが採用されている。この「Procity」は、Izmirを拠点とするEshotにも150台納入される予定。さらに、Ankaraの交通会社EGOに納入されるMAN 「Lion's City」 には、ZFの「EcoLife」および低床アクスルが搭載されている。 (2012年4月19日付プレスリリースより)

-2012年、Chryslerの2013年型ピックアップトラック「Ram 1500」に搭載されるエンジンに、同社の8速オートマチックトランスミッション (8HP) が採用されたと発表。対象は5.7Lエンジン「HEMI V-8」のほか、3.6Lエンジン「Pentastar V-6」には標準搭載となる。「TorqueFlite 8」と呼ばれるこの新型トランスミッションは、従来のChrysler 製6速トランスミッションに比べて大幅な燃費向上を実現する。「Ram 1500」のスタート・ストップシステムと連動する設計となっており、これは油圧インパルスオイルタンク (HIS) の開発により実現した。HISは、トランスミッションのシフトエレメントが始動の際に必要とする油圧オイルを供給し、これにより停止しているエンジンのクイック始動が可能になる。このスタート・ストップ機能と組み合わせることで3.3%の燃費向上に繋がった。なお、ZFとChryslerは、この「Ram 1500」に搭載する軽量アクスルの生産に関しても合意している。 (2012年4月17日付プレスリリースより)

購買方針

-2012年、今後2年間で購買支出額の500百万ユーロ削減を目標とすると発表した。このため、サプライヤーの数も大幅に絞り込む。生産材料の価格引下げにとどまらず、サプライヤーの標準化も行う計画。そのため、購買条件に関してばらつきがあった従来の方法を、同社全体で統一することを目指す。同社のサプライヤーにとっては、同品質の材料を欧州市場だけでなくアジアや北米、南米などグローバルに供給できることが重要になるという。 (2012年9月13日付プレスリリースより)

買収

-2012年、ThyssenKrupp Automotive Systems (TKAS) よりキャビンサスペンション事業を買収することで合意したと発表。ドイツのノルトライン=ヴェストファーレン州Werdohlを拠点とする同事業には、従業員41名が勤務し、売上額は約15百万ユーロ。2012年第1四半期に買収が完了する見込み。今回の買収により、ZFの商用車技術部門 (Commercial Vehicle Technology) は生産品目を拡大する。また、買収予定のWerdohl拠点は、ZF のCV Chassis Modules Business Unit傘下に入り、2012年末までに同州Dielingen拠点へ移管される予定。なお、CV Chassis Modules Business Unitは、DielingenおよびErmua (スペイン)、Izmir (トルコ)、Gainesville (米国フロリダ州)、Sorocaba (ブラジル)、上海 (中国) に生産拠点を保有している。 (2012年1月26日付プレスリリースより)

事業提携

-2012年、山東省の自動車部品鋳造品メーカー「山東浩信集団公司 (Shandong Haoxin Group) 」と2012年8月22日、提携の合意書を結んだ。それによると、山東浩信集団は既存の生産ラインを基にZF専用ラインを建設し、年間20万台分の鋳造部品をZFに供給する。2013年1月より開始し、2年以内に年間40万台分にまで生産を拡大する計画。山東浩信集団は濰柴動力 (Weichai Power)、福田康明斯 (Foton-Cummins) とも提携を結んでおり、ZFには 2010年から鋳造部品を供給している。 (2012年8月23日付け各種リリースより)

-2012年、ZFと華域汽車系統股份有限公司の合弁会社「上海采埃孚転向系統有限公司 (ZF Shanghai Steering Systems Co., Ltd.) 」は2012年8月8日、上海汽車の自社ブランド電気自動車向けのコラム式電動パワーステアリング (EPSc) をラインオフした。EPScはZFの技術協力を得て上海汽車が主導的に開発したもの。同社にとって2010年のEPSdp製品国産化成功に続き、EPS分野での大きな成功となった。 (2012年8月10日付けプレスリリースより)

海外事業

-2013年に米国で生産を開始する横置きエンジン車用9速ATを、新たに中国でも生産する検討を始めた。ZFが開発した9速ATは、3リットルクラス以上の「9HP48」と、小排気量のターボエンジン車や2リットル自然吸気エンジンクラスの「9HP24」の2機種。既存の6速ATと比べて燃費を約16%改善した。米国サウスカロライナ州に新設した工場は、9HP48を年間40万台生産するが、既に受注分で生産能力が占められている。また9速AT搭載車種の増加を視野に、中国を始めとするアジア地域を中心に生産規模を拡大する。現在、新工場の建設地や生産規模、操業時期などを検討。中国で生産台数の多い前輪駆動車 (FF) やFFベースの四輪駆動車に合わせて9HP24を生産する考えで、現地での部品調達に向けて、一部設計変更も検討する。現地調達網を活用して生産コストを抑制するなど、競争力を高める。 (2012年6月28日付日刊自動車新聞より)

-2012年、世界における新工場建設および新製品開発に向けて、2012年に最大15億ユーロを投じる計画を発表した。2015年末までには、総額約50億ユーロに達する見込み。 (2012年4月27日付プレスリリースより)

受賞

-2012年、「Volkswagen Group Award 2012」を受賞したと発表。同社が納入しているギアシフトシステムが評価されたもの。なお、この部品はVolkswagenの新型プラットフォーム「Modular Transverse Matrix」 (MQB) をベースにしたモデルにも採用されている。 (2012年7月26日付プレスリリースより)

-2012年、パワートレイン技術部門がFordより「World Excellence Award」の「Gold Award」を受賞したと発表。Fordが豪州仕様の「Falcon」および「Territory」に採用している6速オートマチックトランスミッションが評価されたもの。また、ZFはアクスルシステム一式のほか、クラッチシステムやトーションダンパーなどドライブライン部品を生産し、Fordの複数モデルに納入している。 (2012年6月12日付プレスリリースより)

-2012年、Chryslerより「Innovation Supplier of the Year Award」を受賞したと発表。同社の8速オートマチックトランスミッション (8HP) が評価されたもの。ZFの8HPは現在、Chrysler 「300」および「Dodge Charger」に搭載されており、この秋からは「Ram 1500」の新型モデルにも採用される予定。 (2012年6月12日付プレスリリースより)

-2012年、南米における商用車技術部門 (Commercial Vehicle Technology) が、Fiatよりサプライヤー賞「Fiat Qualitas 2012」を受賞したと発表。同社の小型・中型・大型トラック用トランスミッションが、「Metallic Components」部門で受賞。またアルゼンチンで生産されるダンパーも同賞を受賞した。同社は2011年、ブラジルのSorocaba拠点において 1万ユニット超のマニュアルトランスミッションを生産し、Ivecoの南米拠点に供給している。対象となるトランスミッションは「Ecosplit」、 「Ecomid」、「Ecolite」。なお、同社は現在ブラジルに4拠点、アルゼンチンに1拠点を保有。2011年の同地域での売上額はあわせて880 百万ユーロ。このうち546百万ユーロが商用車部門となる。 (2012年5月18日付プレスリリースより)

開発動向

研究開発費

 (単位:百万ユーロ)
  2012年12月期 2011年12月期 2010年12月期
合計 861 754 646

研究開発体制

-全世界で約7,120名が研究開発に従事。うち970名が独グループ本社の研究開発部門 (Friedrichshafen)に、330名がチェコ (Pilsen)、上海 (中国)、東京に従事。

-2012年、日本での開発体制を強化する。ZFジャパンのR&Dセンターに在籍する日本人技術者を現在の10人から20人に倍増し、上海の開発拠点との連携を強めて設計変更や技術改良など迅速に対応する体制を整える。ZFは、日系自動車メーカーとの取引が拡大しており、日本での技術対応力を高めることで、開発期間の短縮につなげる。ZFは、トヨタ自動車や日産自動車、ホンダを始めとする各乗用車メーカーや商用車メーカー4社とグローバルで取引している。同社では、車両の軽量化や低燃費を実現する製品を多く市場に投入している。今後も採用が増えることを見込み、メーカーからの技術要求に対して、ZFジャパンのR&Dセンターで迅速に対応できる体制を構築する。 (2012年10月10日付日刊自動車新聞より)

研究開発拠点

<主要研究開発拠点>
所在地 主な研究内容
ドイツ Friedrichshafen -グループ研究開発
-先行開発
-トランスミッション
ドイツ Dielingen -シャシーシステム
-シャシー部品
-シフター
ドイツ Schweinfurt -パワートレインモジュール
-サスペンション
ドイツ Passau -デファレンシャル
-アクスル
-テストシステム
ドイツ Schwaebisch-Gmuend -乗用車・商用車ステアリング
米国 Northville -トランスミッション
-シャシークラッチ
-サスペンション
中国 上海 -

特許

-2011年にドイツで669件の特許を申請したと発表。なお、同年の研究開発費は全世界で754百万ユーロに達している。 (2012年6月21日付プレスリリースより)

製品開発

電動後輪操舵システム
-2012年、電動後輪操舵システムを開発、2013年中に量産を開始する。電動化により従来のシステムに比べ大幅な小型・軽量化を実現し、リアアクスルの設計を大きく変更することなく車両に搭載できるようにした。車速やハンドルの舵角に応じて左右の後輪を最適に制御する後輪操舵システムは、安全性の向上やシャシー性能の向上に効果があり、今後、搭載車種の拡大が見込まれる。車の小回り性、走行安定性の向上につながるシステムとして、自動車メーカーへの提案活動を展開し、新規受注の拡大を目指す。 (2012年11月21日付日刊自動車新聞より)

大型トラック向けAT
-2012年、大型トラック向けの新型オートマチックトランスミッション「TraXon」を開発した。最大トルクは3,000Nmを大幅に超えるとともに、従来の「AS Tronic」と比べて平均6dBという大幅なノイズ低減を可能にした。これは、新型ギア設計の導入やトランスミッションハウジングの改良、がたつき防止ダンパーの一体化などによるもの。また、乾式クラッチのほかにハイブリッドモジュール、デュアルクラッチモジュール、トルクコンバータークラッチなどによる駆動が可能。さらに、新たに開発した「PreVision GPS」ではGPSデータやデジタル地図と連携して、地形に応じて不必要なギアシフトを防止する。 (2012年8月14日付プレスリリースより)

設備投資

設備投資額

 (単位:百万ユーロ)
  2012年12月期 2011年12月期
パワートレインテクノロジー部門 536 428
シャシーテクノロジー部門 188 203
商用車テクノロジー部門 101 84
インダストリアルテクノロジー部門 92 120
ZFサービス部門 11 17
ダイカストテクノロジー部門 61 38
ステアリングシステム部門 168 144
グループ研究開発、グループ本社、サービス会社 35 24
グループ合計 1,192 1,058

海外投資

<中国>
-2012年、中国での生産能力を拡大している。これに伴い、上海市青浦 (Qingpu) 区に位置する拠点を拡張し、自動車用のラバーメタル部品およびプラスチック部品の生産能力を倍増した。2008年に開設された同拠点では、これまでラバーメタル部品の開発・生産を行ってきた。今回、倍増された生産エリアの面積は約23,000平方メートル。また、ラバーメタル製品のほかに、同拠点では新たにプラスチック部品の生産も行う。2013年より、樹脂製ペダルモジュールをはじめとするプラスチック製品の生産を開始する予定。なお、ZFは1994年に中国初の生産拠点を設立しており、その数は現在22拠点にのぼる。 (2012年11月26日付プレスリリースより)

-2012年、中国・北京市で乗用車用アクスル工場の起工式を開催したと発表。同市での工場建設は同社にとって初となる。同工場の設備投資額は約15百万ユーロで、面積は32,000平方メートル。生産開始後は、従業員約350名を雇用し年間数千個のアクスルセットを生産する。納入先はDaimlerの中国合弁会社である北京奔馳汽車 (Beijing Benz Automotive) で、現行モデルのほかに「Mercedes-Benz C-Class」や「E-Class」などの新型車にも供給する計画。なお、生産開始は2012年末を見込んでいる。 (2012年2月28日付プレスリリースより)

<タイ>
-2012年、タイのラヨーン県に新工場を開設したと発表。現地子会社ZF Lemforder (Thailand) Co. Ltd.に属し、乗用車向けのアクスルシステムを生産する。新工場は、既存工場から約25kmの距離にあるEastern Seaboard工業団地内に位置。既存工場からの移転により、タイにおける生産エリアをこれまでの2倍となる7,000平方メートルまで拡大した。今後、さらに拡張の余地も残っている。なお新工場では4月から、タイをはじめとするアジア太平洋地域に向けて、従業員135名がアクスルシステムの生産を行っている。なお、ZF Lemforder (Thailand) はBMW、Mercedes-Benz、GMに納入しているほか、現在はFordからの受注も獲得している。 (2012年11月15日付プレスリリースより)

<米国>
-2012年、米アラバマ州のタスカルーサ工場の生産能力を、2012年半ばをめどに拡張すると発表した。ダイムラーの子会社、メルセデス・ベンツUSインターナショナル (アラバマ州バンス) が14年から生産を始める新型「Cクラス」のシャシーシステムを受注したことによるもので、新たに1460万ドル (約11億3千万円) を投資しラインを拡張する。生産能力の増強に伴い、新たに85人を雇用する。同工場ではMクラス、Rクラス、GLクラス向けにフロントとリアのサスペンションシステムを生産しており、新たにCクラス向けの製品が生産品目に加わることになる。 (2012年2月22日付日刊自動車新聞より)