日本電産 (株) 2020年3月期の動向

業績

(単位:百万円)
2020年
3月期
2019年
3月期
増減率
(%)
要因
全社
売上高 1,534,800 1,475,436 4.0 -過去最高を更新
営業利益 110,326 129,222 (14.6) -需要急拡⼤のトラクションモーターシステム等の開発・⽣産⽴ち上げに向けた先⾏投資に係る追加費⽤、買収に係る⼀時費⽤の増加等
税引前当期純利益 106,927 129,830 (17.6) -
親会社株主に帰属する当期純利益 60,084 109,960 (45.4) -
日本電産
売上高 183,036 215,685 (15.1) -HDD用モーター及びその他小型モーターの売上減
営業利益 4,254 19,400 (78.1) -売上減及びE-Axle等の開発費増加
日本電産サンキョー
売上高 139,173 153,935 (9.6) -
営業利益 8,197 13,739 (40.3) -
日本電産モーターズ アンド アクチュエーターズ
売上高 301,792 306,334 (1.5) -
営業利益 31,975 34,832 (8.2) -

 

買収

<日本>
-日本電産エレシスを完全子会社とするための株式交換を行うことを取締役会にて決議し、株式交換契約を締結したと発表した。グループ最重要戦略商品であるトラクションモーター事業における開発を促進し、グループ全体の企業価値を向上させることを目的としている。(2019年12月7日付プレスリリースより)

-オムロングループで自動車向け車載電装部品の製造などを手掛けるオムロンオートモーティブエレクトロニクス (愛知県小牧市) を子会社化すると発表した。子会社化により、自動運転を支援するセンサー類の開発などを積極化していく。(2019年4月17日付日刊自動車新聞より)
 

2021年3月期の見通し

(単位:百万円)
  2021年3月期
(予想)
2020年3月期
(実績)
増減率
(%)
売上高 1,500,000 1,534,800 (2.3)
営業利益 125,000 110,326 (13.3)
税引前当期純利益 125,000 106,927 16.9
親会社株主に帰属する当期純利益 100,000 60,084 66.4

 

研究開発費

(単位:百万円)
  2020年3月期 2019年3月期 2018年3月期
全社 78,630 62,912 55,438
-日本電産 34,125 25,439 20,829
-日本電産サンキョー 5,498 5,610 5,509
-日本電産モーターズ アンド アクチュエーターズ 10,180 9,113 7,959

  

研究開発体制

-中央モーター基礎技術研究所、台湾モーター基礎技術研究所:全社的なモーター全般の要素技術研究を行い、グローバル技術開発戦略の中核となる要素技術研究の一層の高度化を推進している。

<日本電産>
-滋賀技術開発センター:EV向けの駆動用をはじめとする各種車載用モーター等に関する新製品及び新機種量産製品の品質向上を目的とした研究開発を実施。

 

研究開発活動

<日本電産>
-開発案件は以下の通り:

  • 中国OEMを中心としたEV向け駆動用モーターの開発
  • 小型・高性能の次世代パワーステアリング用モーター、パワーステアリング以外のアプリケーション(シート、ブレーキ、サンルーフ等)用のモーター及び付帯する電子制御ユニット(ECU)の開発
  • デュアル・クラッチ・トランスミッションや油圧・電動システムに使用されるブラシレスモーター等の開発
  • EV向けの駆動用モーターや車載用モーターを、センサー・制御装置と組み合わせたパッケージ開発

<日本電産サンキョー>

  • ステッピングモーター:車載への用途展開において、小型化、高性能化、コストパフォーマンスの改善に向けた開発
  • 車載装置へ搭載される触覚デバイスの開発
  • モーター駆動ユニット:電動化に伴う熱冷却需要を充たす車載サーマルマネージメント

<日本電産モーターズ アンド アクチュエーターズ>
-車載用モーター:ドイツ、ポーランド、スペイン、日本を中心に車載用モーターの高寿命化、小型化および軽量化に向けた研究開発を行っている。

  • シート調整、ステアリングコラム調整、サンルーフ向けレアアース不要の小型ブラシ付きモーターの開発・研究
  • エンジン冷却用小型、軽量ブラシ付きモーターの開発

-シャシー制御領域 (ブレーキ、ステアリング):

  • ブレーキ:回生協調ブレーキシステム用ECUブラシ付きモーターとブラシレスDCモーターの商品化 (量産) 開発、横滑り防止装置用ECUの商品化 (量産) 開発
  • 電動パワーステアリング: ブラシ付きモーター用とブラシレスモーター用ECUの開発が完了、機能安全対応を盛り込んだブラシレスモーター用ECUの先行開発を行っている。

ー先進安全領域(カメラ、ミリ波レーダー)

  • 先行開発及び商品化(量産)開発

-その他の研究開発領域:

  • 自動変速機 (A/T)、デュアルクラッチ変速機 (DCT)、無段変速機 (CVT) 用のコントロールバルブASSYの高機能化と高性能化
  • 電動オイルポンプ
  • トランスミッション用電動油圧アクチュエーター
  • 電気自動車やプラグインハイブリッド車のOEM・Tier1メーカーに向けたトラクションモーターやトラクションモータシステE-Axleの開発推進

 

サンデンホールディングスとの熱マネジメントシステムの開発
-サンデンホールディングスは、日本電産と電気自動車(EV)向けの熱マネジメントシステムの共同開発を開始したと発表した。モーターの排熱と空調システムを統合的に熱マネジメントすることで、EVの航続距離拡大につなげるのが狙い。 今後普及が想定されるEVにおいては、空調などの電装製品の使用が航続距離を大きく左右する。これを受け両社は、サンデンHDが空調領域で蓄積した知見と、日本電産のトラクションモーターおよびインバーターの知見を合わせることで、将来的に電動車向けの空調と駆動装置の統合的な熱マネジメントシステムの開発を進め、2022年の製品化を目指す。(2019年11月5日付日刊自動車新聞より)

Waterloo大学との電波センサー分野での研究
-子会社の日本電産モビリティとカナダのWaterloo大学が車内の生体を検知する電波センサー (レーダー) の性能向上技術について、共同開発を開始したと発表した。車内置き去りによる乳幼児死亡事故多発を受け、欧州の自動車安全テスト「EURO NCAP」でのアセスメント項目への追加や、米国での車内放置警告装置の搭載を義務付けるHOT CARS Act法案の審議など、各国・機関が対策を検討している中での対応。日本電産モビリティは、2019年3月にカナダの子会社を通じて、電波センシング技術で知見・ノウハウを有する同大学と共同開発契約を締結し、センサー性能向上に不可欠な要素技術の開発を推進している。EURO NCAPやHOT CARS Act法の施行に間に合うよう、2022年に高度アンテナ技術やファントム技術を使用した電波センサー (レーダー) の量産開始を予定している。(2019年12月24日付プレスリリースより)

 

製品開発

E-Axle(イー・アクスル)
-現在、国内における駆動モーター/E-Axleの納入はないが、中国でのビジネス獲得を機に、次に示すE-Axleのフルライン化に踏み切った:
   ピーク出力 150 kW:広州汽車向け量産中  D/E セグメント乗用車向け
     同   100 kW:2020年量産開始  B/C セグメント乗用車向け
     同   70 kW:2021年量産予定  A/B セグメント乗用車向け
     同   50 kW:2022年量産予定  軽/A セグメント乗用車向け
     同   200 kW:2023年量産予定  D/E セグメント乗用車向け
-標準化とグループ内製率の高さから画期的な低価格を実現したと見られ、多数の引き合いを受けている。同社によれば、受注見込みは2019年10~12月期で1000万台を超えており、これを背景として世界3極の生産体制構築のため組立設備に2000億円の投資を行うとし、完了すれば年産能力は1000万個に達する。同社全体で2025年までに売上を5兆円(現在の3倍)に引き上げる計画だが、E-Axleはその成長を担う基幹製品と位置づけられており、今後も積極的な投資がなされる。

EV用インホイールモーター
-試作品を開発したと発表した。1基で1.8リットルのガソリンエンジンに相当する100キロワットの出力を発生するほか、すべての駆動方式にも対応する。2023年をめどに量産を始める。今回の試作品は5月に量産を始めるトラクションモーターシステム「E-アクスル」の技術を応用して開発した。モーターと減速機で構成し、20インチホイールに収まるサイズで32キログラムと小型軽量化している。(2019年3月8日付日刊自動車新聞より)

自動運転用レーダー
-自動運転では新型アンテナ技術を活用したレーダーを開発。次世代自動車への対応を急ぎ、同社が掲げる2020年度の車載製品の売上高6千億円の達成につなげる。中・近距離両方に対応する。車両速度に応じて周波数を自動で切り替える。(2019年4月16日付日刊自動車新聞より)

EVプラットフォーム事業
-電動パワーステアリング (EPS) やブレーキシステムの技術を生かし、25年をめどに「EVプラットフォーム」事業も始める。自動運転向けの新型レーダーは、中・近距離両方に対応する。車両速度に応じて周波数を自動で切り替える。(2019年4月16日付日刊自動車新聞より)

 

主な設備投資額

(単位:百万円)
  2020年3月期 2019年3月期 2018年3月期
全社 132,926 120,555 90,841
-日本電産 3,032 1,875 75
-日本電産サンキョー 7,643 8,803 9,303
-日本電産モーターズ アンド アクチュエーターズ 48,809 37,310 22,515

  

国内投資

-本社の隣接地に第二本社機能や子会社の研究開発拠点などを集約した新拠点を建設すると発表した。約2千億円を投じ、2022年から30年にかけて計4棟を新設する。グループ企業間の連携強化が目的で、最終的には現本社を含めて5千人体制を目指す。敷地面積は約6万平方メートル。建物は第二本社と生産研究棟3棟で、総床面積は約15万4700平方メートル。竣工時期は日本電産シンポの研究開発拠点の新設や日本電産リードの本社移転の第一期が22年3月を見込む。第二期は25~26年、第二本社の第三期は30年を予定する。(2019年1月10日付日刊自動車新聞より)

 

海外投資

<中国>
-完全子会社であるGAC Component[広汽零部件有限公司]と日本電産が合弁会社の広州尼得科汽車駆動系統有限公司(暫定)を設立し、新エネルギー車用駆動モーターの工場を建設することに同意した。プロジェクトの総投資額は約10億5,053万元。(2019年8月1日付プレスリリースより)

 

設備の新設計画

(2020年03月31日現在)
所在地 設備内容 投資予定総額
(百万円)
着手および完了年月
着手 完了
日本電産(株) 京都府
向日市
第2本社およびグループ会社集約拠点 200,000 2020年 2030年
ポーランド日本電産モーターズアンドアクチュエーターズ(有)  ポーランド
Niepołomice
車載用製品製造設備 13,191 2020年4月 2021年3月