Hyundai Mobis Co., Ltd.[現代モービス (株)] 2019年12月期の動向

業績 (連結)

(単位:億ウォン)
2019年
12月期
2018年
12月期
増減率 (%)
売上高 380,487 351,492 8.25
営業利益 23,592 20,249 15.51
当期純利益 22,943 18,882 21.51

 

事業動向

<中国現地化戦略>
-2019年11月7日、「2020年5大中国現地特化戦略」を発表し、中国における事業企画から研究開発、生産、品質に至るまで全プロセスの現地経営を強化すると発表した。この戦略は、現地での中核技術開発システムの構築、コスト競争力の強化、現地調達システムの構築、営業戦略の細分化、技術PRの強化の5点で構成される。同社の中国における受注額は2015年に約1億5,000万ドル (163億4,250万円) だったが、2018年に7億3,000万ドル (795億3,350万円) を超え、2019年は8億ドル (871億6,000万円) を突破するものと見込まれている。現代モービスの世界自動車メーカー向け中核部品の2019年受注目標が21億ドル (2,287億9,500万円) であることを考慮すると、中国市場が占める割合が約40%に達することとなる。現代モービスは中国市場向け新戦略を通じて、同国内における製品シェアを継続的に成長させていく方針を掲げている。(2019年11月7日付プレスリリースより)

<5Gコネクテッドカー>
-忠清南道の瑞山市に位置するテストコースにおいて5Gコネクテッドカーのデモ走行を行った。現代モービスは2018年8月、韓国の通信事業者KTとの間で5Gベース技術を共同開発するMOUを締結し、KTが2018年末に5Gインフラを同テストコースに構築。2019年1月からはリアルタイムのナビゲーション地図更新技術やC-V2X (Cellular Vehicle to X:携帯電話回線を利用した路車間、車車間、人車間通信) 技術の開発に取り組んできた。また、今回のデモ走行では両技術をベースとして、V2P (Vehicle to Pedestrian:車歩行者間) 通信による歩行者の横断違反情報の受信、V2V (Vehicle-to-Vehicle:車車間通信) による先先行車の急停車時の車線変更、道路標識の認識によるリアルタイムの地図更新、V2I (Vehicle-to-Vehicle:路車間通信) による自動運転車両内のセンサーデータ伝送、緊急状況における5Gビデオストリーミングなども披露された。現代モービスとKTは今後、5Gネットワークを活用して公道を走行する自動運転試験車の遠隔監視システムを構築し、自動運転のセンサーデータをリアルタイムでモニタリングし、これを蓄積して技術開発の速度を加速させる計画。(2019年10月22日付各種リリースより)

<環境対応車普及>
-燃料電池自動車 (FCV) の普及と環境対応車事業の拡大に向けて、忠清北道の忠州工場において無料水素ステーションを一般向けに運営する。サービス期間は2019年6月20日から12月末まで。なお、現代モービスは現在、忠州工場にて年間3,000台規模の燃料電池モジュールを供給する能力を備えている。2019年末にはこれを6,000台以上に拡大するべく、増設作業を進めている。(2019年6月20日プレスリリースより)

<ディープラーニングベースの画像認識技術>
-ディープラーニングベースの画像認識技術を2019年末までに韓国メーカーとして初めて確保するとともに、自動運転車用の前方カメラセンサーにこの技術を2022年から本格的に量産適用する計画を明らかにした。また同社は、カメラ分野におけるディープラーニング技術の適用を拡大させるために、現代自動車との共同開発も推進する。これにより今後、ディープラーニングベースの画像認識技術を前方カメラセンサーだけでなく、360度サラウンドビューモニターにも水平展開する計画。現代モービスは映像認識技術に関するグローバル競争力を確保するため、海外の研究所も積極的に活用している。インド拠点では画像認識、人工知能の学習と映像合成などをサポートする3Dベースのシミュレーターを開発中であるほか、ベトナム拠点では自動運転データの加工業務を支援している。さらに同社は産学協力の一環として、韓国の国立大学KAISTとディープラーニングデータの高速処理技術を共同開発中であり、この技術は2019年の上半期中に確保できる見込み。(2019年4月1日付プレスリリースより)

受注

-同社が独自開発した中距離前方レーダーと前方カメラセンサーを韓国完成車メーカーの商用車向けに2019年9月から量産出荷する。同社が供給するセンサーは、レーダーとカメラセンサー間のデータを融合し、前方衝突防止補助 (FCA: Forward Collision-Avoidance Assist) 機能を実現する。現代モービスは、これにより商用車の安全規制に対応していくとともに、今後は5G通信ベースの車両制御技術と連携し、無人貨物トラックなどの次世代運送システムに必要な要素技術を確保する戦略を掲げている。(2019年8月13日付プレスリリースより)

 

事業提携

-米国のVelodyne LiDARと戦略的パートナーシップを締結し、5,000万米ドル (54億1,800万円)規模の投資を行うと明らかにした。両社は自動運転車レベル3 (条件付自動運転) 用のLiDARシステムを量産し、2021年に韓国を含むアジア市場展開し、その後は北米および欧州市場の開拓も目指していく。Velodyne LiDARが最新LiDARセンサーを現代モービスに供給し、現代モービスは現代自動車と共同開発したソフトウェアをベースにLiDARが収集したデータを処理して、事物を正確に識別するための統合ソフトウェアを構築する。なお、現代モービスはLiDARシステムを含めて、自動運転に必要なコアセンサーを2021年までに順次開発し、レベル4 (高度自動運転) 以上の自動運転技術も開発していく計画。(2019年10月23日付各種リリースより)

-米国のハイエンドオーディオメーカーKRELLと戦略的パートナーシップを締結し、車載プレミアムサウンドシステムの供給を強化すると発表した。このパートナーシップは、現代モービスが自動運転やコネクティビティなど次世代車分野に関するオープンコラボレーションを進める上でのプレミアムサウンドにおける戦略的協業強化の一環。なお、KRELLのサウンドシステムは2019年6月に発売された起亜自動車「K7 Premier」に採用された。このシステムには12個のスピーカー (センタースピーカー、サラウンドスピーカー、ドアウーファー、ツイーターなど) と12チャンネルアンプが使用されている。(2019年6月17日付プレスリリースより)

-ロシアのインターネット検索エンジン大手Yandexとの間で、ディープラーニングベースの自動運転車を共同開発するための了解覚書 (MOU) を締結した。これに基づき両社は、2019年末までに完全自動運転車のプラットフォームを共同開発し、性能検証を完了させる計画。プラットフォームは現代自動車の新型「Sonata」をベースとする。その後、検証を経て2020年から無人ロボタクシーサービスを展開する予定。ロシア全域にわたって最大100台規模のロボタクシーを運行して事業性を検討し、サービスのグローバル化も推進する。また、両社は今回の提携を皮切りとして、中長期的には音声や映像におけるAI技術やインフォテインメント技術など、様々な分野で協力を拡大する方針を掲げる。(2019年3月20日付プレスリリースより)

-人工知能 (AI) 技術を開発する中国のスタートアップ企業DeepGlintとの戦略的パートナーシップを構築するため、同社に55億ウォンの持分投資を行う。DeepGlintの持つ顔認識および分析システムは、50mの距離で10億人の中から1人の顔を1秒以内に判別することができる。現代モービスはDeepGlintの技術を活用し、車両のセキュリティ認証、運転者の状態モニタリングなどの分野で開発を進める考え。(2019年3月13日付プレスリリースより)

-韓国の通信事業者KTは、コネクテッドカーの技術開発に向けて協力すると発表した。忠清南道の瑞山に位置する現代モービスの走行試験場において、KTによる5Gネットワークを活用し、リアルタイムのナビゲーション更新技術やC-V2X (Cellular Vehicle to X) 技術の開発に着手しており、2019年中に関連技術を確保することを目指している。なお、韓国の自動車部品メーカーがコネクテッドカーの技術開発のために通信事業者と協力するのは今回が初のケースとなる。両社は今後、協力分野をコネクテッドカーの技術開発全般に拡大していく方針。(2019年1月17日付プレスリリースより)

 

国内事業

-子会社の現代IHLから同社大邱工場の不動産および製品金型・試験設備を832億3,400万ウォン (77億4,076万円) で取得する。現代モービスはこれらを新規生産拠点として活用する計画。現代IHLは慶尚北道の慶州市に本拠を置くランプメーカーで、現代・起亜自、Chrysler、SUBARUなどを主な顧客としている。(2019年10月24日付プレスリリースより)

 

研究開発拠点

拠点名 所在地
麻北 (Mabuk) 技術研究所 韓国
京畿道 龍仁 (Yong-in) 市
義王 (Uiwang) 研究所 韓国
京畿道 義王 (Uiwang) 市
上海R&Dセンター 中国
上海
デトロイトR&Dセンター 米国
ミシガン州デトロイト
フランクフルトR&Dセンター ドイツ
フランクフルト
インドR&Dセンター インド
ハイデラバード

-中国の深圳にオープンイノベーションセンター「M.Cube」を開設した。同拠点では自動運転、人工知能、ロボティクス、ビッグデータなど様々な分野におけるスタートアップ企業を発掘し、投資を行う。そして、これらの企業とパートナーシップを締結することで、現代モービスが保有する中核部品の技術競争力を高めていく考え。同社は2018年11月、米国シリコンバレーにて初のM.Cubeを開設。今回の深圳は2拠点目となる。(2019年6月6日 付各種リリースより)

研究開発費

(単位:百万ウォン)
2019年12月期 2018年12月期 2017年12月期
研究開発費 965,875 835,006 769,569
対売上高比率 2.8% 2.4% 2.2%

 

研究開発活動

-2018年、自動運転、コネクティビティ、電動化などの次世代自動車の分野で640件の特許を新規取得した。これには後側方レーダーやインテリジェントヘッドランプなどの中核部品技術が含まれる。同社の2018年12月期における中核部品の売上高は8,350億ウォン (768億2,000万円) で、全体売上高の約9%に達している。現代モービスは2020年までに自動運転レベル3 (条件付自動運転) の要素技術をすべて確保するとともに、2021年までに完全自動運転のためのV2X (車車間・路車間通信) 技術、次世代ディスプレイ技術の開発を完了させる戦略を掲げている。(2019年6月10日付プレスリリースより)

-米国マサチューセッツ工科大学(MIT)との産学連携プログラム(ILP:Industrial Liaison Program)に参画すると発表した。ILPは年間500億ウォンの特許収入と1,700人を超える卒業生の強いネットワークを持つコア技術のワールドクラスのポートフォリオである。先進的なコンセプトテクノロジーを商品化する点に強い競争力を持つことで有名なILPであるが、当該プログラムは他に現代自動車、BMW、サムスン、LG、ホンダ、デンソーなどが参加している。現代モービスは、MITが提供しているスタートアップマッチングサービスを活用してスタートアップの最先端技術を車両システムに迅速に搭載する予定であるとしている。同社は、カリフォルニアのシリコンバレーにあるM.Cubeと協業して、また将来成長見込みのあるグローバルなスタートアップ企業を発展させることを通じて、同社がイノベーションの先頭に立つことをさらに加速させていくことを目標としているという。(2019年5月7日付プレスリリースより
 

製品開発

完全自動運転コンセプトカー「M VISION S」
-米国ラスベガスで開催された「CES 2020」において、完全自動運転のコンセプトカー「M VISION S」などを披露。「M VISION S」はカメラ、レーダー、LiDARなどの自動運転センサー、コミュニケーションランプ、仮想空間タッチ、3Dリアランプ、プレミアムサウンドシステム「KRELL」など、同社の次世代車向け技術が凝縮されている。「CES 2019」で披露した「M VISION」から進化したモデルで、名前の「S」には共有 (Sharing) 可能なモビリティという意味と、現代モービスの様々な技術が融合されたという意味が込められており、現代モービスの様々な技術が融合されている。(2019年12月19日付各種リリースより)

後方緊急自動ブレーキ
-超短距離レーダーセンサー (USRR : Ultra Short Range Radar) を活用した後方緊急自動ブレーキ (R-AEB : Rear-Autonomous Emergency Braking) 技術の開発に成功した。超音波センサーを適用した既存の技術よりも応答速度が速いほか、検出距離も長いため、突発的な状況における後退事故の防止に大きく貢献するものと期待される。同社は「実車評価プロセスで超短距離レーダーを搭載した後方緊急自動ブレーキの性能信頼性に関する検証を完了した」とし、「今後は韓国内外の自動車メーカーに対して量産適用を積極的に提案していく」と説明した。(2019年11月13日付プレスリリースより)

自動運転レベル4以上向けブレーキシステム
-自動運転レベル4 (特定条件下における完全自動運転) 以上向けブレーキシステムを開発した。この製品は電気機器の故障や外部からの衝撃などでブレーキが正常に動作しない場合でも、緊急ブレーキ装置が自ら動作する冗長性を持つ。このシステムは2つの電子制御式ブレーキ装置と、これを制御するECU、ソフトウェア制御プラットフォームなどで構成。通常時は2つの制御装置が相互に情報のやり取りを行うが、主制御装置が正常に動作しない場合は、コントローラーがこれを感知して補助装置に駆動命令を下す仕組みとなっている。(2019年9月19日付プレスリリースより)

乗員保護装置統合コントローラー
電動シートベルトとエアバッグのコントローラーを統合した「乗員保護装置統合コントローラー」を開発した。この統合コントローラーは、外部カメラおよびレーダーセンサーによって路面の障害物や急停車した車両などの危険状況を認識すると、まず電動シートベルトの振動によって乗員に警告を与える。衝突が予想される場合には、緊急自動ブレーキ装置を作動させるとともに、電動シートベルトを調整して乗員を座席に密着させる。それでも避けられずに車両が衝突すると、衝突の強さに応じてプリテンショナーおよびエアバッグを展開させる仕組み。また、現代モービスは、エアバッグやシートベルトなどの安全装置を乗員の位置や動きに合わせて最適に展開する技術の確保も進めている。同社が現代自動車の南陽研究所と共同研究を進めている同技術は、韓国完成車メーカーの国内高級セダンを中心に2021年から量産適用される予定。(2019年9月9日付プレスリリースより)

カメラモニターシステム
-サイドミラーを代替するカメラモニターシステムを韓国メーカーとして初めて開発した。このシステムは既存のサイドミラーの位置にカメラのセンサーを装着して後方および側方の車両の走行状況を把握し、これを車内モニターに表示する装置。カメラの画角は約35度で一般のサイドミラーの2倍超。このため、運転者が首を回して死角を確認しなくても安全な走行が可能になる。また、サイドミラーによって発生する風切音などの外部騒音を解消するとともに、空気抵抗が減ることで燃費改善も可能になるという。(2019年7月21日付プレスリリースより)

不注意運転を警告する「Driver State Warning」システム
ー顔の生体情報を正確に分析して、不注意運転を警告するDSW (Driver State Warning) システムを開発し、2021年から韓国自動車メーカーの中大型商用車に量産供給すると発表した。このシステムは、目・鼻・口・耳などの部分を通じた運転者識別と瞳孔認識による視線追跡を可能にし、不注意運転の検出精度を高めることに成功した。リスクを判断してクラスタ表示や警報音、振動などで運転者の注意を喚起し、事故予防に貢献する。また、現代モービスは2019年初めにスタートアップ企業Deep Glint社と戦略的パートナーシップを構築しており、ディープラーニングを活用した搭乗者認識アルゴリズムの共同開発も検討している。運転者認識技術にディープラーニングを融合させ、映像ベースのモーション解析と生体認証を行う。また、心拍計測、音声認識とも連携して生体リズムを測定し、搭乗者のストレス程度や飲酒を把握するほか、感情認識まで実現させる計画。(2019年7月15日付プレスリリースより)

完全自動運転プラットフォームベース車
-ロシア最大のインターネットポータル事業者Yandexと協力して開発した完全自動運転プラットフォームベースの車両を公開した。この車両は今後ロシアのモスクワ市内で試験走行を実施する。また、両社は2019年末までにロシア全域で100台のロボタクシーサービスを試験運営する計画。これに先立ち、両社は2019年3月末「ディープラーニングベースの自動運転プラットフォーム共同開発のための了解覚書 (MOU)」を締結。現代自動車の新型「Sonata」をベースに共同開発を進めていた。Yandexが自動運転アルゴリズムをプラットフォーム上に適用させ、現代モービスは自動運転センサーとコントローラを搭載してシステム全体の安全性を確保させた。(2019年7月12日付
プレスリリースより)

「プレビューエアサスペンション技術」
-カーナビのマップ情報を事前に反映し、自動的に車体の高さを調整して路面の衝撃を吸収する「プレビューエアサスペンション技術」を開発した。この技術は、カーナビの道路情報を通じて、目標地点の平均500m前から動作を開始する。例えば、前方にスクールゾーンがある場合は徐々に車高を調整して視野を確保するとともに、サスペンションモードもスムーズにして乗車感も向上させる。また、強風が吹く橋を渡る際は車高を下げることで走行を安定させる。反対に、踏切やハンプでは車高を高くして路面から車体が受ける振動や衝撃を減少させる。現代モービスは様々な走行環境の実車評価と実道路における検証を完了させている。また同社は、独自開発を進めているカメラのセンサーと融合したエアサスペンションも2020年に開発する計画。(2019年4月29日付プレスリリースより)

設備投資額

(金額:億ウォン)
品目 投資効果 2019年
12月期
2020年
12月期
(計画)
国内法人 工場新設・補完投資 等 生産設備増設による
稼働率向上 等
11,038 12,253
海外法人 2,259 3,669
合計 - - 13,297 15,922

 

国内投資

-2019年8月28日、蔚山広域市にて新工場の起工式を開催した。新工場の敷地面積は15万m2で、設備投資額は約3,000億ウォン (261億円)。前輪・後輪駆動モーターおよびインバーターモジュール、バッテリーシステム、コンバーターおよび双方向充電器の統合型製品などの電気自動車 (EV) 中核部品を2021年から年間10万台分生産する計画。これにより現代自動車のEV専用プラットフォーム「E-GMP」をベースとしたモデルの生産に対応する。また、中長期的にはグローバル自動車メーカーへの輸出も推進する予定。なお、同社の環境対応車用部品工場は、忠清北道の忠州工場に続いて2拠点目となる。この蔚山新工場は現代自動車の蔚山工場から約15kmの距離に位置しており、サプライチェーンの効率化も見込まれている。(2019年8月28日付各種リリースより)

-2018年末、忠州市にて水素燃料電池第2工場の建設を開始した。この工場が完成すると、同社の水素燃料電池システムの生産能力は、現在の年間3,000台分から2022年には約13倍の40,000万分に拡張する見込み。(2019年2月13日付プレスリリースより)