第2回EV・HEV駆動システム技術展(1)
駆動用モーター関連の新製品・新技術
2011/02/17
要 約
第2回EV・HEV駆動システム技術展(EV Japan 2011)(2011年1月19日~21日に東京ビッグサイトで開催)における駆動システム、モーター[部品・材料]、モーター[巻線機]、加工技術に関連する注目すべき27社の製品/技術の概要を紹介する。
今年の出展では、モーター本体、関連部品・材料および製造設備、さらには加工技術もモーター関連の企業が大幅に増えている。加工技術では、技術商社であるエヌシーネットワークのブースに10社の中小企業(昨年は6社、うち4社は今年も継続)が出展し、独自技術をアピールしていた。なお、二次電池/次世代電池、充電器、関連部品・材料については続編で紹介する。
分野 | 企業名 | 製品・技術 |
駆動システム | 安川電機 | EV用モータードライブシステム |
ピューズ | EVシステム開発支援 | |
TGMY/繁原製作所 | DCブラシレスモーター、一次減速機 | |
ワーテックス | コンバートEV用エアコン電動コンプレッサー | |
Mywayプラス | EV/HEV用車載モーター評価システム | |
モーター[部品・材料] | 東レ | モーター用絶縁材(PPS繊維・フィルム) |
津田工業 | HEV用モーターシャフト(冷間鍛造工法) | |
シコー | コアレスモーター | |
エス・エッチ・ティ | チョークコイル | |
秋山製作所 | モーターシャフト(摩擦圧接工法) | |
菱電化成 | ブスバー | |
ノアコーポレーション | コイルテスター | |
東洋電産 | 車載発電システム | |
モーター[巻線機] | 小田原エンジニアリング | 各種巻線機 |
多賀製作所 | 各種巻線機 | |
加工技術 | アルファテック | 精密石膏鋳造工法 |
伊藤精密製作所 | 精密旋盤複合加工技術 | |
イナテック | 薄肉砂型鋳造工法 | |
LSIクーラー | ヒートシンク技術に特化 | |
クライム・ワークス | 部品軽量化技術 | |
大槇精機 | 同時5軸薄肉加工技術 | |
日伸精工 | 精密プレス加工技術 | |
ミヤキ | アルマイト処理技術 | |
ムサシ | 同時5軸加工技術 | |
山岸製作所 | 旋盤薄肉加工技術 | |
ナミテイ | 冷間鍛造工法 | |
アテクト | 粉末射出成型工法 |
駆動システム
安川電機(EV用モータードライブシステム)
自動車業界へ新規参入した同社は、昨年発表したHEV/EV用モータードライブシステムQMET DRIVE(Qualified Magneto-Electronic Transmission 電子式巻線切替制御を採用)と共に、今回はそれをコミューター~軽自動車クラス用に小容量化したYMEV(Yaskawa Motordrive for Electric Vehicle)を公開した。YMEVは、QMETから巻線切替制御機能を取り除くと共に、低出力域に焦点を絞った。EVベンチャーのゼロスポーツ(岐阜県各務原市)が1000台分を発注し、同社が日本郵政グループの郵便事業会社に納入する集配用EVに搭載される見込み。(プレスリリース)
また、SiC(炭化ケイ素)パワー半導体素子を採用したSiC-QMETを参考出品した。モーター駆動用のインバーターの主回路や、モーターの巻線切替部にSiC製パワー素子を利用し、切替部の容積を半分にした。SiCパワー素子は、ローム製のトレンチ型MOSFETとショットキーバリアダイオード(SBD)である。(注)以下の画像はクリックすると拡大します。
ピューズ(EVシステム開発支援)
(注)以下の画像はクリックすると拡大します。
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自動車用ブラシレスDCモーター受託開発の概要 | 600W級モーター・インバーター・コントローラー 一体型パワーユニットの仕様 |
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ハイブリッド車用12kW級モーターの展示 | 高圧直流回路使用機器の絶縁劣化を検出するセンサー CEL4 の展示 |
TGMY(DCブラシレスモーター、モーターECU) /繁原製作所(一次減速機)
EV改造用基幹部品輸入とEV改造サービスを行うTGMYと自動車用部品試作メーカーの繁原製作所は、一回の充電での走行距離550kmを目指したEVである「卑弥呼」を共同開発して展示した。
繁原製作所が開発したEV用減速機(FR 2段変速タイプ)は、AT車のEVへの改造を可能にした。一次減速機の固定ギア比に加え高速ギア比または高出力ギア比を備える2速仕様の減速機のFF・MR・RR用 縦置き型/水平置き型およびFR用が開発済み。
(注1)現状のEVへの改造は、モーターの回転数とエンジンの回転数が合わないためにATの制御が困難なため、通常はMT車のみが対象となる。(注2)以下の画像はクリックすると拡大します。
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TGMYのEV改造例 | コンバートEV車「卑弥呼」の仕様概要 |
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コンバートEV車「卑弥呼」の展示 (モーターと制御関連はAzure製) |
コンバートEV車「卑弥呼」の展示 |
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繁原製作所の開発したEV用FF 2速減速機(ミラバン用)の展示 |
ワーテックス(コンバートEV用エアコン[電動コンプレッサー:冷房専用])
(注)以下の画像はクリックすると拡大します。
Mywayプラス(EV/HEV用車載モーター評価システム)
(注)以下の画像はクリックすると拡大します。
モーター[部品・材料]
東レ(モーター用絶縁材)
(注)以下の画像はクリックすると拡大します。
津田工業(HEV用モーターシャフト)
プリウスに採用されたHEV用モーターシャフト(深穴冷鍛品)は、深穴・細穴を冷鍛成形することによりネットシェイプ(切削又は転造工程を廃止)できるために、従来の熱間鍛造+穴開け切削に比較して製造コストを15%低減した。また、ジェネレーターシャフトは、ロット生産から1個流しが可能となり、コストを30%も低減した。
(注1)冷間鍛造工法について。(注2)以下の画像はクリックすると拡大します。
シコー(コアレスモーター)
同社は、巻線ではなく銅シート材を使ったステーターを用いた超小型のコアレスモーターを得意とし、特に携帯電話のバイブレーター用振動モーターでは世界的なトップ企業である。車載用ではカーナビ、カー・オーディオ等の冷却用ファンモーターの大手でもある。独自開発してきたコアレスモーター技術を活用して風力発電用発電システムを事業化し、次いでEV用ホイールインモーター(3kW、5kW級)を開発した。4輪に計4個のホイールインモーターを組込むことで、現行のガソリン軽自動車クラスの出力を想定している。
(注1)開発に関するIR情報(注2)以下の画像はクリックすると拡大します。
エス・エッチ・ティ(チョークコイル)
(注)以下の画像はクリックすると拡大します。
秋山製作所(モーターシャフト)
クランクシャフト、シャフトに特化した同社は、中実材と中空構造材を摩擦圧接して製造した中空構造を有する超軽量モーターシャフトを展示した。中空構造にすることで45%の軽量化を実現した(2.75kg⇒1.52kg)。
なお同社は、この新工法が特許に該当することが判明したにもかかわらず特許申請を行っていない。ウェブサイトにて公開することにより公知の技術として第三者に特許取得をできないようにし、誰もが利用できる技術としている。(参照先)(注)以下の画像はクリックすると拡大します。
菱電化成(ブスバー)
(注)以下の画像はクリックすると拡大します。
ノアコーポレーション(コイルテスター)
(注)以下の画像はクリックすると拡大します。
東洋電産(車載発電システム)
(注)以下の画像はクリックすると拡大します。
モーター[巻線機]
小田原エンジニアリング
モーター製造用巻線設備(巻線機、自動巻線製造ライン)専業メーカーである同社は、13年前のトヨタの初代プリウス用駆動モーターの製造用に採用されて以来、トヨタ自動車や日産他に採用実績が多くある。たとえば、下の写真にみるインサータ式全自動ステーター巻線ライン(価格:一式6億円)はトヨタ自動車にも採用されている。
顧客からはPPMの精度を要求され、同製造ラインを導入してもその精度はすぐには出せず、製造ラインを使いこなすまでに少なくとも半年はかかるとのこと。(注)以下の画像はクリックすると拡大します。
多賀製作所
(注)以下の画像はクリックすると拡大します。
加工技術
アルファテック(精密石膏鋳造工法)
(注)以下の画像はクリックすると拡大します。
伊藤精密製作所(精密旋盤複合加工技術)
(注)以下の画像はクリックすると拡大します。
イナテック(薄肉砂型鋳造工法)
(注)以下の画像はクリックすると拡大します。
LSIクーラー(ヒートシンク技術)
(注)以下の画像はクリックすると拡大します。
クライム・ワークス(部品軽量化技術)
(注)以下の画像はクリックすると拡大します。
大槇精機(同時五軸薄肉加工技術)
(注)以下の画像はクリックすると拡大します。
日伸精工(精密プレス加工技術)
(注)以下の画像はクリックすると拡大します。
ミヤキ(アルマイト処理技術)
(注)以下の画像はクリックすると拡大します。
ムサシ(同時五軸加工技術)
(注)以下の画像はクリックすると拡大します。
山岸製作所(旋盤薄肉加工技術)
(注)以下の画像はクリックすると拡大します。
ナミテイ(冷間鍛造工法:異形線加工・端子等精密部品)
(注)以下の画像はクリックすると拡大します。
アテクト(粉末射出成型工法:窒化アルミ製ヒートシンク、燃料電池用金属セパレーター)
(注)以下の画像はクリックすると拡大します。