マークラインズオンライン展示会2020:電動化関連技術

eAxle、パワーコントロールユニット、バッテリーマネジメントシステム など

2020/09/04

要約

  マークラインズ株式会社は2020年6月中旬から情報プラットフォーム上でオンライン展示会を開催している。

  本稿では会員企業による出展製品の中から、モーター、減速機、パワーコントロールユニット、インバーター、バッテリーパック、バッテリーマネジメントシステム等の電動化関連技術をダイジェストで紹介する。

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eAxle、モーター関連部品(Vitesco Technologies、MAHLE、ユニバンス、日本精工)

  電気自動車(EV)、プラグインハイブリッド車(PHEV)向けのモーター、インバーターや減速機を一体化したeAxleによる小型・軽量化の提案に加え、48Vバッテリーで駆動するマイルドハイブリッド車向けのモーターなどが出展されている。

会社名 展示品 特徴 用途
Vitesco Technologies xEV向け三位一体型eAxle 小型・三位一体型 BEV、PHEV
MAHLE 48Vマイルドハイブリッド用モーター 小型・インバーター一体型 MHEV
高電圧駆動モーター 高出力密度 BEV
ユニバンス 機電一体型eアクスル 高効率領域の拡大 BEV、PHEV、従動輪
日本精工 シームレス 2スピード eアクスル コンセプト 小型・軽量化、高効率化 BEV、PHEV
電動車駆動モーター用高速回転玉軸受 高回転対応 電動車駆動モーター

 

Vitesco Technologies

  コンチネンタルのパワートレイン電動化関連部門も含むパワートレイン部門が2018年に独立、2019年10月にVitesco Technologiesへ名称変更。Vitesco Technologies(ヴィテスコ・テクノロジーズ)はeAxleを出展している。

 

xEV向け三位一体型eAxle EMR3

  オンライン展示会に出展しているEMR3はVitesco Technologiesの第3世代のインバータ、モータ、減速機を統合した駆動システムで高出力密度による小型化を狙っている。モータはネオジム磁石を使用した埋込み磁石型同期モータで、最大出力150kW、定格出力60kW、減速機出力軸の最大トルクは2,900Nm、最高速度1,400rpmとなっている。

  Vitesco Technologiesは東京モーターショー2019でも同システムを展示していた。ギアは外部メーカ製だが、モータ、インバータは自社製。展示品は中国の工場で生産した量産品と説明していた。

xEV向け三位一体型eAxle MR3 eAxle MR3
xEV向け三位一体型eAxle EMR3 eAxle EMR3
(東京モーターショー2019に出展)

 

MAHLE

  MAHLE(マーレ)は48Vマイルドハイブリッド用モーター、高電圧駆動モーターを今回のオンライン展示会に出展している。

  なお、MAHLEの電動化向け製品は下記サイトにて公開している。
 http://www.jp.mahle.com/ja/products-and-services/emobility/

 

48Vマイルドハイブリッド用モーター

  ベルト掛けで動力伝達するタイプのインバーター一体型の48Vマイルドハイブリット車用の水冷式駆動システムで最大出力21kW、連続出力16kW、最大トルク60Nm、最高回転数18,000rpmとなっている。

  東京モーターショー2019で「48Vマイルドハイブリットコンセプト」として展示していた製品と同じと見られる。ステーターは平角線ヘアピン式の分布巻で、ネオジム磁石を使用した埋込み磁石型同期モーターを採用している。搭載位置はP2、P3タイプに最適である。

 

高電圧駆動モーター

  400Vクラスのバッテリーを搭載したBEVの主機用のモーター・インバーター用に開発されたもので、5kW/kg以上の高出力密度を実現できる水冷タイプ。

48Vマイルドハイブリッド用モーター 高電圧駆動モーター
48Vマイルドハイブリッド用モーター 高電圧駆動モーター

 

ユニバンス

  ユニバンスは2個の48Vモーターとギアを組み合わせて高効率領域を拡大でき、車両の低重心化、低床化にも貢献可能な50kWクラスの機電一体型eアクスルを出展している。

 

機電一体型eアクスル「Dual Motor Multi driving mode e-Axle(DMM Axle)」

  EVでは固定のギア比の減速機を使用するのが一般的であるが、「Dual Motor Multi driving mode e-Axle」は2段階変速ギアを48Vモーターと組み合わせたユニットで、走行シチュエーションに合わせてモーターの効率の良い駆動領域を積極的に使用してパワートレインの高効率領域を拡大し、消費電力約10%の効率化を実現している。また、2個のモーター出力と2系列のギア配列による4つの走行モードを2つのクラッチによってシームレスに切り換えることができる。機電一体型のユニット構造は扁平で左右対称のため車両の前後中央に搭載可能で、車両の低重心化や等長ドライブシャフトの採用にも対応できる。

機電一体型eアクスル(DMM Axle) ギアボックス量産化に向けた試験車両
機電一体型eアクスル(DMM Axle) ギアボックス量産化に向けた試験車両
DMM Axleの特長 機電一体型eアクスルを搭載した試験車両を開発
DMM Axleの特長 機電一体型eアクスルを搭載した試験車両を開発

 

日本精工

  日本精工は駆動系の技術を活かした電動化関連製品として、シームレス 2スピード eアクスル コンセプト、電動車駆動モーター用高速回転玉軸受などを展示している。

 

シームレス 2スピード eアクスル コンセプト

  トラクションドライブ減速機とシームレス2速変速モジュールを組み合わせたeアクスル コンセプト展示で、東京モーターショー2019にも展示されていた。

シームレス 2スピード eアクスル コンセプト 東京モーターショー2019に出展
シームレス 2スピード eアクスル コンセプト (東京モーターショー2019に出展)

 

<トラクションドライブ減速機>

  遊星歯車の歯がないローラーのイメージで、オイルによりトルクを伝達するもの。高減速比を実現し、高速モーターとトラクションドライブ減速機の組み合わせで、システムとして30%小型・軽量化する提案である。歯車を使用しないので振動が少なく、高回転での発熱、音振で有利としている。

<シームレス2速変速モジュール>

  モーターには効率の良い領域と悪い領域があるため(磁石型同期モーターの場合、高回転で効率悪化する場合が多い)、2速変速機によって効率の良い領域を拡大する。一般的な磁石型同期モーターの場合、WLTCモードで航続距離7%UPが可能としている。変速時のトルク変動を防ぐため、磁歪式トルクセンサーを内蔵し、フィードバック制御することで滑らかな変速を実現できる。

トラクションドライブ減速機 EV用シームレス2段変速アクスル
トラクションドライブ減速機 シームレス2速変速モジュール

 

電動車駆動モーター用高速回転玉軸受

  電動車のモーターでは1万rpm以上の高回転までを動作範囲とする事が多く使用温度範囲も広いため、高速回転まで考慮した焼付きや保持器破損が発生しないグリース潤滑のベアリングが求められる。

  本製品では広範囲な温度域にて低発熱、低フリクションの高速対応グリースを採用し、保持器形状の最適化、樹脂材料の高剛性化を行い、高回転での使用を可能としている。

電動車駆動モーター用高速回転玉軸受
電動車駆動モーター用高速回転玉軸受


パワーコントロールユニット ほか(ケーヒン、Vitesco Technologies)

  電動車のモーターを交流電力で駆動するためのインバーター(パワーコントロールユニット)には大電流を制御するための半導体部品が使われている。IGBTとダイオードを一体化して小型化したRC-IGBTやシリコン(Si)に代わってシリコンカーバイド(SiC)の採用が始まっている。

会社名 展示品 特徴 用途
ケーヒン 新型パワーコントロールユニット RC-IGBTを採用し、小型化 BEV、PHEV
Vitesco Technologies 高電圧インバーター 高出力密度 BEV、PHEV
ハイボルテージボックス 小型化・軽量化 BEV、PHEV

 

ケーヒン

新型パワーコントロールユニット

  新型パワーコントロールユニットはホンダの2モーターハイブリッドシステムi-MMD用の新型インバーターで新型フィットに搭載しているものと見られる。

新型パワーコントロールユニット システム構成、仕様
新型パワーコントロールユニット (システム構成、仕様)

新型パワーコントロールユニット
新型パワーコントロールユニット
(オートモーティブワールド2020に出展)

  オートモーティブワールド2020ではカットモデルを展示。電流センサーをモーター制御電子制御ユニットに集約したIPM(インテリジェントパワーモジュール)はケーヒンでベアチップを実装したもので、IGBTとダイオードが一体となったRC-IGBTを採用し小型化している。またVCU(ボルテージコントロールユニット)も小型化して、さらにDC-DCコンバーターをパワーコントロールユニットに内蔵している。

Vitesco Technologies

高電圧インバータ(EPF4)

  今回のオンライン展示会に出展しているのは外部形状イメージのモデルであるが、Vitesco Technologiesが従来から取り組んでいる高電圧インバータの新型である。290~825Aの電流容量を持つ400V系インバータであり、800V系バッテリへの対応やSiC(シリコンカーバイド)半導体を搭載した小型・軽量の次世代製品も開発中とのことである。

 

ハイボルテージ・ボックス

  各国の充電規格に対応した7.2~22kWのオンボードチャージャ、DC-DCコンバータ、ジャンクションボックス (オプション)を搭載した強電ボックスで、複数機能の統合により小型化・軽量化を図っている。

高電圧インバーター(EPF4) ハイボルテージボックス
高電圧インバーター(EPF4) ハイボルテージ・ボックス


バッテリーマネジメントシステム、バッテリーパック ほか(ケーヒン、ピューズ、Bosch)

  電動車のバッテリーは多数のセルを直列に接続しており、バッテリーパックには各セルをバランスするための充放電制御や充電容量の把握のための機能が内蔵されている。このバッテリーマネジメントシステムによってバッテリーの容量を最大限に活用することが可能となる。

会社名 展示品 特徴 用途
ケーヒン バッテリーマネジメントシステム
(統合型、分散型、ワイヤレス式)
小型・軽量化、高精度検出 BEV、PHEV、HEV
ピューズ バッテリーマネジメントシステム 安全性、フェールセーフ BEV、PHEV
大型車両用バッテリーパック UN-ECE-R100.02の認証取得済 BEV
Bosch 48Vバッテリー 小型、自然空冷 MHEV
燃料電池システム用コンポーネント コンポーネントの充実 FCV

 

ケーヒン

バッテリーマネジメントシステム

  ケーヒンは電動車のバッテリー残量を高精度に検出し、充放電管理、セルバランス制御 等を行う3種類のバッテリーマネジメントシステムをオンライン展示会に出展している。

1) 統合型バッテリーマネジメントシステム

  バッテリーのセル電圧検出精度向上とセル電圧センサー内蔵により、バッテリーSOC(Stage of Charge)範囲を拡大。樹脂ケースによる小型・軽量化により燃費向上と車室内空間レイアウト性を向上。

2) 分散型バッテリーマネジメントシステム

  セル電圧センサーとバッテリーマネジメントユニットを別体にし、薄型化したセル電圧センサーをバッテリーパック内にレイアウト可能としている。セル電圧センサーは60セルまで、バッテリーマネジメントユニットは5個のセル電圧センサーを接続することができる。正確なセル電圧検出と電池特性曲線によりバッテリー使用範囲を従来より2%拡大、航続距離の拡大に貢献するとしている。

統合型バッテリーマネジメントシステム 分散型バッテリーマネジメントシステム
統合型バッテリーマネジメントシステム 分散型バッテリーマネジメントシステム

 

3) ワイヤレス式バッテリーマネジメントシステム

  電池モジュールにセル電圧センサーと無線通信機能を搭載し、各セル電圧の監視をワイヤレスにて行う提案。セル電圧センサーに各セルの充電量や劣化度の情報を蓄積してワイヤレスで確認する。

  廃却時に分解しても電池モジュール単位で管理が可能となるため、バッテリー再利用の可能性が高まる。しかし、商品化に向けては規格化が課題と考えられる。

ワイヤレス式バッテリーマネジメントシステム ワイヤレス式バッテリーマネジメントシステム
ワイヤレス式バッテリーマネジメントシステム

 

ピューズ

バッテリー制御システム(BMS)
バッテリー制御システム(BMS)
バッテリー制御システム(BMS)

  電動車のバッテリーパックに搭載されるもので、リチウムイオン電池を安全に使用するために必要なエネルギーマネジメントやフェールセーフの機能を持ったBSUとBMUの2種類の基板で構成される。BSUはバッテリーセル12個を組み合わせた電池ブロック毎に複数配置され、デジチェーンで接続されたBMUと組み合わせてバッテリーマネジメントシステムが構成される。電圧、電流、温度のセンシング機能があり、セル電圧均等化(1W/cell)、SOC演算、監視機能 等が可能となっている。

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大型車両用バッテリーパック
大型車両用バッテリーパック
大型車両用バッテリーパック

  10分間充電運行による大型EVバス実証事業(マレーシア)に開発されたもので、27.6V 40Ahの東芝製バッテリーモジュール(SCiB)を13個組み合わせて定格電圧358.8V、14.352KWhのバッテリーパックとなっている。国土交通省の基準に適合し、UN-ECE-R100.02の認証を取得している。

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Bosch

48Vバッテリー

  マイルドハイブリッド用の48Vリチウムイオンバッテリーで、高さ90mmの靴箱並みに小型化され、自然空冷式で冷却ファンを使用していない。仕様は、重量:6kg、バッテリー容量:8Ah、充電電力:14kW、放電電力:11kWとなっている。

48Vバッテリー 48Vバッテリー
48Vバッテリー

 

燃料電池システム用コンポーネント
燃料電池システム用コンポーネント
燃料電池システム用コンポーネント

  Bosch(ボッシュ)はPowercell(パワーセル)社からのライセンス提供を受けてスタック開発を開始している。今回のオンライン展示会では燃料電池スタックの他に、空気を圧縮して燃料電池スタックのカソード側に供給する電動エアコンプレッサー、ホットフィルム式空気流量計、水素ガスインジェクター、アノード循環ブロア等の燃料電池システムのコンポーネント類、拡張性や信頼性を備えたコントロールユニットも披露している。


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キーワード
電動化、電動車、EV、PHV、HEV、48V、Vitesco、MAHLE、ユニバンス、日本精工、ケーヒン、Bosch、ピューズ、eAxle、駆動モーター、減速機、ベアリング、PCU、パワーコントロールユニット、インバーター、IGBT、SiC、EV電池、BMS、バッテリーマネジメントシステム、バッテリーパック

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