メキシコ:米国の需要変化に対応し、小型車からSUV・ピックアップへ生産シフト

メキシコ新大統領就任で経済見通しが不透明化、USMCAの批准手続きは難航

2019/04/04

要約

  メキシコ自動車工業会(AMIA)/国立統計地理情報院(INEGI)によると、メキシコの2018年の生産台数は390.8万台でほぼ前年並みだったが、輸出台数は前年比11.2%増の344.9万台で過去最高となった。国内販売台数は7.1%減の142.1万台で、2017年に続いて2年連続で減少。輸入台数は2.6%増の93.0万台で、輸入車の割合は65.4%に拡大した。

  北米自由貿易協定(NAFTA)に代わる新貿易協定「米国-メキシコ-カナダ協定(USMCA)」が仮合意されたものの、批准手続きを経て発効されるか、また新大統領の経済政策がどのようなものになるかなど、メキシコ市場はいまだ不確実な状況にある。メキシコで生産する主要メーカーは、主要輸出先である米国の需要変化に対応し、セダンや小型車からSUVやピックアップトラックへと生産をシフトさせる動きが目立つ。トランプ政権の米国での雇用拡大政策に呼応して、米国へ生産移管を進めるOEMがある一方、メキシコで生産を拡大する動きもある。2019年にはBMWが年産能力17万5,000台の工場を、トヨタが10万台の工場を開設する。

  メキシコでは2018年12月1日、新大統領が就任した。新興左派政党に属する新大統領は、新自由主義的な経済政策が汚職を生み出したとして、外国から投資を誘致し、輸出を促進する従来の経済政策を否定し、内向きの政策を打ち出している。その結果、新政権に向けてメキシコに投資が集まらなくなる懸念が広まり、経済見通しの不透明さが不安視されている。

  新貿易協定のUSMCAは2018年11月30日に各国首脳が署名。新協定はNAFTAの仕組みの多くを踏襲するが、自動車関税をゼロとする要件として、部材の域内調達比率の引き上げや、部材の40%を時給16ドル以上の地域で生産する等の賃金条項が追加され、北米での生産計画に影響を及ぼすものである。今後、各国議会の批准手続きを経て発効するが、いずれの国においても批准手続きは難航すると見られている。

Chevrolet Blazer 日産Kicks
2019年1月に米国に投入されたChevrolet Blazer
(Ramos Arizpe工場で生産)(写真:GM)
2018年6月に米国で発売された日産Kicks
(Aguascalientes工場で生産)(写真:日産)

 

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